【インタビュー】イケメン和楽器集団・桜men、正式デビュー「新しい和の形をいかに届けていくか」
■僕たちだけの新しいスタイルの音楽を築き上げていけたら
──では実際に『華の大演舞会』の内容についてもお伺いしていきたいと思います。「桜menの音楽はこう」というテーマはあるんですか?
中村仁樹:ロックが基調。男10人の迫力をどう出していくか、というところですね。
──暦さんは和楽器に歌を乗せることについて、どう思われました?
暦:サウンド的にこれまでやってきた音楽と全然違うので戸惑った部分もなくはなかったんですが、単純に僕、和楽器の音色が好きで。未知のものだったんですけど、入ってみてすごくマッチしたというか。歌ってみて内からこみ上げてくるものとかもあったんで、すんなりめっちゃいいな、と思えました。
──暦さんの声と和楽器、全く違和感ないですもんね。ここからはそれぞれの推し曲も教えてもらおうと思います。
佐藤公基:ズバリ一曲目の「桜花繚乱」です。これは桜men初めてのオリジナル曲。初めてちゃんと10人で音出して、初めてミュージックビデオの撮影もした。桜menで初めて会ったメンバーもいたんで、「初めまして〜」みたいな空気感の中で撮影したのも印象深いです。楽曲ももちろんかっこよくて、最後の最後にこよみんさんの声が入ってきて盛り上がる感じ。桜menのテーマソングだと思ってます。
──中村さんも実際テーマソング的なイメージで作曲されたんですか?
中村仁樹:そうですね、それぞれの楽器の良さが生きる曲が欲しいと思って、テーマソング的な形で作った曲です。公基が言ってくれたように、最後のこよみんのソロで歌が響いて曲が盛り上がっていくところがポイントです。
古里祐一郎:僕は「千本桜」を聴いて欲しいです。いろんな人がカバーしていますが、やっぱり男10人の迫力とこよみんのハイトーンボイス……え? こよみんって男の子だよね?
暦:イエス(笑)。
佐藤公基:なんならこよみん、体ムキムキだわ(笑)。
古里祐一郎:そう、このハイトーンボイス+男10人の演奏ってなかなかない仕上がりになったと思うんですよね。ここでもう一回「千本桜」と桜menで盛り上がりたいなっていう思いを込めてレコーディングしたので、ぜひ聞いてほしいです。
▲古里祐一郎(和太鼓)
匹田大智:僕は「疾風迅雷」。作ってる段階からこれヤバイなって思ってました。テンポ早いんですが、サビで出てくるこよみんの歌が気持ちよすぎて……「こよみんありがとう!」みたいな!! 尺八の抜け感も好きですね。これ、仁樹さんがアドリブで吹いたんですけど、それをまたちょっと変えようと思っているという会話をしたときも「絶対変えない方がいいですよ!」って言うくらい良い曲です!
中村仁樹:僕もこの曲すごい好きで。ギターを弾いていた頃メタルを聴きまくっていたので、ヘヴィメタルやスラッシュメタルに和も入れたというか。音圧を詰め込んだ迫力のある曲なんですが、最後は民謡風でもあって。ライブでやったりしても気持ちよさそう。
花原秀正:僕もこれを推します。個人的にはアルバムの中で一番、様々な和楽器の音色を聞ける曲だと思っていて。一番最初からヘヴィな感じなので和楽器の音色もちょっとおどろおどろしい感じで聞こえると思うんですけど、それをガラッと変えて和楽器をキャッチーな形で聴かせられるシーンが後半でやってくるので、大きな世界観を持っている楽曲だなと感じています。僕の中ではこの曲は新しい形でのバラードかな。激しい部分が耳に残るというよりは、そのあとの抜け感の方が耳に残ります。
──確かに広がりのある曲です。早口の部分は何と言っているんでしょうか。
暦:歌詞を逆に言ってます。逆再生してもらえればわかると思うんですけど、レコーディング死ぬほど大変でした(笑)。
──大変そう! そんな暦さんの推し曲は?
