【インタビュー】鈴木瑛美子の深みを増した歌声「やっぱり歌っている自分のことが好き」

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2020年秋に配信限定EP『After All』をリリースしたソロアーティスト・鈴木瑛美子の新作は、テレビアニメ『キングダム』のエンディングテーマ「kIng」を表題にしたメジャー2ndシングル。

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ドラマ、アニメ、映画など映像の音楽活動を中心とし、アーティストへの楽曲提供や編曲なども積極的に行う音楽作家・澤野弘之がプロデュースした同曲は、鈴木の強さと陰を感じさせるヴォーカルの存在感が光る。彼女の歌声がより味わい深くなった背景にはどんなものがあるのだろうか。彼女が作詞を担当した「PLAYERS」、作詞作曲を担当した「Dalalife」含め、3曲それぞれで異なるクリエイティヴを実現した今作。2021年現在の等身大の鈴木瑛美子が感じられる作品と言ってもいいのではないだろうか。

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■自分の間違えたことや失敗したことも、この先に立て直せると思える曲

──最近はミュージカル『ジェイミー』のお稽古が盛んでしょうか?

鈴木瑛美子:そうなんです。だからちょっと先にいいわけをさせていただくと……。ベックス(※鈴木の演じている役名)が16歳の高校生なので、いつもより言葉がちょっと幼いかも(笑)。

──ははは。以前のインタビューでも、ミュージカルの役柄が私生活やアーティスト活動に影響を及ぼしているとおっしゃっていましたよね。舞台はお稽古も本番も長いので、そうなることも想像できます。

鈴木瑛美子:3時間弱のお話に対して深く掘り下げていくこともあって、毎日毎日その世界にいるとどうしても抜けなくなっちゃって……。ベックスはベッカという女の子と仲良しで、人気者なんだけどクラスを牛耳ってる感じではなくて、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとはっきり言うすごく素直な子なんです。だから“普段の瑛美子ちゃんみたいな明るい感じでいいよ”と言われて、ハイテンションなモードでいってたら普段からそうなっちゃいました(笑)。

──舞台は映画やドラマと違って、外国人を演じられるので刺激も多そうです。

鈴木瑛美子:はい、おまけにミュージカルなのでダンスもあるんですよね。ダンスには苦手意識があるので覚えるのが大変なんですけど(笑)、だからこそ日本人特有の恥ずかしさを全部捨てられるし、自分をオープンに出せるのですっごく気持ちいいです。いつもなら出せないことをステージ上では全部出せる。抑圧されていた感情を解放してます。去年モーリーンを演じた『RENT』のおかげもあって、舞台上で自由になれました。


──その『ジェイミー』の本番前にリリースされるのが、メジャー2ndシングル「kIng」です。表題曲はテレビアニメ『キングダム』のエンディングテーマ。鈴木さんにとって初のアニメタイアップですが、どのような経緯で決定したのでしょう?

鈴木瑛美子:澤野弘之さんがわたしをヴォーカルに指名してくださったんです。光栄だしうれしいしありがたいし、すっごくわくわくしました。でもそれと同時に、わたしの歌がアニメというコンテンツとマッチするのかが最初は全然想像がつかなくて。

──アニメソングを担当するアーティストさんで、鈴木さんのようにゴスペルをルーツに持つ人はあまりお見受けしないから、ということでしょうか。

鈴木瑛美子:そうですね。曲を初めて聴かせていただいたときもインパクトが大きくて“超かっこいい! ここに声を重ねたい!”と思ったんですけど、それでも自分がアニメのエンディング曲を歌う実感が湧かなくて。ところが、レコーディングした音源を聴いたとき、「kIng」がアニメ『キングダム』のエンディングで流れる絵が想像できたんです。そこでやっと“自分は『キングダム』のエンディングテーマを担当するんだ”と実感できました。



──アニメの物語の内容を汲んで、「kIng」もシビアな状況のなかに身を置きながらも、強い芯を感じさせる楽曲だと感じました。鈴木さんのヴォーカルは『キングダム』の世界の登場人物たちを彷彿とさせるいっぽう、鈴木さんが抱えている痛みの要素も発信されているのではないかと思いましたが、いかがでしょう?

鈴木瑛美子:『キングダム』の持っている力強さや戦闘シーン、壮大な景色を想像しながらレコーディングしたんですけど、それだけではなく自分から沸き上がる感情も大事にしたくて。落ち込んでいたり、全然うまくいかなかった時の自分の背中を、自分の声でバシィン!と叩いて押してあげるような歌にしたかったんです。がむしゃらではなく、力強く佇んでいるイメージですね。ハモリも含めて短時間で録り終えることができました。

──コーラスも鈴木さんが担当してらっしゃるんですね。

鈴木瑛美子:澤野さんはふだん、コーラスを本テイクからデジタルで作られることが多いようなのですが、“ハモも歌います!”と立候補しました(笑)。それを許してくださった澤野さんに心から感謝していますし、何よりわたしを「kIng」のヴォーカリストに選んでくださったことも本当に嬉しく思っています。曲調も歌詞も、力強さと切なさを出せるこの掠れた声にめちゃくちゃ合っていると思うんです。タイトルは澤野さんが付けられて、私の解釈としては「kIng」の“I”が大文字なのは“自分”という意味だと思っていて。そういう意味でも、自分の意志を軸に歌いたかったんです。自分の間違えたことや失敗したこともこの先に立て直せると思える曲なので、毎日聴いて勇気づけられてます。

──そうですよね。鈴木さんはエネルギッシュでパワフルなイメージが強いですし、インタビューもいつも明るく楽しませてくださいますが、その反面けっこう落ち込みやすい方なんじゃないかなと思っていたので。

鈴木瑛美子:そうなんですよ……! ひとつひとつに対していろいろ考えすぎちゃうんです。だから間違ったほうに考えすぎるとドーン!と落ちちゃう(苦笑)。基本ハイなんですけど、ハイとローの差がエグいんです。基本的に、歌以外で自分に自信がないんですよ。“今日のわたしまじ可愛いんだけど~!”と言っているのも自分を奮い立たせるためで。外見、特に体型へのコンプレックスが小さい頃からすっごく大きいんです。

──えっ、そうなんですか。身長が高くて手足が長くて、外国人役がはまるのはそのプロポーションがあるからだとも思いますが。

鈴木瑛美子:姉がモデルの母譲りのスレンダーボディなんですよ。でもわたしは身長が高いし、がっしりしてる。小さい頃から周りのみんなは小さくて華奢なのにわたしだけ大きくて、小学校に入ったら“ランドセルが似合わない”と言われて。ずっと“デカい”と言われてきたから、自分の身体を愛せないまま大人になってしまったんです。


──小さい頃は個性をからかわれることが多いですし、その言葉が長年呪いのようにつきまとって、特に若いうちは人とは違う部分を醜いものだと思い込んでしまいがちですものね。

鈴木瑛美子:そうなんですよね。でも、自分の体型が嫌いな自分が嫌になったんです。本当は自分のことを大好きでいたいし、ありのままの私を愛したいのに、って。

──その気付きは、かなり大きな一歩ではないでしょうか。

鈴木瑛美子:はい、ちょっとずつ気持ちも変わっていって、最近では毎日トレーニングをしています。日々しっかりプランをこなして、少しずつ効果が出ていることを実感してるんです。そんな中で、今回のシングルの3曲をよく聴いているんですよ。やっぱり歌っている自分のことは好きだし、自分にとっていちばんの武器は声。自分の歌声を聴くと自信が出てくるような気がする。

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