【インタビュー】室田夏海、これまでの自分をまとめた瑞々しい1stミニアルバム誕生

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シンガーソングライター室田夏海が、7月14日(水)に1stミニアルバム『そばにいなくてもかわらないものがある』をタワーレコード限定でリリースした。島根県松江市出身の彼女は、<New Acoustic Camp 2019>の出場権をかけたオーディションでグランプリを獲得、OAUとの共演を果たすなど注目を集め、東京へと拠点を移して活動を続けている。コロナ禍でライブ活動が制限される中で完成した今作は、編曲と制作をゆず、LiSA、須田景凪などを手掛けるPRIMAGICが担当、Benthamのオゼキタツヤが初めて他アーティストの曲を手掛けた「人魚になって」を含む5曲を収録。瑞々しい感性を感じるメロディライン、歌詞に、様々な楽器や打ち込みも使われた緻密なアレンジが施され、1stミニアルバムにしてじつに完成度が高い作品となっている。そして、閉塞感漂う状況から生まれた曲もありながら、その歌声はとても軽やかで力強い。現在に至るまでの道のりと、楽曲について本人に話を訊いた。

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■いつも音楽が流れているか誰かが歌っていた

──1stミニアルバム『そばにいなくてもかわらないものがある』発売おめでとうございます。すごく完成度の高い作品だと思いました。ご自身はどう感じていますか。

室田:ありがとうございます。すごく素敵にアレンジしてもらったりして、自分でもビックリな1枚です。

──もともと、歌うのはずっと好きだったんですか?

室田:もう記憶にないぐらい小さい頃からずっと好きでした。歌は母親がすごく好きで、おばあちゃんも歌うのが好きだったんです。家だといつも音楽が流れているか誰かが歌っているかっていう環境だったので、自分もそれを真似して歌うのが好きになったのかなって思います。学校の催し物で、友だちにピアノを弾いてもらって全校生徒の前で1人で歌ったりもしていました。高校生の頃から音楽をやりたいなと思うようになって、ギターを弾くようになったりライブハウスに行くようになったんです。

──その頃はどんな音楽に影響を受けましたか。

室田:最初にギターを持ったときは、当時みんながmiwaさんを聴いていて。作詞作曲もしているし、ギターを弾いて歌ってるということで、そういう弾き語りの女性シンガーを聴くようになりました。そのうちに自分のオリジナル曲も作るようになって。

──最初に作った曲は覚えてます?

室田:覚えてます。一生ライブでは歌わないですけど(笑)。世間を嫌っているような歌でした。「世間に納得がいかない!」みたいな曲を書いてました、15、6歳の頃に(笑)。

──思春期真っ盛りな感じで(笑)。反抗期とかあったんですか。

室田:壁を殴るみたいな反抗期はなかったですけど、結構爆発型で。平静を装って急に「ああっ!」って怒ったりはしてました。学校では陽気に過ごしてましたけど、進路とかで一番悩む時期だったので、家で爆発することがたまにありました。そういうイライラが1曲目の社会に納得がいかないような歌になってしまったのかと(笑)。でも人には聴かせたことはないです。絶対にこういう曲は作らないって封印しました。


──人前でギターを弾いて歌ったのは?

室田:ライブハウスでやった高校のイベントで、「ちょっとやってみなよ」みたいなノリで歌わせてもらいました。バンドはみんながいるけど、弾き語りは1人ぼっちなので心細くて。私が止まったら全部止まるし、すごく怖かった覚えがあります。でも回数を重ねるごとにほめてもらえたりとか、学校の友だちもライブハウスに観に来てくれたりとかするようになってたんです。オリジナルを人前で歌ったのは弾き語りを始めてから1年後ぐらいで、ちょっと時間がかかりました。

──そのうちに、音楽をやって生きて行きたいなって思うようになったのでしょうか。

室田:ギターで弾き語りをするようになってからというよりは、小さい頃からずっと歌を歌いたいなと思っていたことと、高校生ぐらいから曲を作るのも面白いなっていう気持ちになって、自然とそうなっていったんだと思います。

