【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第108回「峯上城(千葉県)卓偉が行ったことある回数 1回」

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峯上城の最大の魅力、最大の見所である七ツ堀切、これを見るだけでも見学する意味がある最高な城だ。だが結論から言ってしまうと、この七ツ堀切を見学するのはかなりの危険を伴う。そんな私も軽い気持ちで子供と来ようと思っていたが、大人も子供もよっぽど身体能力と運動神経が良くないと無理。整備もされていないし道もない。だがどうしても七ツ堀切が見たかった。来たからにはこの目で見ないと意味がない。ロンドンに来たからにはアビーロードを裸足で渡らないと意味がないのと同じであるし、田舎者が渋谷に来たなら何が何でもハチ公は見とかねばというのと同じである。またしてもtvkの私の城コーナーで見学が可能になり、念願叶い見事来城。道無き道を行くとはまさにこのこと、超サバイバルだった。


築城は1530年代頃かと思われる。真里谷武田氏。相変わらず格好良い名字だこと。標高120メートルの横長の山に立てられた城で、大手から逆側は絶壁である。それをいくつもの堀切で分断している。入城する前の掲示板を超えた辺りの登り口がすでに堀切のように感じた。犬走りのような細い道、車1台がギリギリ通れる道幅が続き、たまに堀切が現れる。当時はもっともっと細い道だったはずだ。まあやっぱり犬走りだったと考えればわかりやすい。真っ直ぐ伸びる道はまさに大手道と言った風格を感じられる。最初の虎口の横にお墓になっている高台があるがここも当時は立派な曲輪。大手から敵を見張る曲輪と言えるだろう。ここにあるのは真理谷武田氏の末裔の方のお墓とのこと。そういうのグッと来るんだよなあ。

ここの虎口は大手広場のようなスペースがあり、おそらく番所が機能していたとイマジン。何度か曲がらせるような作りになっていて、更に上へ登って行くといよいよ城内だ。その先が三の丸的な広く平らな曲輪が現れ、真理谷武田氏の末裔である方々の民家が建っている。山に急にこういう平地が登場と城だなとつくづく思わされる。これは城マニアのあるあるだ。何でこんな山の上が急に平地になるのかと言えば、ずばり生活をしていた為である。仕切り土塁的なものもありつつ、もう一段上がる場所の入り口は大門跡とのこと。完全に民家の土地の中を見学させてもらっている状態。これは本当にありがたい。ご迷惑をおかけせず見学してもらいたいと思う。中には地主さんが見学を嫌がって立ち入り禁止にしたり、撮影禁止になってたり、モザイクやピー音を用意しても嫌がられる場合がある。ここから4段階曲輪を登ることとなる。少しずつ段になっているのは当時の位の差を表している。奥へ行けば行くほど住んでいた人間の立場と位が高いのである。現在は畑になっているがその途中に土塁や虎口も登場しとにかく飽きさせない。途中右に降りれる虎口があり、この先に尾崎曲輪がある。断崖絶壁の岩の途中には殿井戸という井戸があり、今も現役。ポンプを引いて台地上の民家に今も水を運んでいる。凄いな!尾崎曲輪の真逆の場所にある馬洗い井戸、東井戸も健在。山城だけに水の確保が要となるが自然の湧水に恵まれた最高の山城だったことが窺える。しかも岩が多く、湧水で岩が湿っており登ろうとしても滑りまくる。防御としても素晴らしい。一石二鳥どころじゃない。というか湿った滑った岩盤なんてエロ過ぎて登る気になれない。

この尾崎曲輪には溜池もあり、なんとも神秘。3つの溜池が存在するらしいが、見学の前日が大雨だったおかげで道が滑り、2つまでしか確認出来なかった。その先の堀切が全部見学出来なかったことが悔やまれる。この辺はもう映画のSTAND BY ME状態なワクワクが止まらない感じの地形であった。

城内を歩けばわかるが城にする為に自然が作った場所というくらい城を築城するのにぴったりな条件が揃いまくっていて、それに唸る。峯上城は城の良い条件を全部持っている。

山城だが、そこまでアップダウンがなく暮らしやすい。城の周りが湿地帯。水の確保が完璧。山城なのに平地のスペースがたくさんある。眺めが良いので敵もすぐ確認出来る。などなど言い出したらキリがない。素晴らしい城だ。

歌える、踊れる、パーフォマンスが出来る、ブルースハープが吹ける、マイクスタンドを格好良く使いこなせる。曲が書ける、詞が書ける、楽器が弾ける、文才がある、ファッションセンスがある、ほっといてもやる。期待しなくても勝手に頑張ってくれる、すべてにおいて仕事が早い、人当たりが良い、お願いすればすぐ曲を書いてくれる、歴史に詳しい、レディーファースト、気遣いが半端ない、結婚してもよっぽどモテる、などなど言い出したらキリがない。素晴らしい卓偉だ。

奥にある最後の2つの曲輪は藪が生茂り当時の面影は把握出来ないが、本丸と言える曲輪の土塁の上を歩くと排水溝の跡や、曲輪から土塁の中をくり抜いてある排水溝なども発見。これはなかなか気付けない。その部分には石が組まれていることも素晴らしい。音楽雑誌でデュランデュランのメンバーの首の髭のかすかな剃り残しを発見したような気分である。本丸の先端は見張り台のような、1500年代後半なら天守台とも言えそうな櫓台があり、現在は環神社が建てられている。ここは当時見張り櫓だったであろう。現在は木が生い茂っているが当時は眺めも良かっただろうし、城全体も見渡せる。全方角が崖っていうのも凄い。




