【インタビュー】TAEYO、メジャーデビュー「俺がハマるところはこれまでやってきた場所じゃない」

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歌とラップを行き来するメロディセンスを持ったアーティスト、TAEYO。もともとTaeyoung Boyとして活動し、2018年には「Fault」がSpotifyのバイラルチャートで1位を獲得、新世代のラッパーとして注目を集めている。

◆TAEYO画像、リリックビデオ

その彼がメジャーレーベルへと活動を場を移し、アーティスト名をTAEYOへと改め、7月15日にEP『ORANGE』をリリースした。彼が得意とする歌の魅力を押し出したこの作品、レコーディングではアーティストとして迫られた変化、それに対する葛藤があったという。今回はBARKS初登場となるTAEYOに、メジャーというフィールドでサバイブしていくうえで感じたこと、これまでのラッパーとしての活動などについて話を聞いた。

  ◆  ◆  ◆

■自分としてもすごく救われた作品になりました

──ラップをはじめたきっかけについて教えてください。

TAEYO:文化服装学院を卒業して原宿の洋服屋さんで働き始めたのと同じ時期に友達とスケボーを始めたんです。それで、立川にあるスケートパークに行った時にサイファーをやっている子がいて、週末に町田でライブをやるというから観に行ってみました。そこで元SIMI LABのQNさんのラップを初めて見たときに“かっこいい!”と思って、俺も曲を作りたくなって、SoundCloudで見つけたフリーのビートに乗せたのが始まりですね。

──それ以前からヒップホップを聴いていましたか?

TAEYO:日本語ラップは聴いていませんでしたが、洋楽のヒップホップは聴いていました。きっかけはブラック・アイド・ピーズで、一番最初にハマったのがカニエ・ウエストでした。小さい頃から実家でJ-WAVEがずっと流れていて、ローリン・ヒルやロイド、あとはジャック・ジョンソンのようなサーフミュージックも好きで聴いていました。それで、スケボーをやり始めたくらいにFla$hBackSを聴いて“日本人でこんなやつらいるんだ!”と思って衝撃を受けました。

──スムーズなライミングと歌うようなラップのスタイルが出来上がったのはいつ頃ですか?

TAEYO:始めたころからわりとそんな感じのスタイルでした。ラップ始める前からSoundCloudが大好きで、心地いい感じのビートがすごく好きだったので、一番最初に作ったラップの曲もメロウでポップな感じでしたね。その感覚が段々と洗練されていったのかなと思います。

──ラッパーとしてやっていこうと思ったきっかけを教えて下さい。

TAEYO:chelmicoのプロデュースをやっているryo takahashiさんのスタジオに入り浸っていた頃は、アパレル会社で働いていたので仕事終わりでryoさんのスタジオに行き、終電まで作業して帰る生活をしていました。その時はヒップホップに対しては半分本気、半分趣味くらいでしたね。EPを何作か出したあとで今も一緒にやっているトラックメイカーのDroittteと出会い、気が合ったので共作でアルバム『SWEAR』を作りました。その作品のリリースタイミングで出したミュージックビデオ「Fault」がいい感じに回って、Suppage Recordの方から連絡をいただき、アルバムのプロモーションをしっかりとやってもらえたおかげで、アルバムを出した後にクラブに行くと、人の目がマジで変わったのを覚えています(笑)。それまではどこに行っても見向きもされなかったけど、リハーサルのときにDJやラッパーが挨拶してきてくれたりして、その時にアーティストとしてスタートした感じがありました。クラブ以外のイベントにも呼んでもらえるようになり、少しずつ露出が増えていき“これでいける”と思って会社を辞めました。ただ、辞めたと言っても、すぐに音楽で食えるわけじゃないので、自由に出勤できる形態で数ヵ月はアパレルで働きながら、ミュージックビデオや曲を作る生活をしていました。


──ラッパーの現場は夜中も多いので、仕事との両立は大変ですよね。

TAEYO:そうですね。限られた時間で生活を削りながら制作活動をしていました。仕事が終わって週末はそのままライブのためにクラブへ行き、朝6時に帰って仮眠して、仕事に行ってからスタジオへ……という生活だったので本当に疲れてましたね(笑)。まあ、楽しかったんですけど。

──新作EP『ORANGE』からメジャーリリースになります。それに際してアーティスト名がTaeyoung Boy(テヤンボーイ)からTAEYO(タイヨウ)に変わりますが、そもそもTaeyoung Boyというアーティスト名の由来と、その名義を変えた理由を教えてください。

TAEYO:本名がタイヨウという名前で、学生の頃に韓国の友達が“テヤン”って呼んでくれていて、それが気に入っていたのが理由です。今までも自分で名乗るときは“Taeyoung”って言っていたので、いつか“Boy”は取ろうと思っていたのですが、メジャーデビューのタイミングでスタッフに相談したら“Taeyoung”では登録ができなかったんですよ。そこでTaeyoung”から最初の5文字をとってTAEYOにしました。

──EP『ORANGE』のコンセプトは?

