<Augusta Camp 2020>、山崎まさよし25周年をオンラインで3万人と祝福

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オフィスオーガスタの所属アーティストが一堂に会する恒例イベント<Augusta Camp>が、9月26日(土)、27日(日)にオンラインで開催された。以下、2日間のオフィシャルレポートをお届けする。

◆<Augusta Camp 2020>画像

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山崎まさよしの単独野外コンサートとして1999年にスタートした<オーガスタキャンプ>。そこから音楽事務所・オフィスオーガスタ所属ミュージシャンが総出演する毎年恒例のイベントへと発展し、すでに20年以上が経つ。今年はオーガスタキャンプの生みの親である山崎のデビュー25周年というアニバーサリーもあり例年以上の盛り上がりが期待されたが、新型コロナウイルスの影響もあり、イベントの開催自体が危ぶまれることに。そんな中で彼らが選んだのはオンラインでの開催という形態だった。

そもそも20年以上にわたるオーガスタキャンプのヒストリーを紐解いても、ここでしか見られないカバーやコラボレーション、周年アーティストによるプロデュースシステム、出演者たちが考案したメニューを味わえる「オーガスタ食堂」やイベント前日からファンと交流を楽しめる前夜祭など、毎年新規のチャレンジを行い、進化を遂げてきた。今回に関しても現在の状況をむしろプラスに捉え、これまでにない新たな音楽エンターテイメントのカタチを提示しようと現場は活気に満ちていた。

<Augusta Camp 2020 supported by いいちこ>は9月26日(土)、27日(日)にオンライン配信ライブとして開催され、2日間でのべ3万人が視聴した。今回はオンラインフェスということもあり、事前にネットサービスと提携したさまざまな企画で盛り上がりを図ったのも特徴である。TikTokで専用番組を配信し、Huluで過去のライブ映像を流し、レシピ動画サービス「クラシル」上では「おうちでオーガスタ食堂!」をテーマにメニューレシピを公開した(同時にオーガスタ食堂メニューが実際に味わえる期間限定ポップアップショップを渋谷「JINNAN HOUSE」にオープン)。こうしたひとつひとつのトライアルが新時代の音楽イベントの可能性を模索するものであった。



まず26日のDAY1はニューカマー・アクトとして平均年齢20歳の5人組バンド・FAITHがフレッシュな演奏を見せた後、17時から本編がスタートした。今回の出演者がさっそく全員揃って舞台に姿をあらわす。

「ようこそオーガスタキャンプへ!……でも、ほとんどの人は家にいると思う(笑)」

山崎まさよしの投げかけた第一声が今年の空気を象徴していた。そして2020年のオープニングナンバーは福耳の「10 Years After」。山崎作曲のこの曲を冒頭に持ってきたところが、改めて今年のオーガスタキャンプの主役が25周年イヤーを迎えた山崎であることを示している。メンバー全員でもう1曲、福耳の「Summer Of Love」を演奏し、2日間にわたるオンラインフェスの火蓋は切られた。

そこからは各アーティストが2曲ずつ歌を披露する構成となった。ちなみに今回のオーガスタキャンプは両日ともハウスバンドが異なり、初日はオーガスタ所属のあらきゆうこ(Dr)を筆頭に、福田真一朗(G)、種子田健(B)、浦 清英(Key)、高橋結子(Per)という面々がバックを務めた。

ソロアクトのトップバッターを任されたのは松室政哉。いきなり未発表曲のポップナンバー「ai」を披露する。事務所の先輩であるスキマスイッチに「藍」、秦 基博には「アイ」という人気曲があるが、あえてそれと同音のタイトルを付けるあたり、この曲にかける強い意気込みが感じられる。

杏子は「久しぶりにシングルをリリースしました。こうしたライブでみんなに届けるのは初めてです」という言葉と共に、6月に発売となった「One Flame, Two Hearts」で大人の切ない恋心を表現した。そこから一転、「Silly Scandals」ではロッククイーンに姿を変え、画面の向こうのオーディエンスに「私たちはつながっています!」と力強いメッセージを投げかける。

元ちとせはヒット曲である「ワダツミの木」を歌い上げた後、三線を手に取った。故郷・奄美のシマ唄である「ワイド節」は民謡とダンスミュージックが合体した鮮烈なアレンジで響き渡った。

浜端ヨウヘイはこよなく愛するカレーをモチーフにし、コロナ禍にあって「何もないところからでも自分の手で“幸せ”を創り出すことができるんだ」という力強いメッセージを込めた「世界にひとつの僕のカレー」を演奏。同曲は寺岡呼人プロデュースによりリモートで制作され、8月にリリースされた最新シングルでもある。岡本定義(COIL)はおなじみのフライングVを抱え、福耳に提供した「DANCE BABY DANCE」をロックかつポップに調理した。






イベントでは配信ならではの演出もあちこちに仕込まれていた。いったん演奏パートが終了すると、カメラがステージを離れてロビーに飛ぶ。そこではアーティスト同士のトークコーナーが行われている。オーガスタの“長男&長女”である山崎と杏子はテレビの通販番組を真似たツアーグッズ告知コーナーを展開。そこではチャット機能を利用し、タブレット片手に現在視聴中のオーディエンスと「いま何を飲んでるの?」「最近あった面白いこと教えて」といった気軽なコミュニケーションを繰り広げている。

