【インタビュー】Grave to the Hope、メロディック・デス・メタル界の伝説がアルバム発表で再び降臨

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■家電とかが山の中に捨ててあるのとかを見たら
■すごく嫌な気持ちになるんですよ


――「Nasty Soil」はどんなイメージで書いていたんですか? 構成もシンプルにしていますよね。

Keija:そうですね。今回は聴きやすく、わかりやすいものをということで、構成はあえてシンプルにはしてます。曲としては、このときも、まだ「The Dimness of the End」の流れで書こうという流れだったから、結構リフで押していって、サビで広がるメロディアスな感じにしようというイメージですかね。こういうタイプの曲って、僕は今まであまり書いてきてないので、ここで出すのもありかなという考えもありましたね。

Ken:僕も初めてのタイプの曲だなと思いましたね。だから歌をつけるときにも、SERPENTとかぶるフレーズが自分の中でなかったんですよ。

――歌詞についてはどんなことを書いたんですか?

Ken:これは人間が汚した自然のことについて書きましたね。“Nasty Soil”というのは、厄介な土みたいなことなんですが、「The Dimness of the End」の続きのような攻め方をしたいなと思って書きましたね。僕自身がすごく自然が好きで、ひと気のないところに行ったり、住んだりするんですけど、家電とかが山の中に捨ててあるのとかを見たら、すごく嫌な気持ちになるんですよ。そういうのを想像して、「Nasty Soil」は書きましたね。

――実際に山などで不法投棄の現場を目にすることがありますよね。

Ken:そうなんですよね。結構、キレイな山と言われているようなところでも多いですよね。

――KOUTAくんはこの曲はどう感じました?

KOUTA:この曲は素直にカッコよくて、一番パクりたいなと思ったんですよ(笑)。リフの濃さがやばいなと思って。僕もどっちかと言うと、リフ・メーカーを自負しているというか、そういうのに憧れているので、これはしてやられたなという気持ちになりました。

Keija:ありがとうございます。

――ギター・ソロについてはどんな臨み方をしたんですか?

KOUTA:音楽的なところで言うと、シンプルに前半はペンタトニック(スケール)で攻めて、後半はメロディアスにみたいな流れを考えたんですけど、やっぱりペンタトニック一辺倒だと、どうしてもリフのカッコよさに負けてしまうので、前半については、“関係ない音”をKeijaさんにばれない程度に上手く入れて(笑)。関係ない音を入れるというのは……マーティ・フリードマンの教則ビデオとかをよく見てたんですけど、そこで「理論じゃなくてフレーズが大事」みたいなことを言ってたんですよね(笑)。だから、困ったときにはマーティさんのことを思い出して、フレーズにちょっと無理な音を入れてみたりすることがあるんですけど、今回はそれが上手くハマったのかなと思ってます。


――後半はどうだったんですか?

KOUTA:後半はコード進行の話になるんですけど、結構エグいコードがいきなり2個目とかに出てくるんですよ。途中で出てくるとかだったら、流れに乗っていく感じでいけるんですけど、ここはちょっと勢いでは弾けないというか……。僕、ギターの師匠が宮脇俊郎先生なんですけど、宮脇さんから、コード進行には作曲者の意図が入っているから、それをちゃんと汲み取ってギター・ソロを弾くんだと言われたことがあるんですね。それが頭の中に強く残ってたので、せっかく2個目に入っているエグいコードを完全に無視して速弾きとかしたら、納得してくれないだろうなと思ったので、上手くコードに合うような音を乗せて。あとは「テクニカルかつ泣かせる感じでお願いします」と書いてあったんで、それを意識して、上手くまとめられたかなという感じです。

――Keijaくんとしては、そのエグいコードは狙いだったわけですよね。

Keija:そうですね。曲のキーから外れているコードなんですよ。そこのアプローチを、KOUTAさんがどういうふうに処理してくれるかなというのは、期待をしてましたね。だから、でき上がったギター・ソロを聴いたときに、特にこの曲はむちゃくちゃ感動したんですよ。凄いなと思いました。パッと聴いただけで、練られて作られていることがわかるんですよね。

――冒頭のギター・リフで煽ってくる、4曲目の「Dispel the Humanity」などは、音楽的に変化が出てきつつある頃の曲になるわけですね。

Keija:そうですね。この曲はSERPENT時代の王道と言われる曲をイメージして書こうかなという感じで取り組んだんですけど、結局、当時のような曲は書けないんですよね。やっぱ吸収してきているものが違うので。でも、僕的には「Cradle Of Insanity」とか、あの感じを出したくて書いたような曲です。

Ken:僕も初めて聴いたときは、SERPENTらしいというよりは、Keijaさんらしいなというのが一番強かったんですね。でも、歌をつけていくときに、AメロとかはSERPENTっぽい感じではつけてないんですけど、完成してみて聴いてみたら、結構SERPENTっぽいのかなと思って(笑)。

――この曲の歌詞にも、人間対自然といった構図が出ていますよね。

Ken:タイトルも人類を追い払うという意味なんで……一掃するような感じで書きましたね。でも、攻撃的になりすぎず、ちょっと人間の哀れみの部分もサビとかに込めたりしてます。

――この曲と「The Dimness of the End」には、<Creature>という言葉が出てきますよね。意図してこの言葉を使ったのだと思いますが。

Ken:自然界からしたら、人間というのは一つの生き物じゃなくて、ここまで自然界を荒らすなんて、化け物じゃないかと。そういう意図で書きましたね。


▲KOUTA

――KOUTAくんは曲をどのように捉えてギター・ソロを考えました?

