【インタビュー】ポルカドットスティングレイの在り方「求めてくれる限り」
■「人の欲しいものを作る」こと
──タイトルトラックの「何者」は、過去曲の歌詞やフレーズで楽曲を構築していく形になっていて、アレンジもかなりカオティックですが、このアイデアはどういうところから出てきたんですか?
雫:前回の『有頂天』はタイトルトラックがリード曲だったけど、今回は「化身」と「FICTION」にするって決めていたから、タイトル曲がリード曲じゃなくなるのであれば、一番アルバム曲みたいなもの、一番コアで訳のわからない曲に振り切ったほうがおもしろいんじゃないかということになったんです。歌詞も新しいものを書いてもよかったんですけど、“無駄な詮索”をされるのも嫌だったし、よりコアファン向けのコアな曲にするのであれば、過去曲から一文字残らずパズルしたほうが潔くていいなって。メンバーにも過去曲のフレーズをキーだけ合わせていれようと話していたんですけど、アレンジが難しいわけですよ。ポストロックとかオルタナロックに寄せた曲にしたかったので、わりとメンバーに委ねるところが大きかったんですけど、まぁプリプロのときのメンバーの口数の少なさが半端なかった(笑)。
──これどうすんだ?っていう(笑)。
雫:この曲を最後に作ったんですけど、締切ギリアウトぐらいの頃だったのもあって、完全に追い詰められて地獄みたいな空気が流れてました(笑)。
──間奏終わりで雫さんのハミングが入って、長めの無音になるところもいいですね。
雫:ありがとうございます。あそこは私が考えたんですけど、サビのところで音をゴーッ!って鳴ってる感じにして、間奏が終わってからラスサビでまたゴーッ!ってさせたいと思ったんですが、落ちサビってギターとボーカルだけとか、ピアノとボーカルだけになりがちじゃないですか。それぐらいの塩梅にしてポップさを保つというか。この曲は絶対にそれをしちゃダメだと思ったんですよ。それで「ちょっと鼻歌録ってくる」って、あれを入れました。メンバーにしてみたら訳わかんないし、とにかくもう自分のことで必死だから、勝手にしてくださいみたいな感じになってましたけど(笑)。
──この曲もライブで聴きたいんですよね。たとえばですけど、中止になってしまった代々木第一体育館ワンマンをいつかやってくれるとして、1万2千人がいる中であの無音が来たらめちゃくちゃかっこいいなと思って。
雫:エモいですよね。ただ、めちゃくちゃ恥ずかしいです(笑)。最初は半分にしようか迷ったんですけど、しゃらくせえ!と思って、サビの尺と丸々同じぐらいにしちゃったんですよ。お客さんが聴いていて「これ大丈夫?」って不安になるぐらいにしたかったから。でも、ライブでやるときはマジでメンタルいるなと思ってますね。なんか、リバーブの感じもあって、スベった空気みたいになったらどうしよう……とか(笑)。
──ははははははは!(笑)
雫:スベった空気になってるのに、耳の中(イヤモニ)でクリックは流れ続けているから速めたりできないし、もう絶対にこのBPMでいかなきゃいけないっていう地獄の時間をひとりで過ごすことになるんじゃないかっていう不安がすでにあります(笑)。
雫:ウチだけじゃないかもしれないけど、歌詞が直接的過ぎないアーティストってすごく考察されるんですよね。歌詞の意味とか、この作品にこの曲が入っている意味とか。インタビューのときも「タイトルトラックがこの歌詞になっているということは、ここに自身の思いを込めていて、この行にはこういう意味があるんですか?」みたいなことを死ぬほど聞かれるんですけど、私の歌詞はそこまで意味がないから「わからない……」ってなっちゃうことが結構あるんですよ。
──そんな自分も“「女神」の歌詞に〜”とか聞いちゃってますね(笑)。
雫:ははははは!(笑)。だから、無駄な勘違いをされるぐらいであれば、新しい歌詞を書かないでおこうっていう、その極地に辿り着いた感じですね。
──人間何かしらの意味みたいなものを求めてしまうところはあると思うんですけど、確かにステレオタイプ的な考え方かもしれないですね。「歌詞は思いを込めるもの」みたいな。
雫:そうなんですよね。“歌詞は思いを込めるもの派”の人たちもロックファンには多いですけど、ウチもインディーズのときとかデビューしたての頃は、ものすごい数のロック警察が沸いていて、「歌詞は自分の思いを込めるものなのでは?」みたいなことをすごく言われたんですけど、歌詞に自分の思いを込めることだけがやりたい曲作りをしているということなのか?って。
──確かに。
雫:私はいま完全に自分のやりたい音楽をやっているんですけど、それは「人の欲しいものを作る」ことなんですよね。だからぶっちゃけて言うと、曲のジャンルとか歌詞とか、そういう細かいことはどうでもいいところもあるし、なんならもう音楽じゃなくてゲームとかでもよくて。人の欲しいクリエイティブを作っているというその行為自体が、私が生きていく中でやりたいこと、欠かせないことなので。
──客観的なイメージからつけた『何者』というタイトルですが、完成させてみて、改めて自分たちは何者だと思います?
