【インタビュー】Dが紡ぐアートの世界。最新作は“竜と人の物語”

■改めてDの世界観、その奥深さに触れてもらえるいい機会になった

──物語を生むきっかけとなった「花摘みの乙女～Rozova Dolina ～」。こちら、再録してみてどうでしたか？

ASAGI：Dの最新の音で収録したくて再録したんですが、サビのハーモニーもパワーアップさせて、生のタンバリンも入れました。タンバリン、入れたかったんですよね。

──ライブでタンバリンを叩いてるときのASAGIさんはすごく楽しそうですもんね？

ASAGI：この曲を演ってときはちょっと乙女の気持ちになって舞ってるんで（笑）。

HIROKI：曲自体はすごいプログレで、難易度の高い曲なんですけどね。ライブでやってきたからこその育った音が録れたと思います。

Ruiza：もともとは『7th Rose』に収録されていた曲だったんですけど、今回再録したら完全に『Zmei』に相応しい曲になってて。M.L.V.でやってたのもあって、驚くぐらいしっくりはまってます。ライブでこれをやるときはASAGIくん「早くこっち来い！」っていっつも思ってます。


──間奏でASAGIさんが花びらを撒きながら舞うシーンが待ち遠しい、と。

Ruiza：はい。だから、早くギターソロになんないかなっていつも思ってます。

HIROKI：俺も！　ASAGIさんがくると「キター」ってなる（笑）。

ASAGI：ハハハ（笑）！。

Ruiza：こっちも楽しくなるんですよ。独特な曲でも楽しめる。そこはDならではですよね。

Tsunehito：ライブでもよくやってる曲なので、体には十分馴染んでますし自然とレコーディングできました。10年前にレコーディングしたときは、この変拍子を体に入れるためにとにかく練習しましたね。


──そんなTsuneさんとは対照的に、HIDE-ZOUさんなんかは変拍子もすぐ体に馴染んで。

HIDE-ZOU：普段から変拍子みたいな人間なんで（一同笑）。

HIROKI：だから人と会話が噛み合わなかったりするんですよ。いきなり一人だけ３/4拍子になっちゃったりというのが結構あるんで(笑)。

HIDE-ZOU：それで「あれ、俺ずれてる？」と思ったらHIROKIさんがずれてたり。

ASAGI：じゃあ２人とも変拍子なのかな（笑）！？

HIDE-ZOU：というのは置いといて（笑）、僕も「花摘みの乙女～Rozova Dolina ～」の変拍子は体に入るまで時間がかかったし、レコーディングもかなり苦戦したんですね。それをライブでずっとやってきたことによって、今回再録したときはTsuneと同じように自然とできたんで。その間のDの歴史が込められた気もします。

──「Draco animus」はどんなテーマで書いた曲なんですか？

Tsunehito：ヴァンパイア・ストーリーの中でカーバンクルという女性が自分の役どころなので、それを主人公としてイメージを膨らませて書きました。

ASAGI：時間軸的には、カーバンクルが主役の「Dragon Princess」という曲と「微熱～雨の幻想曲（ファンタジア）～」という曲がまず先にあって。そこではカーバンクルが乗ってる飛竜がカーバンクルを庇って毒矢を受け、瀕死の状態になるところを描いてるんですね。その瀕死の状態になった飛竜を救うために、古の竜王・Zmeiに助けを求めに行くというシーンが「Draco animus」なんです。そこでZmeiに助けを求めるために竜窟に向かうんですけど、近づくたびにカーバンクルの血の記憶が蘇ってきて。そのカーバンクルも実は竜の血をひいていたというのが明らかになるんです。


──おぉー。それが明らかになることによって、さらにストーリーに深みがでてきますね。「Venom immunity」はどういう位置付けの曲なんですか？

ASAGI：これはタイトルが先に決まって。こういうタイトルの曲があったら物語も進むなと思ったんですよね。ここではカーバンクルがZmeiの助けを求めに行ったあと飛竜は毒耐性を身に付けて進化し、新種の竜として蘇るところを描いてます。

──新曲のなかでもこの曲はすごく現代の匂いが強いですよね。デジタルっぽさもあって。

ASAGI：そうです。今回はアルバムのなかでヴァンパイアストーリーに関わる曲は未来を描いてるんで、こういうサウンドになりました。

──「Lamb’s REM sleep」はどんなテーマで書いた楽曲ですか？

Tsunehito：「Venom immunity」で飛竜が毒耐性を身に付けてパワーアップするなら、治癒をするような曲があったら面白いんじゃないかなというところから思い付いて。治癒で快方に向かっていっていく＝希望があって光が射す感じ、温かい感じを意識してデモを作っていきましたね。


──そして、アルバムのリード曲となった「Zmei～不滅竜～」は？ 新曲のなかでも重厚感あるヘヴィな楽曲で、その上で民族テイストを押し出した曲になっていました。

ASAGI：この曲は始まりの物語を書いていて。紀元前トラキアの時代を舞台にしていますね。いかにして竜王が人間、自然を愛する乙女を愛することになったのか。その始まりとなる物語を描いてます。なので、Dを既に知っている人は物語の起源を知ることができますし、Dをまだ知らない人もこの曲を入り口に出来るんじゃないかな？とも思いますね。ブルガリアの民族音楽のの“ブルガリアンヴォイス”を意識したり。歌詞にあるキリル文字もブルガリア語ですし。あと、アルバムは変拍子曲が多いですけど、ブルガリアの民族音楽を語る上で、奇数の変拍子というのも欠かせないんですよ。

──え！　だから今作は変拍子が多く取り入れられてるんですか？

ASAGI：そうです。その変拍子の取り入れ方も自然にしたかった。意味のあるものにしたかったんですよ。なので、物語の世界観を表現する上での変拍子になっています。

──こうして今作のように過去曲と最新曲を並べても違和感を感じないのは、音楽とともに物語性を武器にしているDならではの強みだなと改めて思いました。

ASAGI：だからM.L.V.をやってみて、自分たちもそうですけどファンの方々も改めてDの世界観、その奥深さに触れてもらえるいい機会になったと思いますし。『愚かしい竜の夢』から新たに今回新曲を作って、フルアルバム『Zmei』にしてみても、Dの曲は本当に色褪せないなと思いました。なので、自信を持って届けられる作品に仕上がったと思ってます。

──アルバムリリース後の活動予定は？　そろそろ有観客のライブも。

ASAGI：もちろんやりたいんです。だから常に考えてはいるんですけど、自分たちが納得できるタイミングは必ずやってくると思うのでその時まで待っていてほしいです。

取材・文◎東條祥恵



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