【コラム】活動休止中のMrs. GREEN APPLEから届いた“フェーズ2”ティザー動画が示すものは?

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7月8日の夜9時ちょうど、1本のイメージティザー動画が公開された。

◆Mrs. GREEN APPLE 動画 / 画像

そこに描かれていたのは、大航海時代を彷彿とさせるアンティーク調の航海図と“M”字形の島、そしてラストで秒針の音と共に浮き上がってきた『Mrs. GREEN APPLE WILL CHANGE』『Be Back in 2022』の文字。一年前の7月8日に、突如として“フェーズ1完結”を宣言し、活動休止期間に入ったMrs. GREEN APPLEからの、初めてとなる“活動再開”の公式メッセージであった。

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▼Mrs. GREEN APPLEは
どのようにグループの規模を変えるのか?

7月に入り、SNSやさまざまなメディアで、バンド解散説を含めていろんな憶測が飛び交ったが、Mrs. GREEN APPLEが来年2022年に活動を再開するという一報に安堵したファンは多かったことだろう。しかし同時に、「どのように活動を再開するのか?」は、いまだベールに包まれたまま。筆者自身も、バンド関係者、さらにはあわよくばメンバー本人への取材を試みたが、願いは叶わず、手元にある情報は、ファンが目にしたものとまったく同一のイメージティザー動画に加え、バンドが所属するレーベル、ユニバーサル ミュージック合同会社からのプレスリリースのみだ。

プレスリリースとは、レーベル(つまりは、Mrs. GREEN APPLEサイド)が、メディアに向けて発信する公式情報。これを基に、各メディアはニュース記事を制作するのだが、今回のプレスリリースには、以下のような非常に気になる一文が記載されていた。

「Mrs. GREEN APPLEの音楽・エンタテインメントを世界中に展開する準備をしている中、いよいよその実現に向けて、グループの規模を拡張・拡大させる」──ユニバーサル ミュージック合同会社プレスリリースより

これは、2022年にグループの形態が変わるという“公式な”アナウンスだ。加えて、オフィシャル・サイトのプロフィールページも「Coming Soon」という表記に変更された。つまり、“フェーズ2”で紹介すべきMrs. GREEN APPLEについての経歴は、今までとは根本的に内容が変わるという意味合いだ。ではそれは、果たしてどのような形態へと変わっていくのだろうか。筆者が過去に行ったMrs. GREEN APPLEのメンバー、あるいは関係者への取材内容に加えて、公開されたイメージティザー動画の中身を踏まえて、考え得る可能性を考察してみたい。


▼ティザー動画に秘められた
ヒントを読み解く

まず、イメージティザー動画を改めてじっくりと見てみよう。最初に中世ヨーロッパの一室を思わせるような部屋が映し出され、テーブルの左端にはロウソクが灯され、右端には古びた地球儀とアコースティックギターが見える。

カメラアングルがテーブルの上へと切り替わると、活動休止前、“フェーズ1”最後のオリジナルアルバムである『Attitude』など5枚のCDとチェスの駒が見えてくる。重ねられたCDの一番下は、3rdアルバム『ENSEMBLE』であることがはっきりと分かるが、上から2枚目は、おそらくメジャーデビュー作であるミニアルバム『Variety』、その下はインディーズでの初の作品『Introduction』ではないだろうか。残念ながら、上から4枚目のCDが何なのかは判別できなかった。なお、チェスは本来6種類の駒が使われるが、動画では5個しか確認できなかった。これは、メンバーの5人を表しているのだろうか。

そして、次のシーンからフューチャーされるのが、Mrs. GREEN APPLEのロゴを模した航海図と、その周囲を巡るバイキング船のような帆船だ。その島には、バンド名の由来とも言えるリンゴの木や、ゾウ、ユニコーンといった動植物を見ることができる。ゾウはメジャー1stアルバム『TWELVE』、ユニコーンは先にも触れた4thアルバム『Attitude』のジャケットで描かれているものであり、その島を帆船が航海している様は、まさにこれまでMrs. GREEN APPLEが進み続けてきた未知なる世界への旅を表しているかのようだ。

なお、リンゴの木と言えば頭に浮かぶのが、旧約聖書に出てくるアダムとイヴの話だ。エデンの園には2本の木があり、1本は知恵の樹、もう1本は生命の樹で、知恵の樹の果実は食べることを禁じられていたが、アダムとイヴがその禁断の果実を食べてしまう。この逸話の詳細はここでは割愛するが、“フェーズ1”最後のアリーナツアーのタイトルが『エデンの園』と銘打たれていたことを考えると、非常に意味深だ。

すると、これまで空白であった周囲にも大小の島々が現れ、航海図は青い海と緑が生い茂るリアルな世界へと変貌する。

これはかつて、地球に存在していたパンゲアという巨大な超大陸が、地殻変動により分裂・移動し、現在の五大陸となったような変化を表しているとも捉えられる。しかし筆者は、むしろ、コロンブスがアメリカ大陸を発見した比喩のように思えてならない。

コロンブス以前から、アメリカ大陸は確実に存在していた。中世のヨーロッパ人は、大西洋の果てがどうなっているのか、それを知らなかっただけなのだ。だから、当時ヨーロッパの地図は海の果てが空白になっており、その未知なる世界へと旅をしたコロンブスがアメリカ大陸を発見したことで、空白の部分に新たな島々が記されるようになっていったのだ。

Mrs. GREEN APPLEは、まさに大航海に通じるような未知なる世界への旅を行った。それが“フェーズ1”であり、その過程で新たな大陸を次々と発見していく。そして、その新しい大陸へ向けた新たな旅立ちこそが、“フェーズ2”ということなのではないだろうか。

では、新たな大陸とは、一体何なのだろうか?

