【インタビュー】結成25周年のCONCERTO MOON、強靭な精神力で作り上げた最新作

■芳賀との2枚目の作品として満足出来るものに

──これまでの楽曲も相当ある中で、リレコーディングの曲はどうセレクトされました？

島：基本的には、芳賀が歌い直してくれたら新たな魅力がプラスされるのではないかと思うのと、ライブでプレイしていたり、リハーサルの中で芳賀が歌って、よりメロディが強調されるなと手応えを感じたのが「Angel of Chaos」。ライブでもリハーサルでもやっていないけど、自分的に曲を気に入っていて、この機会に芳賀に歌って貰えれば、またこの曲が認知されるのではないかと思ったのが「Stay in My Heart」です。当初はこの2曲を現メンバーでリメイク出来ればと思っていたんだけれど、もう1曲あった方が作品としても流れが良くなるかなと、メンバーに何かリメイクしたい曲を聞いてみたところ、芳賀が「Black Flame」をやりたいと言ってくれて。この曲も男らしくヘヴィな部分とメロディアスな部分が上手く融合出来た曲だったし、芳賀が加入後にライブでやってみたらやっぱりメロディがより強調されたなと思っていたので、これが加わったんです。

──以前からもちろん知っている曲でしたけど、改めて曲の良さを実感しました。

芳賀：もちろん久世さんや井上さんのように男らしくミッドを強く押し出すパワフルなのもカッコいいんですが、それとはまた別の僕なりのアプローチで曲の良さを伝えられたらと思いました。特に「Black Flame」はそれが顕著に表現出来るかなと思って提案したところもあったので、そう感じて頂けたら嬉しいですね。

▲芳賀 亘（Vo）

島：やっぱりバンドは、河塚のドラムと中易のベースと自分のギターという基本の3リズムでしょ？それがこのリメイクの3曲では上手く表現出来ているかな。オリジナルはオーバープロデュースの時代でもあったので、よりヒューマンで今のバンドが持っているグルーヴとリズムの唸りも加えられたと思う。バッキングトラックとしても自分は満足しているし、「Angel of Chaos」は専任のキーボーディストが居ない時代だし、三宅のキーボードを加える事で完全体になったように思えますね。今のこのバンドサウンドがあって、芳賀の歌が生きるとも思うよね。

──ギターも録り直したんですか？オーバーダビングではないのですね？

島：全部録り直しました、オーバーダビングではないです。完全にリレコーディンクで、当初はギターは俺だから録り直さないって言っていましたけど、それはひとつの作品として違うなと思った。楽をしようと思っていたんですけどね（笑）。三宅はバンドに貢献するプレイヤーで、「Angel of Chaos」でハモンドオルガンとギターリフの絡みは非常に厚みが増したし、気に入っていますね。そこがハモンドオルガンなのは彼の流派上、仕方ない（笑）。

芳賀：「Stay in My Heart」は、今回のレコーディングに向けて覚えた曲ですけど、ミッドテンポでムードがある、ニュアンスを重視する曲は今まであまり歌っていなかったので難しかったですね。「Angel of Chaos」は、以前は出来なかったリズムに対するアプローチだったり、キレの良さを表現出来るようになったことで、この曲が持つ攻撃性にも上手くフィットした歌い回しが出来たかなと思います。

島：僕は井上の声が好きだったし、彼とやったものに全く不満はなかったけれど、でも芳賀に歌って貰う事によって新たな魅力が生まれたね。芳賀に攻撃性がないかと言うと、凄くエッヂの効いた歌唱だし、これも今回課したハードルなんだけど、「綺麗なだけじゃダメだよ。」とは言っていたし、この曲の良さを芳賀がもうワンプッシュしてくれたよね。

