【インタビュー】SOMETIME’S、信頼関係から生まれた『Slow Dance EP』

ポスト

2020年10月に初の全国流通盤『TOBARI』をリリースし、2021年2月にはIRORI Recordsの所属を発表した、ボーカリストとギタリストの2人組ユニット、SOMETIME’S。サポートミュージシャンを招きながら、ソウルやR&B、ファンクといったブラックミュージックの要素に、AORやエレクトロなど様々な音楽性を取り入れたポップソングを作り続けている。彼らが2021年5月にリリースする『Slow Dance EP』は、結成当初に制作した「Slow Dance」など3曲の再録と、新曲を収録した6曲入りEP。これまで積み重ねてきた歴史や現在のモードが凝縮された作品となった。そんな意欲作を完成させたふたりを、『DAM CHANNEL』収録直後にキャッチ。彼らの歩んできた道のりと、理想とする音楽像やユニットとしてのかたちに迫っていった。

  ◆  ◆  ◆

■“関わってくれる”ということ

──『DAM CHANNEL』の収録はいかがでしたか?

SOTA:芸能界だ!って感じですね(笑)。この春からレギュラーラジオが始まって、ラジオ局で芸能人の方とすれ違う機会もあるんですけど、やっぱそういう場に出くわすとテンションあがります(笑)。

TAKKI:僕らミーハーなんで(笑)。やっぱり芸能界は空気が違いますよね。

SOTA:僕は高校時代、部活休みの日に必ずと言っていいほどクラスメイトや、当時付き合っていた彼女とカラオケに行っていて。その時にBONNIE PINKさんを『DAM CHANNEL』でよく観ていたんですよ。だから思い出深い番組なんです。

──SOTAさんと高校の同学年であるTAKKIさんはいかがでしょうか?

TAKKI:歌が下手なので、行っても聴いてるだけが多かったです(笑)。でも歌がうまい人が周りにたくさんいるので、聴いてるだけでも楽しくて。だからカラオケボックスという空間はすごく好きですね。

SOTA:カラオケはうまく歌おうとするよりは、気持ちよくスパンスパン思いっきり歌うのがいいね(笑)。

▲SOTA(Vo)

──SOMETIME’Sは、2021年5月に2nd EP『Slow Dance EP』をリリースします。こちらはインディーズ時代の楽曲の再録と、新曲が収録されているそうですね。

TAKKI:「Slow Dance」と「Raindrop」と「シンデレラストーリー」の3曲が再録で、「Never let me」と「HORIZON」の2曲が新曲です。「Slow Dance」と「シンデレラストーリー」は初期中の初期、いまの事務所と関わる前に作った曲なので、もともとのアレンジがギター、ベース、ドラム、ピアノだけだったんです。だから再録にあたって今の僕らの、「Honeys」や「Take a chance on yourself」のようなサウンド感に近づけていきました。



SOTA:「シンデレラストーリー」は、制作した当時からホーンが入れられたらいいなと思っていたんです。それがようやく今回実現できたんですよね。

──それはとても感慨深い出来事です。初期の初期と言いますと、SOMETIME’SはSOTAさんの前のバンドが解散してすぐに結成しているので、そのくらいの時期ですよね。SOTAさんはその時から“ポップスがやりたい”と思ってらっしゃったとのことですが。

SOTA:クイーン、ザ・ビートルズ、スティーヴィー・ワンダーのような、いい歌声、いいメロディの音楽が昔から好きで。いまもソウル系の曲を好んで聴くことが多いんです。好きなことだけしていればサラリーマンをしながらでもできるけど、SOMETIME’Sでいちばん最初に作ったCD──それこそ「Slow Dance」と「シンデレラストーリー」を収録した自主制作盤ですね。その出来栄えが良かったから仕事を辞めて音楽をやっていきたいと思ったし、そのためにはメインストリームにはたらきかけることを念頭に置いて音楽をやっていきたくて。それが自分の好きな音楽とイコールでもあったんですよね。

──時代を切り拓いた音楽であり、時代に左右されない音楽がお好きであり、そういう音楽を制作していきたいという思いが土台にあったうえで“ポップス”をやりたいと思われたと。

