【インタビュー】米澤美玖「Aerophone Pro、いろんな人がライブで吹くだろうな」

ポスト

2020年12月8日、ついにエアロフォンの最新モデルが発表され、当シリーズのファンはもちろん、サックスプレイヤーを始めとした管楽器プレイヤーからウインドシンセ使いまで、多くのプレイヤーが色めきだった。登場したのはシリーズ最上位機種、Aerophone Pro(AE-30)である。

管楽器の新しい世界を広げるデジタル楽器として2016年10月に誕生したAerophone(AE-10)は、その後Aerophone GO(AE-05)、Aerophone mini(AE-01)とエアロフォンファミリーの充実とともに、その人気も拡大されてきたところにあった。濃密で熱心なエアロフォンプレイヤーが期待していたのは、発売から4年をもって大きく発展を遂げたフラッグシップの存在だったわけだ。

演奏の要となるバイトセンサーやブレスセンサーは飛躍的な進化を遂げ、そのレスポンスの鋭さはさらなる速いパッセージに追従し、表現力の伸びしろを大きく広げている。同時にSuperNATURALアコースティック音源とローランド最新のZEN-Coreという2つの強力な音源の搭載は、楽器としての価値をさらに押し上げるものとなった。

より幅広い拡張性を持って生まれたAerophone Proは、どんな楽器なのか。Aerophoneの魅力をよく知るサックスプレイヤー米澤美玖に話を聞いた。


──米澤さんは、初めてテナーサックスを吹いた小学生の時点でビビッときたんですよね?

米澤美玖:ひらめきじゃないですけど「この楽器でずっとやっていきたいなあ」っていうピンときた何かがあったんですよね。なので漠然と「これはずっとやるであろうなあ」と思っていて、吹奏楽にいながら教わる先輩もいないまま独学で、何とか今もやっているという。どうやら自分的には音色そのもの…中低音域が好きだったようで。

──「これはずっとやるであろうなあ」という気持ちは、家族には伝えたんですか?

米澤美玖:言わなかったですね。そんなに堅い意思を持って決めたというより、自然にそうなんだろうなあと、誰に言われることもなく思っていたことだから、わざわざ言うことでもなかったんです。

──学校で吹奏楽に入部する人はたくさんいるわけですが、その後どこかで辞めてしまう人とずっとプレイし続ける人に分かれますよね?その違いってどこにあるんでしょうね。


米澤美玖:不思議ですよね。今思い出したんですけど、ビッグバンドをやっていたときに、ビッグバンドのメンバーにテニス部の友達がいたんです。それがね、全然理解できなかったんです。「どうしてビッグバンドもやっているのにテニスもやっているの?」って(笑)。

──なんか分かる気もする(笑)。

米澤美玖:ほんと、子どもの考えなんですけど「やるなら一個やればいいじゃない」というか、「この練習した後でよくテニスに行けるな、切り替えがすごいな」ってすごく不思議でした。テニスラケットを持ってビッグバンドにサックス抱えていくなんて、私には絶対できないなって(笑)。

──練習も大変ですもんね。

米澤美玖:吹奏楽って、地味な基礎練習をみんなで何時間もするじゃないですか。でも私、そういうの向いてたんで別にそれは苦とも思わなかったんですね。練習するとできるようになって、できるようになると楽しい。それが分かるから、練習することが嫌だと思ったことはないんです。

──ごく自然体のまま、高みに登っていける状況だったんですね。

米澤美玖:そうかもしれないですね。吹奏楽の花形のクラリネットとかトランペットは、主旋律を吹けるので目立ちますけど、テナーサックスはロングトーンの伴奏だったりしてて、目立つことはあんまりなかったですけどね。けど、ジャズとかポップスの曲をやるときは結構テナーサックスのソロがあったりとかしました(笑)。

──音楽を通して、テナーサックスとずっと会話してきたわけだ。

米澤美玖:そうですね。8歳から始めたのでちょうど20年経ちます。サックスは今でも重たいですけど(笑)。


──そんなサックスキャリアをもったプレイヤーにとって、エアロフォンはどういう楽器に映りますか?

米澤美玖:最初のモデルが出てきた時から、すごいことだと思っています。まずサックスの運指ですごくいろんな音が出せるっていうのがかなり衝撃的でした。シンセサイザーとかやりたくても、ピアノをパラパラ弾けるわけじゃないので、それがサックスでできることにびっくり。サックスの吹き方やニュアンスのまま他の楽器の音色で表現できるのが面白くて、ピアノで不可能なタンギングとかクレシェンドなどが表現できることに「夢があるなあ」ってすごい思いました。

──サックス入門の壁をぶち壊したところもありますよね?

米澤美玖:そうですね。特にサックスって重いので、最初は力ばっかり入って首もがちがちに凝るんです。音も大きいから家で吹ける環境にないし、なかなか手軽に始められる楽器ではないかなと正直思います。エアロフォンだと、それが再現できていつでも吹ける。本当に便利だなあって思ってます。


──アコースティックサックス奏者として、エアロフォンの最大の魅力は何ですか?

米澤美玖:最初のモデルからそうですが、手軽にいろんな音色で音楽を楽しめるところですね。その後もより身近なシリーズが出て来てより多くの方がこの楽器を手にされるようになったと思います。私としては今回のAerophone Proが出て「ついに来たか、待ってました」という感じです。

──ついに?

米澤美玖:2017年ですかね、レコーディングでも使ってて凄く楽しいなって思ったんですけれども、Aerophone Proが出たことで、この曲でも使ってみようかなと、できることがすごく広がったと思います。

──広がったというのは具体的にどういうあたりですか?