──<New Acoustic Camp 2019>のオーディションでグランプリを獲得していますが、これはどんなオーディションだったんですか。

室田:<New Acoustic Camp 2019>の出場権をかけたオーディションで、渋谷で開催された<New Acoustic Camp>のプレイベントで最終審査があったんです。それまで友だちとフェスに行ったりしたことはあったんですけど、やっぱり出てみたいという憧れがあって。<New Acoustic Camp>に出演できたらいいなって思って応募しました。

──見事グランプリを獲得して出演できたわけですが、いかがでしたか。

室田:野外ですごく天気が良い中で、人生で一番のピークを感じるぐらいにめちゃくちゃ緊張したんですけど(笑)、すごく気持ちが良かったです。3曲歌わせてもらって、1曲はOAUのみなさんにもバックについてもらって。その曲は「ただいま」という曲で、それまではちょっとセンシティブな気持ち、暗いような気持ちで歌っていたんですけど、OAUのみなさんに演奏してもらうことによって、前を向けるような曲になったんです。清々しい朝の中でそういう曲を歌えたことがすごく自分の中では嬉しくて。曲に対する自分の気持ちも変わったりして、良い経験になりました。

──そのステージを契機に今に至るわけですね。

▲室田夏海/『そばにいなくてもかわらないものがある』

■それぞれの年齢の自分のオムニバスアルバム

──1stミニアルバム『そばにいなくてもかわらないものがある』に入っているのはどんな曲たちなんですか。

室田:これまで自分が作ってきた中で、バンドのアレンジをしてほしいと思っていた曲だったり、19歳ぐらいに書いた曲、最近書いた曲もあって。テーマ、コンセプトがあるというよりは、それぞれの年齢の自分のオムニバスアルバムみたいな感じです。

──編曲をPRIMAGICが担当しているということですが、「夏よとかして」なんかは打ち込みで他の曲とはちょっと違いますよね。

室田:「夏よとかして」は、最初の段階で弾き語りじゃなくて、私が家でちょっとピコピコ作ったデモを元にアレンジしてもらいました。なので、私が入れたシンセサイザーの音を少しだけそのまま使ったりしています。曲ごとに具体的にというよりは、抽象的に「こんな感じで」というイメージを伝えて編曲してもらいました。弾き語りを元にしている曲が多いんですけど、曲を作るときに、弾き語りだけじゃなくて、自分では弾けないけどキーボードの音とかが一緒に思い浮かぶことが多くて。バンドサウンドにも興味があるので、曲ごとにそういう要素も入っています。

──1曲目はリード曲の「ザ・ビーチ・ボーイズ」。思い切ったタイトルですね。

室田:思い切らせてもらっております(笑)。2019年の大学4年のときに作った曲です。この曲はこういう感じの話を高校生の頃に聴いたんですけど、それを思い出して想像を膨らませて大きくした感じの曲です。


──実体験だけじゃなくて、想像して書くことも多い?

室田:たぶん、本当に思った気持ちがあって、そこから想像している感じだと思います。全く何もないところから曲を作ることはないですね。

──この曲はどんな場所でどんな関係の相手を思っているのかとかは語られてないところが面白いですね。それをザ・ビーチ・ボーイズの音楽を間に入れて表現しているという。

室田:彼とか彼女とか、三人称を使ったのが初めてなんですよ。「君」というよりは、彼っていうちょっと距離感のある表現をしているんです。曲の中でザ・ビーチ・ボーイズの音楽も好きになっているんですけど、結局なんで好きになったのかというと、彼が好きだったものだから好きっていう感じです。

──この曲をリード曲にしたのはどうしてですか?

室田:弾き語りで歌っていたときから、まわりから褒められることが多くて。それで「あ、良い曲なのかもしれない」と思いまして(笑)。バンドでやりたいと思っていたので、その願いが叶いました。

──メロトロンとか、結構細かいところで色んな音が鳴っていて、すごく豪華なアレンジですよね。

室田:本当に豪華なアレンジで、みなさんに感謝したいです。出来上がったら、いよいよバンドでやっている音源がリリースできるんだっていう胸が熱くなる感じがありました。嬉しかったです。

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