名機「miniKORG 700」が完全限定生産で復活、アルペジーターやスプリング・リバーブ、メモリー機能などを追加した「miniKORG 700FS」発表

ポスト

コルグが1973年に始めて量産し販売したモノフォニック・シンセサイザー「miniKORG 700」が復活。「miniKORG 700FS」が6月より完全限定生産で発売される。


▲miniKORG 700FSはフルサイズ37鍵(ベロシティなし、アフタータッチ対応)を搭載。ジョイスティックも新たに追加された。本体サイズは744×280×122 mm、重量8.5kg。ACアダプター(DC 12V)、トラベラー・ノブ(独立タイプ×2)、ハードケースが付属。

「miniKORG700」は1973年、シンセサイザーという物のカタチがまだ確立されていない中で試行錯誤の末に生み出され、シンプルな操作から過激な音色変化を生み出し、シンセサイザーのおもしろさを幅広い層に伝えるとともに、多くのミュージシャンからも高い支持を得た。今回登場の新モデルは、その翌74年に発売された「miniKORG 700S」を忠実に再現したものだが、当時搭載できなかったアルペジエーター、スプリング・リバーブ、アフター・タッチなどの機能を追加している。オリジナルの開発者、三枝文夫氏とともに作り上げたアナログ・シンセサイザーのひとつの完成形、それが「miniKORG 700FS」だ。


コルグは「prologue」や「minilogue」など、現代においてもアナログ・シンセサイザーの開発を行っている。そのきっかけとなったのが「miniKORG 700」の存在。アナログ回路をDSPなどICの計算機によって再現するアナログ・モデリング技術では、「miniKORG」から生み出される音の本当の美しさ、本当の凄さを実現できなかったからだ。

アナログの回路の設計には机上の知識も大事だが、実際に回路を組んだらどうなるかを理解するために多くの経験が必要になる。若い技術者による新世代アナログ製品「monotron」発表(2010年)から10年。回路図に描かれた設計者の想いを理解するための時間を重ねたことで、今、ようやくここに辿り着くことができた。さらにオリジナルを設計した三枝文夫氏から直接アドバイスを受けることで、回路図に描かれていない部分まで正しいカタチで継承されている。

この「miniKORG 700FS」によって、コルグが目標にしてきた本物のアナログ・サウンドの美しさ、凄さを体験してほしい。それが、コルグからのメッセージだ。


▲手前にはボリューム、スプリング・リバーブに続き、本機を特徴づけるトラベラー・コントローラーなどをカラフルな操作子で配置。オルガンの上に乗せて使えるよう鍵盤下に備えられている。
▲背面にはUSBとMIDI IN、ミニジャックのSYNC IN/OUT、CV IN、GATE IN、標準フォーンジャックのAUDIO IN、OUT L(MONO)/R、ヘッドホン(ボリュームノブ付き)、そして付属ADアダプター用のDC INを配置。

「miniKORG 700」は最初のシンセサイザーでありながら、今でもコルグのシンセの中で最も太く、密度のあるサウンドを誇っている。「miniKORG 700FS」では抜けのよいオシレーターはもちろん、「miniKORG 700」の象徴とも言えるトラベラー・コントローラーも完全に再現した。

「miniKORG 700」のフィルター回路は、「volca keys」と「volca bass」にも搭載されているが、それはクリアで抜けのよいフィルター特性が、存在感のあるリードとベースに特化した製品にピタリと合致したから。この「miniKORG 700」のサウンドは今の音楽シーンにも適当するものであるとともに、リードとベースで使った時にその真価を発揮する。

サブ・キーボードとしての可能性にも注目。当時の音楽で多く使われていたオルガンの上に置き、オルガンでは足りない音を足すためのサブ・キーボードとして誕生した「miniKORG 700」は、現代においても美しいリード・サウンドがステージ・キーボードやエレクトリック・ピアノと組み合わせる可能性も十分に秘めている。オルガンの二段鍵盤の上に置かれる状況を想定し、使いやすいよう鍵盤下に一列に配置された操作子は時代が変わっても直感的でわかりやすく、そのルックスは他にはない個性的なものとなっている。


