【インタビュー】結成25周年のCONCERTO MOON、強靭な精神力で作り上げた最新作
2020年、新布陣での初のオリジナルアルバム『RAIN FIRE』をリリースしたばかりのCONCERTO MOON。意欲の更なる高まりは止まる事なく、ミニアルバム『WAITING FOR YOU』を6月2日にリリースする。結成から25年、初期衝動が持続する精神力や今のバンドの充実度をパッケージしたミニアルバムについて島 紀史(G)と芳賀 亘(Vo)が熱く語ってくれた。
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■楽にこなせるだけじゃダメ
──昨年リリースのフルアルバム、『RAIN FIRE』のインタビューの記憶も新しいですが、アルバムの反響はいかがでしたか?
島:うん、とてもポジティブな反応を多くいただいています。芳賀との初めてのオリジナル作品だったので、自分たちがこういう音楽をやって行こうというものが受け入れて貰えたのかなと思えますね。普通なら作品を出して間髪入れずにツアーが始まるのが常々ですけど、今はなかなか難しい状況下なのでライブまでにもうワンアイテムとは考えていたけれど、アルバムが良い感触を得たのも励みになりましたね。
──芳賀さんの評価がとても良い印象で入ってきています。ご自身で感触はありますか?
芳賀:『OUROBOROS』の時と比べて、僕自身の表現の幅も広がっていると思いますし、何より、島さんが僕に合わせて楽曲を書いてくれたので、より自分のカラーが上手く出せたかなと思います。それがポジティブな反応なのはとても嬉しいですね、自信にもなります。
──そして結成25周年、今の率直な心境は?
島:結成からだとそうですね、あまり意識はしていないけれど、もう僕だけだしさ(笑)。このバンドを四半世紀やっていると思うとさすがにそりゃ歳も取るよね(笑)。結成した時は20代だったし、メンバーチェンジをしながらもこうして続けてこられたのは、聴いてくれる人たちのおかげだよね。それがなければ出来ないわけで。今も自分が好きな音楽をプレイし続けられるのは幸せな事だよね。デビューが98年なので、デビュー25周年には何か出来るといいかな。とは言え、その時に自分がやりたいと思わないと「特に区切りじゃないよ。」とかゴネたりしそうだけど(笑)。いつも周りに何周年とか言っていただくんだけど、とにかく今となってはやらせて貰えている幸せを本当に感じますよね。
──25年は凄いですよ。
島:ね?そろそろ終わりも見えてくるよ(笑)。常々言っているんですけど、自分がイメージする自分でいられなくなってまでやろうと思うタイプではないのでね。なので、自分でいられる努力はしています。それを怠るようではやっている意味がない。その原動力になるのは、やっぱり作品を受け入れてくれる人がいる事だし、感謝していますね。
──様々な局面があったと思いますが、乗り越える秘訣なんてありますか?
島:秘訣があったら本でも書いて一儲けするね(笑)。僕もそんなに強い人間ではないのだけど、少なくとも自分の好きな事を実現する為には、折れない心を持ち続けようとは思っています。「もうダメだ。」と簡単に投げるのではなく、「ダメならどうやったらいいのか。」を考えないとね。実は人知れず引退と復帰を繰り返しているんですよ、誰にも言っていないけど(笑)。「もうやーめた!」で、10分後くらいには、復帰してるの(笑)。でも最大で3ヶ月くらい全くギターを触らなかった事もあるけれど。折れない心を持ち続けるのも難しい事だけど、自分がやりたい事なのだから簡単には諦めない事だよね。妥協した経験も含めて、当たり前だけど誰かに無理強いされている事ではないからね。今のコロナ禍もそうじゃない?音源は作るけど、もうツアーはやらないとか、作品は作らずに、過去のマテリアルだけでやって行くとかも色々な選択肢はあるとは思うけれど、さっき言ったようにそれは自分のイメージする自分ではないのね。もうしばらくは大丈夫じゃないかな、まぁ、人知れず引退と復帰はしているんだけども(笑)。
──ブレないですね、やりたい音楽が変わる人もいますからね。
島:うん、保守的なのかなぁ?僕は13歳からギターを始めて、その時からやりたい音楽は1ミリも変わっていないんですよ。その時にやりたいと思った事を続けているだけで、何も変わっていない。もちろん、その時期その時期で色々な音楽が好きだし、ポップソングから人が思う僕のイメージよりはずっとブルータルなものまで好きなんだけど、突然CONCERTO MOONがブルータルになってもびっくりするでしょ?(笑)。やりたい音楽については最初の時からブレてないと思う、そこだけは折れない心を持っているかな。
▲島 紀史(G)
──新布陣2枚目となるミニアルバム、新曲の「Find My Way」はキャッチーで『RAIN FIRE』の流れを汲んでいますよね。
島:『RAIN FIRE』の時に、曲にしていなかったアイディアはいくつもあったんだけど、これが本当に気に入ったものならば『RAIN FIRE』を作る時に曲にまとめたはずで、「だからまとめなかったんだよな。」という感じだったんです。それが凄く嫌だったし、貯めていたアイディアは使うのは止めたんですよ。新たに作って、『RAIN FIRE』には入っていないタイプのものにしたかった。何曲か作って、通常ならギターリフを思い付いたり、コードの流れや曲の全体のイメージがあったりなんだけど、「Find My Way」は Bメロからサビに至る部分のメロディの展開を思い付いて、それが凄く良いと思えて。これを芳賀が歌うと非常にキャッチーなものになると思えたので、またメンバーにはギリギリまで待って貰ってまとめました。もともとのアイディアから何曲も作ってはみたけど全部アウトにして、新たに3、4曲を形にもしてみたけれどイマイチだった。場繋ぎ的ではなく、ミニアルバムと言えどもきちんとひとつの作品として強いものにしたかったしね。『RAIN FIRE』の時点でこの曲があったなら、イチオシの曲だよと言えたと思う。今後、CONCERTO MOONにとって重要なレパートリーになるのではないかなという満足度はあります。芳賀であるからこそ、思い付けたメロディだしね。