暦:「桜色のドーム」です。「桜花繚乱」と同様に、10人体制になった当初から演奏している曲で。vagueさんからの提供楽曲なんですけど、歌詞もメロディーもめちゃくちゃ素敵で、歌ってて自分でも鳥肌立つくらい素敵な曲。情景が想像、イメージできるというか。そこに和楽器の音色がすっごくいい感じにマッチングしていて一押しの曲です。
本間貴士:僕もこれが好き。楽譜がなくてコードと歌詞だけを渡してもらって、もともと女性のキーなのをこよみんのキーにチェンジしたり、レコーディング中にみんなで色々アレンジしたりして「このスタイルあるんだ」ってすごく楽しかったです。レコーディングしたときは結成当初でそんなにお互いのことを知らなかったんですが、こよみんの歌を聴いたときに「この人やべーな」って思ったのも覚えてます。女性的な歌詞を男性が歌うというところにも色気を感じましたね。カラオケでも楽しめる曲になってると思います。
──楽曲のアレンジってどうやってやるんですか?
本間貴士:仁樹さんが作ってくださった曲は楽譜があるんですが、提供曲はその場その場でみんなで作っていくこともあります。楽器それぞれに独特な奏法があるので、「この方がお箏っぽくないですか?」「この方が三味線っぽいです」と言った感じで。楽しいですよ。
▲本間貴士(箏)
──だから和楽器の良さが生きているんですね。
大川義秋:僕は「不夜城のカラス」が好きなんです。イントロで雨の音とお箏の音から始まっていくんですが、そこに重なっていく暦さんの歌を聴いたときに鳥肌が立って。悲しみの声みたいなのが心にジーンと響いていく、そしてだんだんとサビに向かって音が集まっていく感じが好きです。
花原京正:こよみんといえばハイトーンボイスが本当に魅力的。なんですけど、この曲はこよみんの低音から始まるんですね。で、サビになっていきなりハイトーンボイスが突き抜ける感じが「待ってました〜!」って感じで気持ちいい。アルバムができて通しで聴いて、夢に出てきたのがこの「不夜城のカラス」だったんですよ。それだけ印象が残った曲なんだなって。大好きな曲です。
──これは歌舞伎町をイメージした曲だとか。
佐藤公基:京さん今日のファッション、まんまじゃん(笑)!
花原京正:(おもむろにスーツの下に着たシャツの襟を広げる)
中村仁樹:そう、まさに京ちゃんみたいな(笑)。「紅」のミュージックビデオを撮ったとき、衣装がみんな黒スーツで「なんか歌舞伎町のホストみたい」って盛り上がって。そこで男版の「吉原ラメント」的な世界観で一曲作れないかな、昔流行った「Deep Love[REAL]」みたいな感じで一曲書いてみようかなって。そしたらこういうスタイルも案外、桜menにハマりましたね。
──アルバムの中でも印象に残る曲でした。
KIJI:僕はせっかくなんで自分が作った「グソーバナ」を推します。これは24歳のときに作ったんですけど、収録するにあたって改めて作り直しました。桜menのみんなで一回船の上での仕事に行ったときに書いたので、海っぽい感じの雰囲気になってます。アルバムにはロックが中心の楽曲たちが揃ってて、バラードもR&Bっぽいおしゃれな感じ。でも僕はもともと演歌とヒップホップが好きなので、「グソーバナ」はルーズなビートに演歌っぽい感じのエッセンスが入った一曲になっています。
──『華の大演舞会』はいろんな雰囲気の楽曲が入っていますよね。和楽器のインストナンバーが入っていることも桜menならではだと思います。
匹田大智:「groovy 〜津軽三味線乱れ咲き〜」は、お客さんと一緒にのれる、動きのある曲になりました。津軽三味線って「ロックだね」って言われることが多いんですが、そういった部分も出ていますね。
KIJU:彼のスタイルがおしゃれでかっこいいなと思ってて。この曲も大智くんのエッセンスが入っています。個人的にもめっちゃ聴いてます。
──津軽三味線の魅力ってどんなところですか?
KIJU:津軽三味線は結構何でもあり?
