【インタビュー】ANCIENT MYTH、変貌を遂げた最新作『ArcheoNyx』
■言葉だけを目にした時点でもちゃんとストーリーになっているべき
──歌詞はほぼMichalさんとHalさんの共作となっていますね。
Hal:今まではMichalさんが一人でやってましたけど、今回はすべて僕が絡んでいます。「River of Oblivion」はShibukiくんが書いてきたものに二人で加わって完成させて。
──このアルバムならではのテーマ設定みたいなものもあったんですか?
Michal:これまでと同じように、神話だったり伝承がモチーフではあるんですけど、私が私だけの視線で見ているANCIENT MYTH、こうしてお客さんに伝えたいというエッセンスと、Halくんから見たANCIENT MYTHってこうあったほうがきっとカッコいいという客観的な目線を、一回ミックスしてみたかったんですよ。他人から見えているMichal像、ANCIENT MYTH像をちょっと採り入れてみて、自分のテーマを組み合わせてみると、もう一段階上に行けるんじゃないかなと思って。やっぱり自分一人で掴める曲からのインスピレーションには限界がある。だから、とりあえず「多分、こういう話なんだろうな」というのをワーッと書いて、その客観的なANCIENT MYTH像と混ぜてもらいつつ、「主人公目線だとこういうのが見えているといいんじゃない?」というやりとりをものすごい回数をやって完成させていったんですね。究極を言うと、歌詞って誰でも書けちゃうと思うんです。でも、作詞もやってますって言う以上は、言葉だけを目にした時点でも、ちゃんとストーリーになっているべきだと思うんですね。だから、ただ伝承を語るのではなく、聴いた人がその主人公に入り込める、気持ちを重ね合わせられるというところはすごく重視しました。
Hal:最初はすごく主観的な文なんです。だから、「どういう設定?」「どういう状況?」「どういう人?」と、そのつどMichalさんには投げかけていって。歌詞はヴォーカルの人が考える場合が多いですよね。書いてある内容はパーソナルなことだったりもするので、あまり立ち入ったら悪いなとは思うんですけど、最終的にお客さんに聴いてもらったり、一緒に歌ってもらったりする以上は、共感する部分があったり、その歌詞を好きになってもらわないとダメだろうと思ってるんですよ。だから、実際にレコーディングに進む前に、歌詞も見せてもらって、一緒に完成させていきました。「天狼大神」の頃から、すでにそういう取り組み方をしてましたね。
▲Hal(Key)
──「天狼大神」はコンセプチュアルな楽曲なので、やや特殊な位置にあるかもしれませんが、歌詞全般について見れば、これまで以上に言葉の惹き付ける力がすごく強い。当然、楽曲そのもの、メロディの煽る力も絡んではきますが、歌詞に関しても、すごく大きな変化をしましたね。
Michal:ちゃんと歌詞も見てもらえてよかったぁ。
Hal:ありがとうございます。やっぱり歌詞のハマりとメロディの兼ね合いって難しいんですよ。いろんな正解はあるとは思うんですけど、僕は絶対にそこは一致してないと変だと思ってて。たとえば、メロディの節の切れ目と歌詞の切れ目が、とっ散らかりがちな人も少なくないですからね。
──これまでのANCIENT MYTHを知る人はもちろんですが、今まで聴いたことのなかった人にも、ぜひ『ArcheoNyx』に触れてみて欲しいですね。さて、すでに次作に向けての期待感も口にされていますが、リリース後はどのような活動をする計画なのでしょう? このコロナ禍で、ライヴも思うようにできない状況ではありますが。
Michal:今、ライヴをやらないバンドも結構いるんですよね。たとえば、ミュージシャンとしての生活はありながらも普段は医療従事者だったり介護関係の仕事をしていたり、そもそも演者さんの年齢が高めで高齢の親御さんと同居されていたり。感染が収まるまではやらないと決めているバンドもいる。今までよくやっていたような4〜5バンドが出演する対バン形式のイベントは、感染症対策の面だけからではなく、実質的にも難しくなっているんですよね。そういった中でライヴの進め方も考えているんですが、バンドのキャリア的にも、30分とかの持ち時間では展開がしづらい。対バン形式であるなら、自分たちが少なくとも40〜50分は演奏できるようなものであるべきだなとは思ってるんですね。
──なるほど。
Michal:もちろん、ワンマンライヴも行うつもりではいますが、配信も積極的にやっていきたいと思ってるんですね。配信はある意味、すごくチャンスだとは思っていて。東京でステージに立っているとしても、国内のいろんな街に住んでいる人も、他の国の人も観ることができる。私も海外のアーティストの配信ライヴを夜中とかに観たりしてますしね。もう元通りにはなれない世界だと思ってますから、その中でどういうふうに時代の流れに乗っていきつつ、自分たちらしさをしっかり持ったうえで活動できるか。今後、いろいろ考えながら、動きながら、一つの答えを出していけたらいいなと思ってます。今年の後半戦はオリンピック次第でいろいろ変わりそうですよね。ただ、「やるよ」って言ったものを延期します、中止しますというのは、ホントはやりたくないんです。チケットを買ってくれるお客さんは、その時間をすでに確保してくれているわけですし、たくさんの人に変更を余儀なくさせるのはホントに忍びなくて……。アルバムをリリースしたからこそ積極的に動きはしたいんだけれども……本当は海外ツアーをやったり、フェスに出演したりもしたいんですよ。ちょっと様子を見つつ、新たな手を打とうかなと思ってます。
取材・文◎土屋京輔
『ArcheoNyx』
レーベル:Repentless
【Deluxe Edition】
品番:RETS-0023/0024
価格:¥3,800+税
【通常盤】
品番:RETS-0025
価格:¥3,000+税
【収録曲】
01. Abyss (SE)
02. Chaos to Infinity
03. River of Oblivion
04. Song of Siren
05. Crimson Stigmata
06. Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
07. Hypno Temptation
08. Last Light (SE)
09. Meteor Hunter
10. 天狼大神
11. Träumerei: Luna
12. Zenith
※【Deluxe Edition】には、全曲の“Orchestral Mix”を収録したボーナス・ディスクが付属。
ライヴ・イベント情報
日程:2021年8月1日(日)
会場:東京・吉祥寺クレッシェンド
共演:ILLUSION FORC
◆ANCIENT MYTH オフィシャルサイト