芳賀:最初にデモがインストの状態で送られてきて、その後に仮歌が来たんですけど、島さんが仰った通りでBメロからサビが特に綺麗なメロディだなと感じたし、それと同時に「これは(キーが)高いな」と。実際に歌ってみてもチャレンジングなパートは多いですが、とにかくメロディが綺麗なので歌っていて楽しいんですよね。もし聴いてくれた方が歌う場合は、1オクターブ下げても楽しさは伝わるかなと思うし、凄くキャッチーでハードに仕上がりましたね。
島:高くて苦しい部分は、楽にこなせるだけじゃダメだと思っているんですよ。自分のギターもそう、楽勝なものばかりやっていても仕方がない。河塚のドラムもキャタピラ的にダブルベースドラムを踏んでいて、ドラム、ベース、ギターがきっちりと3リズムとしてまとまる感じで演奏するのは難しいんですよ。今リハーサルでやっていますけど、大変なのは芳賀だけじゃなくて演奏もかなり大変なの。芳賀の持つポテンシャルをフルに使って、今後もどんどんチャレンジしていくし、ハードルを上げ続けるし、自分もそうです。芳賀の事は凄いリードシンガーだと思っているので、それがもっと伝わるようにね。『OUROBOROS』と『RAIN FIRE』と『WAITING FOR YOU』では、僕は課すハードルを変えているわけで、『OUROBOROS』の時のハードルなんて今の芳賀にとっては飛ぶ必要もないくらいのものだろうし、『RAIN FIRE』はまた一生懸命に飛ばなきゃならないものだったかもしれないけど、それが良い反響を得たからと言ってそのままではいけない、だからまた今回更に高いハードルを課しました。『OUROBOROS』の頃からしたら、ハードルは信じられない高さになっていますよ。それを今回も良い仕上がりになったのは凄く良かったよね。
▲芳賀 亘(Vo)
──そして「Flaming Thunder God」、こういうインストを待っていましたよ。
島:『RAIN FIRE』の時は、こういうインストは必要ないと思ったんですよ。これももとのアイディアとしてはあったんですけど、やっぱりまとめなかった部分もあり、イントロのリズムがブレイクしてギターを弾くパターンだけは残りましたが、そのパターンも変わったんですよ。ちょっと流行りに乗ったみたいですけど、御多分に洩れず、『鬼滅の刃』を読んでいて。凄く面白いんですよ、非常に胸を打たれる展開が多くて。その中で、主人公の仲間で“我妻善逸”というキャラクターに僕は思い入れが強くてね。この人はひとつの事しか出来ないんです、ひとつの技しか使えない。その事を周りに揶揄されたり、自分でも劣等生だと思っていたりするんだけど、でも師匠みたいな人が、「それで良いんだ。」と。「その代わり、そのひとつを究極まで極め抜け、何よりも強いものになれ。」と言うところが凄く響いて。僕は13歳からやりたい事も一切変わっていないし、この自分がやりたいロックギターをずっと自分のイメージに近づくように掘り下げてきた人間なので、ひとつの事しか出来ないわけですよ。ジャズもプレイ出来ないし、ジャズコードなんて知らないし、フュージョンもクラシックもプレイ出来ない、音楽理論も100%理解していない。小粋にアコースティックギターで芳賀と二人でのアコースティックライブも出来たらな、とも思うけれど、お客さんにお金を払って貰って演奏するレベルにはないよなと。だけど、ロックギターなら誰よりも深く掘り下げてきたし、そのスタイルを貫いて自分のイメージに一歩でも近づくようにその刀を研いできたので、凄く共感したんですよ。なので、その“我妻善逸”のキャラクターのイメージで作ってみたんです。彼は雷の技を使うんだけど、誰よりも速くて目にも止まらないスピードなんです。
──それでこのタイトルに?
島:最終的に極め抜いて生み出した技が“炎雷(ほのおいかづち)の神”かな?それを英語にすると「Flaming Thunder God」になるのかなと。スピーディーなものだけを詰め込もうと思ったわけではなくて、彼のバックボーンは凄く切なくて悲しかったりもするので、そういうイメージも曲として作ってみたんです。こういうインストを作る時にギター教則みたいになるのは嫌なんですよ、技術を習得したので、それを盛り込んでみましたとかは、楽曲と言うよりギター練習曲だと思うのね。自分の中にはソロギタリスト思考はなくて、僕はバンドプレイヤーなので「別にCONCERTO MOONのライブでインストなくてもいいでしょ?」って思っているし。
──いや、あって良いと思いますよ(笑)。
島:だって曲の中で凄くエクステンデッドした状態でギターを弾くシチュエーションはありますし、凄くたくさんギターは弾くし。だからなかなかインストはやらないんだけど、今回は明確に形にしたいイメージもあったし、自分が満足するものが出来たので収録出来ましたね。あと、たまにはこういうのもやっておかないと「あいつ錆びてきたな。」と思われたくないので(笑)。そう言えばひとつ疑問なんだけど、歌わなくてもいい芳賀になぜこの曲のデモを送ったんだろう?(笑)。自分でも謎だよ。
芳賀:僕は嬉しかったですよ、うわ、カッコいい!って思いましたもん。
島:まぁ、リーダーは褒めて欲しいところがあるからねぇ、謎だけど。
◆インタビュー(2)へ
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