TAEYO:作りはじめる前にテーマを決めようとチームで話していて、夏にリリースするのが決まっていたのでテーマは“夏”でした。EPのアタマは「Intro」のトラックを聴いて興奮して、これはラップを入れて絶対に一曲目にすると決めていました。

──その反面で「Calm」は全編が歌というこれまでにない楽曲があったり、歌の割合が強くなりましたね。

TAEYO:確かに、今言われて気がつきました。「Calm」のような曲はメロディ先行で考えてから歌詞を付けました。EPのタイトル曲「ORANGE」は今までに作った曲で一番好きですね。全体的にバランスがいいんですよ。1ヴァースと2ヴァースのバランスもいいしフックもいい。全部うまくいったなって。野外で歌ってるのが目に浮かびます(笑)。あと、ボーナストラック「Grey」も今のことをうまく言えたので好きですね。あまり今まで書かなかったような自然体な切り口です。

──「Let me down」はChaki Zuluさんのプロデュースでした。

TAEYO:“Taeyoung Boy”名義で最後にリリースした「NAMINOUE」って曲は、EPのシングル曲にしたいと思っていたのですが、チームで話し合った結果、インディーズ最後に出そうと。それで「NAMINOUE」に代わるメインの曲を作らないと、という話になって、Chaki Zuluさんにトラックからお願いしました。そのおかげでいろいろと学ぶことがありました。

──具体的に言うと?

TAEYO:リリックの内容を見直すというか、何を伝えたいのかをChakiさんに指摘されて何回も書き直しました。これまでレコーディングにはあまり時間をかけなかったのですが、今回は時間をかけて何テイクも同じフレーズをやり直しました。ラップも“何を言ってるか分からない”と言われて、そこを修正するために、かなり悩みましたね。正直に言うと、これまで人生で落ち込んだことは一度も無かったけど、メジャーデビュー作ではじめてボロクソに言われて。レコーディングで泣いたのは初めてでした(笑)。



──ちなみに「Let me down」はこのEPで最初にとりかかった曲でしたか?

TAEYO:そうです。最初に「Let me down」を作ったおかげで、なんで俺はメジャーデビューしたかったんだろうとか、なんでこの曲を作っているのとか、いろんな事を考えるきっかけになったおかげで、自分の目指す場所が明確になりました。もちろんやってる最中はめちゃくちゃ悩んだし、全然最初はできなかったです。それで“Taeyoung Boy”の時とは真逆で、弱い歌詞を書くというアドバイスをもらって。これまでのリリックはいつも自分のことについて歌っていましたが、今では自分のことも歌いつつもそれだけでは無くなったかなと。人と共感できるようなリリックが増えたと思います。

──『ORANGE』の制作で大きな変化があったんですね。

TAEYO:Chakiさんはアドバイスでいろんなラッパーを引き合いに出すんですけど、例えばkZmと俺が愛について歌うのではキャラが違うじゃないですか? 自分を客観的に見たときにどこまでやってもダサくないかってことであって、最初は抵抗がありましたが、それって自分の中の問題、つまりプライドなんですよね。その点で今までの俺が見ていたシーンは狭かったし、メジャーに行くのにそんなこと言ってられないと思う自分と、それを譲れない自分とで葛藤がありました。でも、色々と吹っ切れてEPの仕上がりに満足しています。名前がTAEYOに変わっても今までの自分に恥ずかしくないカッコイイことができたし、自分としてもすごく救われた作品になりました。まさにTAEYOのファーストEPって感じですね。


──シーンを見るとメジャーとインディーの差は狭まってきています。そのなかでTAEYOさんがメジャーに行きたかった理由は何でしたか?

TAEYO:確かに、メジャーとインディーの境界線はもう無いかもしれないけど、広い世界に飛び出してみたい気持ちがありました。今までみたいな曲を作ろうと思えばずっと作っていられるし、いろんなスタイルのラッパーがいてみんなに適材適所がある。でも、Taeyoung Boyでできることはやり尽くしたと思っていて、俺がハマるところは、これまでやってきた場所じゃないと思ったのが理由ですね。今までにいなかったアーティストになりたいし、そうするにはもっと広いところに行ってみないと分からないですから。

──自分の強みはどこだと思いますか?

TAEYO:ひとつを言えばメロ感なのかもしれないけど、ラップもうまいと思っていますし、自信過剰なわけではなく客観視して、全部できるなと思ってます。見た目も悪いわけじゃないし(笑)。

──現段階での目標は?

TAEYO:今は追い求めるものが自然と大きくなってきているので、でかい景色が見たいですね。野外フェスのヘッドライナーになって、夕日浴びながら歌いたいです。

取材・文◎伊藤大輔

TAEYO Major 1st EP「ORANGE」

2020年7月15日発売
PCCA.04959 1,500円(税抜)
形態:CD Only(6曲入り)

収録曲
M1.Intro (Prod. BACHLOGIC)
M2.Let me down (Prod. Chaki Zulu)
M3.All I have (Prod. CELSIOR COUPE)
M4.Calm (Prod. CELSIOR COUPE)
M5.ORANGE (Prod. CELSIOR COUPE)
M6.Alright (Prod. BACHLOGIC)

CDの購入はこちら
https://lnk.to/ORANGE

各配信サイトへはこちら
https://lnk.to/_ORANGE

■TAEYO Major 1st EP「ORANGE」予約購入特典
TOWER RECORDS予約購入特典:Taeyoung Boy名義曲のオリジナルMIX CD『 TYB MIX TOWER Version 』
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▲「ORANGE」
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