雫:どうだろうなぁ……。我々は、お客様が──お客様というのはリスナーであり、クライアントのことですけど──求めてくれる限り存在し続ける存在かなぁ。
──まさに先ほどお話しされていたことですね。
雫:そうなんですよね。私ひとりでその結論を一言で言うならそういう答えになるかなと思ったけど、そこはやっぱりお客様ひとりひとりが答えを出してくれればいいかな。私がポルカをやっているときのメンタルはそういう感じですね。
取材・文◎山口哲生
撮影◎野村雄治
▲ポルカドットスティングレイ
3rd FULL ALBUM『何者』
▲『何者』CD+DVD「わたしはなにものパック」
▲『何者』通常盤
2020年12月16日(水)発売
■CD+Tシャツ「あなたはなにものパック」
PDCS-1924 ¥5,300+税(税込¥5,830)
☆Tシャツは公式グッズでも販売のない長袖仕様
☆デザイン:雫
■CD+DVD「わたしはなにものパック」
UMCK-7087 ¥3,500+税(税込¥3,850)
・「ポルカドットスティングレイポルフェス48 #教祖爆誕 オンライン」 何者エディション
・爆誕全力オフショット 約99分収録
■CDのみ通常盤
UMCK-1675 ¥2,800+税(税込¥3,080)
[CD]
※全13曲共通収録
※ストリーミング・ダウンロードのみM14ボーナストラック収録
1. トゲめくスピカ(NHK『みんなのうた』2019年12月‒2020年1月放送)
2. FICTION
3. FREE
4. SQUEEZE(ポルカドットスティングレイ × ラッコズ × 天然水スパークリングレモン コラボMMVソング)
5. バケノカワ(専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)2019年度TVCMソング)
6. SHAKE! SHAKE!(雫カリウタ ver.)(私立恵比寿中学「playlist」収録提供曲)
7. 阿吽(テレビ愛知『a-NN♪』2019年9月度エンディングテーマ、ABCテレビ『ビーバップ!ハイヒール』2019年9月度エンディングテーマ、RKBテレビ『チャートバスターズR!』2019年9月度マンスリーアーティスト、宮城テレビ放送『ちょっとブレイクタイム』2019年9月度エンディングテーマ)
8. 女神(MBS/TBSドラマイズム『左ききのエレン』主題歌)
9. JET(ジェットスター タイアップソング)
10. ストップ・モーション
11. さよならイエロー(NHK Eテレ『あはれ!名作くん』主題歌)
12. 化身(『A.I.M.$ -All you need Is Money-』ギャングテーマ)
13. 何者
14. POSE(何者 ver.) ※配信のみボーナストラック
[DVD]
・「ポルカドットスティングレイ ポルフェス48 #教祖爆誕 オンライン」 何者エディション
・爆誕全力オフショット
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