【ライブレポート】上妻宏光、津軽三味線の“生音”で魅せるソロデビュー20周年記念ツアー開幕
上妻宏光のツアー<ソロデビュー20周年 上妻宏光「生一丁!」Tour 2020-2021“伝統と革新”>が、9月6日(日)に初日を迎えた。
◆ライブ写真
新型コロナウイルスの影響でエンタメ界も大きなダメージを受けている最中、津軽三味線の独奏を生音で披露する<生一丁!>公演は、感染拡大防止のガイドラインに沿って行われた。ツアー初日のライブレポートをお届けする。
◆ ◆ ◆
「津軽じょんから節」のなかでも一番古い明治期の節「旧節」が、静まりかえった会場に響いたとき、心が震えた。
客席は定員の半分以下に間引かれ、心弾ませて開演を待つ人々のざわめきもなく、会場はいつもと異なった空気感に満ちていた。そこに風穴を開けるように演奏が始まったのだ。生音の“波”に身を委ねる心地良さを、ひしひしと感じた。
上妻宏光ソロデビュー20周年という節目の今年、新型コロナウイルス感染拡大により実演家は表現の場が奪われ、観客も自粛生活から新たな生活へと目まぐるしく変化するなかでのツアー開催となった。
最初のトークで、コンサートを開催できたこと、落ちつかない世情にも関わらず会場を訪れた観客への感謝と感慨深い想いを伝えた。
こうして上妻ひとりによる<生一丁!>と題したツアーの幕が5年ぶりにあがった。
プログラムは、彼の原点である津軽五大民謡「じょんから節」「よされ節」「小原(おはら)節」「あいや節」「三下(さんさが)り」のほか、オリジナル曲と、10代のころ全国の民謡を1年で約100曲覚えたという上妻ならではの曲構成で工夫がある。
三味線には「二上(にあが)り」「本調子(ほんちょうし)」「三下(さんさが)り」という3つの調子(チューニング)がある。調子を変えると、元に戻ろうとする糸の性質上、調子を変えながらの演奏はかなりの技量を要する。その調子の違いを説明して聴かせたり、洋楽的な楽曲と民謡の場合の手拍子の違いを観客に体験させたりと楽しませてくれる。
津軽三味線では珍しいクラシックホールでのコンサート。バチを三味線の胴に打ちつけるアタック音を活かした津軽三味線独特の響きだけでなく、時に柔らかく、時に切なくしみじみと聴かせる。弱音(じゃくおん)も、左手で糸をハジく響きも一音一音クリアで美しい。なかでも「秋田荷方節」は、水が流れるように曲が流れ人々の心を捉えた。そして出身地の茨城県民謡をしみじみと弾き唄う唄声に惚れ込んだ人も多いだろう。
民謡にはそれぞれに、それが生まれたところでの“なまり”があり、時代とともに変化し、人々の生き様や“叫び”が込められてきた。「上妻スタイル」の民謡もまたしかり。それを堪能させてくれる<生一丁!>。
マイクを使った舞台が当たり前になっていた津軽三味線・津軽民謡界で、あえて三味線1挺、生音で2001年から挑戦してきた上妻。「生音の感動を体感して欲しい、津軽三味線の真髄を楽しんで欲しい」という熱い思いに溢れる。
三味線の確かな技術と豊かな音色は、6歳から三味線に惚れ込み歩んできた人生が凝縮されている。心落ちつかない日々をいっとき忘れさせてくれたその舞台姿に贈られた観客の拍手は熱かった。
これまでとは違う日常、これまでとは違うコンサートのあり方のなか、いつも以上に生音が心に染みる全国11都市13公演のツアーがスタートした。
記者:織田麻有佐
■上妻宏光 終演後コメント
ソロデビュー20周年 上妻宏光「生一丁!」Tour 2020-2021“伝統と革新”初日終演後コメント映像2020年9月7日(月)公開
URL:https://youtu.be/D8-3FDSXZxo
■<ソロデビュー20周年 上妻宏光「生一丁!」Tour 2020-2021“伝統と革新”>
※終了公演は割愛
9月12日(土)千葉・スターツおおたかの森ホール(13時半開場/14時開演)
10月4日(日)東京・秋川キララホール(14時半開場/15時開演)
10月9日(金)福岡・あいれふホール(18時開場/18時半開演)
10月10日(土)熊本・熊本市国際交流会館7階ホール(15時半開場/16時開演)
10月24日(土)愛知・電気文化会館ザ・コンサートホール(13時半開場/14時開演)
10月31日(土)岡山・ルネスホール(13時開場/13時半開演)
11月1日(日)広島・ゲバントホール(14時開場/14時半開演)
11月7日(土)石川・北國新聞赤羽ホール(17時開場/17時半開演)
11月8日(日)福井・みくに未来ホール(13時半開場/14時開演)
11月29日(日)新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館能楽堂(13時半開場/14時開演)
2021年
2月10日(水)兵庫・兵庫芸術文化センター神戸女学院 小ホール(18時開場/18時半開演)
※特別出演:重要無形文化財(総合指定)保持者 金春(こんぱる)流シテ方能楽師 山井綱雄
2月28日(日)東京・国立能楽堂(15時開場/15時半開演)
※特別出演:重要無形文化財(総合指定)保持者 金春(こんぱる)流シテ方能楽師 山井綱雄
公演詳細:https://agatsuma.tv/
※公表されております公演につきましては、政府、各自治体、会場規制のガイドラインに従い、お客様の安全性を最優先に、出演者、スタッフの安全性の対策を行い、実施される予定です。
■上妻宏光ソロデビュー20周年記念アルバム『TSUGARU』
COCB-54296/¥2,727(+税)
[収録内容]
1.津軽じょんから節 (新節)
2.津軽あいや節
3.津軽じょんから節(中節)津軽三味線:上妻宏光/唄:長谷川勝枝/太鼓:二代目 成田雲竹女
4.津軽小原節
5.南風 -HAIYA- 作曲・編曲・演奏 津軽三味線:上妻宏光/三味線:本條秀太郎
6.津軽よされ節
7.津軽じょんから節(旧節~中節~新節)津軽三味線 : 上妻宏光、澤田勝秋
8.津軽三下り
※M1,2,3,4,6,7,8 青森県民謡
※M1,2,4,6,8 津軽三味線:上妻宏光
【特典】
2020年9月6日(日)より<ソロデビュー20周年>公演開催期間中のみ特典として、アルバム『TSUGARU』を対象店にてご購入の方にMV&上妻宏光の解説付きDVDをプレゼント。
詳細:https://columbia.jp/artist-info/agatsuma/info/71920.html
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