【インタビュー】ハナフサマユ、アルバム『Blue×Yellow』とイメージ一新の相対性「前進につながる挑戦を」
■ブルベとイエベというパーソナルカラー
■でも、自分の好きな色を着てもいいよね
──素敵ですね。アルバム『Blue×Yellow』がリリースされたわけですが。まず1曲目の「Blue×Yellow」から派手な音がドンとくるので、めちゃくちゃびっくりしました。弾き語りから活動を始めたと思えないぐらいのアレンジで。
ハナフサ:そうですよね(笑)。『ゲド戦記』の音楽を担当されている寺嶋民哉先生にアレンジしていただいたんです。自分の弾き語り音源をお送りしたんですけど、ここまで重厚感のあるサウンドアレンジが返ってくるとは思ってなくて。弦カルテッドも豪華だし、今までの私の曲の中になかった音なので、“すごい!”って私自身びっくりしました(笑)。たとえば、作曲しながらギターを弾いていたら、ドラムとかベースの音がうしろに聴こえてくるっていう方もいらっしゃるんですけど、私はあんまりそれがなくて。
──1曲目は派手なアレンジにしたいっていうイメージが最初からあったんですか?
ハナフサ:なんとなく、この曲は弾き語りよりももっともっと壮大な曲になればいいなっていうイメージがあったんです。その想像をさらに超えたアレンジではありましたけど(笑)。アレンジが返ってくる時が1番ワクワクするんですよね。自分の曲がブラッシュアップされて、いろんなプロの方の力が加わって1つの曲が出来上がっていく瞬間はすごく幸せで。
──今回のアルバムでは、ほかにも「Dm. 1460」でヴァイオリンのメロディが入ってたり、「LIAR」が疾走感のあるロックテイストになっていたり、「ユメミラ」でアコギとピアノと優しい感じだったり、すごくいろいろなアレンジが入っている印象だったんですけど。どんどんいろんなアレンジをやっていこうという気持ちで?
ハナフサ:そうですね。このアルバムのタイトル自体、“ブルーベース” “イエローベース”っていう、女性の間で今流行ってる……。
──ブルベ、イエベってやつですね(笑)。自分のパーソナルカラーがわかると似合う色がわかって、コスメ選びが楽になるという。
ハナフサ:そうですそうです。自分が生まれ持った肌がどっちの色というのを診断して、似合う服を選ぶとか。そこから取ってるんですよ。それに縛られるのもいいかもしれないけど、やっぱり自分の好きな色を着てもいいですよね。私自身イメチェンしたので、「私、この色似合うんやん!」みたいなのがあったんですね。挑戦してみることで見え方が変わる瞬間がきっとあって。ブルーとイエローは相対的な色なんですけど、そういう意味で“どっちもいいよね”っていう気持ちを込めました。だから、収録10曲は視点もさまざまで色合いも違っていて。“今日はこういう気分だから、この曲を聴きたいな”っていうふうに選んでもらえる1枚にしたいと思ったんです。結果、アレンジにも幅が出たんじゃないかなと思います。
──曲として、着こなしを変えるみたいな感じでしょうか。派手な色を着たい時もあれば、ナチュラルにしたい時もあるという。ご自身のイメチェンもやっぱり影響してるんですね。
ハナフサ:してますね。これまでパンツスタイルを着ることが全然なかったんですけど、今の衣装はほとんどパンツになったので、最初は“ええ、大丈夫かな!?”って思っていたんですよ(笑)。でも、意外と評判が良かったりして、“似合うのかもしれない”っていうことがひとつわかると、“じゃあ、こういうのもいけるかな?”って、新たに挑戦したくなる。そういう気持ちは、今まで出てこなかったんですよね、“自分はこれがいい”って決めつけちゃってたから。新しい気づきを得ることができたのって、やっぱり挑戦の結果なのかなって思いました。
──アルバムが出来上がってみて、思っていたとおり、さまざまな色の楽曲を揃えることができたっていう実感はあります?
