【レポート】TUBE、2021年夏ツアー＜BLUE WINGS＞放送直前に見どころ解説「みなさんは我々の誇りです」

通算62枚目となるシングル「BLUE WINGS」を携え、2021年5月から7月にかけて全21公演のホールツアー＜TUBE LIVE AROUND 2021 BLUE WINGS＞を敢行したTUBE。その東京公演の模様が10月10日、WOWOWで独占放送・配信される。

◆TUBE 画像

新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年のTUBEは恒例の夏ツアーを断念。通算32回目となった横浜スタジアム公演は無観客の配信ライブという初の試みで行われた。夏の野外ライブはTUBEの風物詩だが、2021年の横浜スタジアムと阪神甲子園球場でのライブも中止を余儀なくされただけに、感染予防対策を徹底した上で有観客で行われた2年ぶりのツアーは、TUBEにとっても集まったオーディエンスにとっても貴重な時間そのもの。歓声は送れなくても、TUBEの音楽を共有し、お互いの存在の大切さを同じ空間で確かめあったことは何者にも代えがたい体験だったに違いない。

そのことが映像を通してもダイレクトに伝わってくるのがツアー終盤戦、6月30日にTOKYO DOME CITYホールで開催されたライブだ。



真っ白なジャケットとブルージーンズ姿の前田亘輝(Vo)、春畑道哉(G)、角野秀行(B)、松本玲二(Dr)がステージに登場。「いろいろな制限がある中だけど、楽しんでいってちょうだい！」との前田の第一声から、歌い、音を奏でると、伸びやかなヴォーカル、心地いいグルーヴに“TUBEの夏がやってきた”という気持ちにさせられる。いつでもどこでも照りつける太陽、吹き抜ける潮風を連れてくるようなアクトは彼らならではだ。

と同時に、本ツアーは2021年のTUBEをリアルに描いた内容となっていた。セットリストには思うように動けなかった期間に、改めて自分たちの楽曲を聴き返したことが反映されているとのことで、久しぶりに演奏する楽曲が組み込まれるなど、ファンに嬉しいナンバーの数々が次々と披露されていく。

MCでは、前田が初めて緊急事態宣言が発令された時のTUBEの心境や状況をありのままの言葉で振り返った。春畑、角野、松本もファンの前にやっと立てる嬉しさを伝え、ライブでみんなに逢いたいという気持ちが募った時に4人で歌詞を持ち寄って書いたという最新シングル「BLUE WINGS」を披露。各メンバーが交代でヴォーカルをとるという、音源とは違うスタイルで披露したのも見どころのひとつ。前田はタンバリン、松本はカホーン。“頑張らないで　そのままでいいよ”と歌い、温かいメッセージの詰まったナンバーを届けた。


TUBEらしい王道のポップチューンやアコースティックなナンバー、ラテンテイストの躍動感のある楽曲など、36年目を迎えたバンドのしなやかな演奏が楽しめるのも魅力で、バンドの屋台骨である松本の歌を活かすドラムプレイ、押し引きが絶妙な角野のベースライン、開放感のある景色を紡ぎ出す春畑のテクニカルでエモーショナルなギターサウンド、会場全体を引っ張り、時に包みこむ前田のヴォーカルが共に長い月日を歩んできたからこその豊かさを感じさせる。

「みなさんは我々の誇りです。TUBEが音楽を続けられる源でもあるみなさんに届けます」──前田亘輝

こう前田が伝えて届けられた「君がいるから」(アルバム『日本の夏からこんにちは』収録曲)では、春畑がキーボードを弾き、後半に向かうにつれて、声を上げられなくても会場の温度が上昇していくのがわかるライブ運びで、いつしかファンは頭上でハンドクラップ。

2週間に1度のPCR検査を受けながら廻ってきたツアーの中、TUBEを音楽を選んで会場に来てくれたことへの感謝を前田が伝えたMCも感動的で、今から11年前にリリースされたシングルがコロナ禍のなか、刺さりまくるメッセージとなって響いてくる本編最後の「空と海があるように」まで4人のバンド力と人間力を感じさせてくれた。



アンコールで響きわたったコールは“TUBE mobile”でファンから募集して録音されたもので、笑顔とともに夏が弾けるような「N・A・T・S・U」「太陽のサプライズ」を演奏。“必ず眩しい夏が来るから”と希望を届けたラストの「スマイルフラワー」まで全15曲約1時間40分。2021年夏のTUBEを余すことなく届けるライブとなった。

この東京公演の模様は10月10日夜8時より『TUBE LIVE AROUND 2021 BLUE WINGS』と題してWOWOW独占放送・配信(放送終了後～1ヵ月間アーカイブ配信あり)で全曲が届けられる。デビュー36年目のTUBEの“今”を刻みつけてほしい。

取材・文◎山本弘子
撮影◎KIYOHIDE HORI