【インタビュー】MUCC、新体制による初音源完成「行き着いたのは“自分とどう向き合うか?”」
■新体制一発目で出したいサウンド
■すごく気合が入って制作に臨んだ
──そういう意味では、逆にコロナ禍だから、観たい人全員が観ることのできるライヴが出来たと言い換えることもできそうですね。では、SATOちさんを送り出すライヴを終えて、3人体制での両A面シングル『GONER/WORLD』が11月5日にリリースされます。「GONER」はMUCCの真骨頂ともいえるダークなラウドナンバーですが、いつ頃生まれた曲なんでしょうか?
ミヤ:当初は、5月にラストライヴが終わって、そこから11月まで間を開けて、それからリリースしようというスケジュールが決まっていたんです。だから、春ぐらいにはもう作っていましたね。旧体制と新体制が制作上、同時進行してしまうのはしょうがないことだったので。ただ、リリースタイミングだけはライヴから間を開けたかったんですけど、まぁ、コロナがそうさせてくれなかったというか。
──5月開催予定だったライヴが、結局10月にまでずれ込んだわけですからね。
ミヤ:そのぶん、向き合えたこともいろいろあって。結果、この形で良かったなっていう。うちらもお客さんも、事実を受け止める時間があったので。
──元々はどんなイメージから生み出された曲だったんですか?
ミヤ:“どうにもならなくなってきたな”という現状の世界の感じとか。コロナ禍の最初の頃って、“今はこういう感じだけど、ゆくゆくはよくなっていくだろうな”という気分が少しあったと思うんです。だけど今、ここまでくると最早“この世界がずっと続いていくんじゃないかな?”とも思うようになって。それに対して真面目に考えてもしょうがないから、それよりも“何を一番にしたらいいか?”と考えると、“自分とどう向き合うか?”というところに行き着くんですよね。そういった時に思いつくことは、やっぱりこの現状も曲にするということ。あとは、どう楽しむか。
▲ミヤ(G)
──なるほど、「どう楽しむか」ですか。
ミヤ:もちろん、怒りとか負の感情もいっぱいあるし、それもひっくるめて表現してきたバンドだと思っているので、“今、それが表現できなかったらバンドをやる資格ねぇな”とも思っていたんです。そういう心境の中から生まれた、そのまんまの曲です。だから、ラウドだし、暗いのでネガティヴな曲に聴こえるかもしれないけど、なんか小馬鹿にしてるというか。サビの感じとかにはそういう雰囲気もありますね。
──ちょっと俯瞰で見るというか、直接的な怒りとか反発というよりは、この状況とどう向き合っていこうかな、というスタンスに変わってきているという感じですかね?
ミヤ:そうですね。この世界に生きている以上、そうするしかないという感じかな。コロナは人には感染しますけど、別に音には感染しないから、音で何かできればなって感じですね。
──逹瑯さんは「GONER」に関して、歌う上でどういうことを心掛けましたか?
逹瑯:「GONER」に限らずどの曲もそうなんですけど、レコーディングではリーダーと、「もっとこういうニュアンスがいい」とか「もっとこういうふうに聴こえさせたい」とか、曲のイメージをやり取りしながら歌を録っていくので、個人的に“これはこういうふうに持っていこうかな”とかを考える感じでもないんですよね、毎回。ただ、この曲の場合、どういう感情の込め方をするかというよりも、“感情を抜いていった”ようなイメージがあります。ドライというか。感情を乗せていくと歌の感じがどんどんウェットになって、しつこくなるから。それよりは抜いて、聴覚的に楽しめるような歌にしたほうがヘヴィになり過ぎなくていいんじゃないかなって。
──先ほどリーダーがお話されたようなコロナ禍の状況に対する認識は、メンバー全員共通したものですか?