▲ピッチベンド、モジュレーションのためのジョイスティックなどを新たに追加。

前述のとおり、オリジナルに加えたかった機能も新たに備えた。当時の技術では電子部品などのここのパーツが大きかったこともあり、本体内にこれ以上の機能を入れるスペースがとれなかった。技術の進歩により空いたスペースにはエフェクト=スプリング・リバーブ、ベンドやモジュレーションのためのジョイスティックを追加。表現の幅を広げるアフター・タッチ、さらに今の音楽シーンに対応すべくアルペジエーター、USB端子、MIDI端子やCV/GATE IN端子も搭載した。

そして、同じく当時は実現できなかったメモリー・プログラム・ボタンを搭載。一度作った音を再現するのに、ノブやツマミの位置をメモしておく必要はない。


▲2つのスライダーで構成されるフィルター設定用のトラベラー・コントローラーは、両者がすれ違うように設定できる突起のないツマミも同梱。

「miniKORG 700」の最も特徴的な部分が、鍵盤下にある2つのスライダーによるトラベラー・コントローラー。上のツマミがローパス・フィルター、下のツマミがハイパス・フィルターのカットオフ周波数をコントロールし、2つのツマミの位置によって表情を自由に変えていく。また鍵盤を押さえながら左右に動かすことで、ワウやミュートのほかオリジナルなトラベリング・サウンドを作り出すことができる。

2つのツマミの位置が逆転するとすべての周波数がフィルターで遮られるため音が出なくなるので、「miniKORG 700」ではつまみに突起をつけて物理的にすれ違いができない構造にしていた。しかしそこは良くも悪くもアナログ回路。今も昔も完璧な特性をもつフィルターを設計することは不可能であり、当時、ツマミを交差させるために突起削って新たなサウンド・メイクを試みたツワモノもいた。海外で販売されたモデルには元々この突起がないものもあった。「microKORG 700FS」ではこの突起のないツマミも同梱、自分で取り替えることができ、そんな幻の音を実体験することができる。

オシレーターにも手が加えられた。「miniKORG 700」は1オシレーターのモノ・シンセだったが、1年後の1974年にはサウンドのバリエーションを増やすべく鍵盤の左側のスペースに操作子を加え、セカンド・オシレーターやリング・モジュレーターを追加した「miniKORG 700S」が登場。今回のFSはこの機能が拡張された700Sを復刻しており、2つのオシレーターによる強力なデチューンなどによって、抜けがよく太いリード・サウンドの変化をより楽しめるようになっている。

約半世紀ぶりに復活した「miniKORG 700FS」は、そのリアルな限定モデルにふさわしい専用ハード・ケースを付属して販売される。


製品情報

◆miniKORG 700FS
価格:未定
発売日:2021年6月予定

<おもな仕様>
鍵盤:37鍵(ベロシティなし、アフタータッチ対応)
音域:7オクターブ
波形:三角波、矩形波、鋸歯状波、コーラス I、コーラス II
プログラム数:14
入力端子:MIDI IN端子、SYNC IN、SYNC OUT端子(3.5mmミニ・モノラル・フォーン・ジャック)、GATE IN端子(3.5mmミニ・モノラル・フォーン・ジャック)、AUDIO IN端子(6.3mm TSフォーン・ジャック)
出力端子:OUTPUT L/MONO、R端子(6.3mm TRSフォーン・ジャック)、ヘッドホン端子(6.3mmステレオ・フォーン・ジャック)
電源:ACアダプター(DC12V)
消費電力:9W
外形寸法(幅×奥行×高さ):744×280×122mm
質量:8.5kg
付属品:ACアダプター(DC 12V)、トラベラー・ノブ(独立タイプx2個)、ハード・ケース
アクセサリー(別売):SQ-CABLE-6

関連画像&映像

◆KORG 画像&映像
この記事をポスト

この記事の関連情報