【ライブレポート】CIVILIAN、文学性とバンド力の極致で完成させた<イシュタムの浴槽>コンセプトライブ
2019年7月にバンド改名3周年を迎え、「コンセプチュアルな表現」に改めて目を向けたCIVILIAN。その全ての楽曲で作詞・作曲を担うコヤマヒデカズ(Vo.)が、ライブに先駆け約3ヶ月にわたる短編小説連載をBARKSにて行なった。『イシュタムの浴槽』という。主人公の“僕”目線による一人称小説で、主だった登場人物は“僕”と“彼女”の二人。
小説連載を終え、その総括ともいえるCIVILIANのコンセプトライブ<イシュタムの浴槽>が11月14日に東京・渋谷WWW Xにて開催された。
◆CIVILIAN ライブ画像
コヤマは以前からBARKSで読書感想文のコラム連載を続けているが、そこからも彼が培ってきた文学性を伺うことができる。CIVILIANの楽曲の世界観はコヤマの文学性と切っても切り離せないものだ。時に洒落た狂言回しのような節回しを楽しみ、時にリスナーの心を抉りながらも、そこに滲む血の温もりから人間らしさを思い出させるような楽曲群は、現実に格闘する多くの人々をどっぷり酔わせてもくれれば許してもくれる。
そんな世界観をさらに培養させたコンセプトライブに人々が惹き付けられないはずもなく、この日はフロアに満員になった観客が、前衛演劇のように飾り立てられたステージを見つめてCIVILIANメンバーの登場を今か今かと待っていた。
ライブは、コヤマによる朗読からスタート。スポットライトの中に立つコヤマがある人物の視点から静かに語り始める。あらかじめ小説『イシュタムの浴槽』を読んでいた層はそれが全く新しいテキストだったことにすぐさま気がついただろう。また、小説を読んでいない層にとっては、それはきちんと序文から始まる新しいストーリーとして機能していた。朗読の途中で気づいた。これは一つのライブとして独立して楽しめるものであると同時に、短編小説であえて深く描かれなかった“彼女”の物語を追うものだ。
コヤマの朗読は徐々に熱を帯び、その後ろで楽器隊の音が物語を盛り上げていく。有田清幸のドラムが追い立てるように朗読パートを締めくくり、そこから一曲目のハードナンバー「Bake no kawa」へ突入。耳になだれ込んでくるスリーピースの演奏の鮮やかさに聞き惚れていると、続く「LOVE / HATE / DRAMA」では純市(Ba)の煽りに応えるようにオーディエンスがうねった。
“病的に清潔な牧場の檻の一番奥”などという歌詞が冒頭から刺さる「残り物の羊」やブルースに重なるコヤマのヒリついた歌唱が小気味好い「新曲」を経て、朗読パートは次章へ。バンドパフォーマンスとの静と動の切り替えが心地よく、コヤマのプレーンな朗読から紡ぎ出される物語に耳を傾ける。朗読明けに披露されたのは「Y」。“憧れていた女の子を目の前で無くした夜”という歌詞で始まる曲だ。もちろん全ての楽曲は『イシュタムの浴槽』ができる前からあったのだが、CIVILIANの歌の歌詞がさまざまなところで一瞬物語の辺縁をかすめていく妙は後から振り返る楽しみも生み出している。
ライブ中盤では落ち着いた温度感の朗読パートと、熱を帯びていくバンドパフォーマンスとのコントラストがはっきりした。ドラスティックなコヤマのギターと不穏さを底上げしていく純市の確かなベースワーク、グイグイと引っ張っていく有田のドラムが映える「信じられないね」から、「デッドマンズメランコリア」でまた雰囲気が変わる。純市(Ba)と有田清幸(Dr)がクラップを煽り、会場は合唱さえ交えて熱狂的な勢いでまとまった。
『イシュタムの浴槽』には音楽もバンドも出てこない。いつもならライブでパフォーマンスされる楽曲が直に背負っていた鬱屈とした陰を、このライブでは『イシュタムの浴槽』という物語が別軸で一身に引き受けた。それによって物語から分離され、浮かび上がったのは、CIVILIANというスリーピースバンドの本来持つ明るさと強かな生命力、エッジィなカッコ良さだ。物語にどっぷり漬かれるコンセプトライブだからこそ、物語に抵触しないバンドと音楽が“聖域”として機能していた。
朗読パートで"彼女”の心に淡い光が差し込む描写を経て、終盤ではバンドのセットリストも血を流すような優しいナンバーが続いた。「セントエルモ」のようなバラードナンバーでは叫びすぎて掠れるような強いシャウトが入り、彼らのライブでは欠かせない「メシア」を経て、「心臓」ではマーチングのリズムに合わせて大団円へと向かっていく。
朗読は物語に一筋の希望を残した形で終わり、エンディング・テーマさながらにライブを締めくくったのは「明日もし晴れたら」。日常を感じさせるイントロから力強いエモーショナルなサビへと突き進み、感動的な余韻を残して一人また一人とステージを去る。朗読以外MC一切なし。最後に本を閉じて深々と礼をしたコヤマに向け、フロアからは溢れるほどの拍手が贈られた。『イシュタムの浴槽』は、このコンセプトライブで一旦の完成をみた。
本ライブで表現の懐の深さを見せてくれたCIVILIAN。その後、コヤマが初のドラマ劇伴を担当した東海テレビ・フジテレビ系全国ネット『悪魔の弁護人 御子柴礼司−贖罪の奏鳴曲−』のオンエアも12月7日よりスタートしている。CIVILIANはさらに2020年1月より東名阪ツアー<CIVILIAN Live Tour+α 2020 “はじめましてこんにちは”>を開催。こちらのチケットは12月21日(土)10:00〜より一般発売が開始となる。
セットリスト<CIVILIAN 2019 特別公演 "イシュタムの浴槽">
1.Bake no kawa
2.LOVE / HATE / DRAMA
3.残り物の羊
4.新曲1
5.Y
6.爽やかな逃走
7.新曲2
8.信じられないね
9.デッドマンズメランコリア
10.ランララ
11.新曲3
12.セントエルモ
13.言わなきゃいけない事
14.メシア
15.心臓
16.明日もし晴れたら
<CIVILIAN Live Tour+α 2020 “はじめましてこんにちは”>
ワンマンライブ ¥3,800(+D代)
OPEN/START…18:30/19:00
2月20日(木) 大阪 梅田Shangri-La
ワンマンライブ ¥3,800(+D代)
OPEN/START…18:30/19:00
2月21日(金) 愛知 名古屋APOLLO BASE
ワンマンライブ ¥3,800(+D代)
OPEN/START…18:30/19:00
3月13日(金) 東京 代官山UNIT
※詳細後日発表!
■チケット一般発売 : 12月21日(土)10:00〜
INFO :
東京公演→Livemasters Inc.、03-6379-4744
大阪公演→グリーンズ、06-6882-1224
名古屋公演→サンデーフォークプロモーション、052-320-9100
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