【インタビュー】FIVE NEW OLD、アルバム『WARDROBE』に「服を選ぶような感覚」と「新たなサウンド構築法」
■ガレージで形にした曲とDTM
■時代感を両立させたかった
──もうひとつ、『MUSIC WARDROBE』というウォームで煌びやかなアルバムに、1960sロックを思わせる荒々しさに溢れた「Knock Me Out」というロックチューンが入っているというのも最高です。
HIROSHI:でしょ(笑)? 今回の制作は本当にいい空気感だったんですよ。メンバーと会って、みんなで曲を作っているのが楽しくてしょうがなかったし、ハッピーな曲がいっぱい生まれてきた。それはいいことだけど、“ちょっとハッピーすぎるな”と思ったんです。「Vent」という煌びやかなアルバム先行楽曲をリリースして、アルバムジャケットもキラキラしていて、“なんか気に食わねぇな”みたいな。作ったのは自分達なんですけどね(笑)。そういうパンク精神の結果生まれたのが「Knock Me Out」です。アルバムの中で歌詞も一番社会的で、“自粛にもすっかり慣れた 連れはどいつもこいつもオンライン上”という歌詞のように、コロナで感じたフラストレーションを歌っています。当時はSNS上で“自粛警察”とか揚げ足の取り合いがあったし、ちょうどこの曲を作っているときに日本の貨物船がモーリシャス海峡で座礁して大量の油が流出するという事件があった。でも、それが全然大きなニュースになっていなかったんですよ。自分の国のいいことはすぐにニュースで取り上げるのに、自分達がしでかしたミスに対してはスルーしすぎだろうということにめちゃくちゃ腹が立った。そういう怒りをぶち込みました。
SHUN:「Knock Me Out」は“こういう曲を作ろうぜ”というノリから始まって、最初はいつもどおりWATARU君がDTMでオケを作ったんですね。でも、ちょっと音数が多かったりして、「もっと生々しいバンド感を活かしたい」という話になったんです。もともとはギターがずっとリフを弾き続ける形だったけど、2番ではベースがリフを弾いて、ギターはその上で単音を鳴らすというアレンジにして。今までだったらダビングしてたところもよりフィジカルというか、音が薄くてもこの4人で音を塊として出すことを意識しました。今までとは真逆の作り方だけど、この曲に関してはそれが正しい選択だったと思います。
HAYATO:ビートをすごく汚したんですよね。タイトじゃなくて、“揺れてていいじゃないか。荒れてていいやん。フルストロークでいいやん”と。たとえばスネアを叩くときにリムをかけないときれいな音になるけど、この曲は関係なくガンガンにリムをかましたり。ダーティーというか、いい感じにはみ出したドラムになっています。
WATARU:「Knock Me Out」のギターの音は、めっちゃデカいです。それが爽快だった(笑)。もうひとつこの曲のレコーディングが楽しかった要因があって。というのも、僕はフェンダーのジャズマスターがめっちゃ好きなんですよ。毎回レコーディングに持っていくけど、あまりにも音が暴れすぎて採用されにくいんです。
HAYATO:絶対最初に持ってくるのはジャズマスターなんですよ(笑)。
HIROSHI:でも、必ず落選する(笑)。
WATARU:そう(笑)。でも、「Knock Me Out」はジャズマスターがドンピシャにはまったんです。ジャズマスターの暴れるサウンドが、この曲の汚れ具合に最適だった。弾き方もいつも以上に粗くて、音が揺れる感じとか、“弦が外れるんちゃうか?”っていうくらいの感じがよかったんです。2番のオブリは“歪んでて音が大きかったら、それでいい”みたいな(笑)。“ギターはこういう表現の仕方もあるんやな”っていうのが、すごく楽しかった。それに、ギターはすごく粗いけど、その裏に汚れシンセみたいなものを、こっそり忍ばせているんです。それがドラムとベースとギターの接着剤になるというか、オーガニックなサウンドになるんですよね。普通に聴いていたらわからないけど、よく聴いたら“おっ?”と思ってもらえると思います。
──深掘りして聴くと、たくさんの発見がありそうですね。
HIROSHI:ぜひ、掘ってほしいですね。“こいつらヤバい”と思われるかもしれないけど(笑)。あと、ここまでの話で出た楽曲は、わりと時代に逆行したやり方で作った曲達なんですね。みんなでリハスタとかガレージにこもって、フィジカルで形にしていったもの。そういう曲達がありつつ、今回いくつか収録しているインタールードは、デスクトップで全部完結させる手法を採りました。ひとつの作品の中で時代感を両立させたかったんです。「Plane Garden」は途中でフルートやサックスが入るんですけど、サンプリングをチョップして、HAYATOと一緒にフレーズを再構築したものなんです。だから実は生楽器は一切使っていない曲だし、ミックスも自分達だけでやりました。それをイギリスのマスタリングエンジニアのジョン・デイビスに渡すという。自分が仕上げたものをいつも手がけてくれるジョンに託したら、どんな音で返ってくるのかというのがすごく楽しかったし、いい経験になったと思います。
──フィジカルとDTMの両方の良さを活かせることもFIVE NEW OLDの強みといえますね。さて、『MUSIC WARDROBE』は良質なアルバムに仕上がりました。本作を引っ提げて4月から始まるツアーや5月と7月に予定されている10周年記念ライブ(振替公演)も楽しみです。
