【インタビュー】odd five、民族音楽を取り入れた複雑なサウンドで自由に跳躍する『MUTANTS』

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大阪を拠点に活動する5人組ロックバンドodd fiveが、5thミニアルバム『MUTANTS』をリリースした。様々な国の民族音楽を取り入れた複雑なサウンドが特徴的な彼ら。今作では、そうした独自のサウンドは健在ながら、より自由に開かれた表現方法が曲ごとに楽しめる作品となっている。スケールの大きなサウンドスケープの「郷風」、混沌としながらも理屈抜きに気持ち良いダンスチューン「Mutant talks」、そしてこれからの時代を生き抜くための力強いメッセージを受け取ることができる「NAMELESS WARFARE」まで。コロナ禍での葛藤を経て進化したバンドの現在を、中 拓史(Vo&Tin whistle)、今来淳平(Gt)、新垣洸二(Ba)の3人に語ってもらった。

■単純に音楽をもっと愛しているということを
■ライブでも、曲でも、自分の楽器でも表現しよう


――ミニアルバム『MUTANTS』を聴かせてもらい、どういう人が集まったらこういう音楽になるんだろう?って興味深かったです。みなさんは大阪の豊中で結成されたということですが、どんな5人が集まったバンドなんですか。

中 拓史(以下、中):この3人と東浦寛樹(Key)が中学の同級生で、地元の後輩の塚川由祐(Dr)で構成されたバンドです。

今来淳平(以下、今来):最初は「文化祭に出ようぜ!」みたいなノリから始まったバンドで、高校時代からライブハウスに出だしたんです。平たく言うと、“仲良し5人組”みたいな(笑)。

――なるほど(笑)。その5人でどういう音楽をやろうと思ったのでしょうか。

中:僕自身は、バンドというものの認識も曖昧だったんです。そういうときに今来に誘われたので、どんなバンドをやるかも決まっていないところから始まりました。

今来:最初は好きなバンドのコピーをやっていたんですけど、高校になってライブハウスに出だしてから、全部オリジナル曲で統一しようと思ったんです。それでいろんな曲を作って行く中で、インド音階っぽいサウンドを使った曲ができたんです。それを聴いたライブハウスの店長が「それめっちゃいいやん。そういうのを押し出していけば?」って言ってくれて。それをきっかけに、民族音楽、トライバル、サイケデリックな方向に進むようになっていきました。


▲今来淳平(Gt)

――民族音楽が好きだったわけじゃなくて、そういう曲が偶発的にできたんですか?

今来:偶発的にというのもあるんですけど、僕はもともとクラシックロックが好きで、エアロスミスの「テイスト・オブ・インディア」(『ナイン・ライヴズ』収録)や、レッド・ツェッペリンの「カシミール」(『フィジカル・グラフィティ』収録)が好きだったんです。今思えば、それが僕らが作る音楽に出ているのかなって思います。

――作曲担当の今来さんのルーツがバンドに色濃く出ているわけですね。ちなみに、コピーをしていたときにはどんな曲を?

中:ポルノグラフィティの曲をやっていました。

新垣洸二(以下、新垣):ラテン系のリズムの曲とかですね。全然違うようで、結構ルーツ的には近い感じで。

――たしかに、「サウダージ」なんかはもろにそうですもんね。洋楽とか、リアルタイムで聴いた色んな音楽が混ざったミクスチャー的なバンドなんですね。

今来:そうですね。それこそ中・高校生のときに一番流行っていたONE OK ROCKとかをめちゃくちゃ聴いていたり、そのあたりが全部ごちゃまぜになった結果ですね。

――民族音楽の要素を入れようという話になったときは、メンバー間ではどんな感じだったんですか?

中:もともと、「面白いことしようぜ」というところから始まっているバンドなので、単純に「あ、これを面白がってくれた人がいたんや」っていうのが自信になりましたし、全員が同じ方向を向くことができたので、迷いはなかったです。

――ボーカルの中さんは、ティンホイッスルも担当しているんですね。

中:ギターの今来が作曲している段階で、「こういう笛の音色をイントロに入れたい」というイメージがあって、探して買ってきたんです(笑)。

今来:いきなり僕が、「これ吹いて」みたいな感じで始めました(笑)。


▲中 拓史(Vo&Tin whistle)

――曲は、今来さんがある程度アレンジを考えてみんなに聴かせるんですか?

今来:そうです。だいたい全部のパートのイメージをデモで作って、こういう風に演奏して欲しいって言うことが多いです。

新垣:面白いアイディアを出してきてくれることが多いので、自分的にも発見もあるし成長もできるので、そこはすんなり受け入れてやっています。

――新垣さんはもともとどんな音楽が好きなんですか。

新垣:僕はACIDMANや9mm Parabellum Bulletとか、宇宙や自然なんかのスケールの大きな世界観を持ったバンドが好きです。そういうものに民族的なものが合わさって良いものができたらなと思っています。

――曲を聴くとそれぞれの楽器が主張している感じですよね。まとめるのは大変なのでは?

