【ライブレポート】defspiral、1年越しの10周年ツアースタート「俺に任せろ」

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defspiralが3月27日、<defspiral CARNAVAL to 10th Anniversary ONEMAN TOUR 2021“DEAR FREAKS”>をスタートさせた。

◆ライブ画像

本来、2020年5月26日の10周年に向けて行われるはずだった本ツアー。新型コロナウイルスによりツアーは1年延期され、さらに発表されていたMASAKI(Dr)の脱退も先延ばしにされていた。バンドが10周年を迎えるというだけでなく、10年間、音を重ねてきたメンバーの脱退、いや地元・姫路にいた10代の頃から数えれば20余年もの間、苦楽を共にしてきた家族以上の存在=メンバーの最後の花道でもあった。それだけに、1年越しにdefspiralと生で再会できること、MASAKIの晴れ姿を見ることが叶うのは、ファンにとってどれだけ待ち望んでいたことだろうか。

1年ぶりの有観客ライヴは感染防止対策に基づき、いろいろな規制があった。人数制限があるため初日は1部、2部と2回公演で、さらにニコニコ動画『defspiral ch.』会員限定という形態。とはいえ、この1年以上、画面越しにしか会えなかったメンバーと同じ空間で音楽、時間、感動を共有できるということでチケットは即完だったと聞く。それだけに、メンバー登場を静かに待ちつつも、FREAKS(defspiralファンの呼称)の体の中では、defspiralへの想いがメラメラと燃えているのは手に取るようにわかる。


このツアーのために作られたSEが流れる中、メンバー登場。ツアーの幕開けは「PROGRESS」から。一歩一歩、大地を踏みしめ前進していくかのような力強い音と、“もう二度とあの日に戻れないと知っても 歩きだそう”“何が起きても恐れることはない”という歌詞が、こんなご時世では、より一層心に突き刺さる。そして一歩ずつ踏み出した歩みは「SILVER ARROW」で、放たれた弓矢のような速さのスピードに。ファンが振り上げる拳も力がこもり、動きもさらに激しく。

「会いたかったぜ、FREAKS!」というTAKA(Vo)の煽りに続いて「READY OR NOT」の演奏へ。怪しげなベースのリフから一気にパッと視野が開けるようなサビで“Ready or not”と問いかければ、その問いに対して指先まで神経を尖らせた手をステージに差し出して答えるFREAKS。初っ端の3曲でライヴ規制への不満よりも、ライヴを体感してる幸せが勝っているようにも見受けられる。

「ようこそ! 1年ぶりにステージに帰ってきました! 声は出せないけれど、心の声でどんどん叫んで、手でアピールしてください。今日は最高の日にしようぜ!」

これまでにないライヴ環境に最初は手探り状態だったメンバー自身も、この空間の楽しみ方が少しずつわかってきたのだろうか、疾走感のある「PULSE」でライヴ空間はさらに熱を帯びていく。最後の部分の歌詞を“愛してくれ”から“愛し合おう”に替えて唄うなどして、TAKAはより一体感を欲しがる。その気持ちはFREAKSも一緒、触れ合えずとも感情はどんどん高まる一方。

「defspiralはステージに還ってきました。みんなにとって初めての経験だと思いますけれど、我々にとっても初めての経験で。久々のライヴを噛みしめております。今夜はみんなが唄えないぶん、俺が唄う。俺に任せろ。メンバーの声に合わせて拳を上げて、いつも以上に目で訴えてください、楽しいよって。……そうか、笑い声さえも堪えなければいけないのか……この状況は予測はしていたけど、みんながモジモジしてるの、堪らないよね(笑)。なんだろう、その笑いを堪えてる感じ……ゾクゾクする(笑)。楽しんで帰ってください」

どうやらTAKAはライヴ前半戦を終えた時点で、声を上げられないファンの表情を見て楽しむ術を見つけてしまったようだ。いかなる環境でも自分たちの音楽に誇りを持ち、自分たちらしい表現をして、目一杯楽しむことができるのはある種の才能かもしれない。いつもなら踊り狂うナンバー「PARADISE」でもFREAKSは控えめ。けれど、ココにいるだけで、生の音に触れるだけで、今の我々にとっては十分パラダイスにいる気分だ。

