【レポート】WANIMA、ZOZOマリンスタジアム無観客配信ライブで「いつもは言わんけど、今日は言わせて。大丈夫やから!」
WANIMAが9月22日に千葉・ZOZOマリンスタジアムにて<COMINATCHA!! TOUR FINAL>を開催した。本公演は客席全体を25,000本にも及ぶサイリウムで彩り、この日の為に開発された世界初となる映像技術soundiv.やドローンが駆使されたカメラワークも相まって、プレミアムかつライブ感満載の素晴らしき夜となった。
◆WANIMA 画像
2019年11月にメジャー2ndフルアルバム『COMINATCHA!!』を発表し、過去最大規模となる25万人を動員する<COMINATCHA!! TOUR>を11月5日の新木場STUDIO COASTを皮切りにスタートさせたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響があり、30公演中アリーナでの16公演が中止。その後、メンバーの「ツアーを楽しみにしていた方々や音楽が支えになっている方々に最速で届けたい」という想いから、ツアーのみで披露していた新曲「春を待って」を緊急配信という形でリリースしたことに加え、ツアー中止以降の期間で制作された“大切な人たちとの大事な時間”を歌った新曲「Milk」をテレビで披露し、その後にこちらも配信リリース。バンドとして活動が制限される中、とにかくファンの元へ音楽を届けたいという彼ららしい瞬発力を伴った展開だった。
そんな中、ライブを“みんなが帰ってくる場”と位置づけている彼らは見通しが立たない状況下においてもツアーファイナル公演を模索し、無観客で開催することを決定した。<COMINATCHA!! TOUR FINAL>は通常の配信形式のみならず、大きな音でライブをそれぞれの土地で味わえるようにと、全国286の映画館と12のライブハウスを使用したライブビューイング形式を採用。ライブを行う会場としてもZOZOマリンスタジアムを選び、本公演は自身初の無観客スタジアムライブとなった。
定刻になり、「COMINATCHA!!のテーマ」を背にして、いつものようにゴキゲンな様子でステージに姿を表すKENTA (Vo, B)、KO-SHIN (G, Cho)、FUJI (Dr, Cho)の3人。飛び跳ね、カメラに迫り、そこに気負いは感じられない。FUJIによる”いつものあの人 (の物真似)”からの「楽しもう!」という呼びかけもあり、開始からさすがのテンション感を醸し出す。小雨が降りしきる中ではあったが、そんなことは関係ないとばかりに「ZOZOマリンから開催しまーす!」とKENTAが大きく叫び、アルバム『COMINATCHA!!』でも1曲目を飾った「JOY」をドロップ。探るようなそぶりはまったくなく、まずは溜まっていた想いをぶちまけていく。歌い上げるというよりも吐き出すような歌声。その瞬間の感情が投影されたザラつきこそ、ライブならではの魅力に違いない。
「配信やけど、ZOZOマリンから開催できとるぞ! まだ1曲目やから、KENTA落ち着けよ、落ち着け」と自分自身に言い聞かせるKENTA。とめどなく溢れ出すものがあるのだろう。その高ぶりが画面越しでも伝わってくる。だからといって、ここでさらに踏み出していくのが彼らのスタイル。そのまま突っ走るかのように「Hey Lady」をプレイ。最高の形でスタートダッシュを決めていった。
「ツアーファイナルですけど、懐かしい曲もたくさんやりたいと思ってます」とKENTAが語り、1stミニアルバム『Can Not Behaved!!』収録曲「つづくもの」を放つ。マイクを手に持ち、花道を歩きながら歌うKENTA。全国各地でこのライブを観ているファンの気持ちが届いているのだろう。コール&レスポンスを誘うやり取りもあり、普段のライブと何も変わらない高揚感が生まれていく。バンドとしてもより噛み合い、増幅されるグルーヴ。温かく、どこまでも生々しいWANIMAのライブそのもの。スイッチを切り替えての「Japanese Pride」は抜群の鋭さだ。KENTAが「さあ、いこうか!」と叫んですぐに飛び込んできた“このままじゃ終われない 日本の侍”というフレーズも今の彼らを表したかのような最高のフレーズに感じられた。
