【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.73「はじめての…」

「はじめてのおつかい」というテレビ番組がありますが、自分にはほとんどそのような記憶がありません。買い物を頼まれて、余ったお金でプラモデルを買って叱られた覚えはあります。しかも、二つのパーツをペタッと貼り付けると完成するような飛行船の模型でした。何でそんなものが欲しかったのか分かりませんが、そんなことがあって、あまりおつかいを頼まれなくなったのかもしれません。かっこよく書けば、後にLED ZEPPELINに傾倒する前兆だったのか？そんなことはないですね。

「はじめての自転車」は小学校4年生頃と、かなり遅かったです。友達が乗り回す後ろを懸命に走って追いかけるのに疲れて、ねだって買ってもらいました。「～君と同じのが欲しい」と当時流行ったキャラクターものの自転車をリクエストしたのですが、「ああいうのはすぐにダメになる」と言われて買ってもらったのが「ママチャリ」です。「自分が欲しかったのはこういうのじゃない」と不満でいっぱいでしたが、猛練習して乗れるようになった時は嬉しかったです。今だから分かりますが、親は絶望的に運動神経の鈍い息子が心配で買い与えたくなかったのだなと思い至ります。この歳になっても「危ないからバイクに乗るのはやめろ」と言われるのですから相当信用されていません。

「はじめての感動」は小学校低学年の頃のことでした。自分は感受性に乏しいので、あまり感動することがありません。オズフェスト出演も、海外のステージも、もちろんとても嬉しくはありましたけれども、そこまでではありませんでした。本当に心臓がばくんと脈打つほど感動したのは、初めてカマキリを見つけた時です。あまりに喜びが大きくて「こんなに嬉しいことはない！」と側にいた友達に感激の言葉をもらしたくらいです。他のみんなは結構簡単に捕まえていたのですが、鈍くて小心者の自分は、遠くや危険な場所にまで探しに行かなかったので出遅れていました。そんな頭の中がカマキリ一色に塗りつぶされた日々の中、ついに見つけることができたあの喜び。あれは人生重大ニュースのトップクラスに君臨する出来事です。ちなみにその記念すべき邂逅を果たしたのは自宅の小屋のわきでした。


さて、この度皆さんより十年遅れて「はじめてのスマホ」を使い始めました。ノブくんも最近スマホに乗り換えたのですが、「いや～ケンちゃん、スマホはいいよ～、ただだったよ～」と言って焚きつけるので、乗せられてしまいました。しかし、手にしたところでよく機能を理解していないので、まだガラケーとほぼ同じ扱いです。和嶋くんに電話のかけ方を教わったくらいです。ツーリングで道に迷った時に役立てようと思いMAPのアプリをいじっているのですが、弘前まで徒歩で移動すると６日と２時間かかるということだけは判明しました。その画面を見て、いつか実家まで歩いて帰ってみようと思い立ったのですが、なるほど、こうして活動が広がるヒントを与えてくれるのがスマホの良いところなのだなと今更ですが感心している次第です。壁紙はクワガタの幼虫の写真にしました。



以前書いたように、「はじめての洋楽」はレイフ・ギャレットの「ダンスに夢中」です。「はじめてのアルバム」はKISSの「Dynasty（地獄からの脱出）」です。「はじめての針飛び」はPINK FLOYDの「Wish You Were Here（炎）」の「Shine On You Crazy Diamond」のイントロでした。「はじめての無理やり聴かされて迷惑だったアルバム」はERIC CLAPTONの「E.C.Was Here」です（ファンの方、ごめんなさい）。「はじめてのロックグッズ」はLED ZEPPELINのバンダナです。大学受験で上京した折にミュージックライフによく広告を出していた「ロック座」で買いました。今はもうないのかな？お茶の水の小川町にありました。青森にはロックグッズを売っているお店などあるはずもなく、そのロックの聖地に行ってみたくて仕方がありませんでした。KISSのグッズを買うつもりで嬉々として物色していたはずなのに、実際に買ったのはLED ZEPPELINの1stアルバムのジャケ柄のバンダナでした。あの飛行船が炎上した絵柄のやつです。おぉ、またもや飛行船！実はドイツ人の生まれ変わりで、遺伝子に遺された遠い記憶がそうさせるのでしょうか？それはともかく、このアルバムは「Dazed And Confused」「Communication Breakdown」「How Many More Times」といったロックアンセムが収録されている歴史的名盤です。「You Shook Me」「I Can’t Quit You Baby」などのように一番ブルース色が濃く、ツェッペリンのルーツを窺い知ることができる作品です。「Your Time Is Gonna Come」の荘厳なオルガンの響きも幻想的で素晴らしいです。まだ聴いたことがないという方がいらっしゃったら是非おすすめします。配信のダウンロードはダメですよ！ジャケットを手にとって燃え盛る飛行船の絵を眺めながら聴いてほしいです。ついでにその飛行船柄のバンダナを頭に巻いて街中を歩いていた哀れな僕の姿を想像して笑ってください。


「はじめての快感」は中一の時、雑誌に載っていた石川ひとみさんの写真を見てのことです。芝生の上で左向きに座った石川さんは、デニム生地のミニスカートからすらっとした右脚を伸ばし、左脚を曲げて、ニッコリと微笑んでいました。その写真を見ているうちに何だか股間がムズムズしてきたので指で擦っていたら、ドクンと今まで経験したことのない、とてつもない快感が身体を走り抜けたのです。その気持ち良さを言葉で表すのは難しいのですが、例えるならば、飛行船の水素ガスが引火して大爆発したような、とでも言ったらいいのでしょうか。この出来事も人生重大ニュースに加えても差し支えないと思います。




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