SOTA:そうです、そうです。時代に左右されない魅力を持つ音楽は、すごく目指してますね。

TAKKI:SOTAとは高校の同学年だけど、それを知ったのは卒業してからだったし、親交が深いわけではなかったんです。だから誘われたときはびっくりしたけど、自分のギタープレイをいいと思ってくれたこともうれしかったし、瞬間的に“SOTAとなら結果が出せそう”と思ったんですよね。

SOTA:TAKKIは弾いている姿がかっこいいし、音を聴けばすぐ“あ、TAKKIのギターだ”とすぐわかるから、プレイスタイルに人間性がもろ出てるぶん安心するんです。ボーカルと同じくらい映えるギタリストでないと、一緒にやる意味もないのかなと思ったし。

──このメンバーはふたりで、あとはサポートメンバーが参加するという活動形態が成り立っているのも、おふたりそれぞれの10年のバンド人生で、ミュージシャン仲間が増えていったからでしょうか?

TAKKI:そうですね。バンドを解散したあとにプレイヤーとしてキャリアを積んでいる同世代もたくさんいて。僕はスタジオミュージシャンを経験しているから、彼らが特定のバンドを組みたがらないのは理解できるんです。でも中堅の難しさか、埋もれてしまうこともしばしばで。だから僕らが結果を出すことで、信頼できる仲間をフックアップしたい気持ちは大きいんですよね。サポートミュージシャンを招いて制作をしてみて、よりそのビジョンが鮮明になったんです。

──プロジェクトとしての面も強いのでしょうか?

TAKKI:それが近いかもしれない。僕ら“ジョイン”という言葉が好きで、SOMETIME’Sにとっては、アレンジャーやミュージシャンに限らずレーベルや事務所といったチームも含めて“関わってくれる”ということが大事というか。ただ参加するだけ、演奏するだけ、の関係にはしたくないんです。みんながジョインしてくれているのが理想形で。

▲TAKKI(G)

──そのメンタリティを音楽性で支えているのが、アレンジャーの藤田道哉さんであると。どうやら藤田さんは、TAKKIさんがアルバイトをしていたリハーサルスタジオの後輩さんだったそうですね。

TAKKI:漠然と“音楽が好き”という子たちが集まっている職場で、道哉は異彩を放っていて。真剣にプロを目指しているんだろうなというのがすぐわかったんです。人づてに彼の手掛けた曲を聴いて途轍もない才能を感じて、喫煙所で煙草を吸う彼の元に通いましたね。“その才能を埋もれさせるのは勿体ない。まだ俺たちも実績はないけど、この先間違いなく結果は出せる。それを信じてくれとしか言えないけど、結果を出したいならジョインするべきじゃない?”って、上司の立場を使って半ば強制的に(笑)。でも説得までに半年かかりました。

SOTA:道哉がアレンジャーとしてジョインしてくれて、2枚目の自主制作盤を作って。それをIRORI Recordsの人が聴いて声を掛けてくれたんです。道哉と出会ったことで、自分たちのやりたい音楽性にまた近づくことができたんですよね。

──となると、SOMETIME’Sのやりたい音楽性は“いいメロディのポップス”という大枠だけが決まっている、ということでしょうか。

SOTA:そうですね。自分の作ったラフなメロディに、信頼する人たちがどんな音をつけてくれるのかを楽しんでいるというか。自分たちが信用している人たちの音が混ざったときのSOMETIME’Sのかたちを楽しみたいんです。

TAKKI:うん。SOMETIME’Sに向き合って提示してくれたものがうれしいし、それを前面に押し出したいんです。でもアレンジャーとはしょっちゅうディスカッションしてますね。というのも、まず曲を聴いて耳に残るのはボーカルであってほしいし、僕はプレイヤーなので、僕なりのアプローチで楽曲にどんな爪痕を残せるかが勝負というか。アレンジャーに“自分の考えたギターアレンジよりいいな”と思ってもらえないといけない。だから僕にとっては楽曲トータルへのこだわりというよりは、ギターでどうアプローチできるかが重要なんですよね。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報