【ライブレポート】藤井フミヤ、<十音楽団>が綴る舞台劇のような物語「大きなテーマは“人生”です」
藤井フミヤが2021年12月3日(金)、<藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021-2022 十音楽団 青いレーベル>の5公演目を開催した。その中野サンプラザ初日公演では、歌と演奏、物語性の高い演出によるフミヤ劇場で満員のオーディエンスを魅了した。
◆藤井フミヤ 画像
<十音楽団 (とおんがくだん)>とは、バンドに室内楽アンサンブルを加えた10人編成でひとつの物語を綴るような演出で曲目が披露されるコンサートだ。十音楽団でのツアーは2019年夏以来、今回が2年ぶり。メンバーは前回のツアーと同じく、ボーカルを務める藤井フミヤをフロントマンに、有賀啓雄(B)、田口慎二(G)、岸田勇気(Pf)、藤井珠緒(Per)、吉田翔平(Vn)、藤家泉子(Vn) 、清田桂子(Via) 、林田順平(Cello) 、かわ島崇文(Sax, flute)で構成されている。ベテランから若手まで、それぞれのフィールドで活躍するプレイヤーたちが一同に会した演奏も聴きどころだ。
果たして通常ライブとどう違うのか? どんなサウンドや演出が待ち構えているのか? 緊張交じりの期待感の中で幕を開けたコンサートは、こちらの想像を遥かに越えた舞台芸術的エンターテイメントだった。フミヤはボーカルのみならず、曲間で客席に語り掛けながら身振り手振りを合わせて物語を展開していく。つまり自らストーリーテラーとなり、そのモノローグが終わると歌と演奏が始まる構成となっていた。
その序盤はバラードナンバーが中心。フミヤの歌声は実に柔和で、大きな包容力を感じさせた。特に、“みんな地球の子さ”と歌われる「Mother's Touch」は<青いレーベル>と付けられた今回のコンサートのタイトルともリンクし、壮大なサウンドも相まって感動的な1曲となった。フミヤの歌声に寄り添うのは、ストリングスをサウンドの軸に据えたバンドアンサンブルだ。1つ1つの音がクリアで奥行きを感じさせるのは、卓越した演奏技術を持ったプレイヤーの集合体だからこそ。広いコンサートホールならではの空気感と粒立ちの良い楽器の音がフミヤのボーカルと絶妙に絡み合って届けられた。
オルゴールの音が流れ、アコースティックギターを弾きながら歌い出したのは代表曲のひとつ「TRUE LOVE」だ。伸びやかで優しい歌声が会場中に広がっていく。1番まではアコギとピアノだけ、間奏からストリングスが加わった構成もドラマティック。エレキギターとベース、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロといった弦楽がぶつかり合うことなく調和し、メロディの良さを際立たせたアレンジも秀逸だ。
そしてもちろん、特筆すべきはフミヤの歌の上手さが存分に感じられたこと。トライバルなリズムから始まった「青いメロディー」はベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章に、フミヤ自身がオリジナルの歌詞を付けたカバーだ。原曲がクラシックということもあり、この編成での演奏は実に生き生きと映えていたが、ピッチとリズムがこの上なく正確なボーカルが、楽曲をより表情豊かなものにしていたことこそ注目に値する。さらには、美しいピアノの調べから始まり夜空に舞い上がるような演奏で歌われた「Another Orion」など、このコンサートで演奏されることで、より魅力を引き出された曲も多いのではないだろうか。
コンサート終盤、チェッカーズの名曲「涙のリクエスト」が飛び出すと観客は総立ちになり、会場の雰囲気がダンスフロアへと一変した。ミディアムテンポのジャジーなベースアレンジが横ノリを誘発し、客席はハンドクラップで楽しんだり、サビではフミヤと一緒に右手人差し指をクルクルと回すフリをしたりと、ステージと客席の動きがシンクロする。そして、フミヤは華麗にステップを踏み、見事なターンをビシッと決めると客席からの拍手も一際激しいものに。なお、この日のセットリストには、チェッカーズのナンバーも数曲用意されていたが、意外に思える選曲も往年のファンを驚かせたようだ。
アンコールまで含めて約2時間半。中盤の「星に願いを」では絵本の中に誘われるようなファンタジックな演出があったかと思えば、「月の砂漠」では荒涼とした情景を聴く者に想像させるなど、ときに真摯に、ときにコミカルに、フミヤは全曲の物語を雄弁な語り口でストーリーテラーとして紡いだ。その物語の中でオープニングからエンディングまで、十音楽団が奏でる演奏に惹き付けられ、フミヤの大人の魅力たっぷりな艶っぽい歌声に酔いしれた。この特別なコンサートは、藤井フミヤというアーティストの持つ表現力と歌唱力の高さがあるからに他ならない。そして、タイトルである「青いレーベル」の意味、発せられたメッセージが余韻とともに胸の奥に残る素晴らしいステージだった。
ツアー<藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021-2022 十音楽団 青いレーベル>は2022年4月17日の福岡サンパレスまで続く。なお、2021年12月25日の兵庫・神戸国際会館 こくさいホール公演がWOWOWにて生中継されることが決定している。以下に、藤井フミヤから届いた同コンサートに関するコメントを以下にお届けしたい。
◆ ◆ ◆
──<CONCERT 十音楽団>のコンセプトについて
「一人芝居の物語と10人で奏でる音楽が融合した舞台劇のような不思議なコンサートです。」
──今回のツアーの手応えと見どころについて
「大きなテーマは“人生”です。観客一人ひとりの人生にリンクするような演出で、座ってじっくり聴いていただけます。十音楽団の奏でる最高級の生演奏とともに、ゆっくりと自分の人生を思い返しながら楽しんで欲しいと思います。」
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取材・文◎岡本貴之
撮影◎三浦憲治
■<生中継!藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021-2022 十音楽団>
放送局:[WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド] ※アーカイブ配信なし
収録日:2021年12月25日(土)
収録場所:兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
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