米澤美玖:例えば今回、キーの部分も改良されて、さらに吹きやすくなっているんです。アコースティックのサックスを吹いている感覚にグッと近づいたモデルが出た、って感じなんです。前よりも幅がしゅっとまとまっているから、指の感じが生のサックスに近い。


──吹き心地はどうですか?

米澤美玖:バイトセンサーの反応がより幅広くなりました。ブレスセンサーも重いところはとことん重くなったなって印象で、プロのサックスプレイヤーの音圧を前提にしたセッティングができるんです。

──内蔵音色も大きく増えましたが、気になる音色などはありましたか?

米澤美玖:私は弦の音がすごく好きなんですけど、バリサクとか…チェロの音色もさらに豊かな音になっています。より芯があって太く鳴るなあって思います。あと、龍笛(りゅうてき)と津軽三味線が入っているんですけど、個人的にはそれも好き。民族楽器の音色が好きなので、そこのバリエーションが増えていてテンションあがりました。アプリの音色の加工もできるので、すごいですよ。

──夢の楽器ですね。


米澤美玖:アプリもサクサク動いて触るだけでも楽しいんです。ステージで使えるなと思ったので、エフェクトを通した音色をライブで使いたいって思ってます。なによりも吹いたときの反応が早くなったのが一番大事なポイントで、ライブでは速いフレーズをデュロロロデュロロってやるんですけど、それに付いてきてくれるのはすごいです。これからいろんな人がライブで吹くだろうなって思いました。

──待ち望んでいた人、おめでとうですね(笑)。


米澤美玖:前回の楽器フェアでもすっごい盛り上がって、すごい人だかりでしたから、今回もものすごい注目だと思います。

──我々のようなサックス未経験者でも、エアロフォンさえあればイケるかな?

米澤美玖:そうですね…でも正直に言うと、エアロフォンも楽器なんでしっかりとニュアンスをつけてちゃんと完璧に吹くっていうなら、ちゃんと練習は必要だと思います。

──そりゃそうか。


米澤美玖:エアロフォンは簡単に音が出るので、そこは素晴らしいところなんですけど、簡単だけど浅くはないんです。深みはちゃんとあるから、そこは楽器をやる上での楽しみのひとつとして、楽しんでいただければいいかなと思います。

──まずは気軽に自宅で楽しむというのでも良いんですよね?

米澤美玖:はい、私も移動の車にAerophone Proを持ち込んで、ヘッドホンで練習しようかなって思ってます。指の感じがサックスととてもよく似ているので、エアロフォンで予習したことがちゃんと活かされるんですよ。便利になったなと思います。

──コロナ禍で出かけにくい状況であればこそ、自宅を楽しい場にできればいいですね。

米澤美玖:吹奏楽の子たちも集まることができなくて、本当に可愛そうだなあって思います。そういう意味でもサックスプレイヤーの人はエアロフォンを使うのは効果的だなと思います。エアロフォンをきっかけに「やっぱり吹くのって楽しいよな」って思って、いつの日か集まって音楽ができる日が戻ってきてくれるとうれしいですね。


取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)




Aerophone Pro


品番:AE-30
・こだわりの素材、そして美しく洗練されたデザインと質感
・レスポンスが向上したブレス・センサーやバイト・センサーによる高い演奏性
・すぐに使えるシンセサウンドや、管楽器、民族楽器を300音色以上内蔵
・SuperNATURALアコースティック音源には新規モデリング音色も搭載。さらに自然で豊かな表現が可能
・ビンテージサウンドからモダンなサウンドまで楽しめる最新音源システムZEN-Coreを新たに搭載
・より見やすくなった有機EL液晶や人間工学に基づいたコントローラー
・最大5つの音からなるハーモニーを重ねることが可能
・USB MIDIに加えてMIDI端子を装備。さらにBluetooth®も MIDIとAudioに対応
・ステレオスピーカー、ヘッドホンジャック、オーディオ出力も搭載。電池駆動によりどこでも演奏可能
・専用のエディターアプリで音色選びや、オリジナル音色作りもスマホやタブレットから簡単に操作
・付属品などの収納にも充分対応できる専用のハンド・キャリーバッグを付属
【電源】AC アダプター(DC5.7V)、ニッケル水素電池単 3 形(別売)×6
【消費電流】915mA
【連続使用時の電池の寿命】ニッケル水素電池 約6時間(容量 1,900mAh使用時)※使用状態によって異なります※マンガン乾電池、アルカリ乾電池は使用不可
【音源】ZEN-Core、SuperNATURAL アコースティック
【パート数】4パート(SuperNATURAL/ドラムは1パート)
【プリセット・メモリー】プリセット・シーン250以上、プリセット・トーン250以上、プリセット・ドラム・キット10
【ユーザー・メモリー】ユーザー・シーン600、ユーザー・トーン512、フェイバリット・シーン12
【エフェクト】マルチ・エフェクト、コーラス、ディレイ、リバーブ
【Bluetooth】標準規格 Ver 4.2、対応プロファイル:A2DP(オーディオ)、GATT(MIDI over Bluetooth Low Energy)、対応コーデック:SBC(SCMS-T 方式によるコンテンツ保護に対応)
【外形寸法】133(幅)×84(奥行)×687(高さ)mm
【質量(電池含む)】1,140g
【付属品】取扱説明書、「安全上のご注意」チラシ、AC アダプター、USB ケーブル(Type C-Type A)、マウスピース・キャップ、バンド、サム・フック・カバー(2タイプ)、ウォーター・プロテクター、専用ハンド・キャリー・バッグ、保証書
【別売品】交換用マウスピース(OP-AE05MPH)

◆米澤美玖オフィシャルサイト
◆Aerophone Proオフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報