【トークセッション】Sakura × LEVIN × shuji、「リズムを歌うことがドラムを演奏する楽しさ」
■LEVINさんから「こうしたらノリを軽くできる」
■って言われると僕も素直に受け入れられる
──shujiさんは、LEVINさんの最初の印象って覚えていますか?
shuji:僕らはLa'cryma Christiの2年後にデビューして、テレビ番組の収録で一緒になることがあって。その時に、“このドラムの人、めっちゃスティック回すな!”っていう(笑)。というのも、僕は真逆で、黙々とドラムを叩くプレイスタイルだったので、すごいパフォーマンスだなって驚いたんです。でも、これは確かに見ている側も楽しくなるなっていう、それが最初の印象でした。そこから最近では、仕事でも一緒になる機会が多くなって、いろいろと話をさせてもらうと、プレイスタイルとか、好きなバンドとか、かなり似通ったところがあるんだと分かってきて。好きな音も似ていたりするので、LEVINさんのスタジオでレコーディングする時は、すごく安心感があります。「こういう風に叩いたら、こういう音で録れるよ」とか、いろんなアドバイスもしてくれて。そういった知識がものすごいので。
▲Sakura@<Busker Noir in 暗黒秋櫻> ※画像5点 |
Sakura:なるほどね。
LEVIN:ドラムって、本当に些細なことで音が変わるじゃないですか。でも僕らバンド出身者って、ひとつのスタイルでずっとバンドをやってきたわけだから、違うスタイルを求められた時のドラマーの気持ちが、すごく分かるんですよ。だって急に「ノリを軽くして」って言われたって、「いやいや、自分は重いノリが正義だと思って20年以上やってきたんですよ」って思うのは当然で(笑)。
shuji:そうした時に、他の誰からでもなく、同じドラマーのLEVINさんから「こうしてみたら、ノリを軽くできるよ」って言われると、僕も素直に受け入れられるんですよ。そういう面でも、いろいろと頼りにさせてもらっています(笑)。
▲LEVIN@<Busker Noir in 暗黒秋櫻> ※画像3点 |
Sakura:僕はまず、La'cryma Christiというバンド自体、メンバーのスキルがものすごく高いと感じて。初期の楽曲はものすごく複雑で、メジャーデビューしてから、より歌メロを活かした曲になっていって。そうやって音は聴いていたけど、まだその頃はステージを観たことがなかったんですよ。それでテレビ番組か何かで最初に観た時に、自然とドラムに目がいったんです。もちろん、LEVINくんのパフォーマンス性の高さもあったけど、叩いている表情とかたたずまいに目がいって。ちょっと上から目線で偉そうに聞こえちゃうかもしれないけど、フレーズうんぬんっていう部分は、僕からすると別にどうでもいいんですよ。ただ、いくら譜面に書いたら簡単なものでも、それをどう歌っているか。そこが大切で。そういう意味でLEVINくんのドラムには、歌い回しの美学を感じたんです。だからこそ、自然とドラムに目がいったんだと思うし、叩き方やパフォーマンス、サウンドも含めて、新しいドラムヒーローの形だなって感じました。それが第一印象かな。それに加えて、ドラマーってセッティングやパーツの組み合わせ方に性格が出るんですよ。それでLEVINくんが使ってる機材を追いかけていくと、“ああなるほど、これは相当な機材オタクだぞ”って(笑)。
LEVIN:ははは(笑)。
Sakura:ちょうどその頃、La'cryma Christiのアルバムがリリースされるというタイミングで、いわゆるプレイヤー専門誌にメンバーの使用機材が特集されていたんですよ。そうしたらLEVINくんは、ドラムセットだけじゃなくて、レコーディングしたスタジオの平面図まで載せていて。このスタジオで、こうやって録ったんだっていうことまで話をしていて、彼はその域までいっているんだって驚きました。そういった、音を追求する姿勢とドラマーとしての美学を知っていたから、自分でドラムのレコーディングスタジオを作った理由もよく分かるし、いろんな畑違いの現場に立ち会って、そこでの経験がshujiくんのレコーディングにフィードバックされていたりもして、本当にすごいドラマーだなって思っています。
LEVIN:ドラムって、生で聴くと身体全身で響きを感じるけど、マイクを通した音って、あの小さな機器の中で信号を増幅したものだから、全然違うと思うんです。分かりやすく言うと、自分の声を録音して再生したら、全然違う声に聴こえるじゃないですか。その感覚と、ちょっと近いのかもしれませんよね。
▲shuji@<Busker Noir in 暗黒秋櫻> ※画像3点 |
shuji:確かに、自分の物とは違うセットで叩いても、「shujiの音だね」って言われることはありますね。
Sakura:今、僕は生徒を招いて行うドラムレッスンの時にスリップビートを教えていて。その時に、「キックが“ドッ”、スネアが“タッ”、ハイハットが“チッ”と歌いながら叩いてみて」って言うんですよ。そうすると、これってドラマーあるあるなんだけど、みんな「ドッ、タッ、ドッ、タッ」って歌うんですよ。でも、「チッ」まで歌うことが大切で、「ドッチッタッチッドッチッタッチッ」まで歌うと、ちゃんとスリップビートに近づいていける。つまり何が言いたいのかというと、ドラムを叩く時って、アタックばかりが追いかけられがちだけど、音をどれだけ伸ばすかも大切で。しかもそれって、自分で歌わないとコントロールできないんですよ。そこが、ドラムが歌えているかどうかの違い。LEVINくんが実際に口で歌っているのかどうかは分からないけど、きっと腕の振り方で歌ってるんだろうなって僕は思っていて。だからこそ、歌い回しに合ったリズムを叩けているんだと思う。
shuji:口に出して歌えないドラムのフレーズは叩けないって、よく言いますよね。
Sakura:そう。例えば、“ダーッ!”って音を鳴らしたい時に、そう歌って叩くと、不思議なもので、聴いている人にもその音の伸びが伝わるんだよね。でも今ってDTMが発達して、ドラムはアタックばかりが重視されがち。グリッドにアタックがどれだけ合ってるかに意識が向きがちなんだけど、そういうことじゃないんだよね。そもそも歌にとって、グリッドが正解ではないから。そういう意味で言えば、誤解を招く言い方かもしれないけど、今の電子ドラムって、すごく良くなってきたけど、あれのネック(障害)は、ドラマーが音の伸びを歌えないところにあって。タッチ感はとても繊細になったけど、音自体は音源に依存するものだから。もちろん、日本の住宅事情にもすごく向いているし、ドラマーには有難い存在なんだけどね。
▲<Busker Noir in 暗黒秋櫻> ※画像7点 |
Sakura:そう。生の打楽器って、本質的に音の長さを自分で歌わないとダメな楽器だからね。
LEVIN:つまりSakuraさんレベルの方には、まだまだ今の電子ドラムは、音の解像度が足りないということなんだと思います。昔に比べれば相当よくなりましたけど、でもまだエキスパートからすると大雑把というか、ドットが粗い。もちろんドラム初心者は、音を“トーン!”で感じられればいいと思うんですけど、Sakuraさんレベルになると、もっと細かく音符を感じている。その解像度がさらに細かくなっていくように、電子ドラムの進化に期待したいですよね。
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櫻澤泰徳
LEVIN
Shuji
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