【インタビュー】BACK-ON、過去に感謝しながら未来へ「やれることはまだまだある」
■『Flip Sound』は、企画モノじゃなくて背負うつもりで作った
──そして、アニバーサリーイヤーの一貫として、セルフカバーをまとめたDisc1、2人体制になってから配信で発表した作品をまとめたDisc2という2枚組の新作が完成しました。
KENJI03:僕らは今、過去に感謝しながら新しいサウンドへ向かうというテーマがあるんです。せっかくのアニバーサリーイヤーですし、過去の曲たちを今のサウンドで録り直すというのがスタンスともリンクしてるなと考えたんですよね。
TEEDA:やっぱり、ライヴでも過去の曲は求められるし、「2人でやったらこうなるよ」というのも伝えたかったから。
──面白い2枚組ですよね。一見、ベストアルバムっぽいけど、そうではないという。
KENJI03:過去を振り返りつつ、現在として表現してるのがDisc1、現在進行系がDisc2。面白いですよね。今、話をしてて改めてそう感じましたよ。あと、そもそもなんですけど、セルフカバーってあんまり好きじゃなくて。
──今回、思いっきりセルフカバーですけど(笑)。
KENJI03:そうなんですけど(笑)、演奏力が上がってても情熱感がないパターンってあるじゃないですか。
──ありますね、そういうことも。
KENJI03:キレイに録音されてるけど、何か物足りないみたいな。結局、オリジナルバージョンが好きっていうファンも多かったりするし。だから、そういうのはやめようと最初に話してて。技術の向上がわかるだけの作品なら意味がないわけだし。TEEDAも言ったように、今の2人体制の音を鳴らす、表現するモノにしたかったんですよ。ニュアンスとしては、セルフカバーとリミックスの中間って感じですかね。
TEEDA:あ〜、その表現がしっくりくるかも。
──基本的にはオリジナルバージョンの良さや空気感を大事にした仕上がりになっていますよね。
KENJI03:そうですね。ただ、「STRIKE BACK」なんかだと、もっと尖らせたい、エッジを立たせたいというのがテーマとしてあったので、サビに入ってたシンセの音を排除して、シンプルな構築にしてみたり。そういうアプローチはしましたね。
──今回は初期の曲をかなりセレクトしてるじゃないですか。改めて昔の自分たちを向き合って、気恥ずかしさみたいなのもあったのかなと。
TEEDA:ありましたね。例えば「OVER」はいちばん最初に作ったぐらいの曲なんですけど、歌詞を読み直すとひと区切りずつに「壁を超えろ」みたいなことを書いてて。テーマとしてはわかるんだけど、「なんでこんなに連呼してるんだろう?」と(笑)。あと、歌い直してみると、どうしても出せない声があったりもして。1時間ぐらい何回も歌ってたら、ノドがガラッガラになったりしましたから。
──表現や技術は今の方が高いはずなのに。
TEEDA:感情的な部分を表現するのが難しくて、それはヤバかったですね。
KENJI03:そういう青さもあるから、初期の曲は好きなんですよ。今、同じような曲を作れと言われても無理だし。今回、DVD付きのバージョンもリリースしたんですけど、そこにはインタールード的に昔の映像を入れてて。まさに「OVER」や「アルティメット足立」をやってた初期の時代で、お客さん誰ひとりとしてノッてないライヴ映像があるじゃないですか(笑)。
──ありましたね(笑)。
KENJI03:自分たちが全力で楽しんで、思いっきりぶつけてるだけの姿が凄くピュアで、それがいいなと思いながら観てたんですけど、あんなことができたのってあのときだけ。だから、セルフカバーをやると決めたとき、その時代の曲たちをまずは選抜しちゃいましたね(笑)。「STRIKE BACK」や「ニブンノイチ」なんかだと、ある程度は完成された時代の曲なんで、そこまで大幅な変化はないだろうけど、あの初期の曲を今の自分たちがアレンジしたら絶対に良くなる、面白くなるだろうなと思ったし。
──リアレンジしてみて、印象深かった曲を教えていただけますか?
TEEDA:僕のことっていうより、KENJI03を見てて印象深かったのが「flower」なんですよ。ファンからも人気が高く、ライヴでもよくやってるから歌入れはすんなりと終わるかなと思ってたけど、凄く時間がかかって。「どうしたの?」と聞いたら「もう、わかんない」って言ってて。
KENJI03:さっきの話に通ずるんですけど、技術だけでカバーするのは嫌だったんですよね。それに、みんなはオリジナルバージョンを聴いてからこのセルフカバーを耳にするわけだから、「やっぱり、オリジナルがいいね」とは言われたくなかったし。
──包み込むようなニュアンスや空気感が大事な曲ですしね。
KENJI03:「flower」はBAReeeeeeeeeeNとかをやってた時代の曲なんで、まさに自分が葛藤してたど真ん中(笑)。歌いながら思い出しましたね。結果としては、凄くいいテイクになったかなとは思ってます。
──KENJI03さんはいかがですか?