で、ここからが本番だ。この環神社の真下、いわゆる搦手の先にこの城最大の魅力である七ツ堀切が存在する。まず最初は環神社の階段を下り、裏の犬走り的な部分から堀切まで降りようと思ったが、これがまた道が無く、いわゆる崖なわけで、撮影するにも危険と判断し、もっと城を下った曲輪から回り込むことにした。だがどの曲輪の横を見ても回り込む道がない。前日が大雨だったこともあって泥濘も半端ない。女性との泥濘は好きだが歩くには困難だ。スタッフ共々ネットに書いてある見学情報をその場で調べたが確実な情報が見つからなかった。地主の方に電話して聞いて見ると、尾崎曲輪の手前の段の仕切りにイノシシを捕獲する檻があり、その後ろの道をぐるっと裏から回る導線があるという。いざそこから探検が始まったのだが、これがもう本当にサバイバルだった。確かに道らしき道もたまに確認出来る。だが台風でなぎ倒された木がいくつも行く手を阻み、常に湿地帯の中を歩くしかない状況。だがこの道だからこそ見れたものもあり、岩盤を削った堀切も発見、しかも石垣もある。東側にも平らな曲輪が存在したのだ。来城する前にネット検索した峯上城の平面図にはこの辺りの曲輪や空堀、岩盤堀切は描かれていなかったのである。そりゃそうだ、こんな道を通る人なんていないはずだしな。これは新しい発見だった。音楽雑誌でデュランデュランのメンバーの首の髭のかすかな剃り残しを発見したような気分である。最初の掲示板に書いてあった倉屋敷というのがこの辺りの曲輪を言うのかもしれない。だが最初にも言ったように体力と好奇心と運動神経がないとお勧め出来ない。とにかく危険なのである。



泥だらけになりながらもなんとか環神社の真下にある七ツ堀切の一つ目の堀切に到達出来た。凄い深さである。しかも両サイドが絶壁だ。これは堀切を作るにも相当苦労したと思う。圧巻だった。だがここで終わりじゃなく、7つすべての堀切を撮影&見学しようと思ったのだが、これまた移動する道とスペースがない!スニーカーだと岩盤で滑ってマジで危ない。どちら側から次の堀切りに渡るか両サイドを良く見ながら判断しないと本当に危ない。そもそもここは攻められない為に作った堀切であって、堀切の上を橋で渡っていたわけでもなく、見張り役の導線になっていたわけでもないので本当に道がないのである。良くぞここまで徹底して7つも作ってくれたなと脱帽。意地悪にも程があるが、その徹底した防御が搦手を守り抜くぞというプライドだったのかもしれない。搦手から攻められたくないということと、地形的には本丸裏の防御が弱かったと自覚した上での七ツ堀切だったのかもしれない。凄い。とにかく凄まじい。「裏の防御が弱い」この響き、この上半期で一番の、ジワジワエロいで賞に認定。

城に興味がない人は7つ全部同じ景色じゃねえかよ、切っても切っても金太郎飴と同じじゃねえかよと思うかもしれない。違う、違う、そうじゃ、そうじゃな~い。違うのだ。本当に全部違うのだ。いや、やっぱり城マニアの自己満足かもしれない。でもよく見ると中にはちょっと切り方が雑な堀切もあるし、丸みを帯びた堀切もあるのだ。








7つ全部の堀切を見て感動していたがここから戻らなくてはいけないことを完全に忘れていた。帰りがマジでキツかった。トレッキングは帰りの事故が多い。来た道も戻りになると同じ道は辿れなかったり登れなかったりする。行きはなぎ倒された木を飛び越えたりしたが、帰りは木の下を泥だらけになりながら潜ったりもした。夕方になると極端に視界が暗くなるので朝からの見学をお勧めしたいし、晴れた日じゃないと本当に危険だということはお伝えしたい。前日が雨でなければ、環神社の裏を滑り降りて七ツ堀切を見学出来るのかもしれないがこれまた戻りが大変だとも思うので本当に気を付けていただきたいと思う。

ロケの前にカメラを抱えたスタッフと共に城の麓から登る道すがら、道路工事をしていた作業員の方と警備員の方に話しかけられた。「城は何もないけど撮影の絵的に大丈夫ですか?」これは城に詳しくない人からの質問のあるあるである。城と言えば天守閣があることをイマジンする人が多い。石垣ならまだしも土塁だけとなると単なる丘、単なる山としか思わないらしい。まあこれは仕方ない。

泥だらけになり、ロケ後に山を降りて城の麓で引き続き道路工事をしていた作業員の方と警備員の方に話しかけられた「なんか…大丈夫?」「城はあった?」「そんな泥だらけになる城なの?」

「最高の城だったんで冒険と散策してたら泥だらけになったんです」と笑顔で伝えた。

マダムの警備員の方が聞いてきた。「ところで何処のテレビ局って言ってたっけ?」
「神奈川のtvkです」と答えるとマダムは食い気味に

「え?あの脱毛の?」とマダム。

それはお母さん、エステティックTBCの方だと思います。

あぁ 峯上城、また訪れたい…。

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