途中のMCでRYO(B)が「拍手だけで反応すると、Yesしか意思表示できないよね?」と話すと、「じゃあ、Noはこんな感じで」と頭の上でバッテンを掲げるTAKA。いわゆるXジャンプのポーズだ。ちなみに、今さら言うまでもないことだが、defspiralの前々身バンド、TRANSTIC NERVEはXのHIDEに見出されメジャーデビューしたバンドである。補足まで。

場内の換気タイムを兼ねた長めのMCを挟んで「RESISTANCE」へ。これまで本編で長めのMCをすることはなかった気がするが、このご時世、換気タイムはマスト。それも加味した曲順でオーディエンスの感情の糸を紡ぎつつ、大きな曲線を描きながら本編最後のクライマックス、10周年を記念してリリースした「千の花束」へと導いたのは、見事だ。

声の代わりに会場には割れんばかりの拍手が起こり、アンコールへ。まず登場したのはRYOとMASAKI。「溢れるものが凄くて、いったい何回リハやるんですか?っていうくらいリハにも入りましたし。皆さん、喜んでくれてると思いますけど、いちばん楽しかったのは我々だったっていう」とRYO。MASAKIは「自画自賛ですね。また見えてくるものもありましたよね」と。

いやいや、自画自賛じゃなくて、我々も存分にこのライヴを楽しんでいるよ、という声の代わりに盛大に沸き起こる拍手。そしてメンバーのコーラスワークが聴き所のひとつでもある「NEW DAYLIGHT-8th Aniv ver.-」、「METERO」を披露。制約があるとしても、同じ空間で音楽を共有することの喜びは何にも変えがたい、と彼らは体現してくれた。


2部はdefspiral始まりの曲、「Dive into the mirror」から。11年前、defspiralとして動き出した時から、これまでも幾度となくライヴで聴いてきたこの曲を“10th Anniv. ver.”としてリアレンジして披露。いつだって、どんな状況だって、彼らは音楽に対して貪欲で探究心に溢れている。それはライヴのたびに進化する楽曲に現れているのは今さら言うまでもない。

「ようこそ! 帰ってきたぜ」と軽く言葉で煽れば、「Arcoromancer」でも煽り、さらにFREAKSが盛り上がる「MASQUERADE」をたたみ掛ければ、初っ端の3曲で熱気は早くもトップギアに入ったも同然。1部のライヴで、これまでとは違う環境下でのライヴを転がしていくコツを掴めたのだろうか、心なし1部よりもアクセルの踏み込み、ギアチェンジが早めかも。

「俺たちがdefspiralです。会いたかったぜ、FREAKS! 灰になってくれますか? 燃え尽きてくれるかい?」TAKAが短めのMCで焚き付け、容赦なく激しい「REVOLVER」へ。その後、次の曲が始まるまでの少し長めの空白をFREAKSの拍手が埋めると、これまでとは世界をガラリと変えてミディアムナンバー「月とヴィーナス」を聴かせる。サビでのTAKAのファルセット、指先まで神経の行き届いたセクシーな手のしぐさ。そういった色香漂う艶っぽい表現もdefspiralの魅力だ。FREAKSも体を横に揺らし、TAKAの動きに応じるかのように、しなやかに揺らした手をステージに差し出し、音に抱かれる。触れなくても、距離があっても、充分に心地よい。

「ありがとう! defspiralはここに帰ってきました。おかえり! 声出さなくてもどかしいねぇ。でも、これはそういうプレーだから」というTAKAのマニアックで大人な発言もファンは爆笑したいポイントだった思うが、マスクの内側で笑い声を堪えるFREAKS。行き場を失った感情は、大きな肩の震えに変換されていた。

「マスクの中でニヤニヤしてるのもいいし。ちょっと聞こえる、フフフッていうのがたまらなくゾクゾクするんですよ。大きな声は出せませんけれど、俺たちは通じ合えると思ってるんで。楽しんでいきましょう!」とTAKA。与えられた環境の中で許されるだけ存分に楽しむ。そんな術を、TAKA、メンバー、FREAKSもすっかり習得したようだ。中盤戦では「Dream of you」「HYSTERIA」「GALAXY」と続け、時に激しく、時に優しく、FREAKSの感情を揺さぶる。

