【インタビュー】YUKKEが語るMUCCの現在地「新曲のベースにはSATOちへの想いを込めている」
SATOち(Dr)が2021年春をもってMUCCを脱退すると発表されたのが2020年12月2日。永遠などないと分かっていても、MUCCからの“大切なお知らせ”は明るいニュースに違いないと思い込んでいたし、この4人でずっと進んでいくものだと信じていたため、衝撃的かつ深い寂しさに襲われる出来事だった。
◆MUCC 画像 / 動画
そんな複雑な想いを胸に足を運んだ12月27日の日本武道館公演は、こちらの不安や戸惑いを吹き飛ばすような、エネルギーに満ちた力強いものだった。新型コロナウイルス感染症への対策を講じつつ有観客で開催し、同時に3つのプラットフォームからの生配信およびWOWOW生放送も実施。14人のストリングス隊を時に交えるなど、厚みのあるアレンジで新旧楽曲を披露した。ようやく生でお披露目された最新アルバム『惡』の曲たちは、想像を上回る起爆力を発揮。メンバーは生き生きとしていて、パフォーマンスも神懸っており、会場ではその熱量に圧倒された。後日アーカイヴで映像も確認したのだが、配信黎明期からシリーズ化して取り組んできた配信ライヴでトライアルを重ね、サウンドと映像両面で磨きを掛けてきた集大成と呼ぶにふさわしい仕上がり。MUCCは歩みを止めることなく前へ進んでいる。
2月28日からはツアーをスタートさせ、新曲「明星」、ベストアルバム『明星』をリリースすることも発表済み。前回のミヤ(G)武道館直前インタビューに続いて今回は、SATOちとリズム隊として長年支え合ってきたYUKKE(B)を迎え、武道館ライヴの手応え、SATOち脱退をどう受け止めているのか? これからのMUCCはどうなるのか?などパーソナルな胸の内に迫った。
◆ ◆ ◆
■最後の「明星」は……すごくきましたね
■MUCCに流れる空気を表している曲
──日本武道館公演はエモーショナルなライヴで心が震えました。久しぶりにファンの皆さんを前にしたパフォーマンスで高揚した様子に見えましたが、どういうお気持ちでステージに臨まれたんですか?
YUKKE:配信ライヴをこの1年ずっとやってきて、ZOOM等でファンからのコメントを見たりするたび、“画面の向こうにお客さんをすごく感じられる”とは思っていたんです。でも武道館のステージに立った瞬間、“生に勝るものはないな”という気持ちが想像以上に溢れましたね。会場のお客さんは飛沫感染防止対策のために声を出せない状態だったので、タンバリンとかの打楽器を鳴らして、その音で反応してくれる形ではあったんですけど、それでもそう感じました。
▲YUKKE (B) |
YUKKE:そうですね。個人的には、あの日、朝から全く緊張してなかったんですよ。こう言ったら綺麗事に聞こえるかもしれないけど、久しぶりにみんなに会う喜びのほうが勝っていたのかな? 出番直前、リーダー(ミヤ/G)もボソッと「こんなに緊張しなくなったんだな」と言っているのが聞こえてきて、“あ、メンバーも一緒なんだ”と思いながらSATOちを見たら、ガッチガチでした(笑)。
──ははは。
YUKKE:こんなに緊張してるのは久しぶりに見たなっていうぐらい朝から緊張してましたね、SATOちは。でも俺は、単純に楽しみな気持ちで臨むことができました。
──SATOちさんと武道館でライヴするのは最後。実際にステージに立ってみて、湧いてきた特別な想いはありましたか?
