【インタビュー】DのASAGIが語る、コロナ禍を超えた先の音楽「誰かのため、なにかのために」
■不測の事態に備えた上で新しい道を切り開いていこうという思いはすごく強い
──音楽配信を使ってのチャリティーのシステムにしても、先日Zoomを使って行なった日本初の購入者対象イベント“ウェブストアイベント”なんか、まさに時代に適応した届け方ですもんね。
ASAGI:ありがとうございます。“ウェブストアイベント”は、お客さんからは「すごく楽しかった」という声がめちゃくちゃたくさん届いたんですよ。なので、本当にやってよかったなと思いましたし。この期間、メンバーとファンがたとえ離れていたとしても、心は離れないし、“同じ時間を共有すること”は大事だと改めて思いましたね。僕自身もすごい楽しかったんですよ。目の前にお客さんはいないんですけど、カメラの向こうにファンがいるんだと思うと、なんともいえない熱い気持ちになりました。
──このような形でファンとの時間を共有するウェブストアイベントは、今後拡大していきそうですね。
ASAGI:はい、そうですね。それに、これからバンドはオンラインで収益化できるシステムをなるべく多くもっておかないと、ものすごく厳しい時代になると思います。もちろんこういった考え方をしている人は他にも沢山いらっしゃるんでしょうけど、僕もオンライン化の加速は前から予測はしていたんですが、コロナ禍になって、一気に来ましたしたよね。DはDMM.comで1年以上前からオンラインサロン(「Sub Rosa」)をやってるんですけど。いまの時代に適したしたバンドとファンをつなぐ“ベストコンテンツ”じゃないかなと思うんです。今後オンラインのコンテンツは、今以上に新しいいろんなサービスが出てくると思うんですけど。それを否定するつもりは全くないし、ライト層やまだ知らない人たちへ向けてのプロモーションになったりファンが喜んでくれるならもちろん、あり。でも、それぞれ色んなところに一番好きなバンドが出ちゃうと、そのバンドのお客さんはそのたびに新規アカウントを作ってコアファンならコアなほどあちこちの有料会員にならなきゃいけない状況になっていく。
──確かに。
ASAGI:それで、たとえ登録したとしても、そのプラットフォームにお目当のバンドがずっと出続ける訳ではないので。それならバンド公式のサブスクとしてのオンラインサロンで1本化して、メンバーは何かをやらされるんじゃなくて、自らやりたいことをやって、コアファンは自分の好きなバンドだけをずっと継続して頻繁に楽しむことができるもののほうがいい。そしてクローズドのSNSだからこそ、興味のない人の目に触れない形で独自の世界観の純度を高めることができる。それが、オンラインサロンの1番の利点です。サロンでは、生配信をしたり、小説など個人コーナーをやってみたり、全ミュージックビデオやライブDVDを全公開したり、MVのマルチアングルを公開したり、デモ音源や、密着動画、限定動画だったり、色々充実してきましたね。まだまだコア向けにもっと色々進化させていきたいと思っています。あと、サロン内では時々、お手紙の返事をお返しするということのデジタル化というニュアンスに近いものもありますね。そこでまかなえないものは、有料視聴電信チケット制のプラットフォームとして以前からある“ZAIKO”やこれから始まるイープラスの“Streaming +”など、ほかのプラットフォームを使って何か他にもやることもあるかもしれないですけど。基本、僕らはオンラインサロン内でできることはなるべくサロン内でやっていきたいと思ってます。この時代でも音楽を続けていきたいとか、ファンとちゃんと向き合っていきたいというしっかりとした想いがある人には本当にお薦めしたいです。オンラインサロンは。ただ、簡単にお金儲けできるだろうという考え方をしてはダメだとは思いますね。提供する側、される側がお互い気持ちよくサロンを利用できる状況であることが第一です。ただ、補足すると、勿論サロン会員やFC会員だけじゃなくて、Dや僕の音楽を愛して応援してくれるファンはみんな大事なファンだと思っています。
──それでは、Dの今後の活動については、いまはどう考えてらっしゃいますか?
