【インタビュー】JIMSAKUを超えるアルバム完成「昔を懐かしむよりも今の僕らができることを聴かせたい」
日本のジャズ/フュージョン界が誇るレジェンド二人組=JIMSAKUが、なんと24年振りとなる新作を完成させ、華麗なる復活を遂げた。
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神保彰(Dr)と櫻井哲夫(B)からなる超絶技巧ユニットは、1990~1998年の間に多くの名曲&名パフォーマンスを残して惜しまれつつも解散したが、2019年の神保彰の還暦記念ライブをきっかけに再始動。“BEYOND=超える”、をテーマに掲げた新作『JIMSAKU BEYOND』には、ジャズ/フュージョンの王道を往くメロディアスなインストゥルメンタルはもちろん、ラテンやファンク、スキャットや歌もの、バイオリンやパーカッションをフィーチャーした楽曲、そしてなんと神保彰の初ボーカル曲も含む、バラエティに富んだ全10曲を収録。往年のファンも新しいリスナーも、全年代の音楽ファンの心をとらえる魅力いっぱいのJIMSAKUの新作、必聴である。
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■20年以上経っても音を出した瞬間にロックする感じはありました
──そもそもの始まりは、2年前の春、神保さんの還暦記念ライブでした。
神保彰:2019年3月に僕の還暦記念イベントをやるということで、自分の音楽人生を振り返るような内容にしたいと思いまして。最初は一人で「ワンマンオーケストラ」をやって、JIMSAKUをやって、カシオペアをやって、最後にみんなで合同演奏するという構成だったんですけど、その時に20数年ぶりにJIMSAKUをやったんですね。その感触が非常に良かったのと、お客さまも非常に喜んでいただいたということが、最初の布石としてあったんです。
──その時は本当に、一夜限りの予定だったんですね。
神保:ええ、その時はそうです。
櫻井哲夫:還暦のお祝いで出てほしいと言われて、だったらやりましょうかということだったんですよ。その翌年、つまり2020年に30周年になるということには全然気が付いていなくて、キングレコードのプロデューサーさんから「30周年ですね」と言われても、二人とも「そうだっけ?」という感じでした(笑)。僕らはそれぞれのソロアルバムをキングレコードから出していたこともあったので、「30周年に何かやりませんか?」ということで、いろいろな企画のアイディアをいただいて、そこからプロジェクトがスタートして、今の段階ではCD制作が終わったところまで来たということです。
──「何かやりませんか」と聞かれて、櫻井さんは即答で「やりましょう」と言ったんですか。
櫻井:そうですね。神保くんの還暦ライブで、とにかくお客さんがすごく喜んでくれたんですよ。JIMSAKUコーナーは、前半はデュオでやったんですけど、二人でマニアックなことをやっている時に、まるでアンコールのようなすごい盛り上がりがあったので、「やってよかったな」と思いましたね。それをレコード会社のプロデューサーが見ていて、お客さんが望んでいることを体感されたから、声をかけてくれたんだと思います。「その時にやったデュオ曲(「FUNKY PUNCH」「FIREWATER」)をアルバムに入れてほしい」と最初から言われたので、古い曲ですけど新譜にも入れることにしました。
──神保さんは、21年振りに二人で演奏して、ブランクは感じなかったですか。
神保:それは感じなかったですね。20代の10年間はカシオペアでリズムセクションを組んでいましたし、30代の8年間はJIMSAKUとして活動して、すごく濃密な演奏活動を共にしましたので。骨の髄まで沁みついているというか、20年以上経っても音を出した瞬間にロックする感じはありました。
▲『JIMSAKU BEYOND』初回盤 ジャケット
──アルバム制作のスタートは2020年5月、「JIMSAKU BEYOND」(初期タイトルは「JIMSAKU IN THE HOUSE」)という曲の動画をYouTubeに上げるところから始まりました。
神保:「コラボ動画をYouTubeに上げてみよう」というアイディアをいただいて、まず二人の演奏をアップして、「みなさん好きにコラボレーションしてください」と呼びかけたんですけれども、すごく面白いライブラリーができたんですよ。
──何本か見せてもらいました。ウクレレ、タンバリン、エレクトリックギターとか、むちゃくちゃ面白いです。
神保:その次の布石として、7月にダイレクトカッティングのライブ配信ということをやりまして、これはもう緊張するなというほうが無理な企画で(笑)。ぱっつんぱっつんの精神状態で臨んだんですけど、そこで録った音がそのままCDに入っているんですね。そういう布石があって、アルバムに結実したという感じですね。
──完成したアルバム『JIMSAKU BEYOND』を聴かせていただいて、これまでのJIMSAKUの歴史を踏まえた上に、さらに新しい要素を加えたようなアルバムだと思いました。ラテンはもちろん、ファンク、ボーカルもの、スキャット、王道フュージョン、バイオリンが入った曲など、とてもカラフルです。
神保:『JIMSAKU BEYOND』は、昔を懐かしむというよりは、今の時代にJIMSAKUをやるとすればどんな音楽になるだろう?というところから企画したので。でも内容に関しては、何の会話もしていないんですよ。
櫻井:そうなんです。
神保:まずデュオ曲が2曲あって、最初にYouTubeに上げたコラボ動画が「JIMSAKU BEYOND」と「未知の先へ feat.LEN」という2曲の形になって、そういった核になる曲があった上で、どういうふうに肉付けしていくか?ということは、個々でそれぞれ考えました。
櫻井:デュオ曲はやっぱりマニアックだし、インストなので、「歌ものをそれぞれ1曲お願いします」というリクエストがあったんですね。そのほかはご自由にという感じで、その「ご自由に」の中身に関しての話し合いは一切なく、それぞれ勝手にイメージして新曲を作って、ふたを開けてみたら、神保くんの曲には歌があったり、バイオリンがあったりして、僕の場合はもっとバンドサウンドでやってみたりとか、結果的に10曲の中の音楽の幅が広がったんじゃないかな?と思います。そもそも今回のアルバムは、プロデューサーからの提案を軸に動いていたので、企画に乗っかって「何をしようか?」というものを自由に発想して、楽しんで作っていった感じがしますね。それもまた新しい作り方だったかなと思います。
──気が楽、とか言うと違うかもしれないですけど。
櫻井:いや、そうです。「未知の先へ」を歌ってくれているLENくんというのは、「JIMSAKU BEYOND」でたくさんコラボ動画を送ってくれた人の中の一人で、「演奏じゃなくて、歌う人がいた」ということで注目して、「今回のアルバムに入ってもらおう」という、それは企画をやってみてのハプニングですから。最初から彼に頼んでいたわけではなくて。今の時代ならではの楽しいハプニングも全部取り入れて制作していった、という感じです。
──完成して、JIMSAKUをBEYOND(超える)するものができた、という実感はありますか。
櫻井:「JIMSAKU BEYOND」というタイトルは神保くんの提案で、「昔を懐かしむよりも今の僕らができることを聴かせたい」というコンセプトのもと、それぞれが自由にイメージしたものを作って行ったらこうなった、という感じですね。具体的には、神保くんの場合はドラムとベースと、ゲストの演奏だけは生で、あとは全部アレンジまで自分でやって、シンセサイザーのデータも自分で作っているんですけど、僕の場合は根本的にバンドサウンドを作りたかったので、キーボードの小野塚晃くんとギターのDEWA BUDJANAくんありきの話で、4人のアンサンブルを核にして「BEYOND感」を出そうかなと思っていましたね。二人のアプローチが全然違ったおかげで、それが10曲の中に散りばめられていると、空気がすごく広がるんですよね。
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