KENJI03:今回、僕がメインでリアレンジをさせてもらったので、全部が印象深いんですけど……やっぱり、対オリジナルっていうのがキツかったから。そういう向き合い方って、あんまりなかったというか。
TEEDA:それはそうだよね。
KENJI03:Disc2にも収録されてますけど、ミニアルバム『rebirth』で「Chain」をリアレンジしたとき、意外とスムーズだったんです。だから、大丈夫かなと思って制作を始めたら、結構挫折しがちだったというか(笑)。オリジナルバージョンを超えるつもりではやりたくないけど、聴く人は良し悪しっていうシンプルな判断だから、今の自分たちが考えるアレンジがどう響くのか。そこを考えていくのがたいへんな作業だったりもして。
TEEDA:既存のファンにはもちろん、初めて聴く人たちにも「この曲いいよね」って感じてもらいたいですから。
──そう考えると、ベストアルバム以上に名刺代わりの作品になってますよね。過去を背負ったBACK-ONのサウンドがDisc1にあって、ここ数年で積み上げてきたサウンドがDisc2にあるわけですし。
KENJI03:そこですかね、いちばん難しかったのは。この新作って企画モノじゃなくて、背負うつもりで作ったから。
──また、そのDisc2には2人体制になり配信で発表した3作品がリリース順にそのまま収録されています。
KENJI03:単純にCDとしてはリリースできてないのもあって、収録することにしたんです。サブスクを利用してない人たちにも聴いて欲しいなという想いがあり、形が変わらないようにもしましたね。2人体制の軌跡じゃないですけど、ストーリー的にもこれがいいだろう、と。
──3枚それぞれに意味がありますしね。EP『NEW ERA』は決意、EP『CHOP KICK TURN』はルーツ、『rebirth』は過去のBACK-ONを背負いながら、今のBACK-ONを打ち出しているという。
KENJI03:まさにそのとおりですね。だから、「今はこれだよ」というのがわかりやすくまとまってると思ってます。
──しかしながら、Disc1とDisc2を聴いていくと、軸となる部分は変わってないなと感じますよ。
KENJI03:やっぱり、大事なのはメロディーだとずっと考えてるし、そこは変わってないですからね。より自分たちのオリジナリティを求めて、サウンドは尖らせる方向になってますけど、落とし込みたいのは(音楽シーンの)ど真ん中。自分たちのルーツもそこにありますから。
TEEDA:それこそ、KENJI03が歌えば、サウンドが凄くヘヴィだとしても、ポップスに落とし込まれるというか。サウンドだけに注目して聴いていくと「こんなに悪そうな音だったの!?」みたいなこともあるぐらい。
──そこはBACK-ONの長所ですよね。キャッチーで聴きやすいのに、実はかなりエグいことを歌ってたり、やってたりするっていう。
KENJI03:それに昔よりもサウンドの説得力も増してると思うんです。
TEEDA:いろんなことが分散しなくなってるというか。2人で共有したモノを突き詰めて、純度が高くなってるから。
──CDには未収録ですが、購入した人へスマプラというサービスを利用して新曲「Down」を届けるんですよね。
KENJI03 せっかくの機会なんで、最新の曲も入れたいなと決めました。最初、2人体制になってわりと攻めたアッパーな曲が目立ってる気がしたんで、バラードを作ろうとしたんです。ただ、一向にできないなと考えてたとき、子供と一緒にハマってるWWE(※世界最大のプロレス団体)を観てたら、そこでかかってる激しい曲がめちゃめちゃカッコよくて。
──KENJI03さん、プロレス大好きですよね。
KENJI03:それこそ、気づかないうちにプロレスを通して音楽を知ったぐらいですからね。ブルーザー・ブロディのツェッペリンの「移民の歌」、ロード・ウォリアーズでサバスの「アイアンマン」とか、知らぬ間に叩き込まれた(笑)。
TEEDA:もう刷り込まれてるんだね(笑)。
KENJI03:で、パッとギターを弾いてみたら、あっという間にこの「Down」が形になったんです。ただ、バラードを作るって言ってたから、そこが大丈夫かなと心配でしたけど(笑)。
TEEDA:僕はバラードがくる心構えだったから、いろいろ想定してたんです。「こういう歌詞だったらラップは新しい感じでああして」みたく。ただ、実際に聴いてみたら「全然違うじゃん!」って(笑)。
──そりゃ、そうなりますよね(笑)。
KENJI03:やっぱり、今はコロナの影響もあって、ストレスが多いじゃないですか。その怒りが出てきたんでしょうね。みんなでこの状況を打破して未来へ突き進みたくなったし。
──体全体をグッと持ち上げてくれるグルーヴもありますし、痛快な仕上がりだと思いました。
KENJI03:こういう作り方がいちばん自然だと思うんですよね。何かに向けて作るのもいいんですけどパッとフィーリングで生まれたモノというのは説得力もあるし、サウンドもカッコいいから。
TEEDA:10代のころって、ほとんどがそれなんですよ。技術や経験が増えてくると、それが難しくもなってくるんですけど。
──それこそ、新作のタイトルにもなった、BACK-ONが結成当時に利用していたリハーサルスタジオ「Filp Sound」で練習していたころ?
