【インタビュー】DEAN FUJIOKA、新境地「Take Over」を語る「普通の状況では生まれない新たな流れの一部」

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■2020年に出す自分なりのアンサーを
■“フォロー・ミー”してほしいという想い

──チルなヒップホップビートが印象的な「Follow Me」は、2020年の配信ライブ<Plan B>直前に、今回のCDシングルに先駆けてリリースされましたが、この曲は配信ライブが決定してから作られた曲なのでしょうか?

DEAN:その前に完成していた曲です。リリースタイミングに関しては、アジアツアーが中止になり、2020年という時代に“ひとつの自分なりのアンサーを出す”という意味で実施することにしたものが<Plan B>だったので、それを“フォロー・ミー”してほしいというメッセージを込めて、あのタイミングでリリースしました。

──「Follow Me」では、「Made In JPN」(2019年12月配信リリース)を手掛けたYaffleさんが再び制作に参加しています。彼をこの曲で抜擢した理由は?

DEAN:そんなに日常と遠くない世界観を持つ、この曲のポエティックな聴かせ方を考えた時に、Yaffleさんの音楽性と相性が良いと思ったのがきっかけです。彼は単純に聴いていて心地よいものを作っている印象があるし、出来上がった曲を聴いても、気持ちよさにすごく安定感があります。今回は最初、2人でThe RootsとかD'Angeloの曲をリファレンスとして聴いていて、「音やグルーヴの感じをこうしたら面白いんじゃないか?」という話をしたりしながら曲作りを始めました。最終的にはそれで良い形になって、かなり自然の流れに身を委ねたまま作っていった、という感じですね。歌詞に関しても、最初に自分が適当に鼻歌で歌っていたものが、言葉としてこの曲に残っている部分が多いんです。もちろん歌詞についてはダブルミーニング、トリプルミーニングになるように後から手を加えた部分もあるのですが、その意味ではちょっとフリースタイルに近い感じでしたね。特にサビやメロディーの歌詞は、ほぼ同じタイミングで出来上がっていたような気がします。


──「Shelly」(3rd EP/2019年10月リリース)以来のまとまった作品となる「Take Over」ですが、今回最も新たなチャレンジングだった部分はどのようなところでしょうか?

DEAN:「Take Over」と「Follow Me」に関しては、言ってみればこういう感じの音楽ってすでに存在していると思うんですよ。でも、「Plan B」に関しては、少なくとも自分が知る中ではこういった曲はたぶんまだない。それを模索するのに結構長い時間を費やしたことが、今作に関しては最もチャレンジングだった部分かもしれませんね。正直、最初は1曲通して、この形での「Plan B」は全く想像できなかったのですが、曲作りを進めていくうちに逆にこの形しかないと思うようになりました。だから、まずバースやバースダッシュみたいな小さいリピートはありますが、その最初のセクションがあって、途中で何か変な世界に迷い込んでいくみたいなセクションがきて、その後にガツンとくる音があってみたいな感じで、それぞれの相乗効果がこういう関係性で1曲になる形に最終的には落ち着きました。

──これまでも音楽制作の機材にはこだわってこられたと思いますが、今回のシングルに収録される3曲ではどのような機材を使われましたか?

DEAN:基本的にはいつもと同じ環境ですが、「Follow Me」と「Plan B」ではAbleton Live、「Take Over」ではFL StudioというようにDAWを使い分けました。あとES-PLANTさんがすごくこだわった設定のWindowsを使っていたこともあって、PC自体もWindowsを使うことが多かったですね。DAWもひと昔前と違って随分進化してきているので、テクノロジーの発展によって、制作自体は自分のアイデアを具現化しやすくなっているところはもちろんあります。でも、それよりも今の自分としては、何かを作りたいという方向性で言えば、例えばアカペラだけ、ピアノだけ、ストリングスだけのような形にどんどん気持ちが向かって行っている気がします。とはいえ、DAWの存在自体が、音楽制作の現場からなくなることは今後、おそらくないだろうし。だからこそ、よりシンプルな形で音の鳴りとか、トーンの追求とか、そもそものDAWも含めての楽器としての響きみたいなものを追求していき、それが活きる形でコンポジションとしての楽曲制作でDAWを使って音を作ったり、ポスプロ時にアレンジしたりするみたいな感じになっていくんじゃないかなと思います。


──2020年は先ほどの「Follow Me」以外に「Neo Dimension」「东京游 (Tokyo Trip) 」「Go The Distance」といった4つのシングルがリリースされました。その中で「Neo Dimension」は過去にリリースした「My Dimension」を新しく生まれ変わらせた曲とのことでしたが、改めて「Neo Dimension」とはどういった曲だったのでしょうか?

