【インタビュー】ディフェクト「誰かが新しいメタリカの存在になる必要があるよね?それはオレたちしかいないのでは?」
ディフェクトが前作『Nemesis』から約2年8ヶ月ぶり、通算3作目となるニュー・アルバム『Duality』を完成させた。メロディックかつテクニカルなプレイ、力強いリフと燃えたぎるギター・ソロとともに骨太なモダン・フィールを聴かせる、デンマーク出身の新世代メタル・バンドの新作だ。
メタリカのアルバムを手掛けたプロデューサーのフレミング・ラスムッセンから「ヴォルビートに続く才能の持ち主だ」とお墨付きを得て2016年にアルバム『Excluded』でデビューを果たした彼らだが、この3rdアルバムでは、生命の二元性にインスパイアされたという内容となっている。明と暗がバランスよく配置され、表情豊かな歌を軸としたエモーショナルなギターとヘヴィでタイトなリズムで固められた好作品だ。
ディフェクトのベーシストであるトーマス・ボーソンリンに話を聞いた。
──『Duality』が完成した今のお気持ちは?
トーマス:誇らしいアルバムに仕上がったから最高の気分だよ。メンバー全員がこれまでの中でベストと感じているし、ファンのみんなも同じように感じてもらえると思うよ。
──ニュー・アルバムで目指した方向性というのはありますか?
トーマス:特に目指しているものはなかったけど、2018年の春頃から曲を書きはじめ、制作工程をシンプルにしながらもっとハードな色合いを強めようとメンバーで考えたよ。そして30曲書いた中から11曲を厳選してアルバムに収録したんだ。
──アルター・ブリッジやサーカス・マキシマスがシーンへ登場した時と同じ感覚をあなた達から感じましたよ。
トーマス:ありがとう、うれしいよ。アルター・ブリッジは大好きなバンドだよ。数年前に彼らがデンマークでツアーを行ったとき、もう少しでサポートに選ばれる予定だった。残念ながらそれは実現しなかったけど、メタリカとラムシュタインというビッグ・アクトのサポートを務めることはできたから不満はないね(笑)。
──改めてバンドの経歴を教えてもらえますか?
トーマス:ギターのフレデリックとオレは子供の頃から一緒にプレイしてきた仲なんだ。2010年にヴォーカルの二クラスが加わって、最初のドラマー、ヘンリックとバンドを結成した。曲を作りながらリハを繰り返し、アクアのヤン・ラングホフとメタリカで知られるフレミング・ラスムッセンとコラボしながらデビュー・アルバムの準備を行った。多くの時間を彼らと過ごしたから個人的にも音楽的にも親交を深めることができた。そしてデビュー作『Excluded』とセカンドとなる『Nemesis』をリリースした。その間ドラマーがラーズへと変わり、2018年からは現在のメンバーであるミケルが加わった形だね。
──デビュー作『Excluded』と2nd『Nemesis』のリアクションはいかがでしたか?
トーマス:両方ともすばらしい反応を得ることができた。レビューのスコアも予想していたよりも高かったし、ヨーロッパ中の雑誌やレコ評でも高い評価だった。日本でも発売された『Nemesis』のリリース前には東京のクラブでショウケース・ギグもやったよ。会場は日本のメタル・コミュニティのように感じたね。
──その日本でのショウケース・ギグ<Loud & Metal Mania>の印象は?
トーマス:初めての日本だったけどすばらしかった。出会った人はいい人ばかりだし、ビジネス面も含めていい時間を過ごすことができた。東京だけの滞在だったけど、次回は絶対に地方も訪れたいね。将来的には家族を日本へ連れて行くことも考えている。特に子供にとっては思い出深い国になると思うよ。そう、オレも日本のファンなんだよ(笑)。
──新作『Duality』のプロデュースは?
トーマス:セルフ・プロデュースだよ。何人かにサポートしてもらったけどほぼ全てが自分たちの手によるものさ。ハンセン・スタジオでドラム録りを行なって、ギター、ベースは自分のスタジオで録った。歌はシンガーのニクラスのホーム・スタジオだよ。二クラスはアルバムをミックスし、マスタリングには数人のエンジニアを試してみたけど、最終的にイェンス・ボグレンにお願いすることにした。
──レコーディングの様子はいかがでした?
トーマス:山あり谷ありだったね。いくつものチャレンジすべき過程があったし、新しいスタジオやリハーサル・ルームを急に確保しなければならない時も多々あった。またニクラスが重い肺炎にかかったのでヴォーカルを録り終えるまでに半年かかったんだ。でも彼の声が元に戻ってからの仕上げは本当に心地よい楽しい時間を過ごすことができたよ。
──今作と前2作との一番の違いはなんだと思いますか?
