【インタビュー】INORAN、アルバム3部作完結「いつか絶対にハッピーになるよ」

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■この時代に音楽という職業で生きていられるということを
■改めて感謝したし、使命感はすごく強くなりました


——3部作は作曲もアレンジも楽器の演奏もプログラミングも全てひとりの作業ですが、形になっていくのは楽しいですか?

INORAN:楽しいけど、そこで完結するのは違うので、その先で共有することを思い描きながら作っていますね。

——ちなみに今回、歪んだ音のギターのストロークはいっさい入っていませんよね。アルペジオを弾いたぐらいだったのかな? と思ったんですが、ギタリストとしてのアプローチについても教えてください。

INORAN:……重大発表しますよ。ギターは1音も弾いてません。

——えーっ? 最初から弾くつもりがなかったんですか?

INORAN:途中で気づいたんです。「そういえば弾いてないな」って(笑)。

——自由ですね。

INORAN:「まぁ、いいか」って(笑)。

——作りたい音にギターは必要なかったということですか?

INORAN:そうかもしれないし、ギタリストとしてはLUNA SEAに集中していたというか、そっちに比重を置きたかったんでしょうね。

——なるほど。それにしてもギターを全く弾いてないとは驚きです。アルバム聴いて気づく人は多いんでしょうか。

INORAN:わかるんじゃないかな。ギターっぽくないから。

——ギターの音を加工しているのかと思いました。

INORAN:なるほど。僕は昔から固定概念と戦ってきたので「ギタリストだからギターを弾くでしょ」っていう考え方がそもそもクエスチョンなんですよ。振り返るとFAKE?のシングルが英語詞だった時、まわりに「日本語にしてほしい」と言われて「何で日本語じゃなきゃいけないの?」と思っていたので。ギタリストのソロアルバムはギターインストの曲を入れて、1曲は歌わなきゃいけないとかね。そういうことに「何で?」と思ってきたので、今回、弾かなくても許してもらえるぐらいキャリアを積んできたんだなって(笑)。感謝しています。

——遡るとINORANさんの1stソロアルバム『想』(1997年)も打ち込みメインでしたよね。当時もバンドのソロだから生楽器にしないといけないのはクエッションだったとか?

INORAN:というか、何も考えてないのがずーっと続いてるんです(笑)。でも、そこが自分の強みというか、セールスポイントだと思っているんですよね。気持ちで行っちゃうっていう。その気持ちはミック・ジャガーにも負ける気がしないんですよ。逆に言うとそれしかない。

——そんなことはないと思いますが、柔軟ですよね。LUNA SEAには5人の役割というか、ある種のフォーマットがあってINORANというギタリストの立ち位置がある気がするけれど、ソロでは縛りがなく解き放たれています。

INORAN:この時代に音楽という職業で生きていられるということを改めて感謝したし、使命感はすごく強くなりましたね。だからこそ、自分に素直でありたいし、どう思われようとそんなに厭わない。ただただ、まわりの人に楽しんでほしいし、笑顔にしたいんです。ジャンルに関しても関係なくて、そっちの方が自分は大事なんですよ。ギターを弾いていないのも僕にとっては、どうってことないんだけど、みんなにとっては一大事なのかもしれない(笑)。


——はははは。オープニング曲「See the Light」からリード曲「Wherever,Whenever」に移行する流れが浮遊感があって非常に心地いいです。“僕らは強くなってるんだ どんな悪天でも”(「See the Light」)、“新しい物語が今日始まる”(「Wherever,Whenever」)など英詞のメッセージは力強いですが、歌詞にリクエストしたことはありましたか?

INORAN:歌詞を書いてもらったのは前作にひき続き、Nelson Babin-CoyとJon Underdownの2人なんですが、例えば海外ドラマだったらシーズン1、シーズン2と物語が続いていって主人公の人生が先に進んでいきますよね。悩みながら進んだシーズン1を経て、シーズン2では重要な人物が亡くなったりして、いろいろな経験を経てシーズン3でハッピーエンドに向かっていくみたいな。海外ドラマは例ですけど、そういう物語みたいなものはふわっと考えましたね。悩んでいる時に支えてくれた人がいたら、今、逃してしまうと一生、逃してしまうタイミングかもしれないと思ったし、それはコロナの世界の中で得たイマジネーションで「今のこの気持ちは絶対に忘れない方がいいぜ」って。そういう想いも含めて「いつか絶対にハッピーになるよ」っていう。ざっくりしたストーリーが3作にはある気がしますね。

——3部作の物語は繋がっているんですね。

INORAN:もちろん! 実験的にコンセプチュアルに作ったアルバムはこれまで数枚しかないし、アルバムはずーっと繋がっているんです。それは僕の物語でもあるし、みんなの物語でもある。

——今作にスイートなラブソングが収録されているのも今、言ってくれたことと関係があるんですか?

