【インタビュー】BOYS END SWING GIRL、「青春ロックの終演」と語るミニアルバム『STAND ALONE』に込めた思い
■普通に苦しんで普通に挫折して頑張っている普通の人たちに届けばいい
■悩みながら頑張ってる人に届いたらいいなと思います
──言葉のチョイスのこだわりって絶対あるでしょう。思ったのは、10年経ったら風化しちゃう言葉は入れてないなってこと。
冨塚:入れないようにしています。それを使ったほうが届きやすいのかもしれないとも思うけど、僕はそれを絶対にしない。歴史に残っている言葉が好きで、それこそ中国の昔の言葉が4000年残ってるのはすごいなあと思うし、ということは4000年の力があると思っていて。それはたぶん、その当時のことだけを書いていたら、そうなってないと思うんですよ。普遍的なことだからこそと思っていて、だから僕の歌詞は、言葉は普遍的なんだけど、でもその時代のことを歌うのを一番の目標にしています。歌っている内容は時代性を絶対持ちたくて、時代を歌いたい。だけど言葉は、携帯電話とかは入れたくない。それはけっこう考えています。だから時代を特定しちゃう言葉と、ら抜き言葉は絶対使わないと決めています。それは自分だけが持っていればいいこだわりですけど。…こんなに歌詞について言ってくれるのはめっちゃ嬉しい。こんなにしゃべることないから。
──いやあ、つい聞きたくなったから。歌詞は同年代に向けている?
冨塚:そうです。俺は普通の人生だったんで、普通に苦しんで普通に挫折して普通に頑張っている、普通の人たちに届けばいいなという歌なので。一番思ってるのは同年代で、社会人になって2、3年、悩みながら頑張ってる人に届いたらいいなと思います。それと、学校の先生になりたかった自分もいるから、どう生きればいいかわからなくて苦しんでる若い子たちにも歌いたいという、その二面性かなと思います。曲によって変わりますけど。
──今の25、26歳ってさ、どんな世代なの? 僕の印象ではけっこうポジティブというか、情報ツールの使い方もうまいし、フレンドリーだし、わりと自由にクリエイティブなことをやれちゃう、良い世代だなと思っているけど。
冨塚:僕らの世代って、SNSがなかった学生時代とSNS全盛期の学生時代が同じぐらいの比率であるんです。ツイッターが出てきたのが高3。なので、大学生になったらツイッターがすごいことになっていて、そこは面白い部分だなと俺は思っています。SNSのことをすごく知ってる面もあれば、SNSがなかった時代のことも知っているんで、面白い時代に生まれたなと思います。だから、新しいことを生み出せるんじゃないですかね。昔はなかったものも知ってるから。
──じゃあ基本ポジティブに感じてるんだ。
冨塚:ポジティブ感は、俺はけっこう強いと思います。逆に、バブルとか日本がすごい沸いてた時代を知らないんで、その人たちからしたら今は暗いと言われるかもしれないけど、知らない世代だから、今普通に生きてる感じなんですよ。今がそのままあるだけで、苦しさは感じてないんじゃないかなと思っています。個人的には。ここからどうなっていくかは、ちょっとわからないですけど、今は全然苦しいとは思わない。
──良かった。
冨塚:でも政治への関心は全然ない世代だと思うので、そこはアカンと思います。自分の人生で精いっぱいというところがあるかもしれない。まだ社会人になって2、3年というのもあるかもしれないですけど、国がどうとかを考える人たちじゃない。という感じかな。俺、一回、政治家にもなろうと思ったんですよ。
──いろんなものになりたがるなあ。
冨塚:そしたら母ちゃんに「何してもいいからそれだけはやめて」って言われて、やめました(笑)。俺は、日本の教育を変えたいと思ったんですよ。そのためには何が一番早いか? 政治家になるしかないと思ったんですけど、何か違ったみたい。母ちゃんだけじゃなく、当時の彼女にも「やめて」と言われてやめました。でもその時に父ちゃんが、「おまえは政治家になって人を変えるよりも、おまえの歌で変えるほうが、たくさんの人数を変えられるかもしれない」と言われて、その通りだなと思った。父ちゃんいいこと言うなと。それで俺、音楽をしっかりやろうと思いました。
──いいこと言うなあ。良い父ちゃん。
冨塚:俺が「学校の先生になりたい」と言った時も、「父さんは教室の30人しか人生を変える可能性はないけど、おまえは5万人を変えられるかもしれないよ」と言われて、すげーと思いました。
──すごい。偉い。なんか良い人ばっかり。
冨塚:良い人ばっかりだから、僕はこじれてたんですよ(笑)。周りのいい人エピソード、すっごいしゃべれますよ。
──ライブの話、しときますか。1月26日、地元の成田市文化芸術センター スカイタウンホール。
冨塚:ホールでやれるということが楽しみです。ライブハウスだけじゃなく、ホールもやってみたかったんで。
──ライブでは、どんなパフォーマンスを?