DEAN:「Neo Dimension」はタイトルが示すとおり、“新しいステージ” “新しい次元に行く”という気持ちを込めた、その宣言となる曲です。そういう曲なのでやっぱり歌詞やアレンジといった内容も以前のものとは違っていて、そこがこの曲の存在意義ですね。「My Dimension」は“自分はこういったスタンスでやっています”という“自己紹介”的な宣言でしたが、そういう意味では「Neo Dimension」も同じ役割の曲だと言えます。でも、そこから10年という、すごく大きな変化のひとつのサイクルがあって、あの頃とは違う今の自分だからこそ表現できることを含めて、改めての意思表明的な曲になっています。

──「Neo Dimension」ではラテンミュージックの要素が取り入れられるなど、ロック調だった「My Dimension」とはサウンド面の変化も見られました。

DEAN:「My Dimension」は元々、ギター1本でやれてしまうくらいアコースティックな感じでした。でも、シングルになった時には、EDMというかベースミュージックのような要素を取り入れつつも、メンタリティはロックみたいな感じになりましたね。その頃は、ゴリゴリでイケイケな音圧MAXみたいなサウンドが自分の中で良いというのがあって、そういう価値感を曲に反映させていたのです。でも、今はどちらかと言えば、もっと人間の息遣いとか、何かその楽器を触っている手とか肌とか、身体が揺れてる感じだとか、そういった音像にしたかったんです。そう思うようになったのは結構前からですが、いきなり全部がガラッと変わるというわけではなく、いろいろと自分が試していく中で変えていったという感じです。特にサウンドに限った話で言えば、2020年にファンクラブ限定のオンラインライブを開催したのですが、そこで披露した3ピースによるアコースティックライブの「My Dimension」のアレンジがすごくしっくりきたことが大きかったですね。その時に“この感じだったら、今の自分でも、そして未来の自分でも、この曲を続けられるな”と思いました。実際に前回のアジアツアーの時にも「My Dimension」は披露していたのですが、今の自分のモードとは少し違うというか。低音が効いた音楽はもちろん好きなのですが、それよりももっとすっきりさせたいというのがあって。どんどん曲を引き算的にマイナスしていた結果、一番人間の体温に近い形、かつ曲が求めてるようなストーリーテリングのフォーマットに落ち着きました。

▲CDシングル「Take Over」通常盤

──なるほど、DEANさんはこれまでも最先端の音楽を積極的に取り入れてきていますが、将来的にはこの曲もまたさらにアップデートされる可能性はあるのでしょうか?

DEAN:この曲とは別の曲が、もしかしたら違う形で表現されることもあるかもしれませんし、「〇〇 Dimension」みたいな感じでシリーズ化されていくかもしれません。こういったことについては流れ次第というか、本当に現段階ではわからない部分ですが、やっぱり変化や進化は常に続けていきたいと思っています。“今、自分の音楽をやれている”ということは幸せなことですし、「Neo Dimension」は死んで不死鳥のように蘇るというメッセージを込めた曲なので、その中でいろいろなトライをしていくことは重要だと思っています。「Neo Dimension」の歌詞にしてもそう。エンディングの歌詞は、完全に新しく作った部分ですが、人間は“生きている”と感じることも時期によって全く違うので、デヴィッド・ボウイやマドンナじゃないですが、同じ音楽をやっているけど時期によってサウンドも全然違ってくるようなスタイルが良いなと思っています。ひとつのサウンドでやっていくのももちろん良いのですが、音楽ってテクノロジーと共に発達していくし、世の中の動きによって発言する言葉の選び方も変わってくる。そういうふうにいろいろな面で変化して、その時代だからこそ作れるものに挑戦していくことが、アーティストをやってる一番の醍醐味だと思うんですよ。だからスピリット、メンタリティの部分で、燃え尽きてはまた新しく再生して、また新しい挑戦をするみたいな感じを基調にした感じですね。

──テクノロジーの面でいえば、10年前よりも音楽制作で使う機材も随分進化したと思います。以前はDEANさんの頭の中にアイデアとしてありはすれども、実現できなかったものもあったと思います。その中で、今では実現できるようになったものもあるかと思いますが?

DEAN:“やっと実現できるようになったか”という思いはもちろんありますが、それは常に無い物ねだりのような状況でもあると思っています。結局、サウンドを再生するスペックみたいなところとの追いかけっこでもあるというか。ただ、“その音楽の奥にどんなメッセージがあるのか?”とか、“なぜ、そもそも音に言葉を乗せて、ストーリーとしてメッセージを伝えるのか?”みたいな方向に自分の重点がどんどんシフトしていることもあって、「Neo Dimension」もそれ以降に作った曲も、表現として以前よりいろいろな角度が増えたと思っています。

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