【ライブレポート】古川 慎、“おとぎばなし”の世界観で魅せた初のオンラインライブ
古川 慎が初のオンラインライブ<MAKOTO FURUKAWA Streaming Kinema “from fairytale”>を4月18日に開催した。本公演のオフィシャルレポートを掲載する。
◆ライブ画像
古川 慎は2020年12月23日に1stアルバム『from fairytale』をリリース。異国感溢れるサウンドがモダンでスタイリッシュ、そしてそれでいてエモーショナルな一枚だ。そんなアルバムに込められた、彼が歌で紡ぐ“おとぎばなし”を存分に表現するのが、今回のオンラインライブだ。
ライブのスタートを待つ映像は、まるでレビューショウを見せてくれそうなノスタルジックさもある深紅の緞帳が掛けられたイラスト。ジャジーにアレンジされた古川の楽曲がインストとなって流れる中、ライブがスタートした。会場は大正ロマンのオペラハウスのような佇まいの東京キネマ倶楽部。チケットカウンターに到着したところで、古川の出迎えを受ければ、そこからフロアへ。緞帳が開いて、バンドメンバーと古川がステージに立つ。さぁ、ライブのはじまりだ。
幕開けは「切嵌とfairytale」。躍るピアノの音と躍動するビートで彩られたアッパーでドラマティックなジャズロックナンバーを色香たっぷりに聴かせる古川。ホーンの音も華やかで、アルバムの世界観を象徴する一曲だ。コンセプチュアルなアルバムの雰囲気のままライブは「miserable masuquarade –Re:andante-」へ。デビュー曲をアルバムの世界観で染め、色彩感豊かで艶のある古川の音楽を凝縮したようなバージョンで聴かせる。ピアノとホーンの音、そして楽曲の体温を刻むような印象的なベースラインとで紡がれる楽曲を、古川は情感たっぷりに聴かせた。画面に道化師のマスクや三日月、トランプといったカードが舞っての「道化師と♠(sadness)」ではバンドのメンバーが紹介され、ジャジーな演奏の中で各楽器のソロ演奏も聴かせた。
「みなさん、こんばんは! 配信というかたちで1stライブを見ていただく運びになったことは不思議な感じですけれど、これはこれでありではないかとも思っています。もちろん目の前でノっているみなさんを見たかったという想いもあるんですが、配信だからこそ出来るお遊びもふんだんに取り入れたライブになっています!」今この瞬間に観客の声が聞こえていなくても、カメラの向こうの観客に届けていくので、楽しみながらパワーを送って欲しいと話す古川。この夜のライブはステージだけではなく、雰囲気のある会場のあちこちで歌いたいとも語る。どんなライブになるのか、楽しみになったところで、「今日一日、楽しみましょう」と笑顔を見せた。
ピアノが爪弾く美しい旋律に聴き入ったところで、画面に星が瞬く。そしてフォークロア調の「スピカ」のイントロが響き始めた。異国のホテルのロビーのような、旅行鞄が詰まれた場所に置かれたアンティークのソファに座る古川。これからどこか旅へと出るような雰囲気の中で情熱的な歌声を紡いでいく。ソファから立ち上がり、歩きだした彼がバンドのいるステージを見つめれば、ここが2階席であることがわかる。オペラの劇場のような会場の空気までも伝える演出だった。今度はバンドも移動。階段の上に作られたサブステージから、アコースティックセットでの「地図が無くても戻るから」。カホンとベースのビートにピアノ、そしてアコースティックギターと歌。セピア色の画面には地図も映し出され、楽曲の世界観をノスタルジックに彩りながら届けた。
歌が終わり、古川はレコーディングのときに「地図が無くても戻るから」のアコースティックバージョンをやりたい、という話をしていたと明かす。彼にとってアコースティックバージョンは、卒業シーズンに聴きたくなる曲だという。卒業は、新しい生活へと歩を進めるタイミングでもある。自分が思い描いていたことを今やれているのか、ずれてはいないか。卒業してからしばらく経った時に昔を思い出しながら聴きたくなるような一曲なのではないか、と楽曲への想いを語った。そんな話から、バンドを交えての「ライブでテンションのアガる曲はなに?」トークへ。バンドのメンバーからは「miserable masquerade」と「切嵌とfairytale」が挙がり、彼らと楽しそうに話す古川の表情も印象的だった。
ラストスパートは、リズミカルに跳ねるメロディが印象的な「本日モ誠ニ晴天也」から。楽器の音がそれぞれどれも色香と艶を滲ませながら、躍動するサウンドの中をドラマティックに展開していくボ-カル。赤い照明に彩られ、画面には花吹雪も舞う。「勝鬨」ではアグレシッヴに轟くロックンロールを身体の底から湧き出すようなパワフルな歌声で聴かせ、観客を圧倒。