KENJI03:そうですね。今みたいなDTMじゃなくてMTRの時代でしたけど、そのMTRすら使い方がよくわからなくて(笑)、とりあえずその場でギターを弾いて、当時のドラムに「Bメロで落ちてラップ!」とか口で説明してたりして。
TEEDA:そうそう! アイコンタクトで「そこは縦(のリズム)!」って伝えようとしてたり(笑)。
KENJI03:リフだけ持っていって、あとはジャムセッションで作ってたりしてたけど、それが自然体な作り方というか、僕らはそこから始まってますから。
──また、DVDには昨年12月13日に開催された無観客オンラインライヴ<Bring the Noise vol.3>の映像も収録されてますよね。ただライヴの模様を配信するのではなく、ミュージックビデオ的なアプローチで始まったり、ワンカットで撮影されるのも臨場感たっぷりですし。
KENJI03:普通にライヴするだけならやらなくてもいいかなと思ってたんです。で、やるならばみんなを驚かせるような仕掛けをしたくて、ああいったアプローチにしてみました。
TEEDA:もしかしたら「これはライヴじゃねえじゃん」って思う人もいるかもしれないけど、オンラインライヴならこっちの方がいいと言ってくれる人も多くて。
──通常のライヴをオンラインで楽しむという妥協案ではなく、オンラインだからこそできるアプローチですよね。
KENJI03:そうなんですよ。そういった意味では新しい可能性も感じたし。今の現状を受け入れて、できることの可能性を追求した方がいいと思ってますね。
──まだまだ見通しが立たないところもありますが、アニバーサリーイヤーをどう進んでいこうと考えていますか?
KENJI03:今、できないことが多いからこそ、新しいことを考えられると捉えていて。僕らは僕らのやり方というか、スタンスで臨みたいです。以前だったらリリースしてツアーという流れだけだったのが、選択肢が増えたことによって、自分たちにとっていい環境が作れるかもしれないし。
TEEDA:実際、有観客で100%じゃないライヴをやるっていうのも凄くわかるし、それはそれでいいと思うんです。ただ、僕らはそこじゃねえんだ、っていう。BACK-ONらしい何かを探したり、挑戦する方が有意義かなって。
──2人体制でバンドを続けることを決めたのも、妥協せずに尖らせたいという想いがあるからこそでしたし。
KENJI03:今回、この新作はミックス以外のほとんどを自分のスタジオで完結させたんです。それって、コロナの影響がなければ考えつかなかったし、ここまでサウンドを突き詰めることもしなかったかもしれない。そういったことから考えると、自分たち次第でやれることはまだまだあるんですよね。
TEEDA:ライヴができないならできないで、曲をガンガン作って、コロナが落ち着いたときにすべての武器を持ってる状態になってればいいかな、と。
KENJI03:ワクワクしつつ、ワクワクさせるような1年にしていきたいですね。
取材・文◎ヤコウリュウジ
『FLIP SOUND』
予約:https://avex.lnk.to/backon_210217cd
■AL2枚組+DVD(スマプラ対応)
品番:CTCR-96014~5/B
価格:6,700円(本体価格)+税
■AL2枚組(スマプラ対応)
品番:CTCR-96016~7
価格:3,700円(本体価格)+税
【Disc-1】
1.Butterfly
2.STRIKE BACK
3.flower
4.flyaway
5.ニブンノイチ
6.DRIVE
7.Sands of time
8.a day dreaming...
9.BLAZE LINE
10.NEW WORLD
11.ヒカリサスホウ
12.OVER
13.INFINITY
14.Believer
15.アルティメット足立
【Disc-2】
1.Clown
2.Carry on
3.Laugh now
4.Misty rain
5.Knock knock
6.WILD THING
7.Wannabe
8.Good morning
9.Switch
10.rebirth
11.three two one
12.TOKYO BE-BOP
13.Shall we dance
14.Chain2020
+新曲(スマプラで追加、盤未収録)
【Disc-3 DVD】
「Bring the Noise Vol.3」
M01.Bring the Noise
M02.Clown
M03.Misty rain
M04.DRIVE
M05.愛言葉
M06.TOKYO BE-BOP
M07.READY SET GO!
M0.セルリアン
M09.ROCKSTAR ANTHEM
M10.with you
M11.ニブンノイチ
M12.flower
MUSIC VIDEO
Clown
Good morning
three two one
Switch
TOKYO BE-BOP
Shall we dance
Chain2020
◆BACK-ON オフィシャルサイト
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