INORAN:僕のデモテープのサウンドを聴いてイメージしたのかもしれないけど、自分からは歌詞の内容は指定してないですね。「そろそろ“ANY DAY NOW”だよね」とか「旅に出たいね」って話をしたことを彼らが歌詞に反映してくれたんだと思う。歌詞に関しては一度も直してないです。直すぐらいだったら、自分で書けばいいと思っているので。


——訳詞に関しては?

INORAN:それも彼らが書いているんですよ。

——そうなんですね。「Live it Up」という曲では“Live it Up”が“深く生きる(生きよう)”と訳されていますが、INORANさん自身は深く生きるというワードをどう解釈していますか? 辛いことや大変なこともひっくるめて受け止めて生きるというニュアンスですか?

INORAN:そうですね。ある人から言ってもらった大好きな言葉があるんですけど、“ハプニングがあるから人生は楽しい”って。何も起こらない人生なんかないし、強く生きるよりも深く生きるっていいなって。

——それとアルバムのタイトル『ANY DAY NOW』についてですが、個人的にボブ・ディランの「I Shall Be Released」の大好きな一節“Any Day Now Any Day Now I Shall be Released”を思い出しました。当時は自分なりに“いつの日か自分は解放されるだろう”って訳していたんですが、関係があるのかなって。

INORAN:まさにボブ・ディランの曲のサビの歌詞からとったんですよ。『Between The World And Me』は本のタイトルからとったんですが、今回は、ある時、映画『チョコレートドーナッツ』を見ていたら、主人公が「I Shall Be Released」を歌っていて感動したんです。その言葉が自分の中に残っていて今“ANY DAY NOW”って素晴らしいなって。ジェンダー問題をテーマにした映画で、同じ歌詞でも響き方が違って「音楽の力、言葉の力ってすごいな」と思いました。それはLUNA SEAをやっていても思うことで、昔の曲の歌詞が時代によって新しく感じたり、違って響いたりするんですよね。

——本当にそうですね。ところで9月に恵比寿リキッドルームで開催した5日間のライヴ<INORAN -TOKYO 5 NIGHTS- BACK TO THE ROCK'N ROLL>ではどんなことを感じましたか?

INORAN:1年延期になったライヴなのにチケットをずっと持っていてくれて、あんなに待ってくれていた人がいたということ、そして自分のライヴのために集まってくれたスタッフやバンドのメンバーに感謝ですね。ものすごく尊い時間でした。動員の制限があったので1日2回公演だったんですけど、1つとして同じ色のライヴはなかったし、僕たちの出すオーラだけではなく、お客さんが違うだけでこんなにも変わるんだって。このライヴのすぐ後にLUNA SEAで仙台にも行ったんですが、そこでも素晴らしい景色を見せてもらえた。ホントに宝物ですよ。

——かけがえのないものですね。

INORAN:一方でこれまで配信ライヴをしたり、試行錯誤してきましたけど、いろいろできることもわかったし。今ある環境の中で楽しむこと。それがある意味、コロナの副産物で幸せに繋がるんじゃないか。

——ええ、ええ。

INORAN:今まで豊かすぎたんじゃないかなって。なんかコロナに断捨離してもらった感じですよ。


——整理整頓されて大事なものだけが残った感じですね。

INORAN:そうですね。こんまりさん的に言うと“トキめかないもの”がなくなったっていう(笑)。

——なるほど。11月からは東名阪でのアコースティックライヴツアー<INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE>がスタートしますが、今作からの新曲は披露するんですか?

INORAN:全然、まだ考えてない(笑)。

——ギター弾かないで歌だけの曲もあるとか?

INORAN:その時に考えます(笑)。みんなが笑顔になるようなことをね。

取材・文◎山本弘子
撮影◎佐々木信行

NEW ALBUM『ANY DAY NOW』

2021年10月20日(水)発売
■完全生産限定盤-LP SIZE BOX-
仕様:CD+Blu-ray+写真集 ※LP SIZE BOX仕様、KING e-SHOP限定特典付き
品番:NKCD-6964 価格:¥13,200(税抜価格¥12,000)

[CD]
01. See the Light
02. Wherever,Whenever
03. Feel It In The Air
04. Live it Up
05. Run Away
06. A Beautiful Mess
07. Count Me In
08. No Way But Up
09. flavor
10. Dancin’ in the Moonlight

[BD]
Wherever,Whenever (Music Video) *
Between The World And Me (Lyric Video) *

*High-Resolution Audio

[完全生産限定盤 特典情報]
・「直筆サイン入りアナザージャケット色紙」
・「INORAN -TOKYO 5 NIGHTS- BACK TO THE ROCK’N ROLL」のダイジェスト映像が視聴できる
ボーナス映像視聴カード

■通常盤
仕様:CD
品番:KICS-4022 定価:¥3,300(税抜価格¥3,000)

[CD]
01. See the Light
02. Wherever,Whenever
03. Feel It In The Air
04. Live it Up
05. Run Away
06. A Beautiful Mess
07. Count Me In
08. No Way But Up
09. flavor
10. Dancin’ in the Moonlight

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