【インタビュー】大塚紗英の本音
7月14日に2ndミニアルバム『スター街道』をリリースした大塚紗英。2020年2月のデビューミニアルバム『アバンタイトル』同様、今作でも全楽曲の作詞と作曲を手掛けていて、個性的な着眼点と天性の才能をより一層輝かせながら、ソングライターとしてのたしかな成長を感じさせる6曲を作り上げた。
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『BanG Dream!(バンドリ!)』の主人公バンド「Poppin’ Party」のリードギター・花園たえ役として広く知られるようになった彼女だが、ソロアーティストとして2作目を完成させるにあたり、シンガーとして、ソングライターとして、また“大塚紗英”という1人の人間として、どのような心境で臨んでいたのだろうか。
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■触られたら泣き出す子供くらいのテンションで生きている
──ミニアルバム『スター街道』が完成しました。今、紗英さんはどんなモードですか?
大塚紗英:最近、私は好かれたいんじゃなくて愛されたいんだなってことに気づいたので、飾ることをやめたんです。飾らないで愛してもらえるものをとことん大事にする。なぜなら、以前の私はまだ若くてキャリアもなくて、ただの“1人の女の子”だったけど、今は自分の名前と責任があって、自分が作るものに対しての責任がある。となった時にそこで嘘をつくと、作品まで違ったものの捉え方で見られてしまうから。
──何もこれまでが嘘だったというわけではなく、飾らない自分でいたいと思うようになったということですよね。
大塚紗英:はい。こういう言い方もどうかと思うんですが、わかる人にしかわからないと思うんです。逆にいうと、それをわからないと思う人には、わからないと思う人の「わかる」があるわけで。しょうがないと思うんですよ、わかり合えないことも。だからそういう時は「なるほど、そういう考えなんですね」と受け止めた上で、「でも私はこうなんですよ」ってスタンスでいる。
──がむしゃらに曲を作ることもある意味では吐き出し口になると思うんですが、物作りをするにあたっては、メンタルのバランスもすごく大事ですよね。
大塚紗英:確かに作らなきゃいけないとなるとスイッチは120%切り替わるんですけど、そもそもデフォルトで80%くらい、そこで生きているんですよ。だから常に、触られたら泣き出す子供くらいのテンションで実は生きているんです。
大塚紗英:活動の仕方や私自身の見地として、たぶん私は人よりも取り繕うのがめっちゃ上手いんですよ。辛くても、それを悟られずに笑うというスキルを持っている。ただすごく脆くて薄い膜だったりするから、衝かれるとガーッと出ちゃうんですけどね。
──でも誰からも好かれて平均点を狙って生きている人は、きっとこういう作品は作らないと思うし。
大塚紗英:ありがとうございます。だとしたら報われました。
──自分らしく、嘘のない作品を作ることができているからこそ、胸を張ってこういう取材の現場で発言できているんだと思います。そうじゃないと、『スター街道』なんて突き抜けたタイトルは付けないですよね。
大塚紗英:あははは!ありがとうございます(笑)。
──しかしこのタイトル、英語でかっこいい感じの言い回しもできそうな言葉ですが、あえてカタカナと漢字にしたんですか?
大塚紗英:候補としては英語表記のものも考えていたんですが、やっぱりこれが自分を言い表している気がして。私、日本語をすごく大事にしているんですよ。それが、私が海外に行かない理由でもあると思うんですけど。アルファベットは26文字だけど、日本語には50音あって、破裂音や鼻濁音などのレパートリーもあって、さらに漢字、ひらがな、カタカナという感情の幅がある。その中でも特に、私はカタカナが好きなんです。カクカクしていて、一番シンプルで強い文字だと思うし、カタカナって世界の言葉を翻訳するために作られた、万国共通の感情表現だと私は思っているんです。ちなみにこの考え、初めて人に喋りましたけど(笑)。
──なるほど!たしかにどんな国の言葉も、私たち日本人は一旦カタカナに置き換えて認識する場合が多いですね。
大塚紗英:自分の中にあるエッセンスと、それを視覚化した時のマッチングが非常に良いんです。だからカタカナが良かった。「街道」とつけたのは、私はスターになるよじゃなくて、スターになるという物語の中に答えがあるよっていう意味です。それもまぁ、スターになるという前提でつけているタイトルなので、うまく行かなかったら……と思うと、めちゃくちゃイキっちゃって怖いんですけど(笑)。
──だけど今年4月のライブ<SAE Vo.yage! vol.0〜出航!〜>で発表した時のファンの皆さんのリアクションもそうだし、情報が解禁されてからのSNSの反応を見ていても、皆さんすごく納得されているというか、らしさが伝わってるんだなと感じていますよ。
大塚紗英:だとしたらすごく嬉しいです。
──ジャケットが3種類あるというところにも、この作品に込めた思いや強いメッセージのようなものを感じているんですが、その点についてはどうですか?
大塚紗英:まず、アートワークをお願いした吉野さんからギターを持ってもらいたいというアイデアをいただいたんです。世間のイメージからしてもすごく納得がいくものだし、めちゃくちゃかっこよくなるだろうなと思ったので概ね大賛成だったんですが、正直、ギターは私のコアにあるものではないんですね。確かにすごく練習をしているからそこそこの技術はありますが、私はまず鍵盤で考えてそれをギターの基盤に置き換えているから、ギターで物事を考えて何かを表現するいうことをやってないんですよね。だけどアコギはこれからもライブなどで使っていきたいし、何よりも愛情を持って出していただいたアイデアを否定したくはなかったので、どうしようかなって考えたんです。
▲ライブ盤『スター街道』
▲MV盤『スター街道』
▲CD ONLY盤『スター街道』
──その結果?
大塚紗英:シンプルに、全部持っちゃおうと(笑)。
──それでギター、マイク、ピアノという3つのアイテムがフィーチャーされているんですね。
大塚紗英:私は歌を歌う人で、ハンドマイクでライブをするというのが自分にとって一番大事だから、それを通常盤とサブスクのジャケにしました。ハンドマイクでライブをしているんですっていう、私の自己紹介です。ピアノはライブ盤。ピアノでずっと曲を作っているし、アーティスト活動するにあたって欠かせないものを聞かれたら鍵盤なので、一番コアな人が買ってくれるライブ盤です。ギターはミュージックビデオ盤なんですが、まずギターを持ってる、いわゆる「さえチ」と呼ばれている人が好きだって言ってくださる方もいて、そういう他の人から見た視点もなくしちゃいけないなと。あとはファンクラブに入ったり毎回ライブに来てくれたりして、たくさんの時間やお金を使ってずっと私を応援してくれている人が、3枚集めるよってことで最後に手にするディスクがギターであるっていう部分にも、すごく意味があるんですよね。私の中では。
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