逹瑯:俺は最初から若干違っていて。コロナが始まって半年とか1年とか続いた時に、「今後1〜2年は覚悟しなきゃだな~」ってみんなは言ってたけど、“もしかしたら1年、2年、3年じゃなくて、元に戻らない可能性も十分にあるじゃん”と俺は思ってたので。今も、そもそも同じ状況になんて戻らないかもしれないと思えるしね。たとえば、ライヴハウスでもフェスでも、初めて足を踏み入れてから3年も経つと、もう結構、その場の楽しみ方を熟知した感じになるじゃないですか。つまり、今この状況になってから、初めてライヴとかに観客デビューした人にとっては、コロナから2~3年経ったら“今の形がスタンダード”になる。そういう人たちが現在もどんどん増えているわけで。
──確かにそうですね。
逹瑯:そうすると、このニュースタンダードとオールドスタンダードの戦いが起きるわけじゃないですか? “どっちがいいか?”という話になれば、どっちも正しいしどっちも間違いじゃない。俺は最初から“ここからどう折り合いを付けていくんだろうか。分からんな”という感じだったので。だから、そのへんの認識は、たぶん一人ひとりに聞けばちょっとずつズレてくると思うんですよ。そんな中で、“現状は変わらない。そうだとして、今ある目の前の現状をどう歌って曲にして、表現していくか?”みたいな感じかな。本来は「GONER」みたいな曲では、ライヴハウスでグッチャグチャになりたいですけどね。それが叶うのか叶わないのか、神のみぞ知る、というところじゃないですかね。
──YUKKEさんは、コロナの状況に対する認識はどんな感じですか?
YUKKE:みんなそうですけど、やっぱり初めてのことじゃないですか。バンド的にも去年ぐらいからライヴが思うようにできなくなって、結局できなくなったままのライヴもある。そこから最初は配信ライヴに挑戦して、その後もいろいろと形態を変えてやってきて。今(※10月初旬)はちょっと状況が好転している感じはありますけど、これから先、まだどうなるか分からない。やっぱり両方できるのが強いなと思います。もちろん一番好きなのは生のライヴで、あのライヴハウスのゴチャーッとした感じを思い出すことはたびたびありますし、それを想像しながらレコーディングしちゃったりもするんですよ。
──バンドとしてはそうですよね。
YUKKE:そんな中で、配信での新しい見せ方とか、エンタメのコンテンツとかは、いろいろなことが進歩や進化していると思うんです。だから、“こういうことができるようになった”という手法を知って吸収して、ファンと楽しめるような面白いことをいち早くやっていきたいな、という気持ちもありますね。一昨年とか去年からMUCCを知ってくれた人たちの中には、まだ配信ライヴでしかMUCCを観たことない人がたくさんいる気がしてて。そういう子は、もしかしたらライヴ会場に行くことを家の人から許してもらえないとか、家庭の事情もあるかのもしれない。そういう状況だったら配信で楽しんでもらうのももちろん正解ですよね。でも、いつかは両方だったり、好きなほうで楽しめるようになると思っているので。これから先、この状況が一生続くかどうか分からないけど、続かないことを祈っていますし、その準備もしながら活動していたいなとは思っています。
──では、ベーシストとして、「GONER」のアプローチはどんなことを心掛けましたか?
YUKKE:最初にデモ音源を聴いた時から、表現したいタイプの曲というか、新体制一発目で出したいサウンドのイメージにピッタリだったので。意気込んだというか、すごく気合が入って制作に臨んだことは覚えていますね。
──リズム隊として、これまでと違うドラマーとやるということに対しては?
YUKKE:やっぱり、パートナーとなるドラマーが変わっての初レコーディングだったことも大きいですよ。これから音を一緒に出していくことになる仲間なんですけど、そんなに一緒に音を合わせた経験もなかったから。これまでの20何年間、自分がいろいろと培ってきたものとか学んだものを注ぎ込もう!という気合いが、今までよりも大きかったですね。つまり一緒に音を出すメンバーが変わるから、俺も頑張ろうって。後ろから背中をドン!と蹴られるような、前向きな気持ちもあったし。
──SATOちさんと共に作り上げてきたMUCCとしての形を守っていくという気合いでしょうか? それとも刷新していくぞという意気込みですか?
YUKKE:もちろん、アップデートするという気持ちもありますよね。自分が知っていることもあれば知らないこともあると思うので、“一緒にやっていこう”っていう気持ちで。だから……“サポートのサポート”みたいな? サポートドラマーをサポートするみたいな? よく分かんないけど(笑)。そういうのは自分がやっていこう、と思っています。
──YUKKEさんの役目が増えますね。
YUKKE:でも、ずっとやってきたSATOちのお世話役が終わったから(笑)。
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