【ライブレポート】-真天地開闢集団-ジグザグ、<5周年記念禊>で「祈りを捧げてください」

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謎に包まれたバンドでありながら、気になる存在として世間の注目を集めている-真天地開闢集団-ジグザグが<慈愚挫愚 5周年記念禊 ~ハキュナマタタ~関東編>と題して6月5日にKT Zepp Yokohamaで禊(ライヴ)を開催した。同公演は<関西編>と題して、Zepp Osaka Bayside振替公演を6月23日に実施、大盛況のうちに終了した。その関東編の詳細レポートをお届けしたい。

◆-真天地開闢集団-ジグザグ 画像

“悪霊を打ち払い、愚かな者に手を差し伸べる”をコンセプトに2016年に結成された-真天地開闢集団-ジグザグは、命 -mikoto-(Vo, G)、龍矢 -ryuya-(B)、影丸 -kagemaru-(Dr)の3人から成る集団だ。2020年には日本テレビ系『有吉反省会』に出演し、ヴィジュアルと素顔のギャップで視聴者を混乱に陥れ、東京・赤羽ReNY alphaで初の配信禊を敢行。このコロナ禍にしてバンド史上最も大きな会場での禊だったにも関わらず、チケットを入手できない参拝者(観客)が続出。“いったい何者?”と彼らに興味を持つ人は増え続け、禊を行った後に代表曲「復讐は正義」のYouTube視聴回数は300万回を突破するに至った。

そして多くの参拝者たちが集ったKT Zepp Yokohamaでの禊は予想を裏切らない、いや、予想を上回るインパクトだった。単純に面白い。生禊初体験者が見ても楽しめるエンターテインメント性がありながら、命-mikoto-、龍矢-ryuya-、影丸-kagemaru-は実力派揃いの精鋭たち。どんなにアレンジが複雑であろうと曲のメロディが初聴きでもポーンと飛び込んでくる。


開演前のアナウンスを担当したのは命-mikoto-だ。「コロナ対策を徹底し、安全に禊を楽しんでいただくため、ヘッドバンギング、ジャンプ、タオル、団扇、扇子などは禁止」などの注意事項が述べられ、途中で「どこまで読んだっけ?」と場内を苦笑させる。何とか読み終わると拍手が起こり、いよいよ開幕だ。

暗転し、幕開けの曲は「あっぱれ珍道中」。のっけから和風のイケイケナンバーを投下する-真天地開闢集団-ジグザグであったが、すぐに中断。機材系トラブルかと思いきや、そうではなかった。静かに禊に参戦する参拝者たちを目の前にした祈祷師・命-mikoto-の心に、戸惑いが生まれたようなのだ。

「ジャンプしたらあかんって言ったけど、別に動くなって言ってるわけじゃないからね。“歌舞伎モッシュ”っていうのがあんのよ。本当ならグワーって(実践付き)いくんやけど、できひんから。気持ちの中で10メートルぐらいいってもらって。頼むよ。せっかく会えたんだから心はオープンに。この気持ちを爆発させような」──命-mikoto-

再度、ステージ暗転。イントロで「待たせたな。久しぶりやね。あんまり動いたらあかんけど、気持ちの上では10メートル、実際には2ミリ! 行くぜ!」と煽った。“2ミリって!?”と心の中でツッコミを入れつつ、賑やかマックスなナンバーから、禊の始まり。影丸-kagemaru-のバスドラが力強く響き、龍矢-ryuya-が軽やかなステップを踏みながら5弦ベースを鳴らす。命-mikoto-がステップではなく、シコを踏むパフォーマンスも披露するなど、コロナ禍でなかったら、どんな光景が客席で繰り広げられたんだろうと想像せずにはいられないステージングも、“いったい何者?”感を増幅させた。また、メンバーがメイドの格好をしたミュージックビデオも話題となった「メイドカフェに行きたくて」は、哀愁のあるメロディからテンポアップしていくナンバーだ。ハードロックとJ-POPとアイドル路線が混在するような目まぐるしい展開なのに、サビは一度聴いたら歌えるほどキャッチーである。“-真天地開闢集団-ジグザグはヴィジュアル系なのか、ギターロックバンドなのか、J-POPなのか!?”なんてことを考えたら楽しめない、ということを前半にして悟る。