生配信ならではのリアルタイム感と双方向の発信性。そして集中力にあふれた演奏パートと、気の置けないトークパートの両立。これもまたオーガスタキャンプの持ち味であるし、長丁場の配信という視聴環境を考えても、こうした緩急を付けた構成は配信フェスならではの工夫なのだろう。

ソロパート中盤戦にはさかいゆうが立った。ロンドン、LA、NY、サンパウロを巡って作り上げた最新アルバム『Touch The World』収録の楽曲をソウルフルに歌い上げる。さかいはそのまま舞台に残り、今年出演のオーガスタファミリーの中では“末っ子”にあたるDedachiKentaとセッションを行う。英語詞を歌うDedachiは画面上にリリックと対訳をあわせて表示したが、これもまたオンラインならではの演出だと言っていい。

ロックシーンで独自の存在感を放つ長澤知之は意外にも松室政哉をゲストに招き、9月9日にリリースしたばかりの新曲「クライマックス」で共演した。世代も音楽性も異なる者同士のコラボレーションはオーガスタキャンプの魅力のひとつだが、さかい×Dedachiも含め、配信になってもそれが引き継がれているのは嬉しい限りだ。

意外なコラボといえば、竹原ピストルのトライアルも面白いものがあった。竹原は弾き語りで山崎の「未完成」をカバー。しかしそれはただのカバーではなく、原曲の英語詞部分を竹原が独自に書き下ろした日本語詞に転換して歌ったのである。山崎の姿がそこにあるわけではないが、これも先輩へのリスペクトあふれる“リモート・コラボレーション”の一形態だと言えるだろう。






配信によるオーガスタキャンプ、初日の終盤を飾ったのは2組の実力者だった。

最初に姿を現したのは秦 基博。まずはゆったりとしたテンポの「トラノコ」で聞き手の気持ちを和ませる。そして「オンラインでも一体感を出せたらと思い、次の曲『スミレ』では一緒に踊れたらと思います! 振付を忘れたという人のために自然と踊れるシステムを用意してます」というMCが。その瞬間、配信画面の右下にワイプが開き、青色の着ぐるみウサギが登場する。演奏がはじまるとそのウサギが踊り出し、ウサギの振りに合わせて誰もが一緒に踊れるという仕組みになっている。そんなウサギくんの活躍のおかげで、配信というはなればなれの環境でも一体となったダンスが実現……と思いきや、楽曲終了後、着ぐるみウサギが頭部をとると、そこには汗だくで疲労困憊した山崎の姿が。なんと着ぐるみの“中の人”は今年の主役である山崎だったのだ!?──という驚きの展開の中、秦は「山さん、25周年おめでとうございます!」とサラリと先輩に礼を言い、最後「ひまわりの約束」で自らのアクトを締めたのだった。

そして次に登場したのはスキマスイッチ。ほろ苦い郷愁にあふれた「青春」を演奏すると、山崎の25周年に合わせて山崎の曲を歌うことを宣言する。あえてタイトルを言わずイントロが弾かれ、画面に表示されたのは「僕はここにいる」の文字。不器用で情熱的な男の恋心を歌ったこの曲はスキマスイッチにぴったりで、大橋卓弥は歌い終えると「この曲、やってみたらいい曲ですね。盛り上がっちゃった!」と嬉しそうな表情を見せる。その高揚感のままアップテンポの「Ah Yeah!!」に突入。さらにバスドラムが鳴り響く中、「おうちの人はちょっとだけお隣さんに気を付けて、フェス気分で声を出していきましょう」と画面の向こうにコール&レスポンスを呼びかける。配信ライブであるにもかかわらずいつもと同じ流れの中でプレイされた「全力少年」は、これがオンラインであることを一瞬忘れさせ、日本全国あちこちのモニターの前で野外フェスと同じ光景が起こっている様子が目に浮かぶようだった。

初日のトリはもちろん山崎。「全力少年」の興奮冷めやらぬ中、登場すると「みんなカモーン!」と出演者全員をステージに呼び寄せる。オーガスタファミリー全員を従えて演奏したのは「Let’s form a R&R band」。泥臭いロックンロールを繰り出す山崎の背中を、メンバーのブ厚いコーラスが押し上げる。オーラスは大橋のブルースハープを引き金にはじまった名曲「セロリ」。山崎は今日の主役でありながら、あくまでも見せ場を後輩に譲り、オフィスオーガスタという集合体が前面に出るよう気を配っているようだった。




他のメンバーが下がった後、舞台の上には事務所を牽引する山崎と杏子の2人が残って、画面の向こうに挨拶した。「DAY1は無事に終了。明日はまた今日と違った趣向で──」(杏子)、「そう、明日はアコースティックを中心に……」(山崎)、「それ言っていいの!?」(杏子)──と思いがけないネタバレもご愛敬。せっかくの名演に酔いしれた後、グダグダのラストを迎えてしまうのも、もはやオーガスタキャンプのお家芸だ。

結局「締めの言葉考えてなかった! あ、サザエさんみたいなのにしようか」という山崎の一言で、初日のラストは2人声を揃えて「明日もまた見てくださいね~、ンッガッグッグ」という終わり方に……こうして4時間半に及んだ1日目の全メニューは終了したのだった。

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