HIROSHI:現在ツアーに向けてアルバムの曲を練習しているんですけど、今までと違って、メンバー同士で顔を突き合わせて作った楽曲群ということもあって、前からやっていた曲みたいに、めちゃくちゃ身体に馴染むんです。だから、“ライブで新しい曲をちゃんと披露できるかな?”という不安よりも、みんなの前で音を鳴らせるワクワク感のほうが大きい。ライブに来てくれる人は安心して度肝を抜かれてほしいと思います。この先、世界の情勢がどうなっていくかはまだ読めないけど、『MUSIC WARDROBE』を作った1年間は、この4人で音楽をやれていたことにすごく救われた。個人的にはお芝居やドラマに出させてもらったという新しい挑戦もあったし、ものすごく満たされていたんですよ。2020年をみんなの力でチャンスに変えることができたからこそ、自分の中に脈打つエネルギーを音楽を通して届けたい。その結果、音を通して触れ合ってくれている人の笑顔につながるといいなと思っています。
WATARU:ツアーもめちゃくちゃ久しぶりなんですよね。この1年間は配信ライブとか、お客さんがいない状態のライブがほとんどだったんです。ライブというのはバンドとお客さんで作りあげていくもので、みんなが一体になってエネルギーが生まれると思っているんです。だから、みんなが顔を突き合わせる今度のツアーでは、また新たなFIVE NEW OLDの顔を見せられるし、めちゃくちゃ楽しみなんですよね。
HAYATO:去年は大変な1年になってしまったけど、コロナが起こったことで僕らにいいブレーキがかかって、頭の中が一回整理できたと思っているんです。『MUSIC WARDROBE』はそこから生まれた曲達が入っていて、できあがったときにすごくいい作品を作れたなと思った。さらに、みんなでスタジオに入ってライブのためにアルバム収録曲を合わせたとき、“これを人前で鳴らすことで『MUSIC WARDROBE』は本当に完成するんだな”と思ったんです。それに、配信ライブもいいツールだけど、WATARUが言ったように、やっぱり顔と顔を突き合わせて、目と目が合う状態で音楽を聴かせたい。だから、ライブができなかったこの1年の想いを込めたツアーにしたいです。
SHUN:去年はいつものようにライブができなくなって、配信ライブも経験して。そういう中で人が集まることで生まれるエネルギーっていうものが、すごくあるんだということを感じたんです。今年のビルボードライブが中止になって、みんなにYouTubeで観てもらう機会を作ったんですけど、そこにみんなのコメントが集まったんですね。その書き込みだけでもすごいエネルギーがあった。ひとつの場所にみんなで集まるということは、ネット上でも、リアルな場所でも、尊いものだなと実感できました。『MUSIC WARDROBE』の制作もみんなでガレージに集まって、顔を突き合わせて、コミュニケーションを取りながら作って、楽しさを再確認できた。だから、今度のツアーはキャパシティーの100%を入れられない状況だけど、みんなが集まるということに感謝して、すべての瞬間を大事にしようと思っています。
取材・文◎村上孝之
■アルバム『MUSIC WARDROBE』
【初回限定盤(CD+DVD)】WPZL-31819/20 ¥4,950(税込)
▼DVD
・CURRENT LOCATION CONCERT-“Billboard Live” Session 2021-&Interview of MUSIC WARDROBE
(Don’t Be Someone Else、Chemical Heart、My House、Light Of Hope、Sleep in Till The Afternoon、Vent、Hallelujah)
・CURRENT LOCATION CONCERT -Living Room Session-
(Vent)
・CURRENT LOCATION CONCERT -Tokyo Bayside Rooftop Session-
(Don’t Be Someone Else)
・CURRENT LOCATION CONCERT -TAKIBI Acoustic Sessions(ASMR)-
(Hallelujah、Sleep in Till The Afternoon、You)
【通常盤(CD only)】WPCL-13280 ¥3,300(税込)
▼CD ※初回限定盤共通
01. My House
02. Summertime
03. Hallelujah
04. Breathinʼ
05. Sleep in Till The Afternoon
06. Donʼt Be Someone Else
07. Oblivion
08. How to Take My Heart Out
09. Nebula
10. Chemical Heart(feat.Masato from coldrain)
11. Knock Me Out
12. Plane Garden
13. Light Of Hope
14. Vent
15. Moment
16. Awakening
■<FIVE NEW OLD ”MUSIC WARDROBE” Tour>
4月11日(日) 香川・高松 DIME
4月16日(金) 愛知・THE BOTTOM LINE
4月17日(土) 石川・金沢vanvanV4
4月22日(木) 大阪・Zepp Namba
4月24日(土) 熊本・熊本 B.9 V1
4月25日(日) 福岡・BEAT STATION
5月04日(火・祝) 宮城・トークネットホール仙台 小ホール(仙台市民会館)
5月09日(日) 岡山・YEBISU YA PRO
5月13日(木) 北海道・PENNY LANE 24
5月16日(日) 新潟・studio NEXS
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