【ライヴレポート】DEZERT、約2年ぶり全国ツアーの追加公演で「生きてるうちにいろいろやっちゃおう」
最新音源『RAINBOW』を提げて約2年ぶりの全国ツアーで各地を廻ったDEZERTが10月16日、恵比寿LIQUIDROOMにて<DEZERT LIVE TOUR 2021 / RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-【追加公演】>を開催した。チケットは即ソールドアウト、熱量の高いステージが繰り広げられた。忘れられない一夜となったLIQUIDROOM公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆DEZERT 画像
カメレオンというのは、基本的に生き餌しか食べない生物であるらしい。また、カメレオンと言えば狩りの際や興奮状態の時に体色を変化させることでも有名だが、両方の眼をそれぞれ別に動かすことで獲物を立体視できる特性を持つことから、かつてのヨーロッパでは賢者の象徴として認識されていたという説もある。
「生きてるか、東京!」──千秋
今年7月に7曲入りの新音源『RAINBOW』を発表し、その後は8月29日の名古屋ボトムラインまで続いた約2年ぶりの全国ツアーで各地を廻ったDEZERTが、言わばその東京凱旋公演として、このたび10月16日に恵比寿・LIQUIDROOMで開催したのが<DEZERT LIVE TOUR 2021 RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-【追加公演】>だ。そして今宵、ステージに上がった途端、まずは曲を演奏しだす前段階で、フロントマン・千秋が観客に向けて放った問いかけがこの一言だったのである。
もちろん、誰であろうと肉体が死んでいればライヴの場に馳せ参じることはかなわないわけで、千秋の発したこの言葉はごく当たり前なもののようにも感じるが、一方で人間は時にメンタルの不調から“死んだように生きている”状態に陥ってしまうケースもないわけではない。今このタイミングで、オーディエンスに対して投げ掛けられた千秋からの率直な言葉は、単なる挨拶以上の意味を持っていたように思えてならない。
かくして、この夜のDEZERTはこのバンドが初期から一貫して死生観について描いてきたことを証明する「「絶蘭」」でライヴの口火を切り、2019年にリリースされたアルバム『black hole』の中でも特にバンドサウンドのグルーヴィーさが存分に活かされているエモみ満載な「Thirsty?」、今回のツアータイトルとも少なからずの関連性を持つ最新音源『RAINBOW』収録のアッパーチューン「カメレオン」、Miyako(G)・Sacchan(B)・SORA(Dr)がイントロ部分でそれぞれのプチソロと粋なプチセッションを繰り広げてみせたあとに千秋(Vo)が毒気と茶目っ気の共存するヴォーカリゼイションで魅了した「殺されちゃう」と、いきなり冒頭4曲の段階で既に各メンバーがフルスロットルなモードに達していることがわかるハイテンションな空気感を醸し出すことに。
しかし、よくよく考えれば今回の追加公演は、ツアーファイナルからは約1ヶ月半の時間が経過して行われたわけで、実質的には単発ライヴにも等しいものだったことになる。にも関わらず、彼らがこれだけバンドとしての熱量をしょっぱなから音に込めることが出来ていたというのは、とても一朝一夕で成しえることではなかったのではなかろうか。ここ3~4年の彼らが基礎の基礎からやり直すような姿勢でライヴバンドとしての手腕を着実かつ丹念に磨いてきたことを思うと、まさにその成果がこの夜のパフォーマンスに色濃く滲んでいたのではないかと思うのだ。
音像としては限りなくザラついたグランジロックテイストが強い「神経と重力」、Miyakoの紡ぐフォーキーな優しい手触りのギターサウンドの中に一匙の狂気が見え隠れする「あなたのそばにいる」、Sacchanの弾いたリリカルな鍵盤フレーズを筆頭に繊細かつ奥深い響きがその場に拡がった「天使の前頭葉」、SORAによる的確なシンコペと千秋がサビで氾濫させた叙情的な旋律がある意味での懐かしさを生み出していた「MONSTER」など、本編中盤ではDEZERTの“バンドとしての懐の深さ”を感じさせる楽曲たちがあれこれと並んでいた印象も強いが、いよいよ佳境に入ってきた場面でここぞと投下されたのは「デザートの楽しいマーチ」だった。
「今からこのツアーで一番成長した曲をやりますよ。まださ、俺たちと君との間には距離があるけど心配は要らない。ちゃんとこの状況を克服した後は、またオールスタンディングでぐっちゃぐちゃになってやれる時が来た時にもまたこの曲やるからさ。その時はおまえら、しっかり突っ込んで来てね!!」──千秋