妖艶なライティングに照らされて、「BIG UP」は曲中にKO-SHINが思わず両手を高く突き上げるほどエネルギーが爆発。ヒートアップしっぱなしだが、ここでより畳み掛けるように“言葉や想いが全部 間違わずに 届きますように”というバンドの真摯な願いがこめられた「夏のどこかへ」を奏でていく。曲の中盤、おどけながら「失敗したら泣かします」とKO-SHINのギターソロを煽るKENTA、そこで炸裂させるKO-SHIN。ライブならではのやり取りも嬉しい場面だ。劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』の主題歌として書き下ろされた「GONG」は、いろんな場所で出会いがあり、仲間を増やしながら、困難へ立ち向かっていくという彼らが歩んできた物語ともリンクする名曲。絶妙な力強さで大きなスタジアムを飛び越えるようにかき鳴らす。
そんなアッパーなライブが続いたところで、引き締まった空気になったのが「Mom」だった。母親代わりであった亡き祖母に向けてKENTAが綴ったというこの曲。「いろいろ伝えたいことも増えてきたけど、今のオレはどう映っとるんかな? 生きとるうちに伝えたかったけど、遠くの遠くのばあちゃんへ向けて歌います」とKENTAが叫び、溢れ出す想いを詰め込んだ言葉ひとつひとつを大切に雄叫びのような歌声を響き渡らせていく。この日のライブの中でも特に心を打たれた瞬間でもあった。
「オレの生きる意味の人がいなくなって、ずっと向き合うことができんかったけど、今なんとかこうやってZOZOマリンに立ててます。この配信ライブを観てるみんなもオレらは失いたくないけん、WANIMAとともに生きていってください。お願いします」──KENTA
そして、スタジアム中央に設置されたセンターステージへ移動。配信形式を逆手にとり、その場にてハッシュタグ“#WANIMA”でリクエストを募って検索してみたものの、目についた楽曲「エル」が「事故りそうだからできない」という微笑ましい出来事を経て、「コロナの時期になって、みんな、目の前のことがなくなって毎日が決断の連続やけど、オレらにできるのは音楽を届けることやから」と「Milk」を披露。3万人以上が入る大きな会場のど真ん中、小さなステージで3人が向き合い、誰しもが抱えるかけがえのない人や時間が描かれた曲を鳴らしていく。そんな光景にも寂しさは一切なく、それどころか温かなムードが満ち溢れる。曲が持つ力だけでなく、それを発する彼らの心持ちからくるものなのだろう。その後もセンターステージでエロカッコよさで際どく攻める「渚の泡沫」、「オドルヨル」が始まるかのようなフェイントを入れてからの「いいから」を連投し、「またゼロ距離で会いたかな。今はZOZOマリンから歌うから、今、観とる場所からともに歌ってもらってよかですか?」とKENTAが呼びかけ、「こんな時代やからともに歌うよ!」と代表曲である「ともに」へと続けていく。
ライブ開始から約1時間。雨にも降られ、いつも以上に体力/精神力を削られているはず。だが、決して止まらない。全身全霊ですべてを伝えようとする姿。混じりっけのない彼らだからこそ、心の奥底まで届いてくるのだ。メインステージへ舞い戻り、いよいよ終盤戦。●●●万円(!?)が投入されたという人形“カミナッチャくん”も「今日でお役御免」だと笑いつつ、ここで改めてこのライブへこめた想いを語りだす。
「またいつか、ゼロ距離で会えるように、オレらもなんとかみんなと一歩を進みたくて、こうやってZOZOマリンでファイナルを迎えてます。ツアーの半分がなくなってしまったけど、今、届いてることがめちゃくちゃ嬉しいです」──KENTA
その後に続けた言葉もまた気持ちを動かさせるものだった。
「決断の連続で、苦しいことや悩みも続くかもしれんけど、諦めないで。真面目に生きることはカッコ悪いことじゃないと思うから。いつもは言わんけど、今日は言わせて。大丈夫やから! 生きとったらなんとかなるから。弱いままで強くなっていきましょう」──KENTA
