【インタビュー】心之助、斬新な歌詞表現で心情を浮き彫りにする新作EP『PURPLE』
■育ててくれた場所のDNAはずっと僕らの音楽に流れている
──「17の夜」も、忘れられない思い出に対する気持ちをストレートに表現していますね。《お前がInstaしてんのは知ってた 見てた》とか、とても印象的です。
心之助:こういうのは、相手からすると少し怖いかもしれないですよね(笑)。でも、結構あるリアルなことだと思います。僕も周りの友だちもコソコソと元カノのインスタとかを見ていますから(笑)。
──心之助さんはすごく正直というか、ある意味、隠し事がないアーティストですね。
心之助:はい。できるだけリアルに描こうとしています。
──リアルに描き過ぎて問題が起こったことはあります?
心之助:昔、好きな娘のことを曲にした時、あまりにも描き過ぎて、その娘の周りの友達に「これ、あなたのことじゃない?」ってバレちゃったことがあって。それで嫌われちゃったことがありましたね。ツイッターとインスタをブロックされました(笑)。リアルに描き過ぎるのも良くないなって反省しました。でも、ただ想像だけで歌詞を書くよりも、こういう方が「心之助もこうだったんだなあ」とか、曲を聴きながら感じていただけると思うんです。「自分もつらいけど心之助もこういう過去を経て幸せになっているし、きっと大丈夫だ」と感じていただけたらいいですね。
──「pinky ring」と「17の夜」は恋愛を描いていますが、今回のEPには友情について描いている「雲の上」と「Forever young song」も収録されていますね。
心之助:はい。「雲の上」は、《俺は悟空 お前はベジータ 俺ら合わさればまるでゴジータ》って歌っているんですけど、これは曲を一緒に作っているES-PLANTとのことを曲にしています。僕は昔、ライブで失敗して悔しくて泣いちゃったことがあったんです。その時に相棒のES-PLANTが、「俺らは大丈夫だよ。最強だし」って背中を押してくれて。そういう実体験を曲にしました。
──歌詞の中に出てくるHAZARDとGLADは、クラブの店名ですよね?
心之助:そうです。渋谷のGLADはもともとasia Pっていう名前で、僕はそこでずっと積み上げてきた部分があって。HAZARDは、ES-PLANTがずっとPAとか店員をやっていたクラブです。どっちの店も閉店しちゃいましたけど、育ててくれた場所のDNAはずっと僕らの音楽に流れているということも歌詞に込めています。僕は年に100本くらいライブをしていた時期もありますし、お客さんが出演者しかいないことも体験してきているんです。そうことを積み重ねてきたので、自分は叩き上げであるという自負はありますね。
──「Forever young song」は、地元の友だちのことを描いていますよね?
心之助:はい。高校の野球部のことも思い出しつつ曲にしました。昔、「兄弟分」という曲を出して、そのヴァースをそのまま使っているんですけど。
──言葉をたくさん交わさなくても心が通じ合える大切な友だちへの想いが伝わってくる曲です。
心之助:言葉は大事ですけど、「ごめん」とか言わなくても自然と仲直りできたりする友だちっていますからね。こういうのも恋愛観とはまた別のリアルなんです。
──《野球のユニホームだって俺ら腰履き》って歌っていますが、そうだったんですか?
心之助:そこまでの腰パンじゃなかったですけど(笑)。でも、『ROOKIES』に憧れていましたから、かっこつけてやったりしていましたね。
──こういう曲も収録されている中で、冒頭で少し触れた「XXな関係」は、やはり独特の存在感を放っていますね。割り切った間柄の男女のことを描いていますから。
心之助:そんなに深いことを考えずに、「エロい曲を作りたい」というのがあったんです。こういうことって結構あると思うんですよ。ファンからの相談でも、「都合よく扱われてます」というようなのがありますから。でも、本人もそれを割り切ることができるのなら、僕はそういうのもありだと思うんです。お互いに同意のもとであれば、いいんじゃないかと。友だちには「そんなのやめな」って言われるけど、そう言われるからこそ突き動かされる感じもあると思いますし。
──この曲も、独特な言葉の表現が冴えていますね。
心之助:あからさまにエロい言葉でこういうことを描くのは僕の美学に反するので、《色んなパスワード試し合いたい》とか《まるでテトリスみたいに不満を消し合って》っていうような言い回しを使っています。
──「XXな関係」もまさにそうですが、心之助さんの曲を聴く時は、歌詞とじっくり向き合うことをおすすめしておきたいですね。例えば、カラオケで友だちが歌っている時に画面に歌詞の一節が映し出されて、「これ、誰の曲?」ってなったりすることもよくあるんじゃないかと思います。
心之助:僕が目指していたのもそういうところなんです。僕も友だちとカラオケに行って、誰かが歌っている曲が好きになることがすごく多かったんですよ。自分もそうなれたらいいなと思ってやってきた部分があります。僕、もともとカラオケが大好きで、カラオケ屋でバイトしていたこともあるんです。高校の時の文化祭でDragon Ashさんをバンドでやったのもカラオケがきっかけでしたね。カラオケにみんなで行って、「上手いね。かっこいいじゃん。みんなでバンドやっちゃう?」ってなったので。そういうのがあって、今の自分があるんだと思います。
──今回のEPをリリースした後の活動に関しては、現時点で何か思い描いていることはありますか?
心之助:とにかくスパンをあまり空けずに曲を出し続けたいなと思っています。できたてほやほやのものをどんどん届けていきたいですね。ライブに関してはお客さんの入場制限があったり、苦しい状況ではありますけど、やれることをやっていきたいと思っています。やっぱ音楽の醍醐味はライブなのかなと思うので、これからも大事にしていきたいです。
取材・文◎田中大
▲心之助/『PURPLE』
6th EP『PURPLE』
https://linkco.re/hQ7f0bNu
1.雲の上
2.Forever young song
3.XXな関係
4.17の夜
5.pinky ring
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