編集PICK UP【ヒップホップ専門のインターネットラジオ局「WREP」】Zeebra&Mummy-D「第三研究室」のゲストはR-指定(2019年11月15日放送)
ヒップホップ専門のインターネットラジオ局「WREP(レップ)」で、ZeebraとMummy-D(RHYMESTER)がパーソナリティを務める番組「第三研究室」が、毎月第三金曜日よる9時からレギュラー放送されている。2019年10月にスタートしたこの番組では、ZeebraとMummy-Dがラッパーのラップテクニックを分析・解析。研究材料となるラッパーの楽曲にどのような魅力、面白味があるのか、リリック/フロウ/ライミングなど、さまざまな観点から深掘りしていく。2019年11月と12月の放送回では、ゲストにR-指定(Creepy Nuts)が2ヶ月連続で登場。11月の放送回ではCreepy Nuts「どっち」の歌詞やR-指定の意外な作詞法にトークが盛り上がった。
■Mummy-Dが驚いた、Creepy Nuts 「どっち」の目の付けどころ
Zeebra:ということで、今日は早速、先程かけさせて頂いた「どっち」について研究したいなと思ってるんですけど。これはもともとMummy-Dさんがピックアップしてきた曲ということで、まずはMummy-Dさんから質問を。
Mummy-D:質問というかですね、まずこれを僕が最初に聴いたシチュエーションはスポーツジムで。
Zeebra:スポーツジムでかかってた?
Mummy-D:自分のヘッドフォンで聞いてて。で、ダンベルを落としそうになりました(笑)。
R-指定:その節はすいません(笑)。
Zeebra:さっきもDが番組の始まりに言ってたんですけど、この番組、鬼ニッチなんですよ。鬼狭いところの話をするんです。で、「この曲、すげえな」と思うのはいきなり「ドンキとヴィレバン」?
Mummy-D:そう。そこなの。まずね、この曲のすごいところは、Rがよくやる非常にネタ感の強い曲で。最終的なメッセージはどこにも馴染めないっていう話で。僕らで言ったら「グレイゾーン」っていう曲みたいなものと同じだと思うんだけど。
R-指定:そうなんです。
Mummy-D:いわゆる不良なラッパーとかサグだね。サグ対ちょっとお洒落なサブカルみたいな。そういうティピカルな人たち、その両方に馴染めないという。それをサグとサブカルと言わないで、ドンキとヴィレバンって言ったっていう(笑)。お前、怒られるよ(笑)。
R-指定:それは「グレイゾーン」でDさんが言ってはったから。
Mummy-D:俺たちは店名とか出してない(笑)。
R-指定:先輩たちがそういう表現してるから、それを俺もしたいと。でも若手の使命として先輩たちが言ったことを今の感覚でというか、今の自分のフィルターを通して……となったら大阪の堺市という田舎で生まれ育った俺からしたら、それを当てはめる……サグとかサブカルなんてものがない田舎なんです。だから、なんとなくそれに通じるものはなんやろな? あ、ドン・キホーテとヴィレッジヴァンガードやなと。ドンキは地元にあって、アメ村の近くに行ったらヴィレバンあるけど、どっちでもなかったんよな、俺っていう。
■Creepy Nuts「どっち」誕生の背景
Zeebra:今言ってたドンキとヴィレバンの話。これは結構早い段階で出てきたんですか?
R-指定:これは実は、10代くらいのときに温めてたラインなんですよ。
Mummy-D:マジで(笑)?
R-指定:でも、どこでも使い場所がないなと思ってて。「たりないふたり」で松永と二人でCreepy Nutsでデビューしたときに、最初はサブカルで括られることが多かったんですよ。「みんなちがって、みんないい」とか、変な角度からの曲が多かったから。ヒップホップやのに全然不良じゃないみたいな。サブカルの側にバンとパッケージされることが多くて。「いや、違うねん、俺ら」っていうのも言っときたいよなって。「どっちも好きやし、でもどっちでもないねん」みたいなのがずっとあって。それを一回言葉にして表明しておきたいなということで、「じゃあ、とっておきのラインがあるわ」って松永に、この「ドンキとヴィレバン」っていうのを言って、「じゃあ、これ作ろう」ってなったんです。
Mummy-D:それからトラックを作ったの?
R-指定:そうなんです。
Mummy-D:それはハマるわけだねー。俺、この曲、すごいと思うのは、そのサグとサブカルをドンキとヴィレバンというメタファーで語っていこう。サグはサグっぽい声で。サブカルの感じはサブカルっぽい声でどんどんやっていこう。ここまではギリギリ思いつくんだけど、でも、だからと言って、やらないんだよね。
Zeebra:あはは!
Mummy-D:「んー、でもなー、そんなの」「可能かな、そんなの」ってなるんだけど、これはやり切ってるじゃん、最後まで。すごいのは1小節……ワン、ツー、スリー、フォーで不良の方。ワン、ツー、スリー、フォーでサブカルの方っていうふうに。これを日本語で切り替えていくのは、僕らの言葉はムチャクチャ音節食うじゃないですか。だから偉いなと思って。その上で韻を踏んだりっていうのは、大変なスキルなんだよ。
Zeebra:ラップを始めたうちって、文字数とかあんまり気にならないんですよ。みんなそこまで考えてないから。でも、やっていくとだんだん俳句みたいに、その文字数の中にどれだけ情報を詰められるかっていうことにハマっていくじゃないですか。
Mummy-D:ハマっていきますね。
Zeebra:そこでございますですよ。
Mummy-D:そこ。制限された音節数の中でちゃんと面白いことをポンポン、ポンポン言っていく。で、これが肝なんですけど、ずーっと逆のことを言ってるんだけど、途中で「ダンジョン見てます」「ダンジョン見てます」って同じことを言うんだよ、両方が(笑)。
Zeebra:あはは!
