【コラム】変幻自在のシンガー・Aimerが歌う「残響散歌」

初の劇場版が日本の歴代興行収入ランキング1位を記録した『鬼滅の刃』の新章となるテレビアニメ「遊郭編」が、絶賛放送中だ。

その主題歌としてリリースされたのがAimerが歌う「残響散歌」。配信されるやいなや初登場でBillboard JAPAN 総合ソング・チャートで首位に輝き、オリコン週間デジタルシングル（単曲）ランキングとストリーミングランキングではともに2週連続1位、Apple Musicにおける自身のトップソングにも早速躍り出るなど、大きな話題を呼んでいる。

◆ミュージックビデオ

デビューシングルからタッグを組んできた飛内将大が手掛けた「残響散歌」は、華やかなピアノとホーンに牽引されてAimerの力強いメロディが響く疾走チューン。爽快感はありつつも、その感触はアニメの舞台である遊郭を彷彿させるきらびやかな夜のイメージだ。明るい太陽ではなく、凛とした月の光と人工的な灯りに煌々と照らされて浮かび上がる「夜の街」。闇と背中合わせだからこそ漲るギラギラした生命力を、Aimerの歌声が見事に表現している。



中音域が映えるスモーキーな声質と豊かな表現力を持つAimerの歌声には、いつもどこか影や切なさが宿る。その独特の艶で、タイアップ楽曲としてさまざまな作品を彩ってきた。

中でも生死を懸けた戦いやサスペンス要素を含む重厚な世界観の作品が多いのは、彼女の歌声が擁する情報量が多いからだろう。包容力というべき深みで、痛みや焦燥感から、折れない力強さや反骨心、逆に弱さや儚さといった要素まで、あらゆる感情に寄り添うことができる。同時に、どんなサウンドにも不思議なほど溶け込めるのがAimerの歌の大きな魅力だ。

劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』第2章主題歌「I beg you」のような荘厳なシンフォニックアレンジ、ドラマ『あなたの番です』の第1章主題歌「STAND-ALONE」のような激しいロックアレンジ、AbemaTV 『白雪とオオカミくんには騙されない❤』主題歌の「コイワズライ」のような柔らかいアコースティックアレンジなど、まったく違う曲調でそれぞれ生き生きとした歌を響かせている。Aimer自身のブレない個性を貫いたまま、さまざまなタイアップ作品と作曲者のカラーを纏うことで進化を遂げてきた。

「残響散歌」のサウンドは、そんなAimerにまた新しい扉を開かせている。ホーンとユニゾンするメロディ、縦横無尽に暴れまわるピアノやドラムのフレーズとせめぎ合いながら駆け抜ける歌の躍動感。息をつく暇もなく畳みかけるサビ、盛り上がったところでブレイクを挟み、「残響」と低音ボイスで締める気持ちよさもたまらない。

また、これだけ洋風なアレンジに対し、aimerrythm名義で自身が手掛けた歌詞によって和のテイストでまとめ上げているのも新鮮だ。『鬼滅の刃』の世界観、特に「遊郭編」のメインキャラクター宇髄天元を思わせる「派手に」「譜面」などのフレーズを盛り込んでシンクロしつつ、日本語ならではの歌謡曲的グルーヴを持つAimerの歌が新しい。



1月12日にリリースされるシングル盤には、『鬼滅の刃 遊郭編』エンディングテーマとして放送中の「朝が来る」が合わせて収録される。「朝が来る」は、「残響散歌」から一転、劇中音楽を手掛ける梶浦由記が作詞作曲したドラマチックなバラード。梶浦由記とはこれまで何度もタッグを組んできたこともあり、相性の良さが引き出すAimerらしさを存分に堪能できる1曲だ。アニメが後半戦に入って物語が展開していくとともに、こちらも大きな話題を呼ぶことは間違いない。

話題作『鬼滅の刃』の世界から刺激を受け、違うアプローチの2曲が揃うことで、さらに広がっていくAimerの世界。変幻自在の歌姫の未来がますます楽しみだ。

文◎後藤寛子