KOUTA:中間のソロに関しては、ちょっと浮遊感のある音を入れたり、浮遊感のある音階で駆け上がっているんですけど、それまでとは変化を加えた感じで入っていこうかなと。そこからは、ちょっとコードに乗せて、なるべく速くなりすぎないように、メロディを強調するように、ギター・ソロを作りました。

Keija:僕、最初にこの曲のソロが一番お気に入りだったんですよ。

――それはどういう観点で?

Keija:何と言うんですかねぇ……もっとテクニカルな感じで来るかなと思ってたんですよ。でも、速弾きを駆使したような感じでもなく、すごくメロディを大切にして、考えて作られている。だから、この曲を「The Dimness of the End」の位置に持っていこうかという案もあったんですよ。そのぐらい気に入ってたんですよね。

■“Cradle”というフレーズは
■アルバムのどこかに絶対に入れたかったんですよ


――5曲目の「A Cold Wall」はKeijaくんならではと言えるピアノ小曲ですね。

Keija:でも、最初はこれを入れる案はなかったんですよ。でも、その次にくる「From Cradle to Graveyard」にポンと入るよりも、前奏曲みたいな感じでワンクッション置いて入ったほうがカッコいいんじゃないかと。そういう流れで作りました。

――「A Cold Wall」というタイトルは、どんな意味合いでつけたんですか?

Keija:これはKenがつけましたね。

Ken:聴いたとき、日本のすごい昔の廃墟みたいなものが見えて。そんな中でパッと浮かんだタイトルだったんですね。

Keija:でもね、最初は違う案が来たんですよ。何か奉納するみたいな意味の単語が送られてきて、神棚に供えているイメージしか出てこなかったので、それは確か却下した覚えがあります(笑)。

Ken:何個か出しましたね(笑)。

KOUTA:やっぱり僕には書けないタイプの曲なので、こういうインストとかを聴くと、シンプルに羨ましいなと思ってしまいますね(笑)。アルバムの流れにすごくハマってるじゃないですか。そういう当てはめ方も参考にしたいなと思いましたし(笑)、とにかく吸収できるものが多いアルバムだなというのが、僕の今回の一番の思うところなんですよね。


――そのインストに導かれて「From Cradle To Graveyard」に入っていく。タイトルからして、SERPENTファンを期待させる曲ですよね。

Keija:はい(笑)。タイトルは後付けだったんですけどね。とりあえずバラード的なものはアルバムに入れておきたいなというのはあったんですけど、ここに来るまでの流れに合わせたようなシンプルなバラードを書こうという意識でしたね。ただ、展開する部分では、KOUTAさんに盛り上げてもらおうという気持ちがあったので、ギター・ソロのコード進行だけは複雑になってます(笑)。

KOUTA:これも結構エグかったですね。ギター・ソロを渡したときに、「いいメロディだね」と言われたらすごく嬉しいんですけど、「速く弾きすぎじゃない?」とか「ちょっと音数を減らしてよ」とか言われたら何かカッコ悪いじゃないですか。だから、メロディだけでちゃんと頑張れるんだよというのを全曲やりたかったんですけど、さっきの「Dispel the Humanity」に関しては、気に入っているフレーズではありつつも、音数多めなところに逃げちゃったかな、Keijaさんに刺さるかなという不安が最初はあったんですよ。

――結果的に刺さったということですよね。

Keija:めちゃめちゃ刺さりましたよ。特にエンド・ギター・ソロはヤバかったですね。これこそ泣きじゃないですか。

――これを待っていたんだと。

Keija:そうです、そうです。望んだものが来ました。

KOUTA:ありがとうございます。

――歌詞は曲名にも結びついてくるものですよね。

Ken:歌詞はとにかく暗く、暗くと思って書きましたね。次の曲につながるようにというのもあるんですけど、“Cradle”というフレーズはアルバムのどこかに絶対に入れたかったんですよ。「Cradle Of Insanity」がSERPENTの代表曲みたいなところがあったし、Keijaさんと言えばバラードっていうイメージがあるんで、この曲やなと思って入れましたね。

Keija:タイトルだけ見たら、みんな凄い王道が来るかなと想像すると思うんですよ。そこがバラードなんで、「ん?」と思う人もいるかもしれないけど、僕的にはすごく納得できた、気に入っている曲ですね。これはもうホントに中間とラストのギター・ソロが肝になっていて、KOUTAさんの力が凄いなと思いますよ。

――いいコラボレーションだったということですね。最後の「Floating Spirit」。これは曲作りの最後に出来上がったものになりますが、当初から6曲なり7曲なりを書こうという考えだったんですか?