Mummy-D:ふざけんじゃねぇよ、おもしれーよ、コノヤロウ!みたいな(笑)。
R-指定:嬉しいー! でも、この年、これがマジやったんですよ。ムチャクチャヤンキーのいっぱいおるクラブの現場に言っても「ダンジョン見てます!」って言われるし、すごいお洒落そうなサブカルの人も「見ましたよ、ダンジョン」みたいなことを言ってくるから、「そこはどっちもなんや」って。それに対して松永がちょっとイライラしてて。「俺わい!」っていうのが松永にずっとあったから、松永の気持ちも書いといたろかなと。で、「ダンジョン見てます」「ダンジョン見てます」って言って、ガヤで松永が「オレも見てるよ!」っていう。
Zeebra:もう、バカなグループですね(笑)。
Mummy-D:バカな曲なんですよ、本当。でもね、情報量が並じゃない。
■R-指定は熟考型?ヴァイブス型?
Zeebra:リスナーのみなさんもわかってると思うんですけど、(R-指定は)結構熟考タイプじゃないですか、全体的に。
R-指定:そうですね。
Zeebra:ヴァイブス系の人とはちょっと違うと思うんだけど、ただやっぱりフックとか歌い出しとか、そのへんって結構……。
R-指定:ヴァイブスなんですよ。
Zeebra:ヴァイブス、超大切じゃないですか!
R-指定:すごいそれが矛盾してることというか。やっぱりね、面白い曲とか緻密なラインを作りたかったら超考えないとダメなんですけど、破壊力とか聴覚……聞いてる人の本能とかに直接訴えかけるのは、たぶんあんまり考えすぎたら出てこないと思うんです。
Mummy-D:そうなんだよね。それは俺も本当そうで。
R-指定:超バランスいいでしょ、ジブさんもDさんも。熟考とヴァイブスのバランスが絶妙やなと俺は思うんですけどね。
Mummy-D:なんだろね。
R-指定:たぶんジブさんがよりヴァイブス寄りで、Dさんがより熟考寄りなんかなと思うんですけど。
Zeebra:俺もそうだと思うよ。
R-指定:かと思いきや、Dさんも「けしからん」とかですげえ……アレも熟考した上での、すごいホゲながら全ヴァース歌うっていう(笑)。
Mummy-D:ちょっとやめてください。商売の邪魔になるような、そういう解説は(笑)。
R-指定:でも、たまにあります、ホンマにヴァイブスを出したいっていうのが。この曲(「どっち」)ではないんですけど、ある曲のフックを作るときとか全然勢いがない、どうしてもこじんまりになると。
Mummy-D:そうなんだよねー。
R-指定:で、何が必要なんかな?と。俺はお酒も飲まないし、ずっとシラフで書くんで、何か自分の気持ちを変えなアカンと思って、部屋の電気全部暗くして全裸になってサビを考えたことあります(笑)。
一同:あはは!
R-指定:何かを変えようと思って。ブッ飛んだことが出てくるかもしれんと思って。真っ暗にして全部服脱いで大声でビート流しながらワーッと言って、勢いのあるサビを作ろうとしたこともあります。
Zeebra:ちなみに、それでできた曲は何なんですか?
R-指定:「よふかしのうた」のサビです(笑)。
Mummy-D:あはは。みなさん、そういうふうに聞いてくださいね(笑)。
Zeebra:「よふかしのうた」を聞くときは、みなさん、全裸待機でお願いします(笑)。
全員:あはは!
Zeebra & Mummy-D「第三研究室」
日本語ラップの先駆者、ZeebraとMummy-Dがリリック/フロウ/ライミングなどラッパーのラップテクニックを分析するWREP発のラップ研究プログラム
毎月第三金曜日21時!
番組への感想はTwitterハッシュタグ #第三研究室 までお願いします!
1/17、2/21放送ゲスト:AKLO ※2/21放送分は2/23の21時から再放送予定
◆WREP公式YouTubeチャンネル「第三研究室 11/15放送」
◆編集PICK UP【ヒップホップ専門のインターネットラジオ局「WREP」】Zeebra&Mummy-D「第三研究室」のゲストはR-指定(2019年12月20日放送)
◆WREP オフィシャルサイト
この記事の関連情報
『第75回NHK紅白歌合戦』、初出場10組のコメント到着
『第75回NHK紅白歌合戦』出場者発表
Creepy Nuts、12/11にシングル「オトノケ」発売決定。今夜TVアニメ『ダンダダン』コラボMVも公開
RHYMESTER、バンド編成の人気企画をBillboard Live OSAKAで初開催
RHYMESTER、特別なバンド編成で臨むBlue Note Tokyo公演開催
Creepy Nuts、TVアニメ『ダンダダン』オープニングテーマ「オトノケ」音源初解禁
Creepy Nuts、初の海外コラボが実現
RHYMESTER、熱狂の日本武道館ライブが完全版映像作品として発売
【レポート】FLOW主催アニソンロックフェス、ぴあアリーナMM 2DAYSにレアコラボも「すべての歌が俺たちの誇りです」