ピアノで始まる「コノハ」は最新ミニアルバム『ハキュナマタタ』収録曲。BUMP OF CHICKENの影響を感じさせるような疾走感たっぷりのナンバーにリズム隊のメタル魂が注入されている印象だ。ソングライターである命-mikoto-の声量のあるボーカル、彩り豊かな表現なくしては-真天地開闢集団-ジグザグは語れないと考えているうちに、禊はどんどん進行していく。チャイナ風イントロの「ニーハオ ワンタンメン」もポップだが、間奏で命-mikoto-が雄叫びを上げ、デスメタルと化し、急に激辛になるのが面白い。そして、“たとえ絶望に潰されそうでも春は来る”と歌う「其れでも花よ、咲け。」は命-mikoto-の透明感のあるボーカルと願いが込められたナンバー。いくつの声を持っているのだろうか。

「改めまして。我々が-真天地開闢集団-ジグザグだ! ついに決行してしまいましたね。いろいろな意見もあり、我々の中でもこれがいいことなのか、それともそうではないのか、葛藤がございまして、今、ここにいらっしゃる方々もライトな気持ちで来てる方々はあまりいらっしゃらないと思います。狭き門をくぐってきた方々だと思うし、“本当に行っていいのか…”とか考えたと思うんですよ。でも、気持ちとしてはものすごく嬉しい。直接、会いたかったからね。やるからには徹底して楽しみたいので、その代わりにできる対策をして、絶対にクラスターを出してはいけない。正直、盛り上がり足りんかもしれん。でも、会えたことで良しとしよう」──命-mikoto-

「とりあえず、私はものすごくハッピーですけど、皆さんはどうでしょうか?」と客席に問いかけ、返ってきた拍手に「よし!」と嬉しそうな命-mikoto-。恒例のコール&レスポンスができないならと「イエーッ!」の代わりに口を閉じて飛沫を飛ばさないように「んーっ」と返してもらうことを命-mikoto-が思いつき、実践してもらう一幕も。龍矢-ryuya-が「地響きのよう」と笑ったとおり、場内に響く唸り声。規制の中で楽しむことだってできることを示してくれた。


MCを挟んだ後は、じっくり聴くのも良しのセクションへ。ステージをピンクの照明が包んだ「さくら さくら」は“ヒット曲?”と思うほど普遍のメロディが光る曲だ。手数が多いタイプの影丸-kagemaru-とメロディックで太い低音を奏でる龍矢-ryuya-が、ストレートなポップチューンでは歌を活かすプレイに徹するなど、柔軟なアンサンブルを聴かせる。続いて、叶わない恋を歌った昭和歌謡テイストのメロディが印象的な「卒業」から、シャッフルビートにベースが地を這い、命-mikoto-がローボイスで歌う「あいのかたち」へ。オルタナティヴで重厚なミドルバラード「忘却の彼方」では命-mikoto-が熱唱。このバンドの守備範囲の広さに、またも驚かされた。

そんなシリアスなムードを一転させたのが命-mikoto-のMCだ。

「みなさん、とてもかわいいね。私がいちばんかわいいけどね。大丈夫。心の中で大爆笑してるって知ってるから。我々もかわいいんですが、この世でいちばんかわいい生き物は何かな、と思ったら猫かなと。だから、我々が猫になったら、もっともっとかわいいんじゃないかと思うわけですわ。想像してみてよ。高まるやろ。だから、みなさんにかわいいかわいい猫ちゃんになってもらうために我々が手本見せましょう」──命-mikoto-

と宣言したものの、「拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~ 」(『ハキュナマタタ』収録)に欠かせない猫耳カチューシャがうまく装着できず、龍矢-ryuyaにつけてもらう命-mikoto-。「みんなに猫になる魔法かけるからな。ミヤーン」と手拍子の仕方をレクチャーし、影丸-kagemaru-がお立ち台に立って猫の振りの見本を見せ、お尻を振ったり(猫忍者なので忍足もある)。曲に入る前に覚えることが盛りだくさんである(実際にはコロナ禍なので、控えめな動きしかできないのだが)。

「みんな、猫になる準備はできてんのか?」と命-mikoto-が叫び、3人が楽器を置いてお立ち台でキュートな振りで盛り上げる和風ゲームミュージック風ナンバーには、影丸-kagemaru-のDJタイムも盛りこまれ、幼稚園児や小学生の心も掴んでしまう振り切れ方。テンションが上がりすぎたのか、暗転すると命-mikoto-は自分がどこにいるのかわからなくなり、「どこや?」とメンバーに聞く天然ぶり。後半へと進むに従って-真天地開闢集団-ジグザグのカオスは加速していく。