ツアー開始当初は音源通りの歌詞をそのまま歌っていた千秋が、随所で今その瞬間の気持ちを言葉にしてぶつけていくラディカルなスタンスは実に痛快で、たとえば“だからこうやってロックバンドなんかを最愛のバカ達とここ恵比寿で今日もやってるんです”というくだりに対しては、声は出せないながらもフロアにいる観客たちがいっそう沸き立っていたことは明らかだった。
「まだ生きてるか? 今回のツアーは最初のほうはなかなかうまくいかなかったけど、途中からけっこう楽しくなってきて、メンバーともちょっと良い感じに仲良くなれました(笑)。(中略)コロちゃん(コロナ)が猛威を振るうようになって約1年半、俺たちもみんなもいろいろあったよな。夏に『RAINBOW』出した後は昔のほうが良かったとか、今のほうが良いとかいろんな意見もあったし、今回のツアーで俺は、みんなに伝えたいことをどうやって伝えたら良いんだろうとか、俺はなんで歌ってるんだろうって考えてた。そして、ひとつ答えが出たんだよ。俺は、おまえたちに歌ってはいない。俺は“おまえ”に向かって歌ってる。ひとりひとりの“君”に歌ってる。そう思った時に、俺は心が晴れたし、“これからも頑張ろう”と思えた。もっと良い景色が見たいって、めちゃくちゃ普通のバンドマンが言うようなことを自分もシンプルに願うようになりました。“もっと君たちと良い景色が見たい”って言ってみたかったんだ(笑)」──千秋
V系シーン切っての天の邪鬼である千秋が、ここで吐露した素直にも程がある赤裸々な言葉たち。きっとこれは、DEZERTの未来に繋がって行くものになると確信する。
「生きてるうちに、いろいろやっちゃおう。曲もどんどん作るし、ライヴもいっぱいするから、まだコロナがどうなるかはわかんないけど大丈夫。俺たちは“君”をここで待ってるから。“カメレオンは空を見上げて笑えるか?”ってさ、笑えるかどうかなんてわかんないけど、とりあえず先に進んでみましょう! もう曲調がどうとか、そんなことはどうでもいい。俺たちが生きている限りDEZERTです。よろしくお願いします!!!」──千秋
夏から続いてきた今回のツアーを締めくくるために、この夜の本編ラストで歌われたのは、渾沌とした今の時代にこそ必要な尊い博愛の歌「ミザリィレインボウ」。“君と僕 誰かのために 架かる虹は色んな色だ その色を赦した心は きっと明日より綺麗な場所だろう”──曲の後半でこう歌い上げた時に、千秋は「…そう信じて!」という言葉をすかさず添えてみせた。
殺伐とした歌やグロテスクな歌もこれまでにさんざん歌ってきたDEZERTが、今もって悪意や憎悪を曲として生々しく具現化させることがある一方、希望や生きることの意味をここまで潔く高らかに表現出来るようになった、今。彼らはそれこそカメレオンのごとく、この世で起きているリアルタイムな事象を生き餌として貪欲に喰らいながら、彼らならではの独自な視点を持ちつつ、これからもその時々で変幻自在に色を変え、DEZERTだけが描き出せる素晴らしき世界をわたしたちへと届けてくれるに違いない。そう。カメレオンたちは、今いる場所よりもさらに美しい空の下で笑える日をいずれきっと迎えることになるはずだ。
なお、DEZERTのSORA(Dr)がマーヴェリックのオフィシャルニコニコチャンネルおよびオフィシャルYouTubeチャンネルにて配信する番組『DEZERT SORAの爆音 怒羅夢 純愛組!』の第2回目が10月29日(金)に放送されることが決定した。今回はNOCTURNAL BLOODLUSTのNatsu(Dr)をゲストに迎え、前回好評の声が多かったドラムバトルをはじめ、第2回放送にして初のロケ撮影を敢行する。マーヴェリック所属の2バンドのドラマーが向かった場所とは…? 今回も見逃せない番組内容となっているとのことだ。
取材・文◎杉江由紀
撮影◎西槇太一
■<DEZERT LIVE TOUR 2021 / RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-【追加公演】>10月16日(土)@恵比寿LIQUIDROOM セットリスト
02. Thirsty?
03. カメレオン
04. 殺されちゃう
05. Sister
06. 蝶々
07. ラプソディ・イン・マイ・ヘッド
08.「擬死」
09. 神経と重力
10. あなたのそばにいる
11. 天使の前頭葉
12. MONSTER
13. デザートの楽しいマーチ
14. Your Song
15. 脳みそが腐る
16.「君の子宮を触る」
17.「遺書。」
18. ミザリィレインボウ
encore
en1. 脳みそくん。
en2.「切断」
en3.「殺意」
■配信番組『DEZERT SORAの爆音 怒羅夢 純愛組!』第2回放送
出演:SORA (DEZERT)
ゲスト:Natsu (NOCTURNAL BLOODLUST)
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