▲島 紀史（G）

──意欲の高まりを感じましたし、今のバンドが上手くパッケージされていると思いました。

島：うん、そうじゃないとね。ミニアルバムとは言え、作品として成立しないといけないし。楽をしようと思っていたけど、作り始めるとそういうわけには行かなくて。それでOKと言う自分になってしまったらもう辞めると思う。『RAIN FIRE』をプッシュする為のミニアルバムなのは事実だけど、これは芳賀との2枚目の作品として満足出来るものにしたかった。僕はダメ人間なのですぐに楽をしようと考えてしまうけど、メンバーにも頑張って貰っている以上、自分にこそ一番厳しくありたいと思っています。「Waiting for You」はリミックスだけど、あとの5曲はスタジオで限られた時間の中で自分の満足の出来るものにするには、たとえ時代遅れと言われようがマーシャルアンプを大音量で鳴らしてレコーディングするのも止めたくない。

──CDを聴いても、マーシャル全開で録っていないものはわかりますよ。

島：わかりますよね？自分の作品からマーシャルを大音量で鳴らしていない音が聴こえるのは嫌なんです。壁が崩れ落ちるくらいの大音量で鳴らしたものを録りたいの。だから今回もそういうものが詰まっていますよ、それが作りたいものだから。この状況下なので、中易のベースと三宅のキーボードはリモートになってしまったけどね。テイクは送って貰うけれど、それを信じられないくらい大音量でベースアンプ鳴らしてリアンプしましたよ。

──先程、ソロギタリストではないと仰っていましたが、今後インストアルバムは考えないですか？

島：10周年の時に一度やった事あるんだよね、もういいんじゃない？（笑）。いや、やらないと思っているわけでもないけれど、自分がギタープレイヤーとして好きなインストのアルバムって実は少ないんですよ。そうだな、歌も数曲入ってはいるけど、心から好きなインストアルバムだと、大谷レイヴンさんの「RAVEN EYES」、イングヴェイの「RISING FORCE」、中間英明さんの「POINT OF NO RETURN」。これあればもういいんだよなって思うの。あとは自分が好きで聴くのはスティーヴ・ヴァイくらい。ヴァイは自分の音楽とは程遠いけれど、大好きであんなものが出来たらなと思うよ。聴いていて楽しいし、ストーリーがあって世界観もあるよね。僕がまたソロアルバムを作ってもあまり誰も望んでいないんじゃない？それにバンド以外の音楽を作れるほど幅も広くないんだよね。もし要望があれば、皆さんレーベルに言って下さい（笑）。だけど、10周年の時のソロアルバムはMAD大内さんにドラムを叩いて貰って、凄く楽しかったよね。もしまた機会があればやっぱりMADさんに叩いて欲しいな。あの時のMADさんのドラムが凄く好きで、河塚とはまた違うインスピレーションもあるかもしれないし。もともとANTHEMが好きだし、MADさんのドラムが好きだったからね、サウンドもプレイもレコーディングも本当に楽しかったよ。よし、MADさんがやってくれるならやろう（笑）。ただ単純に楽しいと思って作れたのはあのアルバムだけかもしれない。CONCERTO MOONは、プレイヤーとしてだけではない僕が僕をいじめてくるから（笑）。

──いつか実現して欲しいです。さて、ツアーもようやく始まりそうですね。

島：うん、第一弾として発表しましたが、まだ続きますよ、秋冬にも考えてます。今のガイドラインに従う形だけど、今年もまたライブをやらない選択肢はなかったのでね。メンバーに一人でもやらない意思があれば無理だけど、メンバーとは一致したし、少し隙間を空けたスケジュールで少しでも状況が好転するかもしれない事も願って。配信も凝り性だからDVDを作るくらいの意気込みになってしまいそうなので、まずはルールに乗っ取って安全なライブをやりたいですね。

芳賀：そうですね。僕にとっては最初のオリジナルアルバムのツアーという事で、今のバンド、今のシンガーをたくさんの方に観て頂きたいですね。この状況下で色々と形は変わってしまいますが、楽しんでもらえるものにしたいと思います。

島：非常にフレッシュなセットリストになっています。もちろん外せない曲はあるけれど、リハーサルをしていてもフレッシュな気持ちでプレイ出来ていますよ。「長年の同じ流れじゃん。」はないです、曲の度に新たなチャレンジが出来ていますね。お客さんには声も出しては貰えないけれど、やれる事の最大限を披露して楽しんで貰えたらなと、その為に精一杯の準備をしていますよ。

取材・文◎Sweeet Rock / Aki

▲CONCERTO MOON／『WAITING FOR YOU』