これを推測するのはとても難しいが、現時点で筆者が想像するのは、2つのパターンだ。

▼新たな大陸が表すものとは?
“フェーズ2”の可能性を探る

Mrs. GREEN APPLEはデビュー時から、その目標のひとつとして『NHK紅白出場』と明言するほど、日本ポップスのど真ん中を目指した曲作りを行ってきた。それと同時に、彼らのアンテナは、ワールドワイドなポップスのトレンドに極めて敏感であった。

これまで彼らへ取材した際、メンバーの口から頻繁に出てきたアーティストと言えば、ワン・ダイレクションやジャスティン・ビーバー、フィフス・ハーモニーなど、世界的に活躍する世代の近いアーティストたち、さらにはケイティ・ペリー、ゼッド、The 1975など、いずれも最先端のポップスシーンを賑わす面々の名前であった。そして、そのエッセンスを、Mrs. GREEN APPLEは積極的に自身の楽曲に取り入れようとしていたのだった。

その最たる例が、「WanteD! WanteD!」だ。この曲は当時、一部では“Mrs. GREEN APPLEによるEDMへの挑戦”的に語られもしたが、むしろ彼らは、世界的に主流となっていたEDMを、いかにJ-POPファンに違和感なく届けられるかという点に挑戦していた。つまり、日本の中から世界の音楽トレンドに挑戦したのではなく、世界のトレンドをいかに日本人好みにアレンジできるかといった挑戦であり、彼らの視点は、既に日本の外側にあった。

そういった流れを鑑みても、“フェーズ2”のMrs. GREEN APPLEは、日本国内に限定しない活動へと拡張させようという指向は大いに納得できる。実際に今年1月、フロントマンである大森元貴は、K-POPアイドルグループTOMORROW X TOGETHERに楽曲「Force」を書き下ろしている。あくまでも大森個人のソロ活動の一環ではあったが、バンドの活動範囲の拡張という視点では、これもひとつの布石と言えるだろう。

そういう視点でイメージティザー動画を見ると、Mrs. GREEN APPLE島から繋がる4つ島(大陸)は、例えばアメリカ、UK、アジア、そして日本であり、“フェーズ2”ではワールドワイドな活動を行うという予告とも受け取れる。そこに、今年2月に始動した世界規模の新プロジェクト『Project-MGA』が関わってくることは間違いない。これが、まず想像し得る1つめのパターンだ。

もうひとつ考えられる可能性として、“フェーズ2”では、バンド、すなわち音楽に限定されないアーティスト活動を展開するのではないかといったパターンだ。

ここで注目したいのは、冒頭で紹介したプレスリリース。再掲すると、ここには「グループの規模を拡張・拡大させる」と書かれている。“バンド”ではなく“グループ”という表現がされているのだ。

つまり、音楽を作り、演奏を行うといったバンドでの活動はこれまで通り行うものの、“フェーズ2”では、例えば、映像監督やファッションデザイナー、アニメーター、フォトグラファー、文筆家など、異ジャンルの才能を巻き込んだ形でMrs. GREEN APPLEというプロジェクトを進めていこうとしているのではないだろうか。

“フェーズ1”では、5人のバンドが、イコールMrs. GREEN APPLE(“M”字形の島)そのものであった。そこから“フェーズ2”では、バンド以外の才能、あるいは文化といった新大陸とつながっていくことで、壮大なカルチャー/クリエイター集団を目指しているのかもしれない。これはまさに、「グループの規模を拡張・拡大」という文言と一致してくる。

このクリエイター集団もまた、当然ながら日本国内に限定したものでないことは明らかであり、だとすると、パターン1とパターン2を融合させたパターン3も、十分にあり得そうだ。

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このように2つのパターンを考察してきたが、一方で、いつも我々を驚かせ続けてきたMrs. GREEN APPLEが、安易に第三者が想像できる範囲のことを、わざわざ一年間もの時間をかけて準備しているとは到底思えないことも、また事実である。こうした周囲の考察を軽々と上回ったものを、ある日突然、目の前に提示してくれるのこそが、Mrs. GREEN APPLEなのだ。

彼らがどのように活動を再開し、どんな“フェーズ2”を我々に見せてくれるのか。2022年のその時まで、楽しみに待ちたいと思う。

文◎布施雄一郎


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