【インタビュー】湯木慧、プロジェクトTANEtoNEから開けていく創作活動「判断基準は、楽しいかどうか」
■きっと思っていたはずなのに誰も言わないんですよ。
■だったら、本当はどう生きたいのか、問題提起する楽曲になればと
──実際に曲を作るにあたってはいかがでしたか?
湯木慧:絶対に作れると思っていたのに、実際はとても苦労しました。これまで、舞台の曲を書く時は誰かの役になりきったりして書き下ろしていたんですが、今回は出てくる人みんなに感情移入してしまい、それぞれの気持ちとか言葉がどんどん出てきて、入れ込みたいことが多すぎて溢れてしまったから。実際に行って感じた秋田の風とか、話を聞いた役場の人たちの気持ちも入れたいって思うと、情報が豊富すぎたんですよね。
──そこからはどんな風に整えていったんですか?
湯木慧:見終わった人が、余韻に浸るというより、そこから何か考えちゃうみたいなところに着地させるための、繋ぎ目の役割になるような曲を作ろうと思いました。
──というと?
湯木慧:簡単な言葉になってしまうんですが、本当に素敵な映画なんですよ。とても。ただみんないい人というか、心の底で何か思っていることがあってもはっきりとは言わないんです。たからこそいいんですけどね、考える部分が多いから。それで私は、楽曲の中でわかりやすく悪者を出したいって思いました。Bメロに「変わらないよ運命は」って歌詞があるんですが、きっと思っていたはずなのに誰も言わないんですよ。だったら、本当はどう生きたいのか、「変わらないよ運命は」って言われてどう思うのか、問題提起する楽曲になればと思ったんです。映画を見て、その曲を聴いて、そういうことを言われて、のちにどう思うのか。その繋ぎみたいな部分を楽曲で作っていきました。
──楽曲について、監督と何か話をした部分もあったんですか?
湯木慧:本当にシンプルで、という感じの依頼だったんですよ。あれやこれや新しいことにチャレンジする創作というよりは、湯木慧の素の部分、原液みたいな部分が欲しいって言われていると解釈したので、基盤を基盤のまま渡すくらいの感じでした。
──ギターではなくピアノの弾き語りになっているのも、その考え方からだったんですか?
湯木慧:そうですね。秋田にはギターを持っていったんですが、田んぼの中でギターを弾いていたら、コードとかは決められたけど音が軽いなと思ってしっくりこなかったんです。それでピアノだなと思ったのが一つ。もう一つは、曲の重みの話だったか、声とピアノだけみたいなアレンジ面の話だったか、その両方だったかはちょっと忘れてしまったんですが、監督が「狭間」くらいのものをっていう話をしてくださったんです。
──「狭間」は去年の夏にリリースされた湯木さんのEP『スモーク』に収録されている楽曲で、とても苦しい状況の中で作ったというピアノと歌だけの曲ですね。
湯木慧:構成とか重みに関してはそうやって具体的に既存曲を提示しながら話してくださったんですが、書く内容や歌詞、コード感やキーの高さなどは自由にやらせてもらいました。
──すでに公開されていますが、MVも秋田で撮影されているんですね。
湯木慧:あれは、成田監督が直々に作ってくださったんです。構成も、こういう感じはどうですかって提案してくださって、ほぼそのままでやらせていただきました。
──映像でも非常に美しく表現されていましたが、歌詞にある「絡まったまま解けなくなってた」という状況や心境は、まさに自分のことだと思い当たる人も多いのではないかと思います。
湯木慧:私は欲張りなので(笑)、映画のエンディングで聴くものとしてはもちろん、楽曲だけ聴いても形になるものにしたいし、誰が聴いても形になるものにしたいと思っていて。だから難しかったんでしょうね。あれも込めたいし、これも込めたい。繋ぎの役割もしたいし、曲だけ聴かれてもいいようにしたいし、老若男女に届けている映画だと思うからこそ曲もそういうものにしたいしとか思っていたから。欲張りなのに、今思うと考えすぎて逆にすごく視野が狭くなっていたんだろうなって思いました。
──湯木慧さんはもともと、前作のテーマがこうだったから今回はこうなっているという関連性を持たせたり、散りばめた伏線を回収して作品に落とし込むと言った流れを大事にしながら創作活動をされてきましたよね。その点、今回はどんな展開になっていくのかも気になります。
湯木慧:これまではずっとそういう繋がりみたいなものを大事に作っていたんですが、TANEtoNE RECORDSから出したもの──「拍手喝采」と「心解く」に関しては、その時その時のものを大事にしました。「TANEtoNE」のコンセプトである命とか脈とかから外れていなければ、楽しいと思うもの、作りたいと思うものを作りたい時に作って出せばいいかなって思うようになったから。
──大きく見れば、全てが「TANEtoNE」という繋がりの中で生まれているわけですしね。12月11日からはまた個展も開かれるということで、こちらも楽しみです。
湯木慧:2019年に<HAKOBUne-2019->という個展を行ったんですが、今回はその第2弾になります。2019年の時に展示していた一番大きな絵がのちの「スモーク」という作品に繋がっていったように、今回も何か、この先の活動のヒントだったり、イメージしてもらえるようなものになっていたりします。いろんな隠し要素があって、何かしら音楽に関する伏線も貼っていこうと思っているし、ずっと発表したかったものもこの個展から始まるので楽しみにしていて欲しいです。
──わかりました。では最後に、何か伝えたいことがありましたら。
湯木慧:やりたいことは、今も昔も変わらず頭の中にたくさんあるんです。でも正直に言ってしまうと、最初の頃は、やりたいと思うことがあって、本当にやれると思っていたから「こういうことをやりたいと思います、ついてきてね!」って言えていたんですが、やっていくうちに、何かしらの足かせやダメですっていうルールみたいなものがあったりして、だんだん諦めてきちゃったんですよ。やりたいことは溢れてるのにこれはやれない、これも出来ないじゃん…って思うようになって。お客さんにずっと「待っててね」って言ってたけど、本当に出来るかどうかわからないのにそう言ってしまってた期間があったんですよね。コロナっていうのも言い訳には出来るけど、そういう自分の問題で待たせてしまってる部分もあったと思うんです。
──なるほど。
湯木慧:でも今は、ウズウズしてるんですよ(笑)。やりたいと思うことがやれる環境になったから「本当に楽しみにしていてください!」ってことをちゃんと伝えたいし、個展もそうだけど、すでに準備を始めているものもあるからみんな待ってて欲しいなってめちゃめちゃ思っているので。その時が早く来るようにって今は待つしかないけど、本気でウズウズしてる。そういう今の素直な感情を伝えておきたいです(笑)。
取材・文◎山田邦子
Digital Single「心解く」
配信品番:LDTN-0003
スペシャルCDパッケージ品番:TDTN-1001
■通販サイト限定で〈心解く制作ブックレット付きCD〉販売中
https://ldandkshop.com/view/category/yukiakira
■”湯木慧" 配信作品
https://orcd.co/yukiakira
<HAKOBUne個展-2021->
会場:「澁谷藝術」*東急百貨店渋谷本店2階
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