【ライブレポート】the quiet room、<You e.p.>リリースツアー最終日「次やるときは全部投げてやるぜ!」

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the quiet roomが5月22日(土)、渋谷TSUTAYA O-EASTで<[You e.p.]Release Tour2021>のファイナルを行った。

◆the quiet room 画像

ライブとそれ以外が同じだということはまずあり得ない。だから音やビジュアルしか知らなかったバンドのライブに行く時は、あれこれ想像する楽しみがある。the quiet roomの、歌のバランスを大きめにしたシングル曲、たいていは女の子のイラストをあしらったジャケット、そして若手女優やタレントさんをヒロインに据えたMVは総じてポップなイメージだ。さて、ライブ観戦でそこにどんな印象が加わるのか?




開演前、場内に流れていたのは (星野源も絶賛していた)アメリカのバンドWhitneyのアルバム。フォークロックと呼ばれている彼らだが、歌だけはダンストラックにのってもおかしくないソウルを持っている。そのアコースティックな部分を引き継ぐかのように生ギターをあしらったオープニングSEにのってメンバー登場。フロントはベースの前田翔平、ボーカル&ギターの菊池遼、ギターの斎藤弦という現メンバー。後方にサポートのキーボードとドラムが陣取る。

1曲目「Fressy」、2曲目「キャロラインの花束を」。すでに耳にしていた代表曲と最新シングル曲だけど、スタジオ録音とはぜんぜん違った。とにかく音が大迫力。前田のベースと女性ドラマーのリズム隊コンビのプレイが重い重い。気が強そうな斎藤の、そのキャラを体現したようなギターも熱い。そして3曲目「平成ナイトコウル」。イントロからバシッと整ったアンサンブルがバンドとしての練度を伝えていた。



こういう状況にもかかわらず集まってくれたお客さんへの感謝のMCがあり、2ブロック目へ。「Landscape」では彼らがダンスロック的な側面をも持つことを教えてくれた。続く「シュガータイム」と「恋を終わらせよう」では菊池がアコースティックギターに持ち替える。特に後者は凝ったコードの爪弾きから始まって、彼の音楽性の奥行きを垣間見れた。

ツアーを振り返っての全員のトークを経て「ここからは大人っぽいクワイエットルームを」という振りが。菊池はボーカルに専念して時にしゃがみ込んで歌ったりしながらミドルなダンスチューン「グレイトエスケイプ」。途中で拍子が変わるなど感情の起伏マックスな「Roll」。皮肉という意味のタイトルさながらハードな「アイロニー」。彼らのアナザーサイドをダイジェストしたブロックだった。




1月にリリースした「you e.p.」のツアー前にさらに新曲「キャロラインの花束」が出来てしまったぐらいバンドはいい感じ、というMCから後半戦。再びセトリは前のブロックとは別人のような「夢で会えたら」「Number」「Instant Girl」といった軽快でポップなナンバーたちに戻っていった。

本編最後のMC。ソールドアウト公演にもかかわらず所々に空いている席を見つめながら菊池は言った。「チケットを買ったのに来れなかった人が来れる日がくるまで、がんばります!」。確かな視点から生まれた新鮮な言葉だった。それから“一歩を踏み出すための曲”「You」へ。エンディングの拍手がそのままアンコールのソレにつながり、彼らは再登場してゆく。



8月に初のフルアルバムがリリースされることなどを発表しつつアンコールは、(今日しかやらない曲)「Humming Life」と「パレードは終わりさ」の2曲。「パレードは終わりさ」のシンガロング部分はあたかもお客さん全員が歌っているように聴こえた。菊池も「声は出せないけど届いてます」と叫んでいた。

立ち去り際。菊池と斉藤がそれぞれ複数用意された中から1枚づつ自分のピックを持って、客席に投げようとする。が、顔を見合わせて「いいのかな?」「やめとこ」となった。けれども菊池はすかさず叫んだ。「次やるときは全部投げてやるぜ!」

取材・文◎今津甲
撮影◎中山優司

■<[You e.p.]Release Tour2021>5月22日(土)@渋谷TSUTAYA O-EASTセットリスト

01. Fressy
02. キャロラインの花束を
03. 平成ナイトコウル
04. Landscape
05. シュガータイム
06. 恋を終わらせよう
07. グレイトエスケイプ
08. Roll
09. アイロニー
10. 夢で会えたら
11. Number
12. Instant Girl
13. You
encore
14. Humming Life
15. パレードは終わりさ

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