今来:かなり大変ですね(笑)。レコーディングのときに、音のかぶりとかをめちゃくちゃ気にして何回も作り直したりとか。ボーカルのメロディを邪魔しないように、でも民族感が出せる音階をキーボードで入れたりとか、そういうことに時間をかけて作っています。


▲新垣洸二(Ba)

――その結果、今回完成した新作が『MUTANTS』。全部書き下しの新曲ですか?

今来:ライブではまだやっていないんですけど、最後の「NAMELESS WARFARE」だけは、コロナで最初の自粛期間に作っていました。

中:ステイホームで、メンバー同士も会わない状況のときに、今来がDTMで全部打ち込みで作った曲なんです。それを今回は、バンドアレンジにして収録しました。

今来:地元の大阪豊中のバンドを集めて、ライブハウスの支援になるようなコンピ盤を作ったんですけど、そのときに入れたのが「NAMELESS WARFARE」なんです。『MUTANTS』自体も、そこを起点に作り始めました。

――この時期に世に出る作品はコロナ禍の影響から逃れられないですよね。まさに「NAMELESS WARFARE」はそれを強く感じます。

今来:そうですね。ここから始まってます。


――ライブもガンガンやりたいはずだったと思います。ステイホーム期間はみなさんどんな心境で過ごしていましたか?

今来:コロナ禍でライブが全部飛んだときに、手段として配信ライブだけは何回かやっていて。その配信ライブの雰囲気を掴むのにも時間がかかって。そんな中でバンドがズーンと沈んでいった時期もあったんです。

中:「これでいいのだろうか?」みたいなね。

今来:配信ライブをやっても開放できないようなところがあって。ただ、「楽しむことを忘れてたな」ということを話し合って再確認したときがあったんです。実際、配信ライブであろうがクオリティを気にせずに、自分たちが楽しむことを届けることが一番だということに気が付いたことがきっかけで、そこからは振り切ってできるようになりました。有観客ライブができるようになってからも、その振り切りが続いていて。コロナ禍以前よりも振り切ったライブができるようになったんです。

中:上手いことプラスに転ばせることができたなって思います。それこそ以前は、「ライブ、ライブ」って前のめりで一点集中になっていたと思うんですけど、ライブだけじゃないし、もともと自分たちは、イヤホンで自分の家で音楽を好きで聴いていたっていう根本を見つめ直して。単純に音楽をもっと愛しているということを、ライブでも、曲でも、自分の楽器でも表現しようという意識に変えられたんです。よくもわるくも前のめりになっていた部分がほぐれた気がしていますし、すごく意味のある2年間だったと思います。

新垣:今までライブで詰め詰めなスケジュールだったのが、いったん全部なくなっちゃって、映画を観たり、本を読んだりして、いろんなものをインプットする時間に充てられたかなと思います。

――それが今回の作品にも反映されている?

新垣:そうですね、いろいろ観てきたものが出ていると思います。

今来:たしかに、前までは「ライブがカッコイイのが命」みたいな雰囲気があったんですけど、すごく視野を広げることができました。

――「NAMELESS WARFARE」を起点にして、どんなミニアルバムにしようと話していましたか。

今来:マジで自由にやろうぜっていうコンセプトがありました。

中:今までは、「odd fiveとして処理するんやったらこうやろう」みたいなフィルターがあったんですけど、それも取っ払って、単純に面白いことを形にしようということが一貫してありました。それこそインプットした映画や昔の海外のハードロック映像とかをみんなで見たりして(笑)。上手く言葉で表現できないですけど、「こういうことやんな!?」っていう。

今来:シンプルでいいんだよなって。

中:変に凝りすぎることなく、そのまま出せばいいんじゃないかなって。自分たち的にも、今までのodd fiveから1つレベルアップした作品になった実感があります。

――以前までは、民族的なメロディ、サウンドにこだわり過ぎていた部分もあったのでしょうか。

中:以前は、odd fiveらしさは変わった音階とか、民族的な部分にあると捉えていて、そっちを前面に出していたんです。衣装やライブの作り方にもだいぶそれが強く出てました。でも、そういうことじゃなくて、俺ら5人がやっていることが、odd fiveなんだっていう変化はありました。

――特徴をことさら意識しなくても、自由にやることで自ずとodd fiveらしさは出ているという?

今来:そうですね。むしろ、バンド的な方向で言えばハードロック好きな部分を押し出すことができるようになりました。

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