【インタビュー】DEAN FUJIOKA、新境地「Take Over」を語る「普通の状況では生まれない新たな流れの一部」
■“日本のシャーロック”だった自分が
■中国から来た友人に東京の街を案内
──表現としてのいろいろな角度が増えたという意味では、2020年にリリースされた4曲は音楽的にもドラムンベースだったり、チルなヒップホップビートだったりと本当にバラエティーに富んでいました。中国の新鋭ラッパー福克斯とのコラボ曲でトラップを取り入れた「东京游 (Tokyo Trip)」は、“中国人の福克斯に東京の街を案内する”という内容で、リリックの面でもユニークなものになりました。このアイデアはどうやって生まれたのでしょうか?
DEAN:「东京游 (Tokyo Trip)」を作った時はドラマ『シャーロック』を撮っていたのですが、中国のバラエティーの仕事もあり、向こうから東京にいろいろな人が撮影に来ていて、福克斯とはそこで知り合いました。彼のことはこれまでに曲を聴いて知っていたし、彼も僕が出演していた中華圏のドラマなどで知ってくれていたこともあって、お互いに意気投合して曲を一緒に作ることになりました。彼が中国から東京に来て、みんなで原宿でお店をやるという楽曲コンセプトでしたが、自分が20代の頃、中華圏で仕事をしていた頃はこういう遊び方ってなかったなぁと思ったんです。
──先ほどのテクノロジーの発展の話にも関連しますね。
DEAN:例えば、今はスマホを使って多言語でいろいろなことをできるのが普通ですが、自分が20代の頃は、やっぱりそうではなかった。もし、その頃にそういった環境があれば、もっといろいろできたのにという気持ちがあるんですね。もちろん今は今だから、自分が今の時代でできることのMAXをやればいい。だから、当時"日本のシャーロック"だった自分が、中国から来た福克斯という友人に東京の街を案内するというコンセプトは面白いなと思ったんです。
──そのレコーディングは?
DEAN:向こうからトラックのデモループが送られてきた時点で、「これでいこうよ」となったので、最初にフックを乗せました。次にお互いがバースの部分に取り掛かるみたいな感じで、基本的にはデータをやりとりする形で進めました。コロナがなければ、本当はミュージックビデオも撮りたかったのですが、今回は実現しませんでしたね。
──「Go The Distance」は、中国最大手ゲーム会社“NetEase”が開発するスマホバトルゲームのキャンペーンテーマソングです。サウンド的にはドラムンベースを取り入れた曲ですが、これはゲームのイメージが先行してそういった曲調になったのでしょうか?
DEAN:そうですね。現実世界とゲームの世界をスクリーン越しにつないでいくというか、“飛んで行け!”というイメージが必要だと思ったんですよ。最初から歌詞のイメージが、“天の川を超えて織姫と彦星が出会う七夕”のように、普段は会えなかったり別々の場所にいる2人の距離。それと、スマホのスクリーンを隔てた現実のプレイヤーとゲームの中にいる人たちをオーバーラップさせた歌詞が書けたらすごくハマると考えました。だから、ベタな日本のアニソンっぽい曲にしたくなかったというのもあって、BPMもああいった感じで自分が聴いて踊れるようなものを意識しました。ドラムンベースももちろん意識はしていたのですが、それよりもダンスホールやレゲトンみたいなグルーヴの匂いを感じさせたいというのがあって、スネアやキックの音にもすごくこだわりましたね。でも、サビはとにかくパンチラインが効いたものというか、言葉とメロディーは跳ねた感じにしたかったので、ああいった感じの曲になりました。
──「Go The Distance」には日本語と中国語の両言語のバージョンがあります。以前、「バイリンガルの歌詞では言葉ごとにリズム感の違いある」とおっしゃっていましたが、今回もそういった部分はありましたか?
DEAN:最初に作った時、ブリッジ部分というか間奏パートでは日本語と中国語それぞれの言語で左右別々にパンを振って、サブリミナル的に同じ意味のリリックを鳴らそうと思って、結果、それを採用してるんですね。だから、どちらの言語でもその部分だけは言語を交差させて、両方聴くことで完成させる形になっている。あと、中国語と日本語で歌うのであれば、言語のバージョン違いによってキーも少し変えたというか、日本語のほうがキーが半音高いんです。間奏の部分だけはどちらの言語でも交差するというイメージを変えることなく、ただ、言語の相性の問題かもしれませんが、サビに関しては日本語のほうが響きが良いと思うところもあれば、バースとかは中国語のほうが響きが良いというのがあって。でも、良いとこ取りしてしまうと全体の構造バランスが崩れてしまうようにも感じたので、それぞれの良い部分を活かすためにキーを変えているんです。
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