YUKKE:SATOちから脱退の意思を聞いたばかりの頃は、“次からのいろんなことがSATOちとの最後になってしまう”とか、“振り返ってみると、あの時が最後だったのか”とか、そう考えてしまうであろうことがすごく怖かったんです。だけど、それ以降も普通にいつものMUCCとしてSATOちと歩んできて。だから武道館当日も、“SATOちと武道館で音を出すのは今日が最後”ということをそこまで考えなかったかもしれない。自分はそういうところにナーバスなタイプだと思っていたんですけど、意外にも普段のライヴのように、お客さんの前で一緒に楽しむことができた感じがしています。
──12月27日に至るまでのプロセスで気持ちの整理がついていたんですかね?
YUKKE:それはありますね。みんなは12月2日の発表でSATOちの脱退を初めて知ったと思うけど、俺たちは半年以上の間、それを分かった上で活動や生活をしていたので。やっぱり時間って人の気持ちを整理してくれるものなんだなとは、良くも悪くも思いましたね。
▲MUCC |
YUKKE:アルバム『惡』収録曲すべて、生ライヴで披露したのは初だったので、“やっとできた!”という実感とか喜びがありましたね。本当は6月に予定していたぴあアリーナMM公演で披露していたはずが、コロナ禍による延期で12月まで掛かってしまった。全部の曲がきっと“お客さんの前で披露されたかった曲たち”であり、半年ぐらい我慢していた子たちですからね。
──アンコールの「名も無き夢」、“♪ラララ”をメンバーが順に歌った「優しい歌」など、終盤は特に感情を揺さぶられました。
YUKKE:そういう定番の曲たちに、1年間できなかった想いを込めて楽しんだ感じはしています。会場のみんなで盛り上がることができて、“ライヴな感じ”を味わえた。“去年の今頃はツアーをやってたなぁ”とか、お客さんの前でライヴができなくなって振り返る時に思い出すのは、演り馴れた曲だったりするから。でもやっぱり、最後の「明星」は……すごくきましたね。新曲だし、これまでのMUCCと今のMUCCに流れている空気を表している曲でもあるし。「明星」も早くみんなの前で演りたい曲でした。
──公演が実現して良かったですよね。武道館以降、再びライヴの中止や延期が相次ぐ状況になっていますので。
YUKKE:運がいい、と言ったら語弊がありますけど、本当にその隙間でできて良かったです。ずっとお客さんの前でライヴができないままでいたら、MUCCとして“どうしよう?”ってなってただろうし、SATOち自身も“どうすんだ、俺?”ってなっちゃうだろうし(笑)。
▲MUCC |
YUKKE:バンドって同じ方向に向かう中でも、捉え方や考え方が四者四様、いろいろあっていいと思っているんです。その中で自分は、引き留めるというか、一番心配できるような立ち位置にいたいと思っていて。それは別にSATOちに対してだけではなく、全員に対して。しかも、SATOちとはリズム隊としての長い付き合いがあるし、一緒にいろいろと苦労して練習してきた時代もあるんです。いろいろな話を聞いてきたし、俺も特にSATOちにはオープンに言ってきたし。そんな自分だからこそ、“もっと前向きにさせてあげられる”という自信は、昔からずっと持っていて。SATOちの脱退を“止める気もなかった”というメンバーがもしいるとすれば、逆に自分の立ち振る舞いとしては“止めてあげよう。もうちょっとやれる場所を考えてあげよう”という立ち位置で話し合っていたつもりでした。
──それぞれの役割ということですね。
YUKKE:そうですね。やっぱりそんな中でも、メンバーで集まって「何が一番プラスなのか?」ということを話し合っていく中で、SATOちの精神的な状態も含めて、自分の中で考えた結果は……。もうこれ以上、「一緒に頑張ろうよ」と声を掛けるより、今後のSATOちが別の場所で、さらに笑顔になれることを見つけるほうが、SATOちとしてもMUCCとしてもきっと正しいことなんだなって。スパンと切り替わったわけじゃないけど、何ヵ月か時間を置きながら、その間のSATOちの様子も見ながら、そういう気持ちに徐々になっていったんだと思います。
──なるほど。辛いことを思い出させていたら心苦しいんですけども……。
YUKKE:いや、全然全然。
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