匹田大智:自由ってことかな(笑)。三味線って500〜600年の歴史があるんですけど、津軽三味線の歴史は150年くらい。だから型があるようでなくて。いろんな表現ができるところが面白いですね。
──なるほど。ロックな三味線曲に対して、「花神楽 〜煌めきの箏曲〜」はまさに和のイメージでした。
本間貴士:これは仁樹さんが作曲してくれました。題名も素敵で、主題も華やかです。初お披露目は12月の越谷レイクタウンで、それを経てからのレコーディングだったんで、よっちゃん(大川義秋)と二人で「お互い雰囲気が似ていない方がいいよね」って話し合いながらアレンジしました。お箏には伝統的な奏法がたくさんあるんで、片方がある伝統奏法で弾いたら、もう片方はそれとは違う奏法を使うという風に割り振りました。箏曲らしくもありつつ、ポップで明るいので聴きやすいと思います。
大川義秋:お箏自体に雅だったり華やかなイメージがありますが、この曲は題名の通り、音色が皆様の元に花のようにフワーッと広がっていくような素敵な旋律で。同じメロディが何回か出てくるんですが、僕と本間さんが交互にメロディを掛け合っていて、より雅な流れができて広がっていく。中盤に戦うようなソロというか、お互いの持ち味を出したソロもあって、最後に向かってまたメロディが掛け合っていくという美しい曲になっていると思います。
──箏の魅力というと?
大川義秋:繊細な中に美しさもあったり力強さもあったり悲しさもあったり……自分の感性を音として伝えやすい楽器かなと思っています。
本間貴士:お箏に限らず和楽器全体にも言えることなんですが、楽器というものは民族楽器が改良を重ねられて便利な楽器になっていくんですね。ピアノも元々は全く違うものがピアノになりキーボードになり、ギターもエレキではなかったし。でも、和楽器って進化していないんです。だから不十分というか不器用な面がすごく多いんですけど、制限が多い中で、自分たちが見つけていく楽しみがある。お箏っていうのは特に制限がすごくある楽器なんですけど、それを自分で塗り替えていくところがすごくいいなと思っています。
▲大川義秋(箏)
──探究心をくすぐられるんですね。「風の旅人 〜雷鳴の一尺八寸〜」は尺八のいろんな音色が楽しめますよね。
中村仁樹:これは最初から雷の音が鳴ってるんですけど、尺八を龍に例えて、暗闇を切り裂いて青空に向かっていくというイメージで書きました。尺八って風の音だったりとか、自然そのものみたいな音が出るんですが、その辺りを表現できたらと思って演奏しています。
佐藤公基:仁樹さんって大学の直系の先輩でもあるんですが、やっぱりこの人すごいなと。尺八ってリコーダーとかフルートと違って穴の数がとっても少ないので、洋楽的なフレージングとか早く指を動かすのって結構難しい技術なんですよ。でも仁樹さんの指の動きの速さは凄まじくて。アドリブで対決する部分があるんですけど、仁樹さんが考えてくださるフレーズがまあ難しくて(笑)! 仁樹さんと必死に食らいつく僕の掛け合いも聴きどころかと。
中村仁樹:レコーディング三日前にこんなの渡すなよ、みたいなね(笑)。
佐藤公基:いやいや、そんな風には思ってないですけど(笑)! 尺八でもこんなフレージングできるんだとか、尺八ってこんな早く吹けるんだとか、そういう尺八の技術的なところも楽しんでほしいですね。
──尺八の魅力は?
佐藤公基:尺八って人間の声に近いって言われる楽器なんです。だから自分たちの声や歌い方が違うのと同じように人によって音色も違いますし吹き方も違います。実際に僕も歌ってるような気持ちで演奏していて。人間ぽいところが魅力かなと思います。
中村仁樹:その通りで、尺八は人の声のような表現ができるところが魅力です。でもそこに歌詞があるわけではないので、エレキギターのような表現もできて。早弾きもできるし、人力でディストーションをかけたり、フランジャーくらいなこともできる。世界的にも珍しい楽器ですね。
▲佐藤公基(尺八,篠笛)
──納得です。「打打打 〜無限和太鼓〜」は、アルバム後半にかけての盛り上がりを高めてくれると感じました。
花原京正:もともとは無限-MUGEN-が結成された当初から演奏されている曲なんですが、仁樹さんに音を重ねていただきました。想像をはるかに超えた太鼓の音の可能性が見出された奇跡の一曲に仕上がりましたね!
──無限-MUGEN-で演奏するときとは別物ですか?
花原京正:全く違いますね。無限-MUGEN-でやるときは和太鼓だけなので、こんな世界観が生まれるんだって驚きました。アナログとデジタルが何の違和感もなく混ざり合っている。でも、太鼓の良さが殺されるわけではなく、さらに引き出されているという。
花原秀正:太鼓の演奏には欠かせない、「はぁ!」とか「やぁ!」とかの掛け声がそのまま楽曲の中に入っているので、単純に和太鼓の曲としても楽しめますよ。そこにアンビエント的な環境音がおどろおどろしく乗っかっているので、不穏な感じな音楽に聞こえると思うんですが、低音が心地よく聞こえるので太鼓の魅力がどストレートに伝わるかなと。太鼓の激しいイメージも、そのまんま表現されています。
古里祐一郎:和太鼓って基本的にパフォーマンスなんですよね。だから僕たちも無限-MUGEN-でCD出したこともあったんですけど、DVDを出すことの方が多いんですよ。様式美とかそういうところに特化した楽器なので、見てもらってナンボっていうか。なんですけど、今回は仁樹さんとエンジニアさんの力で臨場感ある感じに仕上がったんですよね。だから全然、聞けちゃう! そばに太鼓を感じるっていう仕上がりになってる。
花原京正:エンジニアさんに生の音に近い感じに表現してください、とお願いしましたね。ただ音量を大きくする小さくするだけではなくて繊細な音の違いというか。どうしても僕たちも打っているうちに腕を振るビートやアタックの強さが変わってくる。そうすると音の表情がすごい変わるんです。変化していくという太鼓のよさも詰められた曲になっています。
──面白いですね。和太鼓の魅力というと?
花原京正:和太鼓はとにかくすごいシンプルな楽器です。打てば音は鳴りますしメロディもないですし。ただ箏や三味線、尺八と違うのは、体に響いてくるところ。お祭りに行くと「血が騒ぐ」なんて言いますけど、まさにそんな感じで聞いている人の魂にどストレートで響くんですよ。
古里祐一郎:そう、シンプルなんですよ。シンプルが故に難しいというか。メロディがないので、表現するのが難しいんですよね。打楽器やってる方ならわかると思うんですが、グルーブの出し方であったり、ちょっとしたバチのタッチ感でリズムに表情をつけていくんですね。そこを突き詰めていくのが和太鼓の魅力というか楽しいところ。誰でもできるんですよ、誰でもできるんですけど、かっこよくできるのは俺たちだけ(笑)。この奥深さが好きですね。
花原秀正:魅力は音でしかない。体で聞けるという音の魅力。振動がそのまま体に伝わってくるので。ただCDで聞いてるとそこまで伝えきれないので、基本的にはライブに来ていただきたいですね。でも今回は体に響く音がそのまま録音されているので、ライブをイメージしながら聞いてもらえると嬉しいですね。
──こうしてお話を聞かせていただいて、改めてじっくり一音一音聞いてみたくなりました。ライブでも拝見したいです。
中村仁樹:残念ながら2ndワンマンライブ<桜men〜華の大演舞会〜>は中止になってしまいましたが、レコ発ライブを必ずやりたいと全員思っています。
──楽しみにしています。最後に、これからの目標を教えてください。
中村仁樹:まずは武道館に立つこと。そして、日本のみならず世界の大きなステージにも立ちたいです。桜menは日本の文化というものがぎっしり詰まっているバンドなので、和を標榜している僕らだからこそできるオリジナリティある活動を枠にとらわれずやっていって、どんどん僕たちだけの新しいスタイルの音楽を築き上げていけたらいいなと思います。
取材・文◎服部容子(BARKS)
『華の大演舞会』
CD+DVD AVCD-96483/B ¥3,500+税
CD only AVCD-96484 ¥2,800+税
収録曲
[CD]
01. 桜花繚乱
02. 千本桜
03. 疾風迅雷
04. 桜色のドーム
05. groovy ~津軽三味線乱れ咲き~
06. 不夜城のカラス
07. 花神楽 ~煌めきの箏曲~
08. 桜並木の続く丘で
09. 風の旅人 ~雷鳴の一尺八寸~
10. グソーバナ
11. 打打打 ~無限和太鼓~
12. 己が道
13. IZANAGI
14. 紅(X JAPANカバー)
[DVD]
01. 桜花繚乱(MUSIC VIDEO)
02. 紅(MUSIC VIDEO)
03. 桜花繚乱(MAKING VIDEO)
04. 紅(MAKING VIDEO)
◆桜men オフィシャルサイト
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