【インタビュー】DURANが語る、新曲に込めたアイデンティティ「プレイヤーではなくアーティスト」
■自分の部屋から生まれた小さな音の波紋
■それが広がって少しでも希望になれば
──そんなDURANによる新作「Echo (Electric Gospel)」ですが、このタイトルの意味は?
DURAN:“エレクトリック・ゴスペル”というのは以前から気に入っている言葉なんです。
──後半はずいぶんアバンギャルドな展開ですよね。
DURAN:特に1960〜1970年代のサイケデリック音楽って、曲の後半で全然違うモチーフが入ってきたりするじゃないですか。ああいうのが好きで、居心地いいまま終わらせないよ、みたいな。
──なるほど、そういうことか。
DURAN:いつか“エレクトリック・ゴスペル”というレーベルを作りたいとずっと思ってて、このタイミングなのかなと。そのテーマみたいなものに繋がっていく感じです。
──“エコー”にはどういう意味が?
DURAN:音の波紋…そういう意味でつけました。自分の部屋から生まれた小さな音の波紋が広がっていって、僕にとっても、そして聴いてくれたみんなの希望に少しでもなればなと。
──出来上がった作品にJ-POP風味はなく、ワールドワイドで支持されそうなテイストを持っていますね。
DURAN:その辺はよくわからないですね。「日本でやってるんだから、日本に合うサウンドを」とか言われたこともよくあったんだけど、こんなグローバルな時代に、もういつの時代の話してんだろって(笑)。今回の曲は日本語のほうがいいって思っただけで、ワールドワイドなのかなんなのか、そういうのは意識してない。それに、ビジネス的なスーパー成功みたいなのとか、別にどうでもよくて。アートファーストでいたいというか。
▲ELECTRIC GOSPEL RECORDS |
DURAN:好きなアーティスト/プロデューサーが言っていた話なんですけど、ミュージシャンの“売れたい”って“認められたい”だけなんじゃないかって。うちの親戚は僕のことを、いまだに遊んでると思ってますからね。「いつ就職するの?」みたいな。別にいいけど。
──ははは(笑)、ありがち。
DURAN:どこに行っても職業欄にミュージシャンってないし、どうしても社会人として認められてない感がある。“今日からあなたはアーティストです”みたいな表彰もないから、少なくとも誰かに自分のアートを認めて欲しいっていうのがあるかも。どこかで認められたい、それだけなんですよ。
──なるほど、売れるということは他者承認欲求への回答になるんですね。
DURAN:僕の場合、デビュー当時のバンドで書いた曲がアニメのタイアップもあって爆発して(笑)。いい気分だったし、それをもっと追い求めて。でも、そこからそれを維持するために、“もっとこういうのを書いたら売れる”とか、そんな注文ばかり受けて書くようになって、そればかり追ってる自分に気付いて。自分はいったいアートをしたいのかビジネスをしたいのか、よくわからなくなった。あくまで僕の場合だけど、このやり方は健全ではないなって。金儲けだけが先のマインドでいっちゃうと、なんだか“音楽”とは別なものになりそうな気がして。自分のアートがちゃんとできて、それが届いてほしいところにちゃんと届いてくれさえすれば、それでいい。
▲「Echo (Electric Gospel)」 |
DURAN:音楽専門学校に行ってる時、デビューできないって理由で自殺してしまった知人もいた。当時は華やかにデビューして、でっかい花火を打ち上げて、みたいな方法しかなかったというか、そうしないと無理みたいな感じがあった。本当にクソみたいな時代ですね。もしこういうことで悩んでる人に僕なんかが言えるのは、“どんな方向に行こうがそこにゴールなんてない”ということ。商業的な成功をしてもしなくても、どっちに転がろうとそこでしかできない経験や、得るもの/失うものは必ずある。だから自分の心を大切に、一番自分を愛してあげられる形でやるのがいいと思う。今はいろいろなやり方があるしね。
──ミュージシャンに最も大切なのは、そこですもん。
DURAN:だからね、それを肌で感じることができていたのがライブステージだった。自分は愛されてるって。存在価値というか。そこのところの話をすると、Black Lives Matterの渋谷でのデモ行進に参加したんです。僕は混血で、そんな理由だけで実際に経験した人種差別をちゃんと生の声をあげて知ってもらうため。「ミュージシャンなら音楽でやれ」とか言う人達もいたけど、これについては、僕は違うと思うし、音楽だけやってればいいみたいな、そういうのもなんだか差別的なマインドだなと。著名人だろうがミュージシャンだろうがなんだろうが、みんなと同じ地に足を着けて雨の中で叫ぶ、そういうのも差別っていうものをなくす大切な行動だと思ったから参加して。差別を経験した僕ができること、存在価値をこういうところでも感じた。
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