【レポート】TK from 凛として時雨、「ちょっとだけでもいいので、音楽っていいなと思ってもらえたら」
未曾有の自体に見舞われた2020年末、TKは3年ぶりに立つBillboardの舞台を自分色に染め上げていた。
12月11日からスタートした<TK from 凛として時雨 Acoustique Electrick Session vol.2>は、東京や大阪、追加公演を経て、自身の誕生日である12月23日に横浜にて幕を閉じた。TKにとって、今年は4月の<彩脳 TOUR 2020>が新型コロナウイルスの流行によりツアーを延期し<TK from 凛として時雨 Studio Live for "SAINOU">を開催し、凛として時雨としては10月には初の配信ライブ<凛として時雨 15th anniversary #4 for Extreaming Live Edition>を開催した異例の1年だった。その締めくくりが、今年初めての有観客で開かれた本ツアーだ。メンバーにBOBO(Drums)、吉田一郎不可触世界 (Bass)、ちゃんMARI(Piano)、須原杏(Violin)を迎えたアコースティック編成で約60分のステージを彩った。
開演直前、ステージ上のスクリーンには「スタンディング禁止」「マスクの着用」「大きな声での発声はNG」といった注意事項が映し出される。2020年はそういう1年だったのだ。徐々に会場が暗くなり、サウンドスケープの音が微かに聴こえる中、拍手とともにサポートメンバーがステージにあがると、ちゃんMARIによるピアノの氷のような旋律が響く。静まり返った会場にひんやりとした空気が漂うと、TK×suzuki takayukiのワイドパンツを着こなしたTKがステージの袖から舞台中央に登場した。
ダークトーンで統一された衣装は、青い照明がよく映える。BOBOのバスドラムが正確に低音リズムを刻み「Dramatic Slow Motion」でライブがスタートした。TKの声は直線的に伸び、一音一音丁寧に発する旋律は、肉声というよりも弦楽器のようだ。
一瞬の沈黙の後、「凡脳」へと続く。ステージは赤色に染め上げられ、疾走感がBillboardを包んだ。堅強な低音に支えられながら、ヴァイオリンとTKの歌声の高音が妖艶に絡む。色気とは、危うさを孕むのだと実感させられる。続いて披露されたのは、アコースティックライブらしさが全面に出た「reframe」だ。ピアノの情感溢れる「contrast」と続き、しばらくの沈黙の後「katharsis」へと流れていく。吉田一郎不可触世界のウッドベースが官能的に響き、BOBOの力強いドラムが支える上に、ちゃんMARIのピアノ、須原杏のヴァイオリンの高音が乗る。TKは重なり合う音を噛みしめるように目をしっかりと閉じて歌声で彩る。計算されたバランスで駆け上がっていくように熱量をあげた瞬間、フッと曲の終りを迎える。
アクシデント的に客席からカトラリーが落ちる音がすると、TKはステージの上から「大丈夫ですか」と声をかけた。整然と並んだ客席を見渡し、「まさかこういうスタイルだとは思わなかったので、オーディションに来たような気持ちですけれど、音に乗らないと僕たちがつまらないというわけでもないので、静かに見てもらって大丈夫です…よろしくお願いします」と笑いを誘う。
「Shinkiro」では、ちゃんMARIの伸びやか且つ抑制の効いた歌声がTKの声と付かず離れずの掛け合いを見せ、「蝶の飛ぶ水槽」ではエレガントな雰囲気から一転、エレクトリックなSEによって会場は様変わりした。青く光が当てられたステージは、まるで水の中のようにメンバーを照らし、静かな狂気を感じさせる。曲が終わるとTKはギターを置き、ピアノに身を任せるように「片つ」を歌始める。音が少ない分、会場全体を包む自然音が際立ち、寂寞の情を催した。
再びTKがギターを持つと、それぞれのパートが不均衡にメロディーを奏で始め、「I’m a Hero」とお馴染みのフレーズが唱えられると、バラバラな部品が一気に結びつくかのように「P.S. RED I」が音像となって現れた。終盤に向かうにつれ、ドラムの音色が鮮やかにステージを彩る。オーディエンスも、すっかりリズムに身を委ねるようになっていた。
そのままメンバーはステージを降り、5分間のアンコール拍手の後、TKが1人ステージに戻ってきた。「もう少々お付き合いください」と言うと、ギターは持たずに「unravel」を歌い始めた。ピアノの音色を全面に押し出しながら、少しずつ熱を上げていく。Cメロの直前でTKがギターを鳴らすと、赤い照明に彩られたステージからは花びらが舞い散るような艶やかな音が響いた。
曲が終わるとTKは「みなさんに、折り入って相談があるのですが」と切り出し、「久々に爆音とか……感じてみたいなんて……思っていたりしますか」とオーディエンスに投げかけると、会場は拍手で包まれた。一呼吸おいて「1曲、バンドスタイルでやらせてもらっていいですか」と切り出した。
「今年、普通のライブも見に行けなかった人も多いと思うので。アコースティック見に来たのにという気持ちもあると思いますが、一応エレクトリックという文言も入ってますので……こういう時のために入れておきました」と笑い「ちょっとだけでもいいので、音楽っていいなと思ってもらえたら嬉しいと思います」と言う。
当日に急遽決めたというラストは、「Fantastic Magic」だ。弾けるように音が共鳴し、Billboardであることを忘れるほどバンドとしてのサウンドを鳴らしきって、ライブの熱量を最高潮にまで高めて幕を閉じた。
なお、12月25日は、本公演と同じメンバーによるライブ映像の配信もスタートする。エレクトリックでアコースティックなライブで激動の1年を締めくくる。
文:嘉島 唯
写真:岡田貴之
配信ライブ<TK from 凛として時雨 Acoustique Electrick Session for 0>
アーカイブ視聴期間:12月28日(月) 23:59 まで
チケット販売期間:12月22日(火) 12:00 ~ 12月28日(月) 23:00
配信チケット:¥3,000 ※別途決済手数料
チケット購入:https://tk-official.zaiko.io/e/forzero
・Support Member
Drums : BOBO Bass : 吉田一郎不可触世界 Piano : ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。) Violin : 須原杏
<TK from 凛として時雨 Acoustique Electrick Session vol.2>SET LIST
01. Dramatic Slow Motion
02. 凡脳
03. reframe
04. contrast
05. katharsis
06. Shinkiro
07. 蝶の飛ぶ水槽
08. 片つ
09. P.S. RED I
en
01. unravel
02. Fantastic Magic
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