ハナフサ:すごくあります。始まりから度肝抜かれる感じもあるんですけど、3曲目の「恋」は優しめの声だったり、9曲目の「ユメミラ」では歌い方をマイルドにしようって挑戦したり。私、歌詞を届けたいという想いが強いので、“とにかく歌詞を歌詞を”と思いながら歌っちゃいがちだったんです。「ユメミラ」はもっとラフに歌ってみようって。ゆらゆらっと踊りながらゆるく歌ったんですけど、それは初めての感じですね。
──ハナフサさんの弾き語り状態の原曲から、アレンジが出来上がって歌い方を変えることもあります?
ハナフサ:そうです。サウンドが出来上がって、“もうちょっとこうしたほうがフレーズがハマる”みたいなイメージが見えてきたので。だから、曲によっていろいろ歌い方を変えるように努力しましたね。
──それこそ1曲目の「Blue×Yellow」と「ユメミラ」って全然声が違いますもんね。
ハナフサ:全然違いますね(笑)。
──「Blue×Yellow」は、アレンジに負けない強さがある。
ハナフサ:「Blue×Yellow」はまさに強さを表現したかったので、ドスの効いた声というか、下のほうの太い声を出すようにしました。曲によっては、ちょっと甘い声にしたくてそうしたり、逆に「Rainy Rainy」は、ちょっと雑にというか吐き捨てるように歌いたかったのでそうしたり。まだまだ勉強しなきゃいけないことはあるんですけど、今の自分が出来る範囲で、頑張って変化をつけようと思ってこだわりました。
──先ほど「アルバムのテーマは“前進”」とおっしゃってましたが、そういうトータルテーマを意識して歌詞を書かれたんですか?
ハナフサ:そうですね。たとえば「Rainy Rainy」は、裏切られる恋愛を書いてるんですけど、それでも悲しみは流して前を向こうね、みたいな思いを込めてたり。ラブソングだったとしても、前に進むっていうことを意識しているところがあります。ただ、前進といってもいろいろな進み方があると思うんですよ。それこそ立ち止まっても、振り返ってもいい。最後にほんのちょっとでも前を向けるきっかけを、1つ1つの曲に忍ばせて届けたいなと考えながら歌詞を書きました。
──確かに“前進”とはいえ、先の希望ばかりが書かれてるわけではなくて。「今を」や「愛がなんだ」といった楽曲ではネガティヴなこともしっかり歌詞にしている印象です。
ハナフサ:私、基本ポジティヴじゃないし、ネガティヴに陥るとなかなか抜け出せない経験が昔あったので、そういう根暗なところが出てるんだと思います(笑)。ポジティヴな言葉を使うことで、そっちの方向に引き寄せられたいと意識しているところがあるんです。だから、ネガティヴな感情がありつつ、それでも一緒に前を向きたいよね、みたいな歌のほうが多いかもしれないですね。
──人の背中をちゃんと押しつつも、自分で自分を引っ張り上げようとしている感じが伝わってきます。思ったことをノートに書いて、それを曲にすることから音楽活動が始まったということですし、今も歌詞にすることで自分の気持ちを再確認するみたいなところもありますか?
ハナフサ:誰かのために歌いたいんですけど、どこかしらで、この曲たちから貰う自分へのメッセージみたいなものはあると思います。誰かのために書きたいと思うようになってからは、曲の主人公が自分じゃないことも多いので、そんなに偏ることがなくなったんです。でも、何も考えずに歌詞を書いたら、今ちょっと病んでるなとか、ハッピーだな、みたいに自分が見えてくる瞬間がすごくあります。
──「今を」はご自身の気持ちが描かれているのかなと感じましたけど。
ハナフサ:そうですね。この曲は、アルバム収録曲の中ではけっこう昔に書いたもので。その時は、それこそ自分の人生を歌っていたんです。でも今、このコロナ禍で命について考えたり、生きたくても生きられない人がいることをわかったうえで、この曲を歌うようになってからは、すごく……。「今を」にはいろんなメッセージがあるんだなって再確認させられたというか。自分のための曲だったはずなんですけど、今はちょっと考え方が変わってきた曲でもあります。
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