「ラストスパート、激しかったでしょ?」と息を切らせる古川。「短い時間でしたけれども、見て下さってありがとうございます。本当はたくさんの人がここにいて、鼓膜に物理的に届くような、みんなの声がするライブだったらいいなと思っていたんですけれど、多分、こういう機会がそんなに遠くないうちにきっとあって。みなさんが客席で楽しんでいる姿はそう遠くないうちに見れるんじゃないかと思っていて。そのときに一緒に音楽を楽しんで、素敵なライブにできたらなという夢があります。タオル振り回すなり、全身でノるなり、ゆっくり聴くなり、それぞれのスタイルでライブを楽しんでもらえたらなと思います」
観客から届くコメントの一つひとつに愛情が籠っている気がしたという古川。一人で画面の向こう側に向かってパフォーマンスをするけれど、反応を見て、ものすごく嬉しかったという。最初からみんなのパワーが届いていたからこそ、ライブが出来た。次はみんなが会場にいて、自分も準備を整えて「最高の夜だったね」と乾杯して終われるライブにしたい。「もしよかったらその夢に付き合ってもらえたらいいなと思います」と。
そして最後は「for fairytale」へ。アルバムの最後を飾っていた一曲が、しっとりと歌いあげられる。画面には歌詞が映し出されていたが、そこに綴られるのはおとぎばなしの一節のような言葉。その言葉を聴いてくれる人たちへそっと手渡していくように、古川は語り聴かせるように歌った。
「最高の一日になりました。ありがとうございました」緞帳が降りて、ライブは終了。観客のいないホールでバンドと共に歌い上げる姿はまるで映画の中での出来事のようだったけれど、これがいつかオーディエンスの歓声に包まれていて欲しい、ステージから放たれる熱を直に感じたい、と古川自身の夢を共に見たくなる、そんなライブだった。
写真◎後藤倫人(D-CORD)
セットリスト
M2. miserable masquerade -Re:andante-
M3. 道化師と♠(sadness)
M4.スピカ
M5. 地図が無くても戻るから
M6. 本日モ誠ニ晴天也
M7. 勝鬨
M8. for fairytale
アーカイブ配信情報
2021年4月25日(日)23:59まで
【配信プラットフォーム】
・Streaming+
https://eplus.jp/furukawamakoto/
・PIA LIVE STREAM
https://w.pia.jp/t/furukawamakoto/
※詳細に関しては各社配信サイトでご確認ください。
1stアルバム『from fairytale』
品 番:【初回限定盤(CD+DVD)】LACA-35851/【通常盤】LACA-15851
価格:【初回限定盤】4,000円(税抜)/【通常盤】2,800円(税抜)
収録内容
CD(初回限定盤・通常盤共通)
1.Overture -Act 1- 作曲・編曲:山本恭平 (Arte Refact)
2.切嵌とfairytale 作詞:古川 慎 作曲・編曲:山本恭平 (Arte Refact)
3.道化師と♠︎(sadness)作詞:古川慎 作曲・編曲:本多友紀(Arte Refact)
4.miserable masquerade -Re:andante- 作詞:古川慎 作曲:原田 篤(Arte Refact)編曲:酒井拓也(Arte Refact)
5.スピカ 作詞:古川慎 作曲・編曲:伊藤和馬 (Arte Refact)
6.地図が無くても戻るから 作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:本多友紀(Arte Refact)
7.Interlude -Act 2- 作曲・編曲:山本恭平 (Arte Refact)
8.気ままに見えるかい? 作詞:古川慎 作曲・編曲:大熊淳生 (Arte Refact)
9.パトスのカタチ 作詞:古川慎 作曲・編曲:原田 篤(Arte Refact)
10.愚者の跳躍 作詞:古川慎 作曲:矢鴇つかさ (Arte Refact)編曲:大熊淳生 (Arte Refact)
11.本日モ誠ニ晴天也 作詞:真崎エリカ 作曲・編曲:山本恭平(Arte Refact)
12.勝鬨 作詞:古川慎 作曲・編曲:大熊淳生 (Arte Refact)
13.for fairytale 作詞:古川慎 作曲・編曲:原田 篤 (Arte Refact)
DVD(初回限定盤のみ)
1. 切嵌とfairytale -MUSIC VIDEO-
2. 切嵌とfairytaleメイキング映像
◆古川 慎 ランティスレーベルサイト