「ありがとうございます。皆さん、楽しんでますか? 今まで何千、何万回とみんなの声を浴びてきたので脳内再生もできますね。ホントに今日のような状態のライヴは初めて迎えるということでいろんな想いがありましたけど、全然、本当にみんなを感じるし、本当にライヴできてるなと思います。楽しんでもらえていたら嬉しいです。1部でいいますけど、イエーイ!と言う代わりに拍手や手を上げてもらって、拒否したくなったら頭上でバッテンしてもらえればいいですから。なかなか声で伝え合えない状況ですけど、意思表示をしてもらえればなって」

何事も最初が肝心だから、と楽しみ方、アンコールの仕方など、あれこれ指南した後、後半戦は「SALVAGE」から。激しい曲調と美しいサビのメロディー、そしてMASATO(G)、RYOのハモり。プレーは激しく、メロディーは美しく、そして、できるだけ生でコーラスもとる。そこは、彼らが前々身バンドから貫かれる魅力のひとつ。

そして、本編最後を飾ったのは「千の花束」。リリースから1年間、ずっと生で演奏する機会を得なかったこの曲がようやく花を開く。千本の花、その1本1本には、この10年間、defspiralに関わってくれた人たちへの感謝の気持ち、さらにはこのツアーをもってdefspiralを離れるMASAKIに向けての想いが込められているという。その楽曲に込められた想い、優しい唄とサウンドが、我々に幸福感を味わわせてくれた。

アンコール前のトーク、2部はMASATO&MASAKIコンビ。換気のためもあって、いつもより長めだ。「みんなマスクして目しか見えないけど、楽しそうにしてるのはわかるよ、伝わってくるよ」とMASATOが言えば、「楽しい。うるっとしてしまうくらい楽しい」とMASAKI。「最近、MASAKIはすぐウルッとくるからね。ここではやめてよ、つられるっちゅうねん」「すぐ泣く、すぐ寝る、すぐ酔っ払う。その3点、揃ってますんで」というちょっとした漫才のようなMC、明るい曲調の「brilliant」「CARNAVAL」で明るいムードで幕を閉じた。

「これから5月26日、10周年記念日までツアーは続くわけですけど、気を抜かずに我々も健康に続けていくので、みんなも健康で最後の日を迎えようね」

最後のMCでTAKAがそう言ったように、いつ状況がどう変わるかわからないという戦々恐々とする空気感がエンタメ業界にはいまだに漂っている。有観客ライヴがスタートしても、5月26日まで続く<defspiral CARNAVAL to 10th Anniversary ONEMAN TOUR 2021“DEAR FREAKS”>。すべてのライヴにて配信も行われるので、4人のdefspiralで最後のツアー、どうか見逃さないでほしい。状況が許す限りはライヴ会場に足を運び、生で音を浴び、肉眼で彼らを見て、4人の雄姿を脳裏に焼き付けてほしい。 

文◎増渕 公子[333music]

<CARNAVAL to 10th Anniversary ONEMAN TOUR 2021
"DEAR FREAKS" >

3月27日(土)SHIBUYA REX(defspiral ch. 会員限定ライブ)
4月03日(土)OSAKA RUIDO 開場17:00/開演17:30
4月11日(日)新横浜NEW SIDE BEACH!! 開場17:00/開演17:30
4月17日(土)仙台spaceZero 開場17:00/開演17:30
4月24日(土)柏 ThumbUp 開場17:00/開演17:30
5月01日(土)名古屋ell.FITS ALL 開場17:00/開演17:30
5月08日(土)静岡Sunash 開場17:00/開演17:30
5月15日(土)姫路Beta 開場17:00/開演17:30
5月16日(日)姫路Beta 開場17:00/開演17:30

TOUR FINAL 「DEAREST FREAKS」
5月26日(水)TSUTAYA O-WEST 開場17:30/開演18:30

(問)サイレン・エンタープライズ 03-3447-8822

詳細:https://defspiral.com/information/2021/03/dearfreaks2021.php

◆defspiral オフィシャルサイト
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