【レポート】DEAN FUJIOKA、全国ツアー開幕「変異していくことが大切」
DEAN FUJIOKAが9月4日(土)、全国ツアー<DEAN FUJIOKA “Musical Transmute” Tour 2021>の初日公演を埼玉・川口総合文化センターリリア メインホールにて開催した。千変万化する世界の中で、新たなライブ表現の可能性を示した同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆DEAN FUJIOKA 画像
<DEAN FUJIOKA “Musical Transmute” Tour 2021>は、DEANにとって2019年に行われた<Born To Make History>以来のライブツアーとなるだけでなく、18都市20公演の規模で行われる自身最大の国内ツアーだ。また、昨年予定されていたアジアツアーの開催断念も経て行われるため、ファンにとっても待望のツアーとなる。
DEANは昨年、コロナ禍の影響を受け、開催を断念したアジアツアーのもうひとつの選択肢として、配信ライブ<Plan B>を行った。同公演は、“リアルライブとMVの中間”を体現したものになったが、そこで印象的だったのは、そのコンセプトに沿った配信ライブならではの作り込まれたステージ表現だった。また、<Plan B>というもうひとつの選択肢は、今年への希望をつなぐという意味で機能していたことも記憶に新しい。そんなもうひとつの選択肢を経て開催された今ツアーの初日公演では、ツアータイトルの“Transmute”という言葉どおり、千変万化する世界の中で新たなライブパフォーマンスの可能性が示された。
今回のライブは音楽公演でありながら、感染対策の一環として、これまでのように会場に集まったファンが声を上げることができないという制約があった。ある種の異様とも言える状況だが、同じ空間をみんなで共有する方法としてDEANが打ち出したのは、これまでの自身の音楽ライブにはなかった“ミュージカルの要素を取り入れたライブパフォーマンス”だ。それにより、これまで以上にライブパフォーマンスにストーリー性が増すなど、<Plan B>にも通じる作り込まれた表現があった。しかし、<Plan B>と異なるのは、リアルライブの演出のひとつとしてミュージカルの要素を取り入れながらも、生の演劇のように、その場でフィジカルに動くことで生まれるライブ感だ。これはミュージシャンと俳優という2つの顔を持つ彼だからこそ、高次元で成立させることができるハイブリッドな表現だと言える。
そんな新たな表現が試みられた今回の公演では、「Shelly」「Searching For The Ghost」など過去曲や最新曲「Runaway」に加えて、「Sayonara」「Sukima」「Missing Piece」「Spin The Planet」といった4曲の未発表新曲などが約1時間45分にわたって披露された。しかし、その方向性を示す上で最も重要な役割を果たしたのは、「Neo Dimension」だった。同曲は、かつて「自身の自己紹介、意思表明的な楽曲」として発表された「My Dimension」を生まれ変わらせた曲だ。新しいステージを歩み続けるDEANのこれまでの時間と想いを凝縮した未来に導く“コンパス”という意味が加えられている。
ライブ中のDEANが見せた舞台表現は、初期衝動を感じさせるものもあれば、葛藤や飛躍を感じさせるものまで様々。これらの表現はDEAN自身のキャリアと深く結びついたものだ。ライブ構成にあわせ、ステージ上で過去の姿をトレースすることで、それらを可視化することに成功した。また、そんな演技の中には挫折と、そこから再び立ち上がる表現も見られた。コロナ禍によって計画していたものが幾度となく変更され、多くのことを諦めざるをえなかった状況。それでも立ち上がり、今回のツアーを迎えたDEAN自身の姿とも重なって見えた。千変万化していく自身のストーリーや、これまでにない環境といったものを、会場に集まったファンと目の前で明確に共有していくという意図が込められていたように思えた。
昨年、コロナ禍によってこれまでの日常が失われ、我々は非日常の世界を新たに迎えることを余儀なくされた。しかし、現在はその非日常さえも日常化しており、エンタメ業界においては、以前のような形で行われるライブこそが非日常化している。世界が日常と非日常の間で変異し、その立場が循環していくということを受けたものが今回のライブパフォーマンスだったように思う。これまでの方法だけに固執せず、別のプランを用意しておくのか? その先で変異していくのか?という問いに対するDEANの答えが反映されていたようにも感じる。
DEANは、これまでも常に新しい要素を音楽表現に取り入れながら、時代の一歩先をいく音楽性を示してきたアーティストだ。そして今、その先鋭性は新たな変異のタイミングを経て、ライブ体験のあり方の変化を示す。そのような変異から生まれる未体験の表現は、もしかしたら観るものにとっては、戸惑いを生じさせるものなのかもしれない。でも、恐れる必要はない。なぜなら千変万化する世界の中で生まれた<DEAN FUJIOKA “Musical Transmute” Tour 2021>には、“変異=トランスミュート”していくことが今を生き抜く方法であり、新たな表現を切り開くというDEANの決意が込められているからだ。ツアー初日公演はそんなことを感じさせてくれる素晴らしいライブだった。また、これからも“Transmute”し続けていくであろう今回のツアーは、何度見ても新たな気付きが得られるかもしれない。
DEANはツアー初日に先駆けて、『History In The Making』以来、約3年ぶりの3rdアルバムを今年12月にリリースすることを発表している。今回のライブで披露された新曲4曲も収録される『Transmute』。そのタイトルには、「現代の混沌とした世の中で、予測不能な将来を生き抜くために“変異”していくことが大切である」というメッセージが込められているという。それだけに今回のツアーは、ファンがその意味を紐解き、理解する上で重要な役割を果たすものになりそうだ。
取材・文◎Jun Fukunaga
撮影◎Kayo Sekiguchi / Yukitaka Amemiya
■全国ツアー<DEAN FUJIOKA "Musical Transmute" Tour 2021>
09月11日(土) 福岡・福岡市民会館 大ホール
09月12日(日) 岡山・倉敷市民会館
09月19日(日) 宮城・東京エレクトロンホール宮城 大ホール (宮城県民会館)
09月26日(日) 岐阜・長良川国際会議場
10月01日(金) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
10月03日(日) 福島・南相馬市民文化会館 (ゆめはっと) 大ホール
10月16日(土) 静岡・富士市文化会館 ロゼシアター
10月17日(日) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
10月24日(日) 千葉・千葉県文化会館 大ホール
10月30日(土) 広島・上野学園ホール
10月31日(日) 熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール 大ホール (熊本市民会館)
11月06日(土) 石川・本多の森ホール
11月21日(日) 香川・サンポートホール高松 大ホール
11月27日(土) 北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
12月05日(日) 鹿児島・川商ホール (鹿児島市民文化ホール)第1ホール
12月18日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
12月19日(日) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
12月25日(土) 大阪・オリックス劇場
12月26日(日) 大阪・オリックス劇場
https://www.deanfujioka.net/musicaltransmute
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