冨塚:けっこう盛り上げます。ライブと音源は別物として考えているので。歌詞はライブでは伝わらなくてもいいと思っていて、ライブは入口なんですよ。爽やかと言われることがすごく多くて、たぶんそれはライブを観た人で、見た目もあるんだろうけど、それは俺の心の中では嫌だけど、俺のこの暗い心も知ってくれよとは思うけど、それは入口だなと思っていて。「爽やか」で入ってきてくれた人が、歌詞を読んで、「この人、こんなに暗いところも持ってるんだ、私と同じものがあるんだ」と思ってくれたらいいなと思ってるんで。ライブは明るくして、そこから入ってくれた人が、たどり着いてくれればいいかなと思ってます。
──最後に、2020年の目標は?
冨塚:来年、日本を揺るがす曲を書かないと終わりだと思ってるんで。そのために人生使おうと思っています。ほかのことはどうでもいい、それだけです。日本を揺るがす曲を書く。
──でかいなあ。揺るがすってどんな感じ?
冨塚:個人的にずっと言ってるのは、「粉雪」と「栄光の架橋」に匹敵する曲を書かないと意味がないということ。日本を揺るがす曲は、そういうイメージです。僕ならではのメッセージを込めて、日本全国の人が歌えるような曲を頑張って作ろうと、それしか考えていないです。今までは、どうしたらバンドをもっと大きくできるだろうとか考えてたんですけど、ここまで来たらそうじゃなくて、曲の力だなと、最近本当に思ったので。全部そこに捧げようと、やっと思いましたね。
──頼もしい。最近の若いバンドは、目標を聞くと「できるだけ長く続けたい」ってみんな言うんだよ。
冨塚:俺は全然長くやれなくていいんですよ。ここで言うことじゃないですけど、30歳で音楽をやめても全然いいと思っていて、その間に自分がどれだけ世に衝撃を与えられるか。どれだけ人が幸せになってくれるかが勝負だと思ってるんで。長く続けることにこだわりはないです。俺、本当に、27歳で死のうと思ってましたもん。学生の頃は。
──古いロック美学を知ってるなあ。ジャニス、ジミヘン。
冨塚:カート・コバーンも。来年本当になっちゃうから嫌なんですよ。ロックミュージシャンが、27歳以降も生きてるなんて恥だと思っていたから。27歳で死ねなかったのが、マジで嫌なんですよ。だから来年なんですよ。27歳で、これで死んでもいいと思える曲を書けなかったら終わり。
──誤解なきように言っておくと。「死ぬ」というのは比喩ですからね。みなさん。もちろん生きていていい。
冨塚:生きていていいんですけど、そういうつもりでやらないと、というのはずっとあります。27歳で死ねるのが一番美しいと思って育ってきちゃったから。来年、本当に勝負だなと思ってます。ありがとうございます。楽しかったです。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
2019年12月11日発売
CD:TECI-1663 定価:\1,818+税
<収録曲>
1、ラックマン
2、LONELY HOPE
3、毒を喰らわば
4、スノウドロップ(Album Ver.)
5、クライマー
6、スタンドアローン
ライブ・イベント情報
日程:2020年1月26日(日) 会場成田市文化芸術センター スカイタウンホール
時間開場 17:00 / 開演 18:00
料金\4,000(税込)
チケット2019年12月7日(土)10:00~ 一般発売
お問い合わせハンズオン・エンタテインメント 03-5468-8613
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