トーマス:多様性だと思う。『Nemesis』には多くの曲が収録されており、『Excluded』よりヴァラエティに富んでいる。本当に興味深いのはこのサード・アルバムさ。これまでのアルバムとは違う性質を持っているし、多様性があってより深い味を収録することができた。これまで多くの曲を書いてきたけど、今回は33曲の中からより厳選した11曲を収録していて、ソングライトの完成度は間違いなくこの新作におけるハイライトのひとつだと思う。
──曲作りはどのようにして行っていますか?
トーマス:基本みんなと一緒さ。デビュー・アルバムはニクラスが曲のベースを作ってくれたので、それをメンバー全員で磨き上げながらひとつの楽曲として創り上げた。今回のニュー・アルバムではニクラスとフレデリックの楽曲が50/50の比重で収録されている。1stシングルとなった「Rise」は最初に出来上がった曲で、2017年11月に日本から戻ってきた頃かな。ニクラスは2曲のインストを作成していた。そのデモのタイトルが「Japan 1」「Japan 2」だった。最終的に「Japan 1」のヴァージョンを採用して完成した曲が「Rise」なんだ。興味深いだろ?
──アルバムの中からオススメの曲を挙げるとすれば?
トーマス:個人的に気に入っているのはオープニングの「Rings Of Saturn」だね。5分にすべてが凝縮されている。美しいアコギからスタートしてヴォーカル、ベース、ドラムがゆっくりと曲を盛り上げていく感じで、それからメインのリフがロックン・ロールのヴァイブを感じさせてくれる。この雰囲気とゴスペルのようなコーラスがすばらしい。あとは「Washed Away」も大好きだよ。これまでにはなかったタイプの曲だからね。
──バンドが描いている将来像というのはどういうものですか?
トーマス:そうだな…誰かが新しいメタリカの存在になる必要があるよね?それはオレたちしかいないのでは?(笑)。
──デンマークのメタル・シーンはどういう状況ですか?
トーマス:国の大きさの割にはそのシーンは強力になったと思う。才能あるバンドが多く存在しているし、世界的に活躍しているバンドもいる。コロナの影響前からライヴに出向く人が少ないからツアーを行うにはあまり適していない国という噂も聞いたことがある。もちろん、大きなバンドが来るとみんな観に行くけど、小さい会場になると難しいのが現実なんだ。ここ2~3年は少し改善された気はするけど、ドイツ、フィンランド、オランダ、日本などの国とは違う状況だと思う。
──今後の音楽ビジネスについてはどう思っていますか?
トーマス:大きなバンドは別として、小さなバンドにとっては予測不能だね。毎回数万人もの集客をできるバンドはいいけどそれ以外はミュージシャンだけで生計を立てていくことはとても難しい。それは才能あるミュージシャンを失っていくリスクが高いし、オレはそういう人も見てきた。このビジネスは厳しすぎるから家族や友人との時間を大切にしたいと考えるミュージシャンは勤勉で優れた才能を持っていたとしても、最終的にはリングにタオルを投げ込んでしまうよ。大きなバンドだけが生き残っていく業界は残念に思うし、もっと才能あるバンドやミュージシャンを育てる環境整備が必要だよね。将来のシーンの為にも。みんな、いい音楽を聴き続けたいだろ?
──これからの活動も楽しみにしています。
トーマス:秋から学校を訪問してプレイする予定があるんだ。10歳から15歳が通っている学校へ出向き、ロック、メタルのすばらしさを教えるというコンセプトだよ。子供と直接触れ合いながら生きた音楽を体験させる。彼らに何かが伝わると確信している。デンマークで行った後はノルウェイでもやる予定。あとシンフォニー・オーケストラと共演して2回ライヴを行う。メタリカみたいだろ?映画音楽の制作の話もあるからこれもやる予定だ。
──来日も楽しみにしています。
トーマス:親愛なる日本のファンへ。日本へ初めて訪れた時はみんなオレたちに良くしてくれた。その心ある美しい文化は大きなインスパイアを与えてくれたし、今回のアルバムにもその要素が投入されている。また日本へ行きたいし、もっとオレたちのライヴを楽しんで欲しいと願っている。10月にリリースされる新作『Duality』は絶対に聴いて欲しいよ。Stay Safe and Metal! See Ya!
取材・文:桜山喜一
編集:BARKS編集部
DEFECTO(ディフェクト)『Duality(デュアリティ)』
2020年10月28日発売
BKMY-1098 \2,222+税
輸入盤:国内流通仕様(オビ、プロフィール、インタビュー付)
1.Rings Of Saturn
2.The Uninvited
3.Rise
4.Paradigm Of Deceit
5.All For You
6.Untamed
7.Condemned
8.Bed Of Nails
9.Washed Away
10.Tempest
11.Don't Say Goodbye
・Nicklas Sonne / ニクラス・ソンネ(vo & g)
・Frederik Moller / フレデリック・メラー(g)
・Mikkel Christensen / ミケル・クリステンセン(ds)
・Thomas Bartholin / トーマス・ボーソリン(b)