ゆったりを始めながら、ハリのある歌声を響かせたのは「りんどう」だ。彼らの地元である熊本県の県花であり、群生することなく1本1本が独立して咲くリンドウ。その花言葉は“悲しんでいるあなたを愛する”。この曲を聴くたびに、慈悲深く、ひとりひとりに寄り添う彼らにふさわしい花であり、それが出身県の県花であるという繋がりに運命的なものを感じてしまう。いつも楽しく過ごせるわけがない。時には落ち込んだり、ふさぎ込むことだってある。そんなとき、弱いまま強くなれと願うこの曲が支える力は凄まじく、その頼もしさはとてつもない力を秘めている。スタンドに位置したオーケストラによる演奏も曲をさらにふくよかさせ、格別なムードが醸し出されていった。
そんな空気を持続させながら軽快で体の内側からじんわりと温かさが広がっていく「宝物」を放ち、KENTAが「さあ、ラストいくよ!」と、再会を願いながらパワフルに突き進む「GET DOWN」を投下。曲の終わりにはその名残惜しさを昇華するように大きな花火が打ち上げられる。思わず顔をほころばせ、力の限りアウトロをかき鳴らす。「これからもしぶとく生きていきましょう! WANIMAでした!」とKENTAが大きな声を上げ、ライブは終了かと思いきや、画面に映し出されたのはいきなりのカウントダウン。何が起こるのかとドキドキしていると、緊急告知としてライブ翌日の9月23日、2ndミニアルバム『Cheddar Flavor』のサプライズリリースが発表されたのだ。常々、彼らは「みんなを驚かせたい」とは発言してきたが、この展開を予想していた人はいなかったのではないだろうか。
「やっと言えた! みんなを驚かせたい、楽しみを届けたかったんです」──KENTA
「誰かに歌うな、自分に歌え」と言い聞かせて制作したという新作『Cheddar Flavor』。ジャケット写真も同時に公開されたが、ピザを囲むメンバーが描かれているに留まらず、タイトルロゴもPIZZA OF DEATHに通ずるところがあり、いろんな想像が広がる1枚だ。そんな新作からアンコールとして、瞬発力抜群で耳に残るフレーズも印象的なタイトル曲「Cheddar Flavor」をプレイし、気持ちをさらに高めたところから最後の1曲として届けられたのは「春を待って」だった。
“どんな時も悪くないと春を待って”という一節は現在の状況と重なる部分もあり、全員の気持ちを代弁するかのようにも響いていく。ド派手な演出、配信形式だからこそのやり取り、いつもと変わらない熱量、ライブが終わってしまうという寂しさを越えたサプライズ、WANIMAという音楽やファンに対して一途なバンドだからこそなし得たライブだった。
取材・文◎ヤコウリュウジ
撮影◎瀧本JON...行秀
■<COMINATCHA!! TOUR FINAL>2020年9月22日@千葉・ZOZOマリンスタジアム SET LIST
01. JOY
02. Hey lady
03. つづくもの
04. Japanese Pride
05. BIG UP
06. 夏のどこかへ
07. GONG
08. Mom
〜センターステージへ移動〜
09. Milk
10. 渚の泡沫
11. いいから
12. ともに
〜メインステージへ移動〜
13. りんどう
14. 宝物
15. GET DOWN
encore
en1. Cheddar Flavor
en2. 春を待って
■2nd MINI ALBUM『Cheddar Flavor』
¥2,200+税
https://WANIMA.lnk.to/wcf
※初回プレス限定仕様:「Cheddar Flavor」オリジナルステッカー(ランダムデザイン)
▼収録曲
1. Call
2. LIFE
3. 枯れない薔薇
4. SHADES
5. Cheddar Flavor
6. 春を待って
7. Faker
8. となりに
9. Milk
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