ここから怒涛の激しいナンバーに行くのかと思いきや、甘酸っぱいメロディと洋楽テイストのサウンドが秀逸な「兎 girl」では命-mikoto-のギタリストとしてのセンスが光るアクト。イントロのギターとソロのフレーズにキュンとさせられ、場内をパステルカラーに染めたかと思いきや、いきなりスクリームで「Requiem」のヘヴィな世界に叩きこむ。龍矢-ryuyaのスラップと影丸-kagemaru-のパワフルなドラミングが絡み合い、命-mikoto-はデスボイスからファルセットまで自由自在に声を操る。閉塞した世界からの心の叫びとも言える「Guru」と最新作からの楽曲が立て続けに披露され、命-mikoto-が「いつか思いきり暴れてえな!」と叫び、「愛シ貴女狂怪性 」に突入した。

しかし、禊も佳境となったところで、またもや参拝者が困惑する事態が新たに勃発。イントロで同期が突如、フリーズしてしまったのだ。原因は影丸-kagemaru-がPCのOSをアップデートしたことに伴うトラブル。「こんなこともあるのが禊ですよ」と命-mikoto-が自分のPCを使うように指示し、MCで繋ぐが、話している途中でマイクを通して「あ、パスワード?」と自分のPCのパスワードを裏で伝えるなど、ここでも天然気質が明るみに。そんなこんなのハプニングを解決して演奏された「傷と嘘」は、涙なしでは聴けない名バラードで、真っ直ぐに歌い上げる命-mikoto-のボーカル力に参拝者は陶酔。天然だが、ただものではない。後半で「ホントなら、“みんなの声を聞かせてください”って言いたかったけど、いつかみんなと一緒に大きな声で歌えるように祈っててほしい。心の中で大きな声で歌ってほしい」と告げ、手を振る客席に「この曲作った時に大きなところでライヴできるようになったら、この曲をやろうと思ってて。ホンマ悔しいけど、祈りを捧げてください」と伝えた。

感動、笑い、興奮、驚きが全部乗せの禊はまだまだ終わらない。命-mikoto-がアコースティックギターを手にし、「本日は私、命のフォークワンマンリサイタルにお越しいただきましてありがとうございます。私のご先祖様から授かった名曲を披露させていただきたいと思います」と披露したのは最新作に収録されているキーウィシリーズの新曲「キーウィのさんぽ道 」だ。大物シンガーのモノマネで歌うという技で楽しませ、影丸-kagemaru-のドラムソロコーナーへ。終盤戦では「顔が好き」「夢に出てきた島田」「復讐は正義」と-真天地開闢集団-ジグザグの禊の定番曲を連続投下。


「今の曲(「復讐は正義」)も確かにジグザグの代表曲のような気もする。でも、ジグザグといえばキュート。上の階の方もわかるよな? 大丈夫やね。かわいいかわいい参拝者、行くぞ! コンコンコンコン キュートなオマエたちを見せてくれ!」──命-mikoto-

“コンコンコン”と言ったら常連の参拝者にはおなじみの求愛ダンスナンバー「きちゅねのよめいり」で、またもや会場の空気を入れ替えて煩悩を解き放つような「ええじゃないか」へ。「みんな、楽しかった? ありがとう! これで今日は大丈夫なはず! それでは、これにて終幕なり!」と感謝の言葉を述べ、禊を締めくくったのは、“必ず 僕らは共に 笑い合おう”と歌う一筋の光が照らすようなナンバー「Promise 」だ。ただただシンプルに良曲。この振り幅、ジグザグ恐るべし、である。

盛大な拍手の中、命-mikoto-のシルエットが浮かび上がり、生声で「愚かな者に救いの手を 愚かな者に救いの手を」と何度も繰り返す声が会場に響き渡った。-真天地開闢集団-ジグザグ、ヴィジュアル系のツボを押さえながら全方位で攻めてくる彼らは、この乱世に出るべくして出てきた集団なのかもしれない。

取材・文◎山本弘子

■<-真天地開闢集団-ジグザグ、慈愚挫愚 5周年記念禊 ~ハキュナマタタ~【関東編】>6月5日(土)@KT Zepp Yokohama セットリスト

01. あっぱれ珍道中
02. メイドカフェに行きたくて
03. コノハ
04. ニイハオ・ワンタンメン
05. 其れでも花よ、咲け。
-MC-
06. さくら さくら
07. 卒業
08. あいのかたち
09. 忘却の彼方
-MC-
10. 拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~
11. 兎 girl
12. Requiem
13. Guru
14. 愛シ貴女狂怪性
15. 傷と嘘
-MC- ~キーウィのさんぽ道~ 影丸ドラムソロ
16. 顔が好き
17. 夢に出てきた島田
18. 復讐は正義
19. きちゅねのよめいり
20. ええじゃないか
21. Promise

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