金子ノブアキ、33分の超大作「Zange Utopia」配信開始。映像作品も2本同時公開
金子ノブアキが33分に及ぶ楽曲「Zange Utopia」をクリスマスに発表。さらに2本の映像作品を公開した。
◆『Zange Utopia〜Dune~』『Zange Utopia〜Bridge~』
「Zange Utopia」は静かでありながら、ときに激しく、ときに美しく流れていく楽曲。コロナ禍でのテレワークやウォーキング、ヨガ、メディテーションといった身近なシーンにそっと寄り添う1曲となっている。
そして楽曲に共鳴したクリエイター達がジャンルを超えて集結し、2本の映像作品が仕上がった。こちらは楽曲「Zange Utopia」の一部分を『Zange Utopia〜Dune~』『Zange Utopia〜Bridge~』と題し映像化している。
「Zange Utopia〜Dune~」は、朝陽の中、海辺に佇む一人の男から映像がスタート。金子ノブアキが作る美しい旋律に乗せ華麗なジャンプで魅せるのは、東京バレエ団プリンシパル柄本弾。柄本が纏う儚くも美しいコスチュームは東京のファッションシーンを牽引するファッションデザイナー芦田多恵がデザイン。静寂と躍動を行き来するダンス。その一瞬を切り取るのはフォトグラファー荒井俊哉。全体ディレクションは清水監督が行った。
「Zange Utopia〜Bridge~」では、静かに波打つ海が冒頭に映し出される。幾何学模様の橋の上、1本の街灯の下、スマートフォンの光で表現するコンテンポラリーダンスは、人と人との温かくも無機質な繋がりを表現した。金子ノブアキによる美しくも切ない旋律にダンサー鈴木陽平が振り付け、カメラマン廣瀬順二が映し出す。清水監督が全体ディレクションを担当した。
なお、YouTubeでは立体音響で映像を楽しむことができる。イヤホン・ヘッドホンとあわせて没入感を味わってほしい。
■ライター内田正樹と金子ノブアキによるライナーノーツ
「偶然にもコロナ禍の直前に自宅スタジオを構えたばかりでした。自粛期間中はトライ&エラーの時間も潤沢にあったので、一人で制作するスキルも速度も格段に上がり、多くの曲が生まれました。その中の5曲を、草間敬さんの協力を得て、シームレスに繋げたのがこの「Zange Utopia」です」
RIZE、そして近年はRED ORCAのドラマー/絶対的守護神としての顔を持つ金子がソロ活動を開始したのは2009年のこと。ソロアルバム『オルカ』(2009年)、『Historia』(2014年)、『Fauve』(2016年)で鳴らされてきた通り、アンビエントとは彼の音楽性において、ロック、オルタナティブ、ノイズと並ぶ、大きなファクターのひとつである。
「アンビエントは昔から好きです。ロイクソップ、スザンヌ・サンドフォーといった北欧系も好きですね。アメリカ西海岸のロックを聴く一方で、「都会で遊ぶのも楽しいけれど、森や山に行くのも超楽しいじゃん?」という感覚で親しんできました。様々な映画のサウンドトラックやゲーム音楽からも影響を受けています」
そもそも、この「Zange Utopia」は、リリースを想定して製作された楽曲ではなかった。
「あくまで個人的に、「よかったら聴いてみて」と近しい友人たちに送っていた。みんなきっと鬱屈としているはずだから、メディテーションでもヨガでもストレッチでもジョギングでもドライブでも、自由に使ってもらえたらと思って。すると、清水康彦監督が「これは何か形にしようよ」と言ってくれて」
かくしてソロ楽曲のMVや映画『MANRIKI』を共にしてきた盟友・清水康彦監督のディレクションから2編のミュージック・ビデオが撮影された。「Zange Utopia 〜Dune〜」にはダンサーに東京バレエ団プリンシパルの柄本弾、衣装にファッションデザイナーの芦田多恵、撮影にフォトグラファーの荒井俊哉が、「Zange Utopia 〜Bridge〜」にはコレオグラファーにダンサーの鈴木陽平、撮影にフォトグラファーの廣瀬順二が参加した。
「映像プランは清水君主導で進んだので、顔触れを知って驚きました。昔馴染みもいれば、柄本君や芦田さんのような初対面の方もいてくれた。こんなに素晴らしい方々が共鳴してくれたのは光栄の極み。それぞれにチーム感のあるクリエイションになりました」
二編の映像がそれぞれに照らし出しているのは、誰しもが向き合うはずの“孤独”だ。
「コロナ禍を生きる今の僕らにとって最大の敵は“孤独”だと僕は思います。人は皆、決して一人では生きられない。「自分は大丈夫」と自己のメンタルを過信せず、何かを頼って、誰かを信じてほしい。二編の映像では、僕がこの曲に込めた『自分の親愛なる人たちが、どうか孤独ではありませんように』という祈りと願いが的確に具体化されています」
斬新なインパクトの「Zange Utopia」というタイトルにもコロナ禍が反映されている。
「まず世界中の閉鎖的な状況から、ふとconfessionという言葉が頭に浮かび、そこから“Zange(懺悔)”を連想し、清水君との会話のなかから、対照的な“Utopia”を繋げました。“Zange”はローマ字の印象も語感の響きもドイツ語っぽいカッコ良さがあって、しかもちょっとパンキッシュ。パンク精神とは、休符、つまりは行間にこそ凶暴性が潜むアンビエントな音楽にこそ案外と宿っているものなので」
ドラムとノイズで迎える終盤は「まだ何も終わってはいない」という現実のメタファーだ。
「どんなに耳を塞いでも聞こえてくるネガティブな情報や不安な集団心理をイメージしました。トラックからも、二編の映像からも、最後は立ち上がるためのきっかけとなる希望の欠片を感じ取ってもらえるはずです」
「Zange Utopia」。それは金子ノブアキによる33分の“2020年”の記録である。
「2020年の言葉にならないもやもやとした気持ちをアンビエントに昇華しました。一人で過ごす時間に、リラックスして聴いてもらえたらうれしいです。僕は日頃、バンドでもソロでも、物語のサウンドトラックを目指し、音楽を鳴らしています。無論、物語の主人公はフロアの観客やリスナーの皆さんです。まだまだ大変な時世だし、どうしてもくすぶってしまうけれど、僕もいまは牙を磨き、刀を研ぐための時間と腹を括って、怒りや悔しさを制作の原動力に変えています。この「Zange Utopia」が一時でも皆さんのサウンドトラックになれたらと願います」
テキスト:内田正樹
金子ノブアキ「Zange Utopia」
Spotify:
https://open.spotify.com/track/47MHNnIvZualJkD8AzN3tQ?si=ae-l_1TrRa2LbYwLGzhPFw
iTunes:
https://music.apple.com/jp/album/zange-utopia/1545026924
Apple Music:
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