Keija:実のところを言うと、もっと曲数を入れてリリースしたかったんですよね。でも、やっぱり年内に出したいなという考えがあったので、期限的にこの曲までがラストかなってところだったんです。僕的には、アルバムはだいたいバラードで終わるパターンが多いんですけど、最初の構想でも泣きのバラードで終わらせたいと思ってたんですね。でも、結構これは激しめで、明るい感じがすると思うんですよ。Grave to the Hopeの“Hope”が意味する光を感じさせる曲でもあるかなと思います。

――歌詞を見ると、その辺の意図はKenくんにも伝わっていたんでしょうね。

Ken:そうですね。この曲に関しては、歌詞よりも先に歌メロを作ってみたんですよ。元気といったらおかしいですけど(笑)、ちょっとテンション高めで作りたいなと思いまして、そこから歌詞を書き始めたんですね。内容としては、死にかけている人間が元気というのもおかしいなと思ったんで、あの世でもこの世でもない、彷徨っている浮遊霊みたいな感じで書きましたね。

――歌詞の中には“Graveyard”という言葉が出てきますね。

Ken:そうですね。そこは「From Cradle to Graveyard」とのつながりを狙ってつけましたね。

KOUTA:僕もこの曲順どおりに曲をもらっていったんですけど、その時点でまさにバランスが取れているアルバムの流れだなと思ったんですよね。冒頭でアグレッシヴに始まり、最後にバシッと締めるというか。この曲を最後に聴いて、そう強く思ったところがありますね。

Keija:まさにそう。僕も流れは考えていたんで、そう捉えていただけたのはホントに嬉しいですえ。

――アルバムのタイトルを“PROVIDENCE”にしたのはなぜだったんですか?

Ken:いろいろKeijaさんに候補を出してみたんですけど、ことごとく却下されて(笑)、残ったのが“PROVIDENCE”でした。

――そんな消極的な話は載せづらいじゃないですか(笑)。

Ken:まぁ(笑)、でも、各曲の歌詞や雰囲気を考えたとき、すべてに通じる部分といったら、神の摂理なのかなと思ったんですよ。そういった中でいくつか言葉を考えたんですね。

Keija:“摂理”という言葉自体がすごく難しいじゃないですか。最初は、死者の摂理みたいな意味合いの言葉がKenから送られてきたんですよ。そうするともっと難しくなりますし、ここは“PROVIDENCE”という一言にするのが一番しっくりくるかなと。ジャケットはその世界観で僕が作ったんですけど、これも上手く表現できたかなと思ってます。

――さて、年内にリリースするために、曲作りを一旦止めたという経緯から考えると、すでに今後の展開も考えていると受け止めていいんですよね?

Keija:そうですね。もともとはKenとノリで始めたプロジェクトだったので、空いている時間にできればいいかという感じだったんですよ。でも、実際に今回仕上げてみると、やっぱり満足感が大きいですし、継続して次も出そうという気持ちはありますね。

Ken:久しぶりにKeijaさんの作品で歌うので、緊張とかもありましたけど、やっぱりすべてができ上がったとき、ちょっとした達成感はあったんですよね。次回もさらにいい作品ができるんじゃないかなとは思いますし……Keijaさんの時間が空いていれば、ですけど(笑)。

――次は12年ぶりとは言わずにお願いします(笑)。こういったコロナ禍ですから、ライヴについては具体的に決められない状況かもしれませんが、こういった音源が出れば、ライヴも観てみたいなとファンは思うでしょうし、作り手自身もステージで演奏したい気持ちも昂ぶっているんじゃないですか?

Keija:そうですね。ライヴ自体はやる予定ではいるんですよ。すでにブッキングを済ませているような状況ではないんですが、コロナが落ち着いた頃にやろうとは考えてます。

――そのときには、KOUTAくんがギターを弾くことになるんですよね?

Keija:弾いていただきたいなと思ってます(笑)。この前に会ったときにその話になったんですよ。

KOUTA:僕はライヴをやるという話はまったく知らなかったんですよ(笑)。この間、それこそ他の取材でお会いしたときに初めて聞いて、そうなんだと思ったんですけど……どうなるんでしょう(笑)。

――楽しみにしています(笑)。そのライヴが実現するまでには、次回作もリリースされるのではないかと期待してしまいますし。

Keija:いや、それは早すぎますよ(笑)。でも、実際、2ndアルバムを出すとなったら、KOUTAさんにまた弾いてもらいたいですね。そのときはぜひよろしくお願いします。

KOUTA:ありがとうございます。もうちょっとお手柔らかに……冗談ですけど(笑)。

取材・文:土屋京輔

リリース情報

『PROVIDENCE』
発売日:2020年12月16日(水)
レーベル:Walkure Records
品番:WLKR-0054
価格:2,500+税
【収録曲】
1.Axis of Tragedy
2.The Dimness of the End
3.Nasty Soil
4.Dispel the Humanity
5.A Cold Wall
6.From Cradle to Graveyard
7.Floating Spirit

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