ASAGI:その時々に置かれた状況のなかで、たとえ小さなことだとしても、できることを一生懸命考えて、探して、音楽は続けていきたいですね。
──最後にBARKSの読者に一言お願いします。
ASAGI:いまは本当に全ての方が大変だと思うんです。なによりも1番は自分自身を大事にして下さい。そして、希望を捨てずにいて欲しいです。これからもなるべく前向きな情報を発信していくので、是非、僕らをチェックしていてください。先ほど話したように、時代に適応していかなければいけないものは絶対に出てきます。そのなかで、材料はいままでと変わらない、心の核となる部分はなにも変わってないということを信じてついてきてもらいたいです。それと同じように、読者のみなさんも、どんなに時代に適応していこうとも、自分の核となる部分、自分らしさは変える必要はないんだよと伝えたいです。だから決して無理はせずに、自分の体、自分の心を第一に考えて過ごしてもらいたいですね。
──いまはみなさん心も体も本当に疲れていると思うので、ASAGIさん自身、お家でこういうことをやるとリラックスできるよというアドバイスがあったら教えてください。
ASAGI:それこそ、さっき話したオンラインサロンでのコアファンだけが集まるクローズドな空間でのコミュニケーションは、不特定多数がいる一般的なオープンな場所でのSNSと比べるとものすごく平和なので、圧倒的に僕は心が癒されます。唯一、安心して自分の考えをちゃんと深く伝えられる場所な気がします。正直、アーティストや著名人とか多くの人の目に触れる職業をされている方の場合、オープンな場所には様々な危険が潜んでいますよね。オープンなSNSが成熟してメリットもデメリットも色々見えてきた今だからこそ、改めて共通の理念や趣味の元に集まるクローズドのSNS(オンラインサロン)は今、必要だと思いますね。とにかく平和です。それ以外では、ここ最近はアロマ。ユーカリのアロマを買ったんですよ(笑)。
──「Hard Koala」に合わせて(笑)。
ASAGI:はい。パーカーも作ったんで、家では「Hard Koala」パーカーを着て、ユーカリのアロマ焚いて癒されてます(笑)。
──あ、ちなみにASAGIさん、オーストラリアには行ったことがあるんですか?
ASAGI:ないんですよ。(Dが所属する自社であるGOD CHILD RECORDSは)多摩動物公園のオフィシャルサポーターをやってるんで、「ACACIA〜」と「Hard Koala」制作期間中は多摩動物公園のオーストラリア園でコアラやカンガルーを見ながら世界観を追求してました(笑)。その様子はオンラインのサロン内で少し公開したんですよ。じつは、オンラインサロンの会員と一緒に多摩動物公園に遠足に行く計画があって。去年は台風で延期になり、今年はコロナ禍でまだ行けてないんですけど。これは絶対に行きますよ。
──そのときはぜひBARKSにも声をかけてくださいね。密着しに行きたいです。
ASAGI:ぜひ、一緒に行きましょう!!
──今日お話をして思ったんですが、DではヴァンパイアだったりするASAGIさんですけど、本来この人は人々に希望を与え、ポジティブにしていくために音楽をやっているんだなというのがすごく分かりました。
ASAGI:Dの音楽は物語でありながらも、その奥で現実とリンクしていて、その先の未来を描いていたり、いつも厳しい現実から目を逸らさない世界観があるからダークなんですけれども。かならずそこに一筋の“光”や“希望”や“前向きなメッセージ”は含まれてるんですよ。僕らはいままでいろんなピンチを乗り越えてきたんですね。だからこそ、いつも最悪なことを考えて、なるべく不測の事態に備え、その上で新しい道を切り開いていこうという思いはすごく強いんですよ。その中で、もちろん失敗もあるかもしれないけど、挑戦しない限り成功もない。失敗も、そこで諦めてしまったら失敗のままだけど、それをバネにして諦めなければその先の未来には光があるはず。いまコロナ禍でみんなが大変なときこそ、有益な情報と前向きなパワーをできるだけ多くの人と共有して、音楽が死なないように一緒に頑張っていこうよというメッセージを、少しでも伝えたくて。今日はいろいろお話出来て